吐き出される火球を走りながら避け、そして一瞬できた隙に一撃スタンプをかました。
小さく悲鳴をあげるリオレイアに続けて横に一撃を喰らわせる。
しかし、流石G級、流石最大金冠サイズといったところであろうか。
リオレイアは大きく頭を振って大きな翼を羽ばたかせた。
Billyは風圧に押され、その場にとどまる。
リオレウスでなくてよかった。ここで大火傷を負うところである。

かざした手をおろし、リオレイアの行く先を目で追う。

リオレイアは空中で羽ばたき、後ろに下がる。そしてふわりと地面に着地した。
瞳に怒りはない。静かにBillyを見下ろしていた。
まだ見定めている目だ。
彼女の目に自分はその辺にいる雑魚モンスターとしか映っていない。
Billyも冷静な視線でリオレイアを見つめた。
・・・結構良い一撃だと思ったんだけど、まだ序の口のようだ。
雪山という条件の悪い中、様々な野生のモンスターと戦い力をつけてきたつもりであったが、世界は広い。
少し過酷な状況だったというだけで強くなった気がしていただけ?
それともこのリオレイアが別次元で強いだけ?
G級とは上位クラスより上のモンスターを格付けるもの。G級の強さの上限はない。

Billyはキュッと唇を結んだ。

どこまでいけば、強くなれる?
まだまだ遠く、もっともっと、果てしなく
この胸にくすぶる全てが燃え尽きるまで

まだ、足りない
もっと、上に・・・

目指す目標もないのだけれど、自分の中で満たされていない何かがある。
それがもっと欲しいと自分の中で叫んでいる。
それは、このリオレイアを倒したいと、倒せると

自分でもよく分からない感情にとらわれながらBillyはハンマーを握った。
巨大なリオレイアを前に、圧倒的な実力を見せつけられ、仲間も来るか来ないかという状態で、口元には笑みさえ浮かべBillyは呟いた。

「・・・ゆっくり、いきましょうか」

負ける気が、しない。

++++

「うおぉぉおぉぉぉセブントリニティアターック!!」
「馬鹿、湖向かって突進するな!!俺は助けないからな」
「やだなぁ、槍一筋で何年走ってきたと思ってんの!!
止まる方法くらい心得て・・・おっ?おおっ!?」

湖一歩手前でブレーキを掛けたSEVENだが、どうやら湖近くの土が一連のガノトトスの件により湿ってぬかるみになっていたらしい。
地面に力強く踏みとどまった瞬間、地面が大きく沈み、そのままSEVENの体は湖に滑りこんだ。

「うそん!!」
「SEVENッ!?」

Ashもまさか落ちるとは予想しておらず、焦って名前を叫んだ。
流れるように湖に落ちていくSEVEN。
あっという間に彼の体は水の中に消えていった。

「え、うそだろ・・・マジかっ!?
SEVENおい!!」

背後にはガノトトスガいて、こちらを無視することはできない。
のっそりと、Ashを見据えて今にも攻撃しようとしている。
顔が大きく上に仰け反る。水鉄砲か。
射線を避け、Ashは湖に駆け寄った。
これで、沈んでいたらシャレにならない。

「SEVEN大丈夫かっ!?
・・・ぐはっ!!」
「はぁぁぁぁ、足着くところで良かったぁぁぁ!!!
死ぬかと思ったぁぁぁ・・・。
・・・・あれ、Ash?」

どったの?

覗きこんだAshと出てきたSEVENのタイミングと位置が同時だったらしく、Ashが顔面を抑えて、のたうち回っていた。
SEVENはというと根からの石頭でさほどダメージはない。
SEVENはよいしょと陸に上がり、防具に入った水を出す。
また少し重くなってしまった。
少し顔をしかめてから転がっているAshを見た。

「・・・Ash、大丈夫?」

首を傾げるSEVENにAshは鼻を押さえながらよたよた起き上がった。

「・・・て、テメェ・・・。これで顔に傷ついてたら頭蓋骨粉砕骨折の刑だからな」
「まぁ、傷ついてたって問題ないんじゃないっ!?
むしろ男が上がっていいんじゃないの?どんまいどんまい!!」
「それは切り傷限定で、打撲や骨折は例外だ!!」

