メンバーが集まって夕飯を食べることは宴会と同異義語だ。
そうなることは必然。
Nobutuna、jack、Faltが狩りのあと集会場で夕飯のメニューを眺めている間に、チームBASが狩りから帰ってきて一緒にメニューを眺めだし、RikuとSkyがそれぞれソロ狩りから帰ってきて、最後にミスターがどこからともなく現れて・・・。
結局集会場に9人集まってしまうのは日常茶飯事。

皆で顔を寄せ合い、各々好きなメニューとお酒を頼む。
乾杯で始まり、机いっぱいに並べられた料理を競うように食べ、飲んで、笑って、泣いて、喧嘩して・・・
それが、MHDメンバーが揃った時の夕食だ。

酔いが回り、どう聞いてもアウトな下ネタが飛び交い、受付嬢が苦笑してきたころ、ネコタクに乗って一人のハンターが集会場に帰ってきた。

「お帰りなさい、お疲れ様でした」
「・・・・・・。」

ハンターは無言で受付嬢に会釈して必要ないものをアイテムボックスにしまった。
集会場の一角で宴会状態の集団を見つけ目をひそめる。
集団からすぐに目を離し、静かに、素早く、温泉にハンターは急いだ。
・・・が酔いが回っているとはいえ、18個の元G級ハンター達の目からハンターが逃れられるのは難しかった。
しかも彼らの身内となればなおのこと。

「あれ?Tharrosさんじゃない?
おーい、今帰りー?」

既に出来上がって半裸になっているFaltがそのハンターを引き留めた。
隠密スキルでもつけておけばよかった!
声をかけられ、Tharrosは足を止める。
少しの面倒臭さと怒りが込められた視線がFaltに送られた。
Faltの言葉でメンバーの視線の大半もTharrosに向けられる。

「・・・・・・・どうも。」

無感情にそういった。
兄が猟団に所属している故、その仲間を無下にして兄の立場を悪くしたくない。
Tharrosにとって精一杯の譲歩だった。

なんというか、実力はあるが、現在完全出来上がった集団であったので一際集会場の目を引いている。
今の本音は、この人たちと知り合いとは正直思われたくない。

Tharrosの視線がFaltから、BillyとRikuに移った時、一瞬驚きと焦りに変わる。
人から逃げる猫のようにTharrosはさっと温泉の暖簾をくぐった。

「Billyはん、Tharrosさん今日ソロでどっかいってたの?」

Tharrosが一人なのをみて、SEVENがBillyに話しかける。

「うーん、知らない」
「知らないってBillyそれくらい知っとけよ!」

ビール片手に立ち上がったAshにBillyは極圏より冷めた視線を送った。

「・・・Ashは過保護すぎると思うんだが・・・」

Billyを筆頭に時計回りにAshの非難が始まった。

「Ashさんそれウザいわぁwwまじないわーww」
「そろそろSakura離れしたらどうですかお兄さん」
「Sakuraの方はとっくにAsh離れしてるでしょ」
「見苦しいよ、お兄さん」

「お義兄さん・・・だとっ!
俺と決闘して勝つまで俺をそう呼ぶことを許さん!
そしてSakuraは誰にもやらん!」

本当に、・・・ウゼェ。

長々続くAshの演説を右から左に聞き流し、各々目の前にあるグラスを傾げた。
飲んでいなければやってられない。


騒ぎ続けて数十分後。
また下ネタが場を覆い尽くすくらいになったとき、Tharrosはそっと温泉の暖簾をくぐった。
未だに騒がしい集団をちらりと見て、帰ろうとしたときBillyと目が合った。
Billyが少し笑ってこちらに手招きしている。
いつもより表情が柔らかいのは酒に酔っているからだろうか。顔もほんのり赤い。
すぐに帰りたかったTharrosだが、Billyの誘いは断れなかった。
仕方なく、Billyの元へ歩いていく。

「・・・何?兄さま」

近くによると、酒の臭いが強く顔をしかめる。
残っている料理に、お腹が鳴った。早く帰ってご飯を食べたい。

「Tharros晩飯まだだろ?どうせだし一緒に食っていけ」

ポンポンとBillyは隣の席を叩く。

「・・・・え、」

Tharrosが返事をする前に『おぉぉぉ!!!』という歓声が沸く。

『Billyはん最高!』
『流石Billyさん分かっておられる』
『キャーTharrosサン、コッチムイテー!!』

変な歓声と共に、Tharrosは盛大に迎えられた。

「Tharrosさんも参加スかぁ!!何飲む??
おねーさーん!注文お願い〜!!」
「いっぱいお料理あるよ〜。遠慮せずに好きな物頼んでね!!」

むさくるしい男所帯に紅一点ということで野郎共の歓迎のテンションは異様に高かった。
なんというか、一番楽しい時間に来てしまったらしい。
意味の分からない言葉があちこちから聞こえる。

「・・・・・・。」

テンションについていけないTharrosがぽかんとしていると、Rikuがはい、とメニューを渡した。

「まぁ、いつものしかないけどねぇ」

メニュー表を受け取れずぽかんとしているとRikuが飲み物のページを開いてTharrosに見せる。
せかされていると気づき慌ててメニュー表を受け取った。
何故か焦って、いつもは見慣れたメニューの文字が頭に入ってこない。
えっと、私はいつも何を飲んでたっけ?

