ハンターになった理由?
俺は他の奴と比べて、理由らしい理由が見当たらない。
しいて言うなら、周りにいた奴らがハンターになりたいといったから、それにくっついてハンターになっただけだ。
それ以下でもそれ以上でもない。

元々体格も良く、運動神経も悪い方ではない。
モンスターであれ、殺すこと、剥ぎ取ることに最初は人並みに嫌悪感もあったがそれもすぐに慣れてきた。
物事をあまり難しく考えるタイプでもなかったし、それらはすぐに日常と化した。
それなりにセンスも度胸もあったのか、ハンターランクは順調に上がり、気づけば仲間と共にG級まで上がっていた。
お蔭様で現在まで五体満足で生きていることができる。

G級ハンターとして周囲から尊敬の眼差しで見つめられながら、志高い仲間の隣を歩きながら、本日行くクエストを決める最中、jackはぼんやり思う。

俺は、ハンターなのか?

ギルドに登録し、毎日のようにハンター職をこなしている今でもその疑問は時々浮かぶ。
なんていうか、ハンターだけど、ハンターじゃないというか。ハンターに限りなく近い何かというか。
多分自分の中で自分がハンターだという事実がしっくりこないのであろうか。

狩りの最中に雑念を捨てろとか覚悟を決めろとか中途半端は自滅を招くとか。
どっかの偉い人はそんなことをいっていたような、どこかで聞いたような気もするが、そんな雑念を持ちながらも今まで生きてこられたのだから今後もなんとかなるだろう。

「社長、ロアルドロスでいい?」
「うーん、そろそろ強走エキスも切れてきたところだし・・・、構わんよ」
「よし、決定。お姉さーん!」

そんなこんなで、仲間と共にjackは狩りに出かける。

++++

とある晴れた日。
絶好の狩り日和の本日、jackは盛大に寝坊した。
家にCarryの姿もなく、先に出掛けたのだろう。
外を見ると太陽は既に高くなっており、村からハンターの活気が消えている。
きっと皆早々にクエストに出かけたのであろう。
MHDメンバーとは毎日狩りの約束をしているわけでもなく、集会場で出会ったメンバーで適当に出かけるのが常だ。
自分の力が必要な時は誰かが家まで呼びにくるし、それがないということは各自すでに出発したところであろう。
急にできた休みに少し戸惑いながらもとりあえず軽く身支度を整え集会場へ行くことにした。
誰かいたら狩りに行くことにして、いなかったら家に籠って調合でもしよう。決定。

他のメンバーに比べて向上心というか、ハンターという職に執着のないjackは必要に迫られない限りソロ狩りにはいかない。
狩りなんて危険行為、リスクを冒してまで行く気がしないというか。素材なら誰かのいる時に一緒に狩りに行けばいいし。
集会場に人はまばらで知り合いの顔もいなかった。
そのまま人気のない温泉を満喫し、自宅に戻る。

さて、久しぶりに粉塵の調合でもしておこうか。
最近ちょっと過剰粉塵過ぎるし。

鼻歌を歌いながら、手慣れた手つきで材料を細かく砕き、すり潰していく。
その後に素材の割合と扱いに気を付けながら丁寧に混ぜ合わせる。
ここで欲張りすぎて大量に混ぜないことがポイントだ。
竜の牙や爪はボウガンの弾の材料にもなる危険な素材である。
使い方を誤ると大爆発を起こしかねない。

ハンターになって習得できて良かったと思うのがこの調合スキルだ。
どうやらこの地味な作業が自分にはあっているらしい。
狩りよりもこちらの世界に魅かれたjackは誰よりも早く調合書を完成させ、ポッケ村で錬金術も身に付けた。
モンスターを狩ることよりも仲間のサポートに徹していたため、生命の粉塵の使用率はダントツ。
そのjackの高い調合術と狩りのサポートスキルを見抜いたCarryが後押しし、株式会社粉塵王を立ち上げた。

