圧倒的な強さは闇を打ち砕く。

大いなる闇の壁が崩れたその先は

さらなる闇か、希望の光か。

++++

世界には未開拓の地というものが存在する。
現在ギルドや観測所の働きがあり、世界のすべての地を把握できつつあるが、それでもまだ謎に包まれた地は多い。
それは危険なモンスターの存在や過酷な環境、周囲の天候の良し悪しにもより調査が進んでいないことが主な原因だ。
Billyは今回の夏休みにその危険と夢に溢れた未開拓の地に行くことに決めた。

それを仲間内に話すと『流石Billyはん!』『未開拓の地で修行とかBillyさんマジパネェ』と驚かれたりもしたものだ。
予想以上に騒がれ、尊敬の眼差しを向けられ、Billyは久々に空気を読んで言いそびれてしまった。
行こうとした理由が『どうせ旅行するなら珍しいところにしたいな』という安易なものであったということを。
しかもそんな危険な土地にいくというのに、誰も止めず、笑顔で見送ってくれた。

・・・なんというか、メンバーには自分に対する認識を一度改めてもらった方がいいと思う。

そう思いながらもそんな素振りを一切見せず、いつもの無表情で『行ってくる』と一言だけしか言わないもんだから、新たにBillyはんの伝説が1つここに刻み込まれた。


ユクモ村を離れて数日。
Billyの世界はたちまち白くなった。
全てを白で覆う雪。
自分の方向感覚だけを頼りに、Billyはひたすら歩みを進めた。
変わり映えない白い世界は見飽きることもなく、微妙な変化をもってBillyを歓迎する。

吹雪が止み、顔をあげれば、そこは太陽の光を受けてキラキラと輝く一面の銀世界。
眼前に立ちふさがる巨大な氷山にBillyは、ほぅ、と息をついた。

とりあえず吹雪が止んだため、休憩をする。
なんの予備知識もなく未開の地に乗り込んだBillyは3日もすればその環境に馴染みつつあった。
雪山に入る当初、荒れ狂う天候や食糧難で遭難したらどうしようかと考えてもいたのだが、ポッケ村ですでに吹雪の中でモンスターと戦った経験を持つBillyにとって実際大した障害にもならなかった。
白い雪しかないと思われた雪山にでもモンスターは生息し、運がよければポポに遭遇できる。
ポポから少し肉と皮と頂戴し、正午を過ぎたら泊まる場所を探し、かまくらを作成。一晩そこで休んでまた出発。
水分はその辺の雪を溶かして沸騰させれば蒸留水の出来上がり。
寒い環境にも寒さ耐性の防具を身につければホットドリンクなしで長時間しのげることが分かった。

意外に身一つでやっていけるんだな、とBillyは上手に焼けたこんがり肉を齧りながら思った。

時々に現れるギアノスやドドブランゴの群れと出会うが、その程度モンスターに遭遇したうちに入らない。
ティガレックスやイビルジョーとも普通に遭遇し、Billyは余裕ある時には相手をした。
地方によって攻撃方法や進化の特性が微妙に違い、それがいい刺激となって狩りの後は大きな充足感に満たされたものだ。

1週間くらい雪山の奥地に進んだ時、山の上から大きな氷湖がみえた。
そこで泳ぐように移動するウカムルバスの集団を見たときの感動といったら!
やはり未開の地は未開のままでいいのかもしれない。

雪山をの上に広がる水色の空を仰いでBillyは遠くにいる仲間たちのことを考えた。
そういえば、結構雪山にこもってるけれどそろそろ帰ることも考えなければいけない。
夏休みは1ヶ月。
雪山にこもり、そろそろ2週間が経とうとしていた。
Billyは大まかに書かれた地図を取り出し広げた。
吹雪で迷子にもなっていたり、途中から面倒くさくて適当に進んでいたので、もはや無意味なものとなっている。
長いサバイバル環境にすでに身体も精神も慣れてしまったので、遭難しつつある現状に別段恐怖を感じることもなくなっていた。
幸い命の危険を感じることもほとんどなかったし。

いや、自分としてはまだギリギリ遭難したとは思いたくないのだが。

この辺は未開拓故、外から見た情報で地図は作られている。
現在地から見える風景を参考に地図に当てはめてみる、が。

「なるほど、分からん」

Rikuの言葉を借りれば『地図なんて飾りなんだよ!』
分からないものをいつまでも迷っていては進まない。Billyは地図を丸めて荷物の中にいれた。
鷹見のピアスとかもってこれば良かった。・・・目的とは大分違う使用方法だけれど。