気づけばBillyは端っこに避けて、自分とRikuの間を空けていた。
・・・この間に座れということか。
ちらりとBillyを見れば、隣のNobutunaと果てしなくどうでもいい世間話をしている。
やられた。

「ご注文お決まりですか?」
「・・・えっと・・・あ・・・」

助けを求め、Billyを見ても頭ごとNobutunaを向いている。
焦って隣を見ればRikuと目があった。
Rikuはひょいとメニューを覗きこんだ。

「決まらなかったらとりあえずこのオススメの中からでいいんじゃない?」
「え・・・うん」
「ちなみに俺はこれがオススメ」
「じゃ・・・それで」
「かしこまりました」

立っているままも、気まずいのでTharrosは仕方なく空いた席に座った。

「なんか食べるよね〜。残りものでいいならよそおうか?」
「・・・えっと・・・」
「食べれないものある?」
「・・・ない」

Rikuはさっさと空いた皿に残った料理をバランスよく乗っけてTharrosの前に置いた。

「欲しいものあったら言ってね。とるよ」
「あ、ありがとう・・・」

空いた皿はjackが素早く片付け、綺麗に積み上げられ端に置かれる。
それを店員がさりげなく持ち帰った。
ついでに足りない酒やつまみを注文する。
なんていうか・・・自宅でどう過ごしているかが凄く見える。

貴方の飲み会を徹底サポート!

流石粉塵王は伊達じゃない。
お蔭でお酒のペースが進み過ぎているような気がするけど。

RikuとTharrosの様子を見て、Nobutunaが軽く笑った。

「RikuもRikuだけど、BillyもBillyだな」
「なんのことやら」

まんざらでもないBillyにNobutunaはもう一度笑った。
なんていうか、条件が揃っているくせに、先が読めないのが面白い。


途中、カラオケ大会になったり、物真似大会になったり、罰ゲームしたり、相変わらず騒ぐことに事欠かないメンバーだ。
1時間もすれば完全にTharrosの腹は膨れていた。
酒のペースも進み、そろそろ宴会も終盤に差し掛かった頃、ハンターという職が作られ、ギルドが成立した当時から不毛に議論されつくしてきた話題が上がった。

「いや、太刀だろ、太刀が一番いい!」
「いやいやいやなにいってんの弓でしょ!拡散弓の神具合」
「聞き捨てならねぇな、ランスが一番に決まってんだろ」
「勿論、麻痺武器だよねぇ」
「ハンマー一択」

武器論争である。
この論争で、どれだけのハンターが憎しみ合い、戦い、泣き、裏切り、別れ、そして新たな絆を結んだことか。
結論としては『自分の使いやすい武器が一番』で収まるのだが、それを分かっていても愛武器を推したいのがハンターの性。

ちなみにこの猟団では今でも月一くらいでこの論争は勃発する。
いい加減そろそろ飽きろ。

ポッケ村にいた頃Ashも大剣派として、Skyは狩猟笛派として声を上げていたが、今は武器を変えたため発言力は少し弱い。
しかし、武器を語るとなれば物凄い勢いで語りまくるのは変わりなかった。
Rikuはガンナー武器全般扱っていたため、いつも発言は控えていた。結論も既に出てしまっており、争うことが無意味だ。
かくいう俺も最初太刀厨だったしねぇ、はぁい。

すでに宴会に飽きてきたのかTharrosは静かにお酒を飲んでいた。
あれから数杯あけているので、そろそろ酔ってきた頃だと思う。
目がトロンとなっている。

「ちなみにTharrosさんはどの武器が一番好きなの?」

RikuはTharrosに話しかけた。
そういえば、TharrosはBilly同様いろいろ使えるからその辺は純粋に気になるところだ。

「・・・・・・。」

「みて、この俺の黒々とした太くて大きくて立派な槍!」
「夜の一本槍ですね、分かります」
「フッ、昼夜ともども俺の槍が火を噴くぜ!」
「夜と聞いちゃ夜の侍のこの俺が黙っていないぜ、SEVEN。
夜刀信綱に勝てるモノなぞこの世に存在せぬわ!」
「フッ、その細い太刀のNobuちゃんがこの俺の一本槍に勝てるかな」
「夜の武器といえばガンランスでしょ!竜撃砲最強伝説」
「からの〜クイックアンドリロード!」
「ちょ、下ネタとか、おいらが黙っちゃいないからな!」
「黙れ奇跡の乳首」
「黙れTKB48!解散して、総選挙しろ!」
「それはRikuでしょ〜。俺じゃありません〜!」