・・・うーん、どちらかというと粉塵王社長の方が職としてはしっくりくるかも。

と、いっても粉塵王の仕事は全くしてないに等しいけど。

ある程度混ぜ合わせると大きな粒が細かい粒に変わる。
あとは爪の爆発力で塵状にすれば完成だ。
細かく袋に沸ければ、粉塵王印の生命の粉塵が完成となる。

ゆったりした時間の中、粉塵の出来に満足し自画自賛していたところで突然家の扉が開いた。

「すいませんっ!!お邪魔します。
jack殿のお宅はこちらでしょうかーっ!!!!」

突然外界の風が室内にはいり、ふわりと出来上がったばかりの粉塵が舞い上がる。

「・・・うおっ・・・ゲホッ・・・ゴホッ!!」
「あ、おいでましたかjack殿!!!実はですね!」
「・・・ちょっ・・・まって、早く扉、占めて・・・」
「あぁ、すいません。
私・・・」

来訪者は扉を閉めて出で立ちを整える。
咳が落ち着いたところでjackは作業机を大きく叩いて立ち上がった。

「急に人様の家に入ってくるとはどういう了見じゃ!
こちとら粉塵調合中で下手すりゃ爆発伴う危険な作業の真っ最中なんじゃコラ。
これで失敗したらどう責任とってくれるんやろなぁ?」

わりと物腰穏やかで外見共々紳士と名高いjackもたまにはキレる。

「え、あ・・・すすす・・・すいませんでした・・・っ」

その言葉に来客も少し反省の色を見せる。
よく見れば集会場の受付嬢であった。彼女が何故うちに?

「・・・で、なんか用??」

とりあえずできたばかりの粉塵が飛んでいかないように蓋を閉め、jackはその辺の手拭いで顔を拭く。
あぁ、飛んでった粉塵が勿体ない。
少しではあるが体が軽くなった気がする。少量でも、体に害はなくても効果はあるらしい。

「あの、実は集会場の近くに数頭のアオアシラが発見されまして、このままではユクモ村に迷い込んでしまう危険性があります。
今ユクモに残っている腕の立つハンターはjack殿しか心当たりがなく、よろしければ緊急クエスト受注していただけませんでしょうかっ!?」
「はぁ?
アオアシラくらいそこら辺の奴らじゃ駄目なの?」
「なんでも金冠サイズが数頭いるとかで・・・」

・・・それを俺1人に狩れというのか。それもまたキツくないか・・・?

「なんだったら、ギルドマネージャーでもいけばいいだろ。
あの爺さん今はあんなんだが、昔相当やり手だったんじゃないのか?」
「・・・ギルドマネージャー直々の推薦です」

・・・チッ、あのクソジジイ。

こんなことなら適当に素材ツアーでも出かけていれば良かったと後悔したが後には引けず。
ユクモ村専属ハンターとして滞在させてもらっている身では断るということは道理に反する。
色々葛藤は合ったが、jackはすぐに折れた。

「分かったよ。
今から準備して集会場行くからクエスト許可だして」
「あ、ありがとうございます!」

バタバタと出て行く受付嬢に「・・・だから〜・・・」とため息を付きながら狩りの支度をする。
こちとら今日はもう家を出ない覚悟でいるのに全くやるせない。
ソロ狩りでも粉塵を持っていくのは、癖なのか、SEVENでいうお守りなのか。
確かにあれば安心する。SEVENのお守りよりは実用的ではあるが。

並ぶ双剣を見つめ、少し考えてから効率と切れ味を考えて王牙双刃【土雷】をチョイスし集会場に向かうため暖簾をくぐる。。
その時、外から悲鳴が聞こえた。

++++

外に出ると村の中心に向かってアオアシラが走ってきていた。
近辺にいるとは聞いたがもうここまでやってきたのか。
村人やアイル―は突然の来訪者に驚き逃げまどう。
腰を抜かすもの、転ぶもの様々だ。
jackは腰に付けた袋の紐を解いた。

「これでっ!」

広場全体に癒しの粉が広がる。
大きな怪我をした人はいないだろうが、大きな回復力は時に安心をもたらす。
これが安定剤になり、落ち着いて逃げれたら幸いなのだが・・・。
アオアシラはその中の一人めがけて走り出した。
村人を追うアオアシラの間にjackは割り込む。
アオアシラがjackを睨みつけた。

「全く・・・なんで村で戦う羽目になるんだ・・・?」

移動の手間は省けたがリスクは高すぎる。
とりあえず囮になっている間に全員避難できればいいのだが。
周囲のパニックを余所にjackは冷静で、タイミングを見計らい素早くアオアシラに一撃入れる。
この広場ならそれなりに広さもあるし、戦うには十分だ。