「適当にあの山登れば何か街とか見えるかも」

目の前に切り立った大きな氷山を見つめて、Billyはまた歩みを進めたのであった。
見渡す限り、怪しい雲はなさそうなので、今日はたくさん進めそうだ。

氷山を1日にで踏破し、眼前の雪山に移る。
景色の向こうに緑の草原や深い森、砂漠、そして海が広がっていた。
久しぶりに見る、白以外の景色にBillyは改めて感動して、下山することに決めた。
多分、この方向に真っ直ぐ進めば雪山を越えることができるであろう。

Billyはルート選定のために、下を見下ろした。
がっちりと固まった氷にロープを巻く。そしてその先は自分の体へ。
良くクエストで切り立った崖から飛び降りたりもしていたが、それはその先に何があるか知っているから。
流石に、見知らぬ土地で無謀なことはしたくない。

「・・・さて、今日中には向こうの山に入りたいな」

ロープを片手に足元の氷を思い切り蹴った。
一瞬の浮遊感。
そして体は重力に従い、急降下していった。
氷に冷やされた冷たい空気が肌を刺す。
Billyは表情を変えず、視線の先は崖の下。

丁度いい着地地点を見つけ十メートル先でパラシュート代わりのテントを開く。
少し落下スピードを抑えられれば、あとはこちらで着地できる。幸い下には雪がこんもり積もっていた。
Billyはロープを力強く引っ張った。
上の方でロープが切れる仕掛けとなっている。
ロープが緩み、Billyを支えるものはなくなった。スピードが一定まで緩んだところでテントも身体から外す。

「・・・・・・あれ?」

いつの間にか落下地点にティガレックスが鎮座していた。
翼のないBillyにはこの衝突を避ける手段は持ち合わせていなかった。
少し申し訳ないと思う傍ら、その場所は先約済みだ!とよく分からない主張を頭の中に思い浮かべながらマントの下からハンマーを取り出す。
どうせぶつかって戦うことになるなら先手必勝だ。

空中で溜め、落下と同時にティガレックスに振り下ろす。

背骨が盛大に折れる音が響く。
そしてBillyはティガレックスの背中に着地した。
頑丈な鱗の下にある柔らかい筋肉が丁度良い緩和剤となり、着地は安定したものとなった。
ナイス、ティガレックス(・ω・)b

『・・・・・!!!!』

思わぬ衝撃に声も出せず、もがくティガレックスをみて、Billyは少し申し訳ない気分になった。
いや、でもそこにいた貴方も悪いし。
背骨を破壊され半身が動かなくなったティガレックスを早々に討伐し、周囲に散らばった荷物を片付け、Billyはたちまち大きくなった雪山を見上げた。
思ったよりも早く下山できそうだ。

++++

雪山は人が入っているのか、道が整備されているようであった。
今まで獣道を歩いてきたBillyからすれば、少し歩きにくかったり狭かったりする道も立派な道だと認識できる。
歩くための道があるって贅沢!
雪山に入ってから雲行が怪しくなり、ちらほら雪がちらつくようになった。
そしてそれは風を伴い、すぐに吹雪となった。

視界が悪い中、Billyはひたすら山を登った。
道がついてるなら半日で下山できると思ったが、甘かったようだ。


ふと、背後に気配を感じた。
Billyは振り返る前にハンマーに手をかけ、跳躍しながら、振り返る。
目の前を大きな拳が通過した。
着地したと同時にBillyはハンマーを振りかざした。
下げられた頭にハンマーを振り下ろす。

吹雪で視界が悪く、よく見えないが、おそらく形や攻撃からみてドドブランゴだろうか。
なんか、・・・凄い大きいけど。
頭に思わぬ一撃を受け、相手がBillyから距離をとった。

形だけがうっすら分かる中、相手の咆哮が雪山に響く。

「・・・まったく、早く降りたいっていうのに」

しかし、ゴールが見えているのなら気持ちに余裕もある。
回復薬の予備もたっぷりあるし・・・ギリギリ救援を呼べば誰か来てくれるかもしれない。
その思考がBillyのやる気を起こさせた。

