勝負の終わりを見極め、太刀を背中の鞘にしまう。
ふぅと大きな息を吐くと白く煙のように広がっていく。
後ろで大きなモンスターが地に伏した。

それを眺め、静かに目を閉じる。

そういえば、この行為もNobutunaが言ってるのを真似たもんだっけか。
倒した相手に尊敬と鎮魂の念を。
Nobutunaのしていることを真似るのは癪だがその行為はとても大切なものに思えて今でも続けている。

時間と共に凍りつくモンスターの体から必要な部位を剥ぎ取りHidetunaは立ち上がった。
ユクモ村にに来てから1ヶ月。
最初こそNobutunaに装備は借りたが、今では自分のものは自分で調達し、上位クラスのモンスターも何とかソロで倒せるようになった。
氷と同化していくアグナコトル亜種をもう一度見てHidetunaはキャンプへ歩く。

次はどこへ行こうかな、なんて考えて。

++++

「おう、ヒデくんおかえり〜」
「どうしたその傷、誰にやられたんだ?お兄さんにいってみなさい」

集会場に戻るといわゆるレギュラーと括られる3人、Nobutuna、jack、Faltが揃っていた。
Hidetunaはあからさまに嫌な顔をして、余分な道具をボックスにしまう。
無視しているにも関わらずjackとFaltが騒いでいてこの上なくウザい。
本当にこいつらなんなんだ?
帰ろうにも彼らの横を通らなければ集会場を出る事もままならない。狩りのあとでお腹も限界に減っていた。
男2人の自宅に食べ物なんて用意してあるはずもなく・・・大体同居人がここにいるわけだし。

「・・・・。」

Hidetunaは長い長い葛藤の末、彼らと同席することにした。
どうせ別の場所に座っても結末は同じであるし。

「ユクモのモンスターには慣れた?」

ウエイトレスに食事と飲み物を注文し、席につく。
よしよし、とjackとFaltがHidetunaを笑顔で迎えた。

「まぁ、動きさえ分かれば大したことないな」
「ったくこれだからG級ハンターはつまんねー。
俺らが手取り足取り腰取り教えてあげようと思ってたのに」
「男相手に腰取りってどうなん?」

Faltの下ネタにも動じず返すことにも慣れてきた。
なんていうか、会うたびに酷くなっているようだが気のせいか。
運ばれてきたビールを煽り、大きく息をつく。
狩りの後はまずこれに限る。

「しかし躓かず上位の最終ランクまで一人で上がるなんて確かに面白くないなぁ」
「あんたらの経歴は知らないけど、これでも色んな地方回って柔軟性はあると自負している。
それに最初にジンオウガを見たからな」
「これだから出来る子はー・・・ねぇ、ノブちゃん」
「・・・ん?‥‥あぁ」

兄も兄で1人で酒を楽しんでいて、こちらの会話など耳に入ってないようだ。
2人の時はどうなのか知らないが、この兄弟人前で中々会話をしようとしない。
恥ずかしいのかなんなのか。微笑ましいが、少しつまらない。
少し酔いが回ってきたのかHidetunaも少し雰囲気が柔らかくなってきた。
勝手に広げてあるつまみに手を伸ばす。

「この辺気候が良いからかなんなのか、ちょっとモンスター弱くないか?」
「まだG級モンスターが確認されてないくらいだからなぁ。
ちょいちょい裏クエストで強いの出てきてるけど」
「平和でいいじゃないか」
「おいおいNobutuna」
「ハンターたるもの上を目指さなくてどうすんの。いったれHidetuna!」
「何故俺に回すし」

元々Nobutunaはこんなんだし、今更いうことなんてない。
それが良くも悪くも彼なんだから。
こんな性格だから今でも仲間をまとめてハンターやってること自体、俺から見れば俄かに信じられない事実なのに。
2瓶空にして、新しく注文する。
いい感じに酔ってきたところでNobutunaと目が合った。

「そういえばHidetuna、いつまでここにいるんだ?」
「ん?・・・そうだな・・・」

ユクモ村にいた時は顔を見せて2,3日で出て行った。
今回初めてのユクモ村だということでこの辺のモンスターを狩りつくすまで居候するとは聞いていたが・・・。
聞けば上位もそこそこまで来ているらしいし、出て行くのはそろそろだろう。

