「・・・てなわけで本日の議題はどのクエストから行くかってことだが・・・・・」
「はい!!」
「はいSEVEN」
「ディアブロスに行きたいです」
「ディアブロスは元々ないので無理。あっても却下」
「はい」
「はい、Billy」
「ゲリョス一択」
「強走エキスは自分で狩ってきてください」
「面倒だし、端っこから順番でよくね?」
「おいTKB空気読めよ。こういうのは優先順を考えて行くもんだろ」
ユートピアに到着して翌日。
早速4人は集会場のクエスト版の前に集まった。
4人集まったときの騒がしさはユクモにいたときと変わらず周囲の目を引きまくる。
しかしそれは騒がしさだけではなく、彼らのまとったG級装備にもだ。
ざわつく周囲を無視して4人はG級クエスト版の前を堂々と居座った。
一通り揉めに揉めてまだ騒ぐSEVENとAshにRikuがため息をついてクエスト版を見上げた。
「・・・でもさこれ・・・」
緊急クエスト何個あるわけ?
緊急と名のつくクエストはG級だけでも掲示板の真ん中を所狭しと張られていた。
「やっぱりこの中から適当に選んで行くのが正解だと思うんだけど・・・」
「ならこの火山のリオレウスに‥‥」
「なっ、Ash昨日森丘でリオレウス狩ったっていってたじゃん!」
「いいじゃねぇか、場所が変わればリオレウスだって違うんだぞ!!」
「・・・いやだからもう何でもいいじゃん・・・」
「何でもいいなら〜」
クエスト版を眺めていたBillyがおもむろに受注書を3つ剥がした。
3人はBillyの突然の行動に思わず口論を止める。
Billyは3枚の受注書を3人の前に突き出した。
「・・・大連続、どうでしょう(・ω・)b」
「お、おおおぉぉぉぉっ!?」
受注書にはそれぞれ密林のイャンクック、ガノトトス、リオレイアの文字があった。
「・・・大連続っていうか、単に密林の緊急クエスト3つじゃねぇか?」
「・・・もしかしてそれを無理やり大連続と称して狩りに行くの?
そんな急にアイテムとか回復薬グレートなんてもらえないと思うんだけど・・・」
そもそも大連続狩猟と認定されるのは規定時間内にそのランクのハンターが討伐できるであろうモンスターを組み合わせて1クエストとするのだ。
単体討伐と指定してあるのであれば、そのモンスターは単体でも十分強いということの証明となる。
そんなモンスターを1回に3頭も相手をするとか、体が持たない。
「どうせ密林いくなら1回に1頭より数頭狩ってきた方が手間は省けるじゃん。
ここに滞在できるの2週間しかないんだし」
なんていう職人のごり押し術。
AshとRikuは心の中で思った。
「1人1頭じゃなくて4人で3頭だから問題ないでしょ。そのうちの1匹はクックにしたし」
手続き面倒だから、1人ずつクエスト受注して現地集合ってことで。
手早く受注書をRikuとAshに押し付け、早速Billyはリオレイアのクエスト申込みをしに受付に向かう。
「Billyはん俺も―!」といち早くその場に馴染んだSEVENがBillyの後を追った。
「雪山行ってビリーダムっぷりがさらに進化してんじゃねぇか」
Billy精神的強さもう上げる必要ないだろ。
ていうか人としての許容量カンストしてんだろ。
呟くAshにRikuも項垂れた。
「もう考えるスケールが神がかってて私ついていけないんだけど。
てうか私受注すんのクックとか・・・Ash変えて」
「嫌だ。なんでそんな報酬低いやつ・・・。・・・お姉さーん俺これ受注するわ」
「な、ちょAshないわー!!」
一番報酬の高いBillyについていったSEVENは物凄く賢かった。
野生児かと思えば、実に計算高いSEVENの処世術の高さにはいつも驚いている。
これが天然か・・・。
なんだかんだでBillyに乗せられ、見かけの大連続狩猟にAshとRikuはまんまとのせられてしまった。
手続きを行っている間に、なんとなく3頭討伐分の準備を整え、4人は密林行のネコタクに乗ったのである。
乗ってからはめられたと気づいた時にはすでに目の前に密林特有の熱帯樹が覆い茂る林が遠くに見えていた。
++++
「・・・じゃ、旦那さん気を付けてニャ!」
「おぅ、ありがとうな!」
初めて来る密林のど真ん中に下ろされ、SEVENは眩しい笑顔でアイル―に手を振った。
普通の人なら不安で押しつぶされそうな環境の中、SEVENの目には新しく映る風景に心躍らせていた。
「密林ヤベェ!!
