それは、どこにでもある日常の一欠片。


学校の2階の隅にある家庭科室に甘く香ばしい匂いが広がる。
Tharrosは赤い光を放つオーブンの中をじっと観察していた。
その様子を見てCarryが軽く笑う。

「そんなにじっと見てなくても出来たらオーブンが教えてくれるわよ」
「・・・分かってる、けど」

時間を掛けて少しずつ膨らんでいくクッキーを見るのはいつまで経って飽きることはない。
見かねたCarryが丸椅子を差し出した。
Tharrosは有難くそれに座る。それでも視線はオーブンに釘づけだ。

「・・・まぁオーブンも焦げるところまでは教えてくれないからね。
怪しくなってきたら教えて頂戴」
「了解」

片付けも終わってしまい手持無沙汰になったCarryはその辺にあったお菓子の本を適当にめくる。

「しかしいくらオーブンがデカいからと言って作りすぎた感はあるわね」
「大丈夫、食べる人はたくさんいるだろうから。
それに一番沢山持っていくのはCarryでしょ?」

痛いところをTharrosに突かれ、Carryは苦笑した。・・・確かに、そうだ。
それにSakuraもTharrosも2人分持っていってくれるだろうし、むしろ足りないくらいかもしれない。

窓の方を見れば、4人が外を見ながら何やら白熱していた。
外から男の歓声も聞こえる。
どうやら男子は体育の授業らしい。

「いっけー!Faltォォォ!」
「SEVEN〜、今こそ王家の真の力を!」
「お兄ちゃんファイト〜」
「・・・ミ、ミスター・・・」

『・・・・・・。』

いやいや、若いとはいい事だ。
そんなCarryを見てTharrosは呟いた。

「気になるならCarryも見てくれば?」
「は?私はただ、Sakuraたちが若いねぇって思ってただけで・・・」

「あ、Billyが・・・っ」

ピクリとTharrosの体が反応した。

「Tharrosこそ見てきていいのよ。クッキーの番はしといてあげるから」
「別に・・・いいし。全然気にならないし」

教卓で別の仕事をしていた教師がクスリと笑った。本当に若いっていいことだ。

「TharrosもCarryも見てきていいのよ。
それは先生が見といてあげるわ」
「・・・え、いやだから別に」
「青春は今しかできないぞ、若者たちよ」

そういって先生はTharrosをどかして丸椅子に座った。
そして窓側に追い出す。
Tharrosは少し不満げな顔をしたが、しぶしぶ窓側へ移った。視線で促されたCarryもはいはいと席を立つ。
教室には一段と香ばしい匂いが立ち込めていた。

++++

チャイムが鳴り、最後の授業の終了を告げる。
この後は掃除ののち生徒の選択肢は部活か帰宅だ。
帰宅の準備を整えた睡蓮は同じく鞄に物を詰め終ったらしいミスターに駆け寄った。

「ミスター」
「あぁ、睡蓮」
「今日はそのまま帰るの?」
「うーん、今日は天気も良いし、ちょっと神社の猫達のところに寄ろうかなと思って。
新しい猫じゃらし買ったんだよね」

鞄から黄緑色の猫じゃらしを出してミスターは楽しそうに揺らす。

「だから真っ直ぐ帰らないけれど・・・」
「・・・私も、一緒に良い?」
「いいよー」
「あのね、今日調理実習でねクッキー作ったの。
あとで食べよう」
「え〜、本当?それは楽しみ」

周囲に花がぽわぽわでてそうな微笑ましい光景である。
リア充ギリィ、となるが、ミスターと睡蓮なら仕方ない。
お手本すぎる恋人たちの放課後を見せつけられ、無意味にハードルが上がったような気がしてならない。

こっそり鞄にラッピング済みのクッキーを忍ばせ、放課後の乙女達の戦いが今始まったのである。

++++

「ねぇ、Nobutunaくん。ジャッくん、どこにいったか知らない?」

チュッパチャップスを咥えながらNobutunaが振り返る。

「おぉ、jack?
そういや何も言わず消えたなー。鞄もないし帰ったんかねぇ」
「・・・ふーん、そう・・・ありがと」
「何か用か?連絡するけど」
「良いわよ、大したことじゃないし・・・。
なら私も帰るわ」
「おぉ、気を付けてなー」