「大体、主要モンスターは狩りつくしたし、明後日にでも出発するか・・・。
なんかモガ村のほうでG級クエストの受注が始まったっていうし・・・」

その言葉にNobutunaよりもjackとFaltが声を上げた。

「えぇぇーっ!?
もう行っちゃうのHidetuna!?もっとゆっくりしてこうぜ〜」
「まだメンバー全員とまともに宴会してないだろ?」
「別にする必要ないだろ。
ていうか俺1ヶ月近くも滞在して居る中でなんで全員が1度に集まる機会がないんだよ。
たった9人だろ?自由過ぎんじゃないの?大丈夫かこの猟団」
「まぁ何事も自己責任ってことになってるからなぁ」
「・・・ちょっとそれとこれとは違うと思う」

そういや最近ミスター見てないな。
半月くらいならまだマシだろ。前、半年ほど見かけなかったぞ。
なんて会話も聞こえた。
そういえばHidetunaも彼らがユクモにいた時代、ある数年間彼をみた記憶はなく、ユクモ村ですれ違った時まだこの猟団にいたのかと驚いたくらいだ。

「そんなわけだNobutuna。
余ったアイテムはボックスの中に残しておくから勝手に使ってくれ」
「はいはい、ありがと」

簡単に夕食を済ませたHidetunaは立ち上がりさっさと自宅へ帰っていった。

「えーヒデちゃんもっと飲もうよ〜」
「ヒデちゃんの本気はそんなもんじゃないでしょ〜」

jackとFaltが声を掛けるが振り向きもせず、Hidetunaは集会場の暖簾を潜っていった。

「お前ら構いすぎだっつーの」

呆れてNobutunaが笑い出す。

「だって俺らには弟いないし〜?
ノブちゃんが可愛がってあげないから俺らが代わりに可愛がってるわけ」
「いい感じの太刀使いになってて良かったねぇ。
これで変な後ろめたさも取れた?」

jackの不敵な笑みにNobutunaは目を丸くした。
そんなことは思っていなかったが・・・いや、そう言われれば少し思っていた時期もあったけれど。

「・・・・よせやい」

Nobutunaは苦笑して少し強いお酒をぐいっと煽った。

「良い青春してるじゃないのチミらぁ!」

ヒック!といつもの調子で上から声が振る。
Nobutunaの苦虫を噛み潰したような表情に瞬時に変わった。
いつもの調子でギルドマネージャーがカウンターから呼びかける。

「Hidetunaくんはまだティガレックス亜種と対峙してないようじゃのぅ。
最近クエストに上がってなかったからね。
そんな彼にわしからのプレゼントじゃ、ほれ。
ユクモ村に来たからには一度倒して帰って欲しいものじゃ」

ギルドマネージャー直々のクエストなんて心底いらねぇ。と言外に投げ飛ばされた受注書に目をやる。
jackとFaltも覗き込んだ。

「ティガレックス亜種2頭・・・」
「どうやらそいつらが今火山で暴れとるらしいのよ〜。
このままじゃ火山の採掘にも影響でるからチミらでパパッと退治してほしいわけ。
なーに、簡単じゃろ?」
『・・・・。』

実際に倒せないこともないだろうが、卵がなくなったから渓流でガーグァの卵取ってきてほしいの、簡単でしょ?と同列の軽さで頼まれても困る。
こちとら命がけなのだ。

しかし専属ハンターである以上ギルドマネージャーのいうことは絶対。
Nobutunaは大きなため息をついた。
さして理由もないが、ティガレックスは苦手だ。

「・・・分かったよ。
・・・そういうわけでjack、Falt・・・明日大丈夫か?」
「あぁ、問題ない」
「了解したよ、Nobutunaさん!」

そういって受注書に2人はサインする。Nobutunaもその後に名前を連ねた。
残りのあと1枠・・・。

「勿論ヒデちゃんも来るんでしょう?」
「・・・声は掛けてみる」

ため息をつきながらポケットに受注書を入れるNobutunaを観察しているだけで面白くて、jackとFaltは顔を見合わせてこっそり笑った。

晩餐会はこれでお開きになった。帰り道Faltがふと気が付いてjackに問う。

「jackさん、そういえばさー。
俺もモガ村でG級クエスト受注できるっつーんで少し気になって調べてたんだけどさー」
「うん」
「モガ村でもティガレックス亜種受注できるんだって」
「へぇ・・・」
「てかモガ村自体ユクモの近くだからこの辺のフィールドのクエストも受注できるみたいよ」
「・・・そうなの?」
「そう、みたいよ?」