しばらく雪山にも入らないだろうし最後に熱い一戦をしようかと、Billyは薄く笑った。
独特のステップでこちらに向かってくるのをかわし、互いの振り向きざまにスタンプをお見舞いする。
相手も大きいくせに身軽で、足場の悪い雪山ではBillyの方が不利であった。
フードをかぶっていて視野も狭い。
思わず雪を被ったフードを取った。
黒い巨体はBillyに向かって跳躍した。
横に大きく回避する。

「・・・なっ!?」

着地と同時に敵はその場で大きく回転した。
ドドブランゴにそんなモーションあったっけ!?
大きな巨体に飛ばされ、Billyは数メートル後ろに吹っ飛んだ。
空中で体制を立て直し、何とか着地する。雪のおかげで衝撃はわずかですんだ。
動けないBillyに狙いを定めて、向こうから何か丸いものが飛んできた。
それもギリギリでかわす。積もったばかりの深雪に大きな丸いクレーターが出来た。

「・・・にゃろぅ・・・」

ポーチからいくつか瓶を取り出した。
強走薬グレートに、回復薬。
どれも今まで使い惜しみしていたアイテムだ。
強走薬を飲み、ハンマーを構える。吹雪の中、体の中に熱が生産されるのが分かる。
ハンマーを構えBillyは走り出した。
狙うはその細い二本の足。
真正面から飛び込み、立ち上がった瞬間、足元でハンマーをぶん回した。
Billyの強烈な攻撃に、ドドブランゴは体制を崩し、その場で転倒した。
チャンスとBillyは再度力を溜める。
スタンを狙うべく、Billyは頭にハンマーを振り下ろした。

過酷な環境で生きてきたため、体の作りが頑丈なのか、Billyの猛攻にも頭を一被りだけしてドドブランゴは吠えた。
今の攻撃でもそこまでダメージがないとは、流石G級。
少しだけ感嘆して、Billyは次の攻撃に備える。
ドドブランゴは立ち上がり、大きく腕を振り下ろした。
一度後ろに回避する。攻撃しようと前方に体重を駆けると、ドドブランゴは大きく前に移動し、反対の手を振り下ろしてきた。

「・・・っ!?」

ギリギリで見極め回転して避ける。
何かおかしい。ドドブランゴってこんな動きができただろうか。
なんか大きかったし、頭を叩いた時も変な感触だった。
地方によって違うというけれど・・・これはもうドドブランゴというより・・・

首を傾げながらもBillyは力を溜めながら後方に走り去っていった、ドドブランゴの頭を狙ってハンマをぶん回した。
何かが欠ける感触が手に伝わる。

「・・・・そうか!」

雪の勢いが徐々に収まっていき、敵のモンスターも確認しやすくなっていた。
敵の毛の色は白ではなく、黒。
頭には大きな二本の角。今では1本になっている。
怒りを宿したモンスターと視線が合う。

Billyは一度ハンマーをしまって距離を取った。
モンスターの黒毛がたちまち逆立ち、金色に変わる。
耳をつんざく咆哮が周囲に響き渡った。

「久しぶりに見たから分からなかったな」

どうやら、相手をしていたのはドドブランゴではなくラージャンのようだ。
普通のハンターなら絶望の淵に立たされるところであるが、Billyはむしろ闘志がわいた。

バチリ、と静電気を弾かせながら、相手はこちらの出方をみているようだ。
Billyもぐっとハンマーを握りなおした。
怒り状態のラージャンは同時に攻撃力が倍上がる。
一撃当たれば、五体満足でいられるか分からない。

威嚇と共にラージャンが地を蹴った。
Billyは右に避け、すぐに振り返る。ラージャンの隙を見て、攻撃をしようと一歩踏み出した瞬間、視界を何かが通過した。
丸くて小さい・・・
何故、そんなものが投げ込まれたのか。ここには自分しかいないはずだ。
Billyは疑問に感じながらも、腕で目を庇った。
ラージャンが振り返った瞬間、辺りは光に包まれた。

「こっち!」
「・・・・え?」

腕を掴まれ、Billyは振り返った。
そこには自分より少し小さなハンターが自分の腕を引いている。
後ろでラージャンの悲鳴が聞こえた。閃光玉に当たったらしい。

「ラージャンは閃光玉に当たっても動きが激しいわ。
油断はできない。急いで」

どうやらラージャンに襲われたハンターに間違われたらしい。

「・・・え、いや俺は・・・」
「早く!」

まくしたてられ、Billyは仕方なくハンマーをしまった。
この状態で短時間で説得するのが難しそうだ。
下手にこの場にいる時間を伸ばして、ラージャンの攻撃をくらうのが一番痛い。
流石に1人庇いながらラージャンと戦うことはしたくない。
少し名残惜しい気もしたがBillyは突然現れたハンターの指示に従い、戦線を離脱した。