・・・切り傷ならありなのか。

SEVENは内心そう思ったが突っ込まないことにした。
Ashの厨二病は末期でもう治らないとこの前も仲間内で悲しんだところだ。

何とか復活し、2人は湖をみた。
敵も一度水の中に戻り、水中からこちらの様子を伺っている。
水中に視線を向けながらSEVENは先程から気になっていた疑問を投げかけた。

「・・・ていうか、なんでAsh太刀なの?
大剣は?スラッシュアックスはどうしたの?」
「あぁ、スラッシュアックスはこの前のリオレウス戦で大破して、・・・大剣は今回持ってこなかった」

代わりに雷を帯びた太刀がAshの背中にある。
炎属性に拘る彼には珍しいことだ。

「へぇ、何の心変わり?」
「Sakuraが寂しいから自分を思い出すために太刀を使ってと・・・」
「・・・・いや、Ash、妄想とかいいから。聞いてないから」

大体それ、Sakuraの太刀じゃないじゃん。

「うるせぇよ」

AshはMHDの中でも狩りの経験が一番浅く、無理矢理上位のクエストに付き合わせ本人の実力に伴わずG級までのし上がった経緯がある。
武器選びも色々試してからの大剣というものではなく、とりあえず最初に使用した武器が大剣という理由でずっと使っていただけだ。
ユクモ村にきてからスラッシュアックスという別の武器を使用するようになったが、それ以外の武器はほとんど手をつけていない。
妹のSakuraが太刀を使っていて、その練習には少し付き合っていたようだが・・・。
Ashと太刀の繋がりなんてその程度だろう。
ユクモ村ではまだG級クエストを取り扱ってはおらず、作れるスラッシュアックスも上位のものまで。
今回G級モンスターを倒すにあたってスラッシュアックスは少し火力不足だ。
・・・だからって、なんで太刀?
ポッケ村の時から使っていた馴染んだ大剣があるはずだが・・・。

ガノトトスが水中から飛び出してくる。
その巨体を避け、2人は着地点まで走る。
足が長いガノトトスを攻撃するためにはどうしても足元が中心となる。
ガノトトスの攻撃を器用にガードするSEVENに対して、Ashは何やら苦戦しているようだ。
切り下がりの着地点を間違え、ガノトトスのヒレに当たりAshは大きく吹き飛ばされた。

「・・・チッ・・・」

長い細身の太刀を背中にしまい、Ashは舌打ちした。
G級ガノトトスの一撃は近接防具でも中々痛い。Ashは回復薬グレートを飲み干した。

Nobutunaがよく太刀は繊細な武器だという言葉を理解した。
大剣は力を加えれば加えるほど威力に繋がった。
スラッシュアックスもそのように使えていた。
しかし、太刀は力だけではどうしても切れないことに気が付く。
素材の強度、刃の角度、力加減・・・
全てを計算し振るわなければ、太刀本来の攻撃力を引き出すことができない。

Sakuraが難しいと、Nobutunaさんは凄いといっていたのを実感した。
あの時はよく分からずNobutunaに嫉妬していたが、確かに実際使ってみると難しい。
Nobutunaは素直にスゲェ。だが、Sakuraはやらん。

「ったく・・・こんなことならRikuと変わっておけば良かったぜ・・・」

てっきり大連続狩猟だと思い込んでいたから、自分がガノトトスに当たるとはなんとなく思っていなかった。
イャンクックならば『先生』と呼ばれるほど、初心者向けのモンスターだ。
今回はG級であるが、基本行動は大体同じであろう。
練習するのにガノトトスは少し厄介だ。

Ashが不調なのをみて、SEVENは真面目に戦う気になったらしい。
相手の動きに合わせて盾のガードをうまく使い、隙をみて槍で突く。
ランサー本来の堅実な戦い方。

「・・・あいつ普通に戦えるんじゃん・・・」

ガノトトスが大きく怯んだところで、Ashも走り出した。
いくら使い慣れていない武器とはいえ、SEVENだけにおいしいところをもっていかせるわけにはいかない。

抜くと刃に雷の電気がバチリと光る。
頭でNobutunaやSakuraの動きをイメージする。
姿勢を正し、太刀の刃の角度を正す。
真っ直ぐ、斬る!