だから、わざわざここで倒していかなくてもいずれ対峙することになるとは思うけれど。
・・・まぁどちらでもいいけど良いけど、兄弟仲よ、美しくあれ!

++++

「ただいま」
「おかえりー」

家に帰ったとき、返事が返ってくるというのは1人暮らしが長い者からすればとても新鮮なものである。
Hidetunaはすでに落ち着いており、太刀の手入れをしていた。
Nobutunaは武器と防具を脱ぎ、その辺に掛けてから話を切り出す。

「Hidetuna、明日行きたいクエストとか決まっているか?」
「いや別に」
「さっき、ギルドマネージャーから1つクエストを頼まれたんだが・・・
一緒にいかないか?」

Hidetunaの手が止まりNobutunaを見上げる。

「クエストの内容は?」
「ティガレックス亜種。・・・お前まだみたことないだろ」
「ティガに亜種がいるのか・・・」

少し驚いたようにHidetunaがいう。

「黒轟竜。攻撃力とバウンドヴォイスが厄介だな。
・・・といっても、それだけだ。行くか?」
「・・・行く」
「決まりだな」

受注者の最後の欄にHidetunaの文字を書き込む。

「・・・jackとFaltは帰ったか?」
「・・・?あぁ一緒に集会場を出たけど・・・」
「・・・そう、なら温泉いってくる」

本当に苦手なんだとNobutunaは苦笑する。
Hidetunaが出て行ったあとNobutunaはふとHidetunaの太刀を見た。
Nobutunaから見れば太刀の研ぎ方が不十分に感じる。
ここで手を出すのも余計なお世話かと思うが・・・。

「まぁ、たまにはいいか」

陽気な口笛を吹きながら奥から高級なデプスライト鉱石を主軸とした砥石と取り出し、Hidetunaの太刀をもつ。

「軽く研いでおこうかねぇ」

++++

次の日。
早朝に集会場に集まった4人はネコタクに乗り火山へ向かう。
ひとしきり騒ぎ疲れてひと眠り。ぼんやりと目が覚めた頃には灼熱の大地の中をネコタクは走っていた。
既に見慣れた地となったが、いつ来ても同じ景色ということはなく、圧倒的なスケールの灼熱の地に目を奪われる。

「旦那さんついたニャ」
「あぁ悪いn・・・うおっ」
「ご武運を祈ってるニャ!!」

到着を告げ、アイル―達は乱暴に台車をひっくり返し、火山の大地にHidetunaを投げ出した。
今更どうとは思わないが、ちょっと乱暴すぎやしないか。
やけに、そそくさと帰っていくなと思いながら背後を振り返ると、火山の奥にマグマに照らされ浮かび上がる黒い巨大な影が見えた。
少しドキリとしながらも努めて冷静にクーラードリンクを飲む。
あれが・・・ティガレックス亜種。

背中にある太刀の柄を握り位置を確かめる。
まだ向こうはこちらに気づいていない。
静かに近づいていくと周囲の暗さだけではなく、鱗自体が黒みがかっていることに気づく。。
なるほど、黒轟竜・・・か。

ふい、と獲物がこちらをみた。
バチリと目が合う。
大きさは普通のものより少し大きいくらいだろうか。
Hidetunaは目を細め、剣の柄に手を伸ばした。少し状態を低くし身構える。
Hidetunaを敵だと判断したティガレックスは足を揃え大きく息を吸い込んだ。