久しぶりすぎてwktkしてきた!!」
そういえばユクモ村周辺には本格的なジャングルなかったから密林に来るのは久しぶりである。
降り注ぐ太陽の光。高い岩から無限に降り注ぐ滝。何重にもかかる虹。
背の高い熱帯樹に覆い茂る熱帯の鮮やかな植物。
周囲を探ればランポスやヤオザミもちょこちょこいるようだ。
活気ある植物達がSEVENを歓迎する。
しばらく過酷な環境に耐えながら生きる死の大地砂漠にいたSEVENにとって密林は生が溢れる場所のように見えた。
新鮮な空気を胸いっぱい吸い込んでSEVENは大きな伸びをした。
なんて気持ちがいいんだろう。
「さて、クックと魚とレイアかー。
まぁ、なんでもいいから早く戦いたいなぁ!」
元来の勘を頼りにSEVENは密林を探索し始めた。
勿論SEVENには誰かと合流しようという気は初めからない。
「いってらっしゃい、旦那さん」
「ん、ありがと」
洞窟の目の前でBillyはネコタクに下ろされた。
騒がしい外と、逆に静かな洞窟内。
その静寂を竜の咆哮が大きく破った。
「この中か」
ハンマーを担ぎなおして、Billyは洞窟内を走り出した。
久しぶりの雪山以外の狩場は、当たり前だが、足場が固くてしっかりしている。
地面を蹴って跳ね返る感触を楽しみながら、Billyは地を掛ける。
そして、いくつかの小さな穴を潜った先に天から光の指す大きな空洞にたどり着いた。
その光を浴びるように陸の女王が鎮座していた。
あまりにも神々しいその光景に一瞬目を奪われ、しかし職人は瞳の後ろに強い闘志を燃やした。
目視でも金冠相当のリオレイア。
相手にとって不足なし!
ゆっくりとその大きな頭がBillyを見下ろす。
Billyもゆっくりとハンマーを構えた。
リオレイアの咆哮。
ビリビリと震える振動を断ち切るようにBillyはまっすぐリオレイアに向かって走っていった。
++++
「着いたニャ、この辺で降りるニャ!!」
「ようやくついたか、あんがとな」
ネコタクの台車からおりてAshは大きく伸びをした。
熱帯樹林の森が広がる先に大きな湖が広がっている。
そういえば、ガノトトスとかいたんだったな、とAshは何気なく湖の傍に近寄った。
湖の底まで見える、透き通った綺麗な水。
思わず覗きこんで手を付けてみた。
「おぉ、冷たいじゃん」
蒸し暑く湿気の多い密林にひんやり冷たい湖の水。
あまりにも気持よく顔でも洗おうかと思った瞬間、後ろに何かの気配を感じた。
「何奴!?」
すぐに振り返り、Ashは背中の太刀に手をかける。
ファンゴとは違う殺気に振り返るとそこには、人の形をしたディアブロスがこちらに向かって突っ込んできていた。
「チッ、気づかれたか・・・。
それでも止まらない、落ちろAsh!!」
「ちょ、・・・ちょっとまて!!」
大きな槍が脇腹を掠って急所は外れた。
しかし、大きな盾がAshの体ごと後ろに押し込む。
Ashの体が大きく宙に浮く。
しかし、浮いたのはAshだけじゃなかった。突進したディアブロス、もといSEVENも一緒に中に踊りだす。
「ばっかじゃねぇのぉぉぉぉ!!!」
Ashの叫びも虚しく、2人は盛大に湖に飛び込んだ。
水飛沫だけが後に静かに跳ねた。
重装備の2人が水の中に入るとそれは命にも関わることだ。
水を吸った装備は倍重くなり、武器の重量を合わせると確実に体は沈んでいく。
驚くべきは、陸から2mほどしか離れていないのに既に足の届かないレベルまで水深があるということだ。