予想以上に刃はガノトトスの鱗を滑らかに進んだ。
力はそんなにいれていないはずなのに・・・。
Ashは手に持った太刀を見つめた。

・・・なんだ、これ。

元々切れ味は良かったが、先ほどまでこんなに楽に切れたことはなかった。
Ashは頭でイメージを繰り返す。
長年培っていたハンターの勘と、正しい太刀を扱う時のイメージを常に頭におき、Ashは太刀を構える。
『斬る』という感覚は分かった。
あとはこれをものにするだけだ。

太刀を使いこなせたとき、俺はもう一段階強くなれる!!



リオレウス戦で壊れたスラッシュアックス。
Ashは修理に出すためにリオレウスの素材と共にユートピアの武器屋にいった。
理由を話、武器屋のオヤジに壊れたスラッシュアックスを見せると、やはり顔をしかめた。
『また壊したのか』ユクモの武器屋のオヤジは苦笑して直してくれた。
しかし、ここのオヤジはAshの目をまっすぐ見て言った。

『まだスラッシュアックスを使うつもりなのか?』

Ashが肯定するとオヤジが、鼻で笑った。

『お前はスラッシュアックスを使うべきじゃないな。
モンスターを殴りたいだけなら大剣でも槍でもハンマーでも使っていろ。
でないと、死ぬぞ』

武器屋のオヤジに狩りの何が分かる。そう思った。
その思考もAshの表情から読み取ったのか、オヤジは続ける。

『狩りの最中に武器を失ったらどうなるか?ハンターやってりゃ想像つくだろ』

Ashは顔をしかめる。
それくらい想像できる。

『お前、武器がこうなってどうやってここまで来たんだ?
逃げてきたのか?仲間がいたのか?』

知らせを聞き、駆け付けたギルドナイトに助けられた。

『今回は運が良かったのかもしれない。
それがもし、仲間が傷つき、お前しか戦えない状態にあり・・・・
そこで武器が壊れたら・・・』

その言葉にAshは目を見開いた。

『死ぬのは、お前だけじゃないんだぞ』

何も言えなかった。確かにそうだ。
自分が死ぬのな自業自得だ。しかし、自分のミスで仲間が死ぬことがあれば・・・。
心が重くなる。
壊れたスラッシュアックスを見つめた。
あの時、ギルドナイトが来てくれなければ・・・もしかしたら。

『自分の武器を満足に扱えなくてなにがG級ハンターだ。
よって、お前に与えるスラッシュアックスはねぇ。
他の武器もあるから代わりのやつなら素材と金次第でいくらでも提供するけどな』

試すような視線。
Ashは歯を噛みしめた。
ここで、引きたくない。

壊れた武器の代わりに使用する武器を決めなければいけない。
ポッケ村から大剣をいくつか持ってきているが、今はなんとなく使う気にはなれなかった。
どうしてもスラッシュアックスを使いたい。

何も言わないAshに武器屋のオヤジは奥にあった太刀を持ってきた。

『代わりにこれを持ってきな』
「・・・太刀?」
『これが使えなければ、スラッシュアックスは諦めな』

何故オヤジが太刀を持ってきたのかは分からない。
猟団長のNobutunaの、妹のSakuraの愛武器。太刀に対する認識はその程度だ。
意図は分からないが、その先に答えがあるような気がして、Ashは迷いなくその太刀を手に取った。
Nobutunaが使っているような、綺麗な刀身をしている。
良く鍛えられ、磨かれた証拠だ。太刀のことは詳しくは知らないが、それでも良いものだと分かった。

Ashが素直に太刀を手に取ったことに少しオヤジは驚いた顔をしたが静かに頷いた。
そしてAshは手に持っていたリオレウスの素材を差し出した。

「ここでリオレウス素材のスラッシュアックスは作れるか?」

武器屋のオヤジはにやりと笑った。

『あるよ』
「なら、作って欲しい。
この太刀を使いこなせるようになったら取りに来る」
『俺の自信作だ。手入れを忘れるな』


太刀を使っていれば、NobutunaやSakuraがハマる理由が少しだけ分かる気がする。
太刀は本当に繊細だ。
武器に自分が合わせてやらなければ、その力をすべて発揮することはできない。
これを使いこなせるようになったとき、自分はどのようにスラッシュアックスを使うのか。
その答えはまだでないけれど・・・

「おらぁっ!!」

集中して振り下ろした一撃に、ガノトトスは転倒した。
Ashが調子を取り戻してきたことに気づいたSEVENは槍を構える。
やはりちまちま戦うのは自分の性に合わない。