Hidetunaは反射的にティガレックスから離れる。
大きな咆哮だ。

「・・・・っ」

Nobutunaがバウンドヴォイスが厄介とかなんとか言っていたが、確かに厄介だ。
咄嗟に耳を塞いでも頭が痛い。
咆哮が止んだところですぐに戦闘態勢に入る。
亜種といっても行動パターンは原種に通ずるものがあるため、ティガレックスに慣れておけばそう恐れるものではない。
突進してくるティガレックスを回避し、攻撃チャンスを狙う。

走り続けるティガレックスを追い、止まったところで太刀を抜き振り下ろした。
ストンと予想以上に軽く太刀はティガレックスの足を断ち斬った。

「・・・ん?」

内心首を傾げながらもHidetunaは次の攻撃に移る。
いつもより太刀筋が軽い。軽いわりにはよく斬れているような・・・。
ティガレックスがこちらを向くため、一旦切り下がりで離れる。
ちらりと手に持つ太刀を見た。昨日のそれと変わりはないようだが・・・。間違ってNobutunaのを持ってきてしまったか?
そうだとしても同じ素材から出来ている太刀の切れ味なんてそんなに変わるものではないはず・・・。

次の攻撃に備えて相手を睨む。
Hidetunaに焦点を見定めたティガレックスの顔面に水を含んだ矢が襲う。
ティガレックスは大きく仰け反った。

「マギュル仮面、参上ーーーいっ!」
「・・・なんか語呂が悪いな」
「うるさいわ」

軽口を叩きながらもFaltは次々にクリティカル距離でティガレックスに矢を当てていく。
何だかんだで出来る男だからムカつく。
Nobutunaとjackも追いついたところで徐々に攻撃に参加していった。

「・・・何だかんだで原種と変わらないな」
「まぁ、元は同じもんだからなぁ・・・」

Hidetunaと反対側で攻撃を始めたNobutunaに話しかける。

「・・・ところで、昨日俺の太刀に何かしたか?」

ティガレックスの動きが一瞬止まる。
2人は動きを止めて、後ろへ回避した。
その後ティガレックスはその場で一回転する。
太い尻尾が背後を凪いでいく音にひやりとしながらも、再度ティガレックスに向き合った。
このくらいの紙一重ぐらいでビビっていては話にならない。
攻撃に移ろうかと太刀を構えたが、ヘイトを稼いだFalt向かってティガレックスは走っていった。
Nobutunaを睨むとどうやら聞こえないふりをかましているらしく、それもムカついたので蹴ってやった。

「ぶっほ!」

いつもなら怯む程度の蹴りの威力が増している。
Nobutunaは大きく前方に吹き飛んだ。

「聞こえているなら無視をするな」
「・・・くそ、覚醒してやがる・・・」

起き上がろうと腕を立てたNobutunaの隣をティガレックスがどたどたと走っていった。
流石に火山のど真ん中でも冷や汗が出た。
立ち上がって一息ついたNobutunaだが、Hidetunaの視線が突き刺さり続け仕方なく折れた。

「・・・気づいた?」
「気づかない訳がない」
「まぁ、いやなんていうか・・・ちょっとした出来心でね。
別に深い意味はないんだけど・・・」

昔からHidetunaは自分のすることに横槍をいれられたらすこぶる機嫌が悪くなるタイプだった。
だから、Nobutunaはあまり構わないでいたのだが・・・昨日はそれなりに酔っていたらしい。

「その太刀、俺が軽く研いじゃいました。
Hidetunaが温泉行ってる間に」
「・・・なっ?」

Hidetunaは驚いて太刀をみた。
温泉に行ったといっても席を外したのはほんの30分くらいだ。
それだけの間にここまで切れ味がよくなるとは・・・。
間隔として一段階切れ味が上がったとまで感じる。
素直に感動したと同時に、Nobutunaの実力を目の当たりにした。
そういえばNobutunaは太刀を研ぐとなれば数時間引きこもるのは当たり前というレベルで太刀厨だ。
手入れの方法なんて考えたことがなかったが、今後太刀を使い続けるのならば知っておかねばならない技術かもしれない。

ティガレックスが大きくバックステップをして吠える。
黒い鱗にうっすら赤い血管が浮き出る。
怒り状態になった印だ。

「こっからがヤベェぞ」

Hidetunaも太刀を握る手に力が入った。
怒り状態のティガレックスなんてヤバい以外の何物でもない。

先程より早くなった突進を避け、攻撃チャンスを見計らう。
タイミングを外せばこちらに痛いダメージだ。攻撃力も上がっているため迂闊に手は出せない。
突進を交わし自分の後ろで立ち止まったティガレックスにHidetunaは斬りかかった。

