6日後。
農場に行った後、加工屋を覗いてみると、頼んでいたブナハが仕上がったらしい。
特に予定もなかったのでTharrosは促されるままその場で試着した。
ユクモに狩り拠点を移してから数回防具を作ってもらっているので、サイズも着心地も抜群だった。
いつも愛用している竜素材に比べて防御力に劣るが、可愛い、軽い、動きやすいの3拍子でちょっとした狩りには最適かもしれない。
オシャレ装備と侮っていたが、活用性はありそうだ。
何より可愛い。大事なことなので2回(ry)

「色はどうするか?え?」

ブナハの人気の秘密は、自分の好きな色を基調にカスタマイズできるところにもある。
Tharrosは鏡をじっとみた。

『ザザミも似合ってたし下手に変えるより原色でも十分いいかも‥‥』

Rikuの言葉が頭をよぎる。

「このままでいい」
「あいあい、まいどあり!」



家にそのまま持ち帰り、壁にかけてみる。
早速、明日着てみようか。
そうだ、兄さまにもちゃんと見せないと・・・。
・・・あれ以来、あまり話していないから・・・。

ブナハ装備を飾っただけでシンプルな部屋が少し明るくなった気がした。
この部屋には最初必要最低限な物しかおいていなくて、人を招いた時には随分びっくりされたものだ。
Sakuraの部屋はピンク色に統一されていて、見るからに女の子の部屋って感じだし(内装はAshがしきったという噂もあるが)、Carryの部屋はシンプルであるがところどころに気を使ってある。
女の子らしいものといえば、昔買ってもらったぬいぐるみくらいだったものが、今では徐々に可愛らしい小物が浸食しつつある。

『Tharrosもいい年頃なんだし特別な日くらい化粧をしたっていいんじゃないかしら?』

先日3人からもらったプレゼントを出してみる。
・・・特別な・・・。
TharrosはCarryからもらった化粧品を手に取ってみた。
店先で、自分には必要のないものだと遠くからみていたものがここにある。

なんだか不思議な気持ちになりながら、Tharrosは明日の狩りの準備をした。

++++

Billy家の朝の食卓。
出発準備を整えたBillyとTharrosをGoodmanの暖かい朝食が出迎える。
いつもは同じくらいに起きてくるのに、今日のTharrosは遅かった。
部屋から音はしているから起きているだとうとは思うのだが・・・。

「遅イデスネTharros」
「遅れて出発するんじゃないのか?」

モンスターの出現時刻はそのモンスターによって違う。
特定のモンスターを狩りに行きたい場合ハンター達は活動時間を調整して狩りに向かう。
Billyが朝食を食べ終え、いざ行こうと思った時、奥から足音が聞こえた。

「あ、ヤット起キテキマシタネ」

GoodmanがTharrosの分のコーヒーを入れる準備を始める。
Tharrosが台所に現れた。

「・・・お、おはよう、ございます」

Tharrosを見たBillyとGoodmanの動きが止まった。

ブナハをきて、Carryがした化粧を慣れない手つきで再現して、SakuraとLamiaがプレゼントしたアクセサリーを付けて、Rikuの言ったようにサイドで結んで・・・。
Tharrosは2人が固まったのを見て、Tharrosは内心とても動揺した。
自分も中々いいと思ったんだが、似合わなかったのだろうか。
化粧の仕方がおかしかったのだろうか。
そんな装備で大丈夫か?と飽きられているのだろうか。

ゴトリ、とBillyの落とした蜂蜜の瓶の音が静寂の台所に響く。
それに我に返りBillyは蜂蜜の瓶を広い、あくまで冷静を努め口を開いた。

「おはよう、新しく作ったのか」
「はい。
その、兄さまが勧めてくださったので・・・。
・・・似合わない、ですか?」

困惑の色を宿した上目遣いがBillyを襲う。
俺の妹がこんなに可愛いわけ・・・ある!!いや、元から可愛いけど。
現代機器がユクモにあるならば今すぐ写メってMHDメンバーに一斉送信したい。
もうシスコンとかなんだとか罵ればいい。
もうAshを馬鹿にできなくなったな、と内心思いながらBillyは答えた。

「いや、凄く似合っている」
「可愛い・・・ですか?」

凄く可愛いけど、即答できるくらい可愛いけれど!
なんかもう真正面から聞かれるとなんとも言えなくなる。

「‥・あぁ。・・・可愛い」
「本当ですか?」
「い、言わせるなよ」

妙なところだけ頑固だ。
しかし、Billyにここまで言わせられる女性もこの世界で彼女だけであろう。
Goodmanにも同じ質問をして、Tharrosは安心して食卓についた。

「今日ハ誰ト狩リニ行カレルンデスカ」

Billyは関心のないふりを装って最大限に聞き耳を立てていた。

「Sakuraたちと約束している」

それだけ聞いて凄い安心した自分がいた。
出来立てのハンマーを担いで扉に手をかける。

「じゃ、いってくる」
「いってらっしゃい、兄さま」
「イッテラッシャイ」

やっと、Billyの中に平穏が訪れたような気がした。



「あれー?Billy久しぶりー」

集会場の前の階段でミスターとすれ違った。
本当に久しぶりだったので、そのまま返した。

「久しぶり」
「・・・Billyなんかいいことあったの?」
「?」
「今日顔が緩んでるよー」

ぺんぺんと頬を叩かれ、Billyが目を丸くする。
自分では気づいていなかったけれど。

「・・・まぁ、少しだけ」
「新しいハンマー作ったの?」

新品のハンマーを見てミスターが問う。

「これは前の物が壊れたから作り直しただけだ」
「・・・ふーん」

ハンマーって作り直すほどめちゃめちゃに壊れるっけ?
壊れたら直してもらうのが普通だ。
作り直すといったら亡くすか、もとに戻らないだけ壊れたということ。

色々突っ込みたかったが、ミスターは笑顔の下に疑問を隠し、Billyと別れた。
まぁ知ったからといって何があるわけじゃないし?
ていうか、あまりいい予感がしないから聞かない方がいい気もするし?