・・・ヤベェ。
ハンターになった頃武器と防具を持ったまま水に入る訓練はしているものの、それでも水の中でというのは独特の動きにくさがある。
すぐに空気を求め、Ashは水面向かって泳ぎだした。
「ぷはっ・・・本当信じらんねぇ・・・。いきなり深くなるこの湖も信じられないけど・・・」
突き落とした張本人が浮いてくるのを少し待ったが、いつまで経っても上がってくる気配がない。
「・・・・あれ?SEVEN?」
少し心配になって水中を見ると、突き落とした張本人は底まで沈んでいる最中であった。
本人は一応浮き上がろうとしてるつもりらしいが、まったく浮き上がる気配がない。
重量のあるディアブロス装備にこれまた重量のあるランスを持っているのだ。
「・・・あの馬鹿やろう・・・」
Ashは仕方なく水中に戻った。
陸に戻ったら鬼神切りでもおみまいしてやらないと気が済まない。
夏休み中、とあるきっかけで水中戦を体験することになったAshにとって水の中を防具をつけて泳ぐというのは久しぶりの感覚で苦になるものではなかった。
SEVENは水の底でなんとか浮き上がろうとしているが上手くいかず首を傾げている。
(・・・ったく、ロクに泳げもしないのに突っ込むからこんなことになるんだ・・・)
流石重い装備を身に着け、過酷な砂漠を常に走り続けていたからか肺活量はそれなりにあるらしく、長い間水の中にいたわりにSEVENはまだ元気そうだ。
底までついたAshに笑顔で手を振る。
Ashはイラッとしたが、ここで喧嘩しても得なことは何もない。
Ashはとりあえず、SEVENの持っている槍と盾をよこすようにジェスチャーした。
しかしSEVENは頑として譲らない。
ハンターたるもの、フィールドで自分の武器を手放すことはしたくないのであろう。
しかし、こんな状況。少しでもSEVENの身の回りを軽くしないと地上にはいけない。
(・・・テメェ、もう少し自分の状態を考えて・・・)
殴ってでも武器を奪おうと思ったAshにSEVENが何か見つけたようにAshの後ろを指差した。
(・・・あ?)
騙されねぇぞ?と思いながらも背後に首をめぐらすとそこには・・・。
大きく口を開けたガノトトスがこちらに向かって真っすぐ泳いできている最中であった。
しかも水中となればガノトトスも凄い早さだ。
(・・・な!!!)
このタイミングで、ガノトトスだとぉぉ!?
この距離ならAshは何とか避けられるが、SEVENは泳げない。
どうしようか迷っている間も、ガノトトスはみるみるこちらに近付いている。
(・・・SEVEN、逃げ・・・)
慌ててSEVENを見ると、焦るAshとは対照的に目を輝かせて、槍を構えている。
こいつこの状態で戦う気かっ!?
しかし、SEVENが地上に戻れなければどの道SEVENの負けは確定だ。
Ashは考えた。この状態でSEVENが地上に戻る方法・・・。
・・・あ、そうだ・・・。
AshはSEVENに目とジェスチャーで訴えた。伝わったのかSEVENがグッと親指を上げる。
・・・本当に分かったのだろうか。と思いつつAshは水面に戻る。
SEVENはガノトトスの攻撃に備え、盾を構えた。
周囲の水がガノトトスに吸い込まれているのが分かる。
・・・こい!!
吸い込まれた水が圧縮された水鉄砲となり、SEVENに襲い掛かった。
吐き出される水圧に、耐えられなくなったSEVENの体が、水中に投げ出される。
(・・・浮いた!)