「おらっ」

前足の爪が欠け、ティガレックスが仰け反る。
キッとティガレックスはHidetunaを睨みつけた。
そのままティガレックスは後ろに数歩下がる。

「・・・なんだっ?」

突然の行動にHidetunaは眉を顰めた。
ティガレックスのさり気ない行動の意味に気づいたNobutunaが声を上げる。

「Hidetuna!!まずい避けろっ!」
「・・・避けろって・・・どこへ・・・」

背を反り、ティガレックスが大きく息を吸い込む。

「・・・!」

その動作の意味に気が付いたHidetunaは、チッと舌打ちした。
咆哮かっ!!

反射的に顔を庇うように手を前で交差させる。
咆哮が放たれる瞬間、ティガレックスはご丁寧にHidetunaに向き合った。
大きなティガレックスの口腔内が目の前に広がる。

「・・・くっそ・・・・」

もう避けきれない。

その咆哮は叫びというより、波動に近い。
空気を震わせ、目に見えない力で、Hidetunaを吹き飛ばした。
その音の大きさに頭痛がした。音が全身を突き抜け身体全体が痺れる。
油断したつもりではないが、今のはちょっと避けるのは無理だ。

飛ばされた体が地面に着く前に、柔らかく温かい何かが身体を包む。
これは・・・

「・・・ぐはっ」

思い切り地面に叩きつけられた。
しかし、痛みはさほど感じられない。

「大丈夫かっ!?」
「・・・まぁなんとか・・・」

jackが駆け寄ってくる。
別に咆哮を真正面から受けたからといって死ぬほどじゃない。
まったく過保護な粉塵王だ。
身体は痺れるし、頭はガンガンするが、時間の経過と共に治るだろう。
それにどうやら2人ほど粉塵を使ったやつがいるらしく、体の方はこれ以上治せるところがない。

「・・・ったく、ノーモーションで咆哮とかやってくれる・・・」
「いい経験になっただろ?」
「真正面で浴びたくなかったけどな」

Hidetunaは起き上がって装備についた汚れを払う。

「それに・・・過保護な奴らが一緒だと死ぬに死ねねぇよ」
「違いない」
「・・・一番の過保護はあんただからな」
「聞こえないねぇ」

jackは笑ってティガレックス向かって走っていった。
これだから年上面する奴らは嫌いなんだ。対して違わないのに。


足を引きずるティガレックスを見て、Nobutunaが指示を出す。

「こりゃ2手に別れた方がいいか・・・」
「じゃ、オイラとどめ刺してくるよー」
「それじゃ俺も」

jackとFaltが手を上げる。

「・・・なら、任せた。合流している場合は無理に手を出さず合図を送ってくれ」
『了解』

巣へ走っていく2人を見送り、Nobutunaは息をついた。

「Hidetuna、明日、予定とかある?」
「別に。しいて言うなら出発の準備」
「・・・そうか。
もし暇があれば太刀の研ぎ方とか教えてあげてもいいかなぁ・・・なんて思ってたりするんだけど」

良い顔でNobutunaが笑う。
少し驚いてから、Hidetunaが苦笑した。

「・・・それ、今言う必要あったか?
フラグか?フラグなのか?」
「ば、馬鹿言うんじゃないよ!俺は落ちないよ。絶対だよ!!」

ったく人が折角親切心をもってだな・・・とブツブツ言いながら歩き出すNobutunaにHidetunaは続いて歩き出す。

「・・・その、さっきは粉塵・・・」

次はNobutunaが驚いた表情で振り返った。

「・・・な、こっち向くなよ、馬鹿っ」
「馬鹿はないだろ馬鹿は」
「テメェもさっき言ってたじゃないか!」
「そんな口の悪い子に育てた覚えは・・・」

ドスン。
質量の割に、軽い音が聞こえた。
二人は言い争いをやめ、隣をみる。

もう一体のティガレックス亜種がこちらを見つめていた。

『・・・・・。』

\(´∀`)/

2人はコホンと咳払いをし、ティガレックスに対峙する。
Nobutunaが不敵に笑った。

「俺は絶対落ちないからな」
「うるせぇよ。くどい上に引きずるな」

ティガレックスの咆哮と共に二人の侍は地を蹴った。

++++

「ねぇjackさん」
「なんだい、Faltくん」
「俺らいつ出てけばいいんだろうね」
「とりあえずピンチに颯爽と飛び出す感じでいいんじゃないかな。
邪魔しちゃ悪いし」

