「そしたらお兄ちゃんたらね!!」
「本当Ashって過保護だよねー」
「Sakura、あんたしばらく彼氏は無理そうね」

温泉に浸かりながら戦いの疲れを癒す。
ポッケ村からユクモ村にきて数ヶ月。
温泉に入りながら雑談をするのも日課となってきた。
今日もCarry、Sakura、Lamia、Tharrosの4人は温泉に浸かって雑談に花を咲かせていた。

「えー、・・・私だって!!」

明るい笑いが集会場に響く。
Tharrosはいつものように静かに彼女たちの話を聞いていた。

「まぁ確かにそろそろ恋の一つや二つ・・・ねぇ、Tharros」
「・・・え・・・」

いきなり話を振られてTharrosは驚いた。

「・・・私は‥・・」

集会所の奥から聞きなれた声がこちらに近付いてくる。

「噂をすれば帰ってきたようね」

バン、と大きな音と足音を立てて彼らが集会場に入ってきた。

「フッ、今日の俺の槍捌きも最高だった」
「良い顔してんじゃねぇよ。
俺の背後に立つんじゃねぇと何度言えば・・・」
「・・・宝玉・・・」

モンハンどうでしょうでおなじみのチームBAS。
そして今日はもう1人後ろにBillyと同じ金髪の弓使いがいた。

「エスケープ使うのは勝手だけど、俺を巻き込むとかマジないわー」

お互い装備に傷や泥ついているが、致命傷はなさそうだ。
いつものように上げ足を取り合っていたに違いない。

ほっとするSakuraを横目にCarryは苦笑した。
この調子じゃしばらく彼氏は無理そうだ。
そしてふと隣のTharrosを見た。

「・・・・。」

真剣に4人の方を見つめている。
元々無表情であるので睨みつけているようにも見えるがそんなことはない。
なんとなく気になってその視線の先を見ると、BillyとRikuであった。
どうやら2人にしか通じない会話をしているようである。
Tharrosもまだまだ兄離れが・・・
そう思いながら観察していたが、どうやらそうでもないようだ。

「・・・・。」

Tharrosの目はRikuの動きに合わせて動いている。

Riku?なんで!?

二度確認したが視線の先はRikuに間違いなかった。
Carryの目にはRikuに変わったところは見当たらない。

「おかえり〜、お兄ちゃん!」
「・・・うおSakura、そこにいたのか!!
そんな恰好で・・・」
「あ、Sakuraじゃん」
「SEVENテメェ見るなよ!!BillyもRikuも見たらぶっとばすぞ!」
「もう、お兄ちゃん・・・」

Sakuraはため息をついた。

「相変わらずだねぇAsh」

遠目で冷やかすRikuの後ろで、Billyは新しいクエストを受注していた。

「じゃ、採取いってくる」
「まだ行くのっ!?
・・・相変わらずだねぇ・・・」

Billyに手を振って見送ってから、Rikuが振り返った。
Tharrosと視線があう。

「どしたの?Tharrosさん」
「・・・・・・。」

ふいっと顔をそむけられてRikuは首を傾げた。
特に変なところはないと思うのだが・・・。Billyと仲良くしていてやきもちでも焼かれたのだろうか。
別の要件を思い出してRikuはTharrosを手招きした。

「このチケットBillyさん集めててね。
俺はもう武器作っちゃったからBillyさんにあげるよ。渡しておいてもらえる?」
「・・・分かった」

笑いかけてみても、Tharrosの表情には変化がない。
対Billyなら少し笑うのに。

まったく、愛されるって羨ましいねぇ。

じゃ、っと手を振ってRikuは道具箱へ向かう。

「・・・あ・・・」

Tharrosの声は奥で喧嘩する2人の声にかき消された。
戦利品をしまい、SEVENとAsh適当に声をかけ、Rikuは集会場を出て行った。

「・・・・。」


一部始終を第3者の視点で見ていたCarryは首を傾げた。
チケットをしまって再び温泉に浸かるTharrosの元へ向かう。

「Rikuとなんかあったの?」

こっそりと耳打ちすると、Tharrosはびくっと肩を震わせ近寄られた分Carryと離れた。

「・・・・。」
「・・・・。」

見詰め合い数秒。
Carryがにまりと笑う。

「なになに?お姉さんに教えなさい」
「兄さまの、チケットを・・・預かっただけ」
「他には?」
「なにも、ない・・・」

少し赤くなった頬は温泉に長く浸かっていたからかはたまた・・・
楽しそうににじり寄るCarryに逃げるTharros。しかし後ろは壁。
魅惑の胸の谷間に視線を奪われそうになりながらもTharrosは一応抵抗してみた。
無駄であった。

「何、Rikuなの?Rikuなの?」
「・・・・知らない」

Tharrosは俯く。
これ以上苛めるのも可哀想になってきてCarryは壁を背に体を伸ばした。

「まぁ男ってのは単純だからさ。
可愛い服着て、可愛く笑えばイチコロなんじゃない?
Tharrosは元々可愛いから悩む必要なんてないわよ」
「・・・・。」
「自信を持ちなさいよ。
相談ならいつでものるわよ」
「・・・ありがとう」

嗚呼、恋する乙女のなんと可愛らしいことか!