++++

Billyから遅れてTharrosも家から出る。
いつもと違う装いに人の視線を感じてしまい、Tharrosは俯き加減に歩く。
自意識過剰かもしれないが、周囲の人の反応が気になって仕方がない。
勇気を絞って集会場の扉をくぐる。

「おはよう・・・あー!!!」

集会場に入ると先に待っていたSakuraが歓声を上げた。
そして小走りでこちらに近寄ってくる。
Tharrosは気恥ずかしくなった。

「ブナハ―!!この前のブナハブラこれのために集めてたのっ!?」
「・・・うん・・・。
あのときはごめんなさい」
「いいよ。気にしないで。
でも本当に可愛いよー。Tharrosちゃんこういうのすごく似合うよね。
羨ましい!」

羨ましい?
私は、いつも可愛い装備を身に着けているSakuraが羨ましいというのに。

「Sakuraは、・・・可愛い服いっぱいもってるのに・・・」
「そんなことないよ。
Tharrosちゃんの装備いつも似合ってると思うよ」

そうなの?
そんな風に思われていたなんて知らなかった。

後ろから2人の足音が聞こえてくる。

「おぉ、着てきたねぇ。似合ってるわよTharros。
少し余裕がでたらもっと化粧品買わないとねぇ」
「買ったアクセもついているじゃん!化粧もちゃんとしてきてよくやった!Tharros」
「今から狩りに行くのが勿体ないわねぇ‥」

CarryとLamiaだった。
憧れていた3人に褒められてどう反応していいかわからない。
今日のクエストを選んでいる最中Tharrosは周囲を見渡した。
もう1人ブナハ装備を見せたい人がいたのだが、どうやらここにはいないらしい。

Tharrosの視線にCarryが気づいた。
Carryは少し考え、あるクエストを手にとる。

「そういえば、狂走エキスきれそうなのよねぇ。
ロアルドロスに行きたいんだけど・・・」
「じゃ、この水没林のにするー?」

クエストは決まりそうだ。

Lamiaが受付嬢にクエストを受注しに走る。
Tharrosは道具をそろえるためにアイテムボックスを開いた。
Carryが近づいてきてTharrosにこそっと耳打ちする。

「今日、どうやらnobutuna、Falt、jackの3人とBAS+Skyがクエストに行ってるみたいよ」
「・・・そう」

さして重要な情報ではなく、Tharrosは短く相槌を打った。
Carryはにやりと笑んで続ける。

「Rikuは昨日ギルドマネージャーに頼まれたらしくって夜に狩猟にでかけたらしいわ」

Tharrosの手が止まる。

「運よく深夜に帰ってきたらしいし・・・
待っていれば・・・昼過ぎ現れるかもしれないわねぇ。
今金欠だっていってたし・・・楽なクエストでも受けにくるかもしれない」
「だから・・・なに?」

不機嫌を湛えてTharrosはCarryの方を向いた。

「・・・だから・・・」

CarryはTharrosの肩に手をおいて叫んだ。

「ちょっとTharros、あなた少し顔色悪くない!?」
「・・・?
別に、だいjy・・・」

「え、どうしたのー?」

受注を終えたLamiaとSakuraもこちらに近づいてくる。

「なんかTharros具合悪いみたいんなんだけど」
「・・・そんなことはない」
「え、そうなの大丈夫?」

Carryの迫真の演技にTharrosが勝てるわけなかった。
元々白い肌で無表情がデフォ。会話も少ないTharrosは普通にしていても心配されることが多々ある。
人の印象というのは思い込むことでガラリと変わってしまう。
2人ともTharrosの顔をみて心配そうな表情をした。

「ロアルドロスだし・・・無理しなくても私達で狩れるわ!」
「それに水没林にオニューのブナハは勿体ないしねぇ」

Carryをみればしてやったり、の顔である。

「昼までちょっと休ませてもらいなさい」
「・・・ちょっと・・・」
「見せたい人がいるんでしょう?」
「・・・・。」

そういわれると強く出られない。
Carryに背を押されて、受付の裏で休憩することになった。
ここならRikuが来ればすぐに分かるだろうという配慮である。
どうしてCarryは物事をこうもうまいこと動かせるのであろうか。
むくれ面でベッドに座るTharrosに、Carryがしゃがんで苦笑した。

「・・・せっかくそこまでオシャレしたんだからさ・・・。
一番見せたい人に見せることを優先するべきだと思うのよ」
「・・・でも、そこまでして見せたいわけじゃ・・・」
「分かってる。
これは私のわがままよ。許してね?
Tharrosが妹みたいに可愛いからどうしてもちょっかいかけたくなってね」
「・・・‥。」

そういわれると強く出られない。
TharrosもCarryのことを姉のように大好きだから。
Carryは立ち上がってTharrosの頭を撫でた。

「別に仲間外れにしようとしているわけでもないのよ〜。
目的が達成できれば明日はティガでもジンオウガでもイビルジョーでも付き合ってあげようじゃないの」
「約束よ」
「そちらのクエストも達成できたらね」
「・・・‥。
・・・分かった」

Tharrosが納得したようなのをみてCarryは部屋を出て行った。
外では2人が心配そうに待っていた。

「Tharros大丈夫なの?」
「大丈夫そうよ。
さて、気合い入れて狂走エキス乱獲するわよー」
「・・・Carry・・・流石にそれは物騒よ・・・」

今日もたくさんのハンターたちが狩りに出発した。

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