話がこちらに流れてきて、流石にRikuは苦笑した。
隣にTharrosがいなければ今日は乗っていたところであるが、・・・流石に駄目だろ。
留まるところをしらない下ネタの応酬にRikuが酒を煽った。
そして、ダンと立ち上がる。

「お前らTharrosさんいるんだしちょっと下ネタ自重・・・」
「・・・ランス。」
「・・・・?」

ボソリとTharrosが呟いた。

「・・・ランスが、いいの?Tharrosさん」
「Rikuはランス使わないの?」
「うーん・・・攻撃は最大の防御だと思ってるし・・・。
ちまちま防御して確実にダメージ与えて戦う、ランスはあまり・・・。
それならガンランス選ぶかも」

そういえばヤマツカミに行ったときランス使っていたっけTharrosさん。
それからあまり見てないように思うんだけど・・・何でいきなりランス?
Tharrosは残っていたグラスに残った酒を全て飲み干して立ち上がった。


「「たまにはランス使ってよ!男でしょ!!」」


くわっっと叫んだTharrosに一同の動きがぴたりと止まった。
そして視線がRikuとTharrosに注がれる。
Billyの持っていた肉がべしゃりと床に落とした。


・・・え、なにそれ、・・・どういう意味?


「・・・おっ?・・・おっ?
・・・え、・・・そう??」

・・・ランス、そんなにいい?

凍った空気の中、Rikuはよく分からないと首をかしげた。

TharrosがRikuに好意を持っているということは各々なんとなく気づいていたが、実際みせつけられると物凄い戸惑った。

(え、今のTharrosさんの・・・下ネタ?下ネタ?)
(結局あの2人どこまで進んでるの。え、もうできちゃってんの?)
(たまには、ってなに、たまにはって!)
(そこんとこkwsk・・・、・・・聞きたい気もするし、いや聞きたくないかも)
(気づいてはいたけど、リアルに見ると少し凹むというか、殴りたくなるというか・・・)
(リア充、いやリアRiku爆発しろ)
(・・・明日イビルジョー2頭討伐行ってくるわ)

Nobutunaが静かに震えるBillyの肩を優しく叩いた。

「でもTharrosさん、現実、俺体格的にランス向いてないと思うんだよねぇ〜」
「そう?」

完全酔いの回ったRikuは周囲の視線に気づかず、そのまま武器のランスについて語り始めた。
Tharrosもそれに合わせて、席に着く。
何事もなかったように話を続ける二人。

様々な思考が脳裏を巡ったが、最後に全員一致した突っ込みが残った。

(((・・・ていうか、Rikuはなんで気づいてないの?馬鹿なの?)))

++++

「うぅ、頭痛ー。
本当あいつらとの飲み会嫌だわぁ‥‥」

次の日。
ちょっと遅めに集会場についたRikuは、クエストを受注したBillyを見つけた。
昨日の記憶が半分飛んでいる。なんかみんな下ネタ言い始めたとこまで覚えてんだけど・・・。
いや、下ネタなんて常に言ってたか・・・。

「おはよー、Billyさん」
「あぁ、おはようRiku」
「・・・どこいくの?」

ちらりとクエスト受注書を見たRikuはすぐに視線を逸らした。
なんか見てはいけないものを見てしまった気がする。

「・・・じゃ、頑張って!俺はアルビノ狩りに行くから・・・」
「・・・え、Rikuも行くよね?」
「・・・いやアルビノエキス欲しいし、ギギネブラを・・・」
「・・・行くよね?」
「いや、昨日の二日酔いが・・・」
「行くよね?行きたいよね?」
「行きます。行かせてください」

有無を言わさないBillyの言葉にRikuは従うしかなかった。
・・・今日ばかりはちょっとドーピングさせてもらおう。

「あ、そうだRiku、これあげる」
「・・・何?」

手渡されたものを見る。

角笛。

『・・・・・・‥。』

死ねと。
イビルジョー2頭クエでこれを吹いて死ねとっ!?

「Rikuー。行くよー」
「・・・・Billyさん、俺何かした?」
「別に・・・?
・・・あ、そういえばRiku」

少し考えてからBillyは言った。

「・・・ランスは、使ったことある?」
「ないけど?どうしたの急に」
「別に」

Billyと会った時からただならぬオーラを放っているのに気づいていたRikuはとりあえず言っておいた。

「・・・よく分からないけど、ごめんなさい」
「うん、それでいい」

・・・訳が分からん。

こうして、BillyとRikuは地獄の片道切符もとい、イビルジョー2頭討伐クエストに向かったのである。

[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析