弱ったティガレックス亜種に止めを刺し戻ってきたところ、NobutunaとHidetunaはもう一体の方と戦闘を開始していた。
特に危なげもなく戦っているのを見て2人はこのまま見守る形をとっている。
折角2人での息が合ってきたところをわざわざ崩すなど野暮なことはしたくない。
いくらティガレックス亜種と言えど元G級ハンターに掛かれば大したことない。
ポッケ村時代に出くわした通称マガティガ、野生の金冠サイズを裕に超え破壊力も並みではないティガレックスに比べると本当にトカゲだ。
・・・まぁ元G級ハンターといえどもう狩りたくもないし、今ではもう狩れないと思うが。

「しかしこうして遠くからみてると面白いよね。
兄弟して太刀使ってるのに全然違う」
「Nobutunaばかり見てきたから逆にHidetunaが新鮮だな。
世の中Hidetuna寄りの太刀使いが多いみたいだけれど」
「ノブちゃんはなんかもう道を極めきってるからね。
斬る動作に無駄がないし、・・・そもそも斬ってるようには見えない」

例えるならそれは剣舞。
流れるように、舞うように。

「対して、Hidetunaは真っ直ぐだよな。
ちゃんと型にはまっている。
それでいて相手に合わせて臨機応変に戦い方を変えてるところが凄いな」
「ヒデちゃんは真面目だからねぇ・・・」

Hidetunaも基本を守り真っ直ぐに進んできただけあってNobutunaとは別の美しさがある。
1つ1つの動作が機敏で、力強い。

「似ているようで少し違うし、いやー見てて飽きないよね」
「お、もう終わりか」
「いやー、太刀使い2人だと早いねぇ」

重い腰をあげて、2人は今来た体で走っていった。

「おっつー!!やーごめんごめん。
アイツしぶとくって、なかなか巣に戻らないしさ〜」
「ちょっと探すのに苦労しちゃった。
流石ノブちゃんとヒデちゃん仕事早いわ〜」
「ったく、結局2人で倒しちゃったじゃねぇか。もっと早くこーい」
「意外に大したことなかったな、ティガレックス亜種」

クエスト後に2人とも煙管に火をつけていたり、モンスターに黙祷していたりするのをみると、やはり似ていると思う。

「また、無意識なところがスゲェわ」
「早く気付いて、気まずい思いをすればいいに一票」
「いいね、オイラもそれに一票」

「2人とも帰るぞー」

『はーい!』

++++

「なら行くわ」
「おう、気を付けてな」

早朝、霧がまだ掛かり太陽が昇り始める頃、Hidetunaは出発した。
派手な見送りは彼が嫌がったので他のメンバーには悪いが内緒で行かせることにした。

ガーグァの荷車に乗ったHidetunaに軽くNobutunaが手を振る。
荷車が動き出したところで、Nobutunaは思い出したように懐から1つの石を出した。

「Hidetuna!」
「・・・あ?」

Nobutunaが投げた石をなんとか受け取り、Hidetunaはその石を見る。

「それやるわ」

それはデプスライト鉱石で出来た砥石であった。
Nobutunaが太刀を手入れするときに使っていたものだ。
年季が入っていたので大事な物のような気がするのだが・・・。
そこまで気づいた時には荷車は大分進んでしまっていた。Nobutunaも村に帰ろうとUターンしている。

「・・・チッ、馬鹿綱が・・・」

ボソリと呟いてHidetunaはアイテムポーチに砥石を詰め荷車に寝転がった。
ガーグァが一際高い声で鳴き、まだ薄暗い道をゆっくり進んで行く。

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