++++

その日の夜。
狩りから帰ってきたBillyは武器の手入れをするため部屋に閉じこもってきた。
こちらに足音が近づいてきて自分の部屋で止まる。
遠慮がちに叩かれた扉。
軽く返事をすると控えめに扉が開く。

「兄さま、いいかしら?」

半分だけ覗く顔。

「なんだ?」
「チケット・・・Rikuから」

渡されたものを見ると丁度自分が集めていたチケットだ。
これで武器が作れる。
Billyは薄く笑った。

「ありがとう」
「あの、兄さま」

Tharrosが改まってBillyをみた。

「なんだ?」
「少し、聞きたいことがあって・・・」
「かまわない」

Tharrosは一瞬迷ったように視線を下に向け、意を決して呟いた。

「兄さまは・・・その・・・。
装備のこと、なんだけれど・・・」
「・・・?」

装備でも新調したいのであろうか。
反射的に数種類の良装備とそれに付属するスキルを頭の中にリストアップする。

「・・・・兄さまは、何が一番可愛いと思う?」
「・・‥え・・・・?」

予想外の質問にBillyは一瞬フリーズした。
てっきり防御力やスキル重視した防具の質問だと思っていたのに。
しかし、Billyも男であり、可愛い、またはセクシーだと思う装備を考えないわけはないわけで。
ナルガ、ジンオウ、べリオ・・・
セクシー系の防具を思い浮かべたがそれはやめた。
個人的にTharrosには可愛いものを着てほしい。

「ブナハ」

ユクモで人気の高いオシャレ装備ブナハ。
実用性は低いがその可愛らしさから女性ハンターの中でも支持が高い。
防具の色的にも銀髪で色白なTharrosにはよく似合うであろう。

「・・・ブナハ・・・ね」

分かった、とTharrosは頷いた。

「ありがとう、兄さま」

Tharrosの目元が少し和らぐ。

希望にそえたのならなによりだ。
しかし、何故突然可愛い装備なのだろうか。
突然浮かんできた疑問にBillyの眉間に皺がよる。

Sakura達と仲良くなるのつれてTharrosはぐんと可愛くなった。
Goodmanも含め、男である自分達が彼女にできることは限られている。
最近ではハンターとしても腕をあげ、彼女が自分を頼ることが少なくなった。
強い装備の合わせ方くらい彼女は1人でやってのける。
『可愛い装備』というのも自分の可愛いと思う装備を選べばいいだけ。
他人の意見を聞くことに何の意味があるのだろうか。

ブナハはデザインこそ良かれ、機能面で少々不安が残る。
Tharrosの狩りスキルは認めているつもりだが、それでも心配なのは仕方ない。
狩場に油断は禁物だ。
そのことをしっかり教えたつもりだし、彼女も身を以てその恐ろしさを体験しているだろう。
今までその場に適当な防具を揃えて出かけていた。

リスクを冒してまで、オシャレ装備で出かけなくてはいけないことでもあるのだろうか。

否、

リスクを冒してまでオシャレ装備で出かけたい相手でもできたのだろうか!!!


いつも冷静なBillyだが久々の妹の来訪で少し思考が麻痺してきていた。
今ならAshの気持ちが少しだけ理解できるかもしれない。
否定すればするほど気持ちは焦り、背中に変な汗まで流れてきた。

戻ろうとするTharrosを引き留めた。
反射的に口から言葉が漏れ出す。

「誰と行くんだ?」

可愛い装備を身に纏い、誰と、どこへ?

毎日狩りに行くときTharrosはちゃんと答えてくれる。

Sakura達と、

そんな答えが返ってくる、そう思いたかった。

Tharrosは質問の意図が分かったようであり、目を大きくして、そして逸らした。
彼女の白い頬が徐々に赤く染まってきている。

自分の最悪の予想が確実なものへと変化しているのが分かった。

「・・・い、言わせるな、よ・・・」

バタンと扉が閉まり、パタパタと足音が遠ざかってしまう。

Billyは十拍ほど停止し、我に返って手元をみた。
愛用のハンマーの柄が見事に真っ二つに折れていた。

++++

「・・・ねぇ、Ash?」
「あ?」
「最近Billyはんみないけど、知らない?」
「なんか村長と話しているとこ見かけたやつがいるらしいぜ」
「Billyはんに限って村クエ?まさかぁ・・・」
「・・・だよなぁ。」
『・・・・。』

なんで?

2人は気になって村長に話を聞きにいった。

「Billyさん?
あぁ、あの方なら私の依頼を受けてくださったわ」
「でもBillyは村クエ全てクリア済みだろ」
「えぇ、でも何故か最近は『終焉を喰らう者』ばかり・・・」
「終焉・・・だと・・・っ!?」

村クエにおいて最難関クエスト。
上位ハンターでも武器と防具とスキルを揃えないとクリアできないという鬼畜クエストであり、好んで受注するものは少ない。
村長の話では最近それに入り浸っているらしい。

「・・・様子見に行った方がよくね?」
「俺も行く!」


そうして向かったのが闘技場。
こっそり中を覗くとまさに今ティガレックスが雄たけびをあげて地面に伏したところだった。
他の二頭の死体も転がっている。

モンスターの体液を拭い、息一つ乱さず無表情で戻るBillyはまさに職人。
2人に気づくと、Billyのまとう雰囲気は少し和らいだ。

「あれ、Ash、SEVEN。どうしたんだ?こんなところで」
「いや、最近Billyはん見かけないからどうしたのかなと思って‥‥」
「村長に聞いたら最近ここに入り浸ってるっていうし・・・。
なんかあったのか?」

Ashの言葉にBillyが一瞬固まる。

「・・・・・・・‥いや、別に」

なんだその間は。

「ちょっと愛用のハンマーが柄から折れちゃって。
その素材集めに・・・」

なら単体で行けばいいんじゃないか。と突っ込めないくらいBillyの動揺はみてとれた。
ここ数日の間で何があったし。

「そう、なんだ」

『言わせるなよ?』を言外に黙々と帰宅準備を進めるBilly。
結局何も詳しいことは聞けず3人はユクモ村に戻ったのであった。

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