++++

ハンターは慣れたように小さな穴を潜り、氷の洞窟に入り込んだ。
確かにここならば、ラージャンはおってこれまい。
氷の塊は人工的に階段になっており、ここを頻回に人が行き来しているのが分かる。
少し場所の開けたところでハンターは止まった。
雪よけのフードを取り、肩に乗った雪を落とす。
そしてBillyに向き直った。
Billyは少し驚いた。しかし表情は変わっていなかっただろう。

「・・・先程の場所は立ち入り禁止となっていたはず。
ギルドでもよく注意されていたでしょう?」

ハンターは自分よりも少し年上の女性のギルドナイトであった。
女性のギルドナイトというのは少し珍しいので驚いた。
歳は少し上だろうか。凛として、どちらかというと美人だ。

「何?女のギルドナイトは珍しい?」

Billyの視線に気づいたのだろう。少し苛立ちを追加させ、彼女は言う。
Billyは首を振った。

「・・・いや、珍しいとは思ったが、それ以上でもそれ以下でもない」
「そう。
とにかく!そこら中に立ち入り禁止の看板とかあったでしょうっ!?
見なかったの?」

どうやら自分は知らないうちに立ち入り禁止区域に入っていたらしい。
恐らくあのラージャンのせいだろう。
どこかのギルドにいたわけでもないため、Billyがそんなこと知るわけもない。
が、のちに煩そうなので、正当な理由を付け加えておく。
ハンターをやる上でギルドと問題を起こすことはないに越したことはない。

「この山に入ったとき吹雪がひどくて・・・合ったかもしれないが見ていなかったのかもしれない」
「酷い吹雪に山の中に入るのも禁じられていることだと思うんだけれど」
「今日中に山越えしたかった。街までこの山一つみたいだったし」
「・・・山越え?
貴方、どこからきたの?」

Billyと話が食い違うことに気づき始めたギルドナイトは眉をひそめた。

「北から入山して大体2週間。
ずっと南下して今ここにいる」

Billyは地図を取り出して、入山したところを指差した。
ギルドナイトは地図を見て顔をひきつらせた。

「2週間っ!?あなたよく生きていられたわねっ!?
意味がわからないっ!!!
なんでそんなところに・・・死ぬ気だったのっ!?」
「いや、ちょっと長い休みをもらったんで中々いけないところに行こうかと・・・」
「それでなんで雪山チョイスッ!?
もっといいところあったでしょうっ!?」
「・・・チルノに、会えるかと思って」
「・・・え?なんて・・・?チル・・・」

『新種のモンスター?』真顔で返されBillyはふっと顔をそらした。

「いやなんでもないです」

ネタが通じない寂しさといったら!
Billyの心が極寒の雪山より寒くなるのを感じた。

「この辺の山脈は標高高いし、強いモンスターがうじゃうじゃいるし、天候もすぐに変わるし・・・。
未開の地で、今まで誰も入らなかったし、生きて戻ってきたものもいないといわれているのに・・・」
「うん。・・・まぁ、でもあの空間で生きれないことはなかったよ。とだけいっておく。
ちなみに今どの辺?」

頭を抱えながらもギルドナイトは最南端を指した。
どうやらうまく北から南へ踏破できたらしい。
Billyは1人で満足した。

「なら、ギルドに登録はまだなのね・・・」
「うん、久しぶりに人にあった」
「・・・理由は分かったわ。・・・とりあえずギルドカードを見せて。
あの山の中を2週間も生きていられたんだから、その辺の弱いハンターじゃないことは分かったけれど・・・」

ギルドカードをみて、納得した。
元であるが、G級ハンターだ。
モンスター討伐数も申し分ない。ていうかここまでくれば存在自体が化け物レベルだ。
先程のラージャンも襲われているのではなかったと理解した。
ちらりと裏をみると『MHD〜モンハンどうでしょう〜』のロゴシールが貼ってあった。
よく猟団を組んでいるハンターはギルドカードの裏に猟団名を記していることが多い。
そのロゴを見て、ギルドナイトは目を丸くした。