何度か打ち合い、固い腕甲も破壊し、足を引きずるアオアシラにと止めを刺す。

一息ついて周囲を見た。
村人の避難は大体完了しているのか周囲に人は見当たらない。
集会場を見上げるとギルドマネージャーがこちらに向かって階段を降りてきた。
いつもカウンターのところに腰かけている姿しか見ていないので少し動くとちょっとした感動だ。

「おぉ、村のど真ん中でやってくれるのぅ。
流石粉塵王と名高い小童じゃ。
被害がなくてなによりじゃ」
「・・・聞けば複数匹いるそうですか?」

今仕留めたものは下位のものだ。なりたてのハンターでも倒せるレベルである。
受付嬢の話によれば複数匹、しかも金冠サイズだと聞く。
まだ他にもいるということか・・・。
ギルドマネージャーはニヤニヤしながらたっぷりと蓄えたヒゲを撫でる。

「らしいのぅ。
ちょっとその辺探して適当に狩ってきてくれ」
「適当に・・・って・・・。
こちとら今日は1人ですけど」
「その重そうな兜とって眼帯つけりゃよかろう」
「・・・眼帯って・・・」

jackはあからさまに嫌な顔をした。
ポッケ村の時Rikuが使っていた『鷹見のピアス』に相当する代物『竜王の隻眼』
身に付けるだけで千里眼の効果が発動できる。
確かにそれなら取りこぼしなくこの周辺にいるアオアシラを一掃できはするが・・・。
jackは鷹見のピアス、竜王の隻眼の両方を一度も身に付けたことはない。
噂には聞いているが、副作用がとんでもないらしい。
すぐに実用には向かず、G級ハンターでも徐々に体を慣らしていく必要があるとか。
そこまでして千里眼の効果を得たいとも思わない。
何でこういう時にRikuがいないんだ、とよく分からない八つ当たりを心の中で思ってからjackはいった。

「・・・分かった、千里眼の薬で手を打とう」
「面白くない男じゃのぅ」
「うるさいわ」

家に戻って千里眼の薬、調合分までポーチに入れる。
アオアシラの取りこぼしは村の治安にも関わる。
念を入れておいた方がいい。
jackは村を出て1本飲んだ。

一時的に視界が広くなった感覚を覚える。
その中にアオアシラらしき大きな気配が数頭感じられた。

場所を大まかに把握し、jackは走り出した。

++++

村から1km程進んだところで獣の唸り声が聞こえる。
jackは素早く振り返り背後を振り返る。
飛びかかるアオアシラを視界にいれたところで、バックステップ。
jackのいた場所にアオアシラの鋭い爪が宙を凪いだ。

「・・・確かにデケェな」

『アオアシラが大変です』なんて最大金冠サイズのクエストが出ていたが、それと同等のサイズであろう。
でかい。とてもでかい。
アオアシラの隙を狙い懐に潜り込み、背中の双剣を掴む。
他の武器に比べてリーチが短い上、ガードもできないため敵の動きを見極めることが重要となる。
雷を帯びた2本の剣がjackの腕の動きに合わせてアオアシラに傷をつける。
アオアシラはjackに向かって腕を振り下ろすが、双剣独特の軽いステップに交わされる。

舞うような双剣の猛攻に傍から見ればアオアシラがjackに踊らされているよう。
双剣でつけられる傷もさることながら、負荷された雷のダメージが大きく蓄積する。
足を取られ大きく転倒するアオアシラにjackの乱舞が襲う。
アオアシラの堅い腕甲が砕けた。

「よっしゃ」

追撃に移ろうとしたjackの背後から大きな影が飛び出した。

「・・・っ!?」

視界に微かに入った大きな影。
身体を捻りその場を離れる。
着地したのはそれも金冠サイズのアオアシラ。

・・・大変どころの騒ぎじゃないんだが・・・。

jackは苦笑しながら双剣を構えた。
ユクモ村の滞在期間はそこまで長くはない。こんなことがあるのだろうか。
冬眠の季節にはまだ早いだろう・・・冬眠するのかどうか微妙なところだが。

jackを二頭のアオアシラが睨む。
ユクモ村の収入は主に観光業だ。
ジンオウガの出現に加え、アオアシラが周辺に現れるとか最悪だろう。

「・・・まぁとりあえず、君らは討伐させてもらおうかね」

原因を探るにしてもとりあえず目の前の危険を排除することが最優先だ。

突進するアオアシラを避け、先に弱った方のアオアシラ討伐を進める。
しかし金冠サイズが2頭ともなれば攻撃範囲も広ければ力も強い。
リーチが短い分近づかなければならず、jackは舌打ちをした。
鋭い爪がjackの髪を掠る。

