3日後。


「あの、Tharrosちゃん・・・?」

Sakuraは昨日あたりから疑問に思っていたことを口に出した。

「なに?」
「なんか、最近・・・毒々しくない?」
「・・・・そんなことは・・・ない」

一緒に狩りに行ってもブナハブラを見かけたら即抹殺。
ハンマーは適さないと睨んだのか、次の日は毒付加のある片手剣を装備してきていた。
大量に群がっているときは毒煙玉を容赦なく投げ込み奴らを片っ端から地上に落としていった。
Tharrosは元々どのような武器でも使え、異常状態にもなりこちらとしては言うことはないのだが、最近なんかおかしい。
ボスモンスターを目の前にしてもブナハブラを剥ぎ取っているTharrosに流石にSakuraもおかしいと感じ始めていた。
いつもなら真っ先に切りかかっていくのに。

ボスがエリア移動したところで、新しくわいてきたブナハブラを狩っているTharrosにSakuraは話しかけた。

「どうしたの?
ブナハブラの素材集めてるの?」
「・・・いや、これは・・・。
ごめんなさい。倒してからにするわ」

立ち上がって、ボスのいるエリアに行こうとするTharrosの背中にSakuraは言った。

「集めるなら手伝ってあげようか?
いつも手伝ってもらっているし」

Tharrosは止まって数秒沈黙した。

「・・・・いい。大丈夫」
「・・・そう」

走って隣のエリアに行くTharrosの背を見て、しょげるSakura。
その肩をCarryが叩いた。

「・・・Carry・・・私迷惑だったかな」
「そんなことはない。
自分の力でやりたいんじゃないじゃないかな、Tharrosは。
Tharrosが力を貸してほしいといってきた時に貸せばいい」
「・・・そうだね。
・・・ってCarry・・・何か知ってんじゃないの?」
「何が?」

微笑むCarryにSakuraがむくれた。

「いっつも自分ばっかり楽しんで―!」
「何のこと?
私は何も知らないわよ、Tharrosが頑張っていること以外は」

++++

「飛甲虫の堅殻、甲殻、羽根、麻痺針・・・」

揃った。
これでブナハ一式揃えられる。
比較的どこにでもいるモンスターな上、弱くて素材も手に入りやすい。

Tharrosはそっと家を出た。
なんとなく気恥ずかしくて周囲を見渡し、人の少ない時を見計らって加工屋に近寄く。
加工屋に行くのってこれだけ勇気のいることだっただろうか。
狩場並みの集中力で人の気配を読み、周囲の確認は、完璧、のはずだった。
階段を下りてすぐ、加工屋まであと数歩。
達成感に満ち溢れ油断していたところで後ろから声が掛かった。

「あれ、Tharrosさんじゃない?」
「!!!!」

飛び上るほどびっくりした。
のんびりとしたつかみどころのない声、Rikuだ。
振り返ると、いつものへらへらした笑顔でこちらに手を振っている。
手には食べかけの温泉卵。
気配が分からなかったのは静かに食べていたからか。
Tharrosは言葉が出ず口をパクパクさせただけだった。

こちらの動揺に気づかずRikuはゆっくりこちらに近づいてきた。

「Tharrosさん新しい武器見にきたの?
そういえばBillyさん愛用のハンマーぶっ壊れたって話聞いたけど本当?
確か今の愛用つったら『混沌』だったと思うんだけど・・・
・・・どうやったら壊れんの?
俺理解できんし。まじないわー」
「・・・・っ」
「・・・‥?」

近づいてやっとTharrosの様子がおかしいことに気づいた。
あれ、俺なんかした?

「どしたのTharrosさん?」
「・・・なんでも、ない。帰る」
「・・・‥?
加工屋に用があるんじゃないの?」

今物凄い勢いで行こうとしてたじゃん。
来た道を戻ろうとするTharrosに追い打ちをかけるように後ろから声が掛かった。

「おぉ、そこにいるのはTharrosの嬢ちゃんじゃないかぁ?
素材は集まったけぇ?
Tharrosの嬢ちゃんならパパっと集まるじゃろ」

ビクッとTharrosがまた飛び上った。

「・・・いや、えっと・・・」
「なんか新しいの作るの?
武器?防具?」
「・・・あの・・・」

どうすればいいか分からなくなってきた。
色んなことに驚きすぎて頭はもう真っ白だ。
完全にフリーズしているTharrosにRikuは首をかしげるばかりだった。
とりあえず加工屋には用がありそうだったので背中を押す。