これは、天の導きか・・・。

裏のロゴを見て固まっている彼女をみてBillyは首を傾げた。

「・・・何か?」
「・・・いや・・・。
その、2週間山にこもっていたのなら、その間誰とも連絡はとっていないのよね」
「さっきも言ったけど人に久しぶりに会った」
「・・・そう・・・」

再度フードを被り直し、ギルドナイトは歩き始めた。

「ここはハンター専用の氷の洞窟よ。
ここを進めば極力自然災害やモンスターに遭遇せずに下山できる。
街はあと3時間ほどで着くわ。
・・・流石にもう雪山は飽きたでしょう?」
「うん、そのつもり」
「なら私に着いてきて」

標高が下がるにつれて氷は溶け、普通の洞窟になってくる。
寒さが和らぎ、Billyは羽織っていたローブを脱いだ。
久しぶりに雪のない世界に来ると逆に今の装備では暑く感じる。
しばらくナルガ装備にお世話になりそうだ。

外に出てしばらく歩くとベースキャンプがみえた。
ギルドナイトはそこにいるアイル―達に話しかけ、こちらを向いた。

「長旅ご苦労様。
少し休んでいく?ネコタクは今すぐ出発できそうだけれど・・・」
「いや、休憩はいい。そのまま街へ行く」
「了解。ちょっと行きとは人数が違うけどオマケで2人お願いね」
「分かりましたニャ!」

普通、クエストを受注していなければベースキャンプからギルド管轄のネコタクに乗ることはできないのだが、流石ギルドナイト。
あっさりとその壁を破ってしまった。
思うことはあったが、Billyはあえて無言を突き通した。
ギルドを敵に回すべからず。

++++

ネコタクに乗っている最中暇を持て余し過ぎたBillyはギルドナイトに聞いてみた。

「あのラージャンのせいであの辺立ち入り禁止になってんの?」
「えぇ、そうよ。
ラージャンだけじゃない。あの辺にはティガレックスやベリオロス、最悪イビルジョーまで存在するわ」
「・・・それは最高の狩場だな」

Billyの言葉にギルドナイトは顔を伏せた。
どうやら禁句だったようだ。

「・・・貴方たち、G級ハンターにとってはそうかもしれないわね」

世界の全てが存在する。
甘美に聞こえるその言葉は、甘い罠。

全てを揃えた果てに待っていたのは楽園ではなく地獄だった。

「実際そこに暮らす人、その山を糧にして生きている人達にとっては地獄よ。
数十年前まで当たり前に平和に暮らせていたのに。危険なモンスターのせいで村がいくつもなくなった。
いざ倒そうと思っても、ただの人間が、そこらのハンターがG級モンスターに敵うはずもない」
「・・・・・・。」
「私達ができるのは、危険をあらかじめ避けられるよう監視することだけなのよ」

彼女の拳がギュッっと握られる。
ハンターであるのに、狩れないモンスターはたくさんいる。
モンスターを狩ることができないで何がハンターだ。何がギルドナイトだ。
綺麗な横顔が苦痛に歪む。

Billyは「そうか」と一言だけ返した。


森丘を平原をネコタクが疾走する。
そして森の木々を間から大きな城壁がみえた。

「ギルドナイトさん、もうすぐつきますニャ!」

首も痛くなるような高い城壁が続き、そして、大きな門がみえる。
ネコタクは止まった。
ギルドナイトが先に降り、アイル―に礼をいう。
荷物を全て担いだBillyもそれに続いた。

大きな門をくぐり、賑やかな街がみえる。
ローブを脱ぎ、赤いギルドナイトの制服に身を纏った彼女はBillyに向けて礼をとった。

「ようこそ、我が街『世界の楽園 ユートピア』へ!!
長旅の疲れを癒し、よしんば我がギルドのクエストに協力していただけますことを心から願っております」


元々この地をゴールとしていたBillyは少しだけ知っていた。
雪山、砂漠、密林、火山、森丘、樹海、海。
全てのフィールドが隣接している世界でも珍しい土地。
きっと様々なモンスターがいるのだろうと思っていたが、どうやら予想以上のようだ。

市場にはそれぞれのフィールドから集められた食べ物や特産品が数多く並べられている。
武器屋にもさまざまなモンスターから作られた武器や防具が並べられ、その技術はG級にまで及ぶ。
このように色んな物が揃う街はこの世界で稀であろう。


まさに楽園と呼ぶにふさわしい。

世界の全てが、そこにはあった。

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