SEVENはにやりと笑った。
盾の角度を水の流れに逆らうように当て、上にいく水の流れに乗せる。
上に行く水流に乗って、SEVENの体は大きく浮いた。
しかし水面まではまだ遠い。
水流が弱くなればSEVENの体はまた沈んでいく。
こちらを見ているガノトトスにSEVENは挑発的に笑った。ついでに水の中でステップのダンスを踊る。
ガノトトスがSEVEN向かってつっこんでくる。
SEVENは盾を構えた。
ガノトトスがSEVENに突進する。
その衝撃でSEVENの身体がぐんぐん水面に近付いていく。
・・・あと少し。
「おらっ、鳴れ!!」
キィィンと地上で高周波がなった。
その音に驚いたガノトトスが、水面に向かって泳ぎだす。
SEVENはそのヒレに捕まった。
大きな水飛沫と共にガノトトスとSEVENが地上に飛び出した。
「みゃおぉぉぉーーーん!!!」
地上で音爆弾を投げたAshがSEVENの姿をみて、息をついた。
成功して良かった。
ガノトトスの体から離れてSEVENが浅瀬に着地する。
「ヤッベェェ・・・死ぬかと思った〜〜!!!
水中マジ地獄!!」
ざぶざぶ上がってくるSEVENにAshがくわっと怒鳴った。
「一回死んで来いバカが!!無駄な体力と時間を喰ったじゃねぇか!!」
「でも楽しいね水中戦!」
「今のどう考えても水中戦とは言えないだろっ!?事故だ事故!」
「水中戦やってみたいな一回・・・」
「泳げないくせに水中戦とかいうな。まずプールで泳ぐ練習してこい、それからだ!」
「あ、そういえば、Ash」
「なんだ?」
「・・・Billyはんの秘密知りたくない?」
「・・・は?」
唐突だが、それは凄く魅力的な言葉であった。
Ashは一瞬怒りを忘れてSEVENを見た。
「・・・あの暴虐の限りをつくすBillyはんなんだけどね・・・実は・・・」
「・・・・実は?」
「泳げない」
「マジでっ!?カナヅチなのBillyっ!?
うはーwwウwケwるww」
爆笑した2人に天罰よろしくガノトトスが横から突っ込んできた。
++++
「・・・えっと、旦那さん・・・。ここで下しても、いいかにゃ?」
「いいわけないだろ!
といいたいところだけどまぁ良いことにしておくわ。
探して移動する手間が省けたしねぇ」
Rikuは苦い顔をしてネコタクを下りた。
アイル―はすぐに台車を転がして逃げるように去っていった。
Rikuは腰に手をあて「うーん」と頭を掻いた。
自分は運がいいのか、悪いのか。
どちらかというと悪いような気もするが、いやでもこの場合どの道戦わなくてはいけないし・・・。
いや、でも・・・。
色んな思考が頭の中をぐるぐる廻る。
いきなり目の前にモンスターがいる場所で下されるとかもう少し空気読もうぜ。とか。
Billyはんも大連続するなら、せめて単体クエストが良かったなぁとか。
G級クエストにイャンクック1頭とかおかしいと思ったんだ。
Rikuの目の前には3頭のイャンクックが闊歩していた。
G級イャンクック3頭同時討伐とか普通に聞いてないんですけど?
オワタ\(^ω^)/
鷹見のピアスのおかげでこの地の大まかな状態と仲間の場所が把握できる。
どうやら皆ばらばらに下ろされたらしい。
受注したクエスト通りBillyがレイアと、AshとSEVENがガノトトスと交戦中。
誰もサインはおろかペイントボールをつけないということは手助けはいらないということだろうか。
見知らぬ地で果敢なことだ。
Rikuはポーチからこやし玉2つを取り出した。
「まぁ、勝ちゃいいんだよっ、てな!」
こちらに気づいたイャンクックにこやし玉を投げつける。
最初の一発が強烈過ぎたようでイャンクックは悲鳴をあげた。立て続けに別の奴にこやし玉を投げる。
3頭のイャンクックがそれは騒がしいものである。
かしましスリーを見ているようでRikuは顔をしかめた。
3頭がこちらに気づいたところでRikuは背中の弓を取り出した。
「・・・さて、とっとと討伐しないとねぇ」
バラバラに討伐しているとなれば、今日の討伐は早めに終わるだろう。
火力があまりない弓に加え、3頭のクックとなれば少し骨が折れる。
他の3人が早く終わり、自分だけ居残りというのは正直避けたい事態だ。
逃げるイャンクックは無視してRikuは雷を宿す矢を余すところなくイャンクックにお見舞いした。
・・・そういえば、こやし玉投げて逃がしたは良いけど、他と合流したら少し厄介かも・・・。
・・・‥。
・・・まぁ、いっか。
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