「見るだけタダっしょ」
「・・・‥。」

Rikuに背中を押され加工屋の前まで連れて行かれる。
加工屋は待ってたとばかりに話し始めた。

「前言ってたブナハなんじゃが・・・」
「あ、ちょっ・・・」

言葉を遮る前に加工屋の言葉はすらすらとでてしまった。
Tharrosはちらりと後ろにいるRikuを見た。

「Tharrosさんブナハ作るの!?」
「・・・・っ」

バレてしまった!

ブナハは女の子の装備の中でも可愛いと評判の人気装備。
防御やスキル重視をしていた自分は初めから目もくれなかった。
FIVEやSakuraが着ていて可愛いとは思っていたが自分が袖を通す日が来るとは・・・。
漂う今更感、可愛い子が着る装備・・・
などなど自分の中で偏見がつもりにつもっていざ作るとなると気恥ずかしさが先にきてしまっていた。
しかもRikuに知られるとか!!
なんかもう恥ずかしさとか屈辱感とか色々なもので死んでしまいそうだ。
顔が火山にいるときのように熱い。

Rikuはなんて思うのだろうか。
『暴虐女帝』と呼ばれる自分に似合わないと思っているのだろうか。
『Tharrosさんがブナハとかwww超ウケるwwないわーwwwまじないわーwww』
そこまで想像できてしまい泣きたくなった。

こんなもの作ろうと思わなければ良かった。


「へぇ、いいんじゃない。
似合うと思うよ。
頭はハット?カチューシャ?
俺としては防御捨ててもカチューシャ派だねぇ・・・はぁい」

「・・・‥え?」

予想以上の食いつきをみせたRikuにTharrosは驚いて顔を上げる。
軽い足取りで店に飾ってあるブナハの頭見本を手に取りTharrosの頭に乗せてみる。

「うーん、どっちもいい感じだけど・・・
ツインテならカチューシャだな・・・。
蝶に合わせて髪を結ぶと・・・・うん、神の予感」
「・・・・。」

「色は・・・そうだねぇ。
ザザミも似合ってたし下手に変えるより原色でも十分いいかも‥‥」

真正面から真剣に見つめられてTharrosの顔はこれ以上にないほど熱くなった。
鼓動が収まらない、息が苦しくなる。
Rikuはそれに気づかず何度かハットとカチューシャを付け替えて真剣に考察を繰り返していた。
Tharrosは何もできずただ立ち尽くすしかなかった。

数分試した挙句、やっとRikuはTharrosを解放した。

「結論:カチューシャは神。
まぁTharrosさんが着るんだし、防御面でも劣るから好きな方にしたらいいと思うよ」
「カチューシャにする!!」
「・・・え、あ・・・そう?」

凄い勢いで言われて流石のRikuもびっくりした。
otk魂にのっとって我を忘れて真剣に考察しただけだが今思うとまずかったかもしれない。。
一歩間違えればセクハラになり、BillyとTharrosとGoodmanから鉄槌を喰らう羽目になる事実に気づきRikuは自分の行動を反省した。
気づいた瞬間肝が冷えた。
Tharrosの様子を見ていると問題はなさそうだが・・・。
愛の盲目性は時として人を殺す。

「えっと、なんか急にごめんね?
驚いた?」
「そんなことはない」
「足りないものある?
なんなら手伝おうか?」
「問題ない」

Tharrosは加工屋の前に出て鞄を差し出した。

「一番いいブナハで頼む」
「Tharrosさんかっこよすぎるでしょww
マジ惚れるわぁ」
「・・・・え?」

驚いてRikuの方を見れば、Rikuと目が合う。
Rikuは笑って首をかしげるだけ。

「・・・ん?」

加工屋は鞄の中身を確かめて返事をした。

「あいあい!」


その後一通り武器を眺めてからRikuと別れた。

『ブナハできたら着てきてよね〜。
かなり似合うと思うよ。はぁい』

Rikuの言葉が頭の中から離れない。
気づくと顔の熱も少し冷めてきた。
夕方、ユクモに吹く風が頬に心地よい。

結構ためらっていたブナハだが、今は少し着てみたくなっていた。

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