「SEVEN王家三大奥義の一つ!SEVENトリニティアターック!!」

敵のハラワタ中央突破。
してやったりのSEVENのドヤ顔に、Ashは苦笑した。
自分も、鬼神斬りをお見舞いする時が来たようだ。

++++

こやし玉によって1頭がどこかへ逃げて行くのを見送ってRikuはため息を吐いた。
2頭残ったか。まぁ、仕方ないかねぇ、はぁい。

リスクはあるが、2頭同時に相手にした方がダメージの効率は良い。
立ち回りに気を付けて2頭を同じ視界に収めておけば、楽に倒せる・・・・はずだ。
まぁイャンクックが大人しくそうさせてくれるわけないんだけれど。

こやし玉を当てられた方はすでに強烈な臭いのためかかなり怒っている。

内心色々思いながらも攻撃の手は休めず、続け様に雷を帯びた矢を放つ。
2頭が近くにいれば、拡散矢で同時に当てられ効率がいい。
体力との兼ね合いも考え、Rikuはリズムよく攻撃していく。

しかし、体が軽い。
ヘビィボウガンを使っていた時武器の大きさと重さで身動きがとりにくかったためもあるが・・・。
ステップで火球を避けられるとかユクモ村に行ってからまずなかったことだ。
フットワークが軽いって素晴らしい。
そしてヘビィボウガンを支え続けていたからか、自然に筋肉もついていたらしい。
弓を引くのがとても軽い。

片方のイャンクックの耳が破壊される。

「やっと片方か・・・。
火力がないのが悲しいねぇ」

Rikuは2方向から飛んでくる火球を矢を溜めながら避け、クリティカル距離で放つ。
イャンクックが大きく仰け反った。
十分に力を溜め、イャンクックから少し距離を取る。
上空に矢を構えて複数矢を連射する。

・・・当たれ。

矢は弧を描いて地上向けて力を溜めて落ちていく。
怒りに地団太を踏むイャンクックの頭に曲射の矢が襲った。

「・・・結構いけるじゃん私」

後ろから殺気を感じ、咄嗟に横に回避する。
もう1頭のイャンクックが真っ直ぐに突っ込んでくるところだった。

「危な・・・え?」

怒ったイャンクックがこちらにまっすぐ火球を飛ばしてくる。
・・・ちょ、その連携攻撃ないわぁ!!

なんとか顔を覆ったけど、全身が熱い炎の熱に包まれる。

「・・・っ、熱っ!!」

飛龍の火球には劣るがそれでも火球には変わらない。
もー、やめてよねぇ。
樹海のナルガは火に凄く弱いんだからー。
しかもガンナーとか物凄い打たれ弱いんだから気を付けてよね、マジで。

腕をさすりながらRikuは苦笑する。
イャンクックとはいえG級。
Rikuは回復薬を飲んだ。流石にイャンクックで落ちるわけにはいかない。

それでもRikuの猛攻にイャンクックの疲労は溜まってきているらしい。
他の地へに逃げようと翼を広げて羽ばたき始めた。
Rikuは弓をしまいポーチから閃光玉を取り出す。

「もう少し付き合ってよね〜。
移動すんのめんどいし」

少しの間をおいて、周囲が光に包まれる。
直接光を見たイャンクックは悲鳴をあげて空中から地に落下する。
狩場に閃光玉とか持ってくんなよと、いわれそうだがポーチが開いていたのだから仕方ない。
どんな手を使っても勝ちは勝ちだからねぇ。

「・・・さて、とりあえず1匹は仕留めておきたいよね」

きりきりと頭を狙い最大に力を込めた貫通弓はイャンクックの頭にまっすぐ突き刺さった。
大きな羽が宙に上げられ、イャンクックから悲鳴が上がる。
そして、重力に従い羽も頭も地に伏せた。

「・・・やっと一匹・・・」

息をついて閃光玉の光に当てられ目を回しているもう1頭のイャンクックを見た。
1頭倒したことで少し安心したのか、急に疲労が身体を襲う。
ヘビィボウガンを使って部分的な筋トレにはなったような気がするが、持久力は減っているような気がする。

とりあえず、持久力をつけるためにランニングから始めるか―。と頭の隅で考えながらRikuはもう1頭の討伐のため弓を引いた。

ていうか、そもそも3頭討伐クエストとか1人で、しかも弓でやるもんじゃないと思うんだよねぇ。
受注してからそれを嘆いても遅いんだけど。

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