「おっと・・・」

アオアシラが屈んだところで丁度手の先に顔があったため、体の捻りを加え、そのまま顔面に双剣を突き立てた。
堅い鱗に弾かれた剣先だが、目を掠り、アオアシラの右目の視力を奪う。
仰け反るアオアシラを余所に、もう一頭にそのまま斬撃を浴びせる。
アオアシラは短い悲鳴をあげた。
先程蓄積されたダメージが効いてきたのか、ともなくアオアシラは足を引きずり、渓流の奥へと向かう。
jackは行く先に先回りし、シビレ罠を仕掛けた。掛かったところで麻酔玉を投げまずは一匹終了。
倒れたまま動かない仲間を見て、もう1頭のアオアシラは怒りの声を上げた。

上位最大金冠といえどソロでは倒せないレベルでもないわけで大したダメージもなく、jackはアオアシラを地に伏せた。

「まぁアオアシラくらいどうってことないけど・・・確かにこりゃ討伐しておかないとまずいわなぁ」

終了を知らせるべくギルドに合図を送る。
今いる場所は渓流へと繋がる一般道で、ネコタクやガーグァの引く荷台が通る道だ。
その一般道が大きなアオアシラで塞がれると後に渋滞を引き起こすことになってしまう。
とりあえずネコタク一台分は通るスペースを、と屈んだとき、奥から賑やかな話し声と、ネコタクが引く台車の音がした。
もう、早速来たか。
アオアシラの移動は1人では大変なので手伝ってもらおうとjackが顔を上げると、そのネコタクには顔見知りが乗っていた。

「あれ、jackじゃね?
どうしたのそのアオアシラ!」
「よっ、社長、今日は寝坊かよ珍しい」
「え、これjack仕留めたの?今日は熊鍋かーっ!!」
「てかこんなところにアシラとかないわー。」

「お願いだから順番に話してよ。
聞き取れないでしょっ!?」

相変わらずの面々にjackは苦笑した。
1日顔を合せなかっただけで、なんとなく久しぶりだと感じてしまう。
このうるさいほどの賑やかさが懐かしい。

「熊鍋かぁ・・・いいねぇ、こんな金冠サイズ9人じゃ食べきれないねぇ。
とりあえず、調理班、SEVEN、SEVENを呼べーっ!!」
「SEVENなら次のネコタクだろ」
「ていうか、これ一応クエスト受注したやつだから、勝手に肉持ち帰れないんじゃないかねぇ?」

アオアシラを前に5人であーだこーだと話を続ける。

「あ、新鮮さを求めるなら、そこで捕獲してきたあいつでいいんじゃないだろうか」

4人が振り返ると同じ金冠サイズのアオアシラが寝息を立てていた。

「マジかっ!?jack食べる気満々じゃん」
「いや、そういう意味で捕獲したわけではないんだけど・・・」
「じゃ、あいつをいただくとするか。
ギルドからガーグァの台車借りてこないとな」

程なくして奥から更に騒がしい一行がネコタクに乗ってやっくる。

「おっ、jackだ〜!!」
「SEVEN、仕事だ。こいつの肉を捌いて鍋にしろ」
「おぉ、でっけぇぇ!!!
ヤベェ!!なにこれ!!食べるのッ!?食べんのっ!?」

久しぶりに見る大物にSEVENが目を輝かせる。

「へぇ〜、久しぶりにいいですね、熊鍋」
「どうせならファンゴの肉も剥いでこれば良かったな」
「食べるならガーグァに勝る肉はないでしょ」
「鶏肉ヘルシーすぎてつまらん」
「つまらんってなんだよつまらんって」
「あ、ギルドの台車来た」
「よっしゃ、戻ってギルドのジジイに交渉だ野郎共ー!」
『おー!!』
「え、あの、俺だけ徒歩っ!?」

8人をそれぞれ乗せたネコタクは軽やかにユクモの集会場へと進んで行く。
その背中を見送って、jackはため息を吐いた。

・・・まったく。
本当馬鹿で煩くて本当にどうしようもない奴らだが、奴らがいる限り俺はずっとハンターなんだろうな、とjackは一人苦笑した。

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