Nobutunaの向かいに座っていたSkyが呟いた。

「そういえば珍しいですね、jackさんが何も言わず帰るとか」
「体育終わってからなんかぼーっとしてたからなぁ。
多分、どっかで寝てるんじゃね?」
「知ってたんならそう言えば良かったじゃないですか」
「まだまだだねぇ、Skyくん。
俺が知ってることをCarryが知らないわけないじゃないか。
何年姉弟やってると思ってんだ」

しかも自他共に認めるブラコンだ。勝てるわけがない。

「そういうもんですかー」
「そういもんだよ」

まぁ大体どこにいるかも検討はつくんだけれど、Carryもそれは分かっていそうだから言わない。

理科室の前までCarryは止まった。
そして重い扉を開く。
室内は明かりもついておらず、遮光カーテンが閉まっていて暗かった。中からは何の音もしない。
そのまま室内にずんずんと入っていき思い切りカーテンを開けた。

「・・・ん〜・・・」
「ジャッくん、こんなところでサボろうなんていい度胸じゃないの。
寝るなら家に帰ってからにしなさい」
「あぁ、姉さんか」
「悪かったわね」

椅子を何個か並べてその上にjackは寝ころんでいた。
マイ枕まで持参しており、完全に寝る体制に入っている。
Carryの視線を感じしぶしぶjackは起き上がった。

「部活していこうか、いかまいか悩んだところで眠くなって今の状態に至ります」
「嘘おっしゃい。完全に寝に来てたでしょう」
「このまま帰ると電車乗り過ごしそうで‥‥」

はー、とCarryはため息をついた。
この弟のマイペース具合には本当に呆れる。
Carryは机の上にとんと袋を置いた。

「はい、これ」
「・・・何それ・・・?」
「クッキー。家庭科で作った」
「マジでっ!?」

jackの声のトーンが上がる。

「欲しかったら、先週の実験の結果と考察仕上げてから帰ってきなさいよ」
「・・・う・・・」
「忘れないうちにさっさとする!」
「・・・はい」
「なら私はこれで帰るから。頑張ってねジャッくん」
「え、姉さん手伝ってくれないのっ!?」
「私はもう仕上げたからね。ご飯作って帰り待ってるわよ〜」
「えー、嘘でしょ・・・」

良いおやつを貰ったとはいえ酷い交換条件だ。
jackは頭を掻いて大きく伸びをした。コーヒーでも買ってきて目を覚まそう。
いい加減仕上げないと帰宅が何時になるか分からない。
うちの姉さんはとんでもない鬼畜だ。

++++

Tharrosは舌打ちを交えながら廊下を走っていた。
日直なのをすっかり忘れていた。
掃除が終わればすぐに帰る予定だったのだが、うっかり職員室に持っていかねばならないプリントのことを忘れていたのだ。
ダッシュで職員室に届け、教室へ急ぐ。

・・・まだ、帰ってないといいんだけど・・・。

ふと、奇妙なことに気が付いてTharrosは足を止めた。

「・・・なんで、私2個分包んだ‥‥、ろ・・・?」

1つはBillyの分だ。それは間違いない。
2つ目は・・・私は、誰に渡そうと思って・・・今誰に渡そうと思ってこんなに急いでいるのだろう。
それを考えて今自分の行動に顔が火が出そうなくらい赤くなった。
当たり前のように2つ包んだけれど、それ・・・
直接渡さなくてはいけないことを失念していた。
いや、渡そうと思って今まで行動していたのだが、その行為を強く意識するまでには至っていなかったのだ。
良く考えると自分はとてつもないことを当然のように思っていたようだ。

「・・・Goodmanにあげようかな・・・」

そうよ、今から急いでも多分渡せないと思うし。
家に帰って兄さまとGoodmanに渡せばいいんだわ。そうよ、そう。
別にRikuなんて・・・

「あ、Tharrosさん。どうしたんスかこんな廊下の真ん中で立ち止まって?」
「・・・うわっ!!」

自分でも飛び上るほど驚いてしまった。
しかし、可愛くない声だ。

「リッ・・・Riku」
「・・・?・・・はぁい?」

近年にないほど、いや生まれてから飛び上るほど驚いたことなんてあっただろうか?
変なタイミング過ぎて心臓に悪い。息も変な風に上がってしまった。
見ればRikuはこのまま帰るようだ。
しっかり耳にイヤホンも装備してある。

「・・・えっと、帰るの?」
「えぇ、アニメはリアルタイムで見たい派ですし?」

当然録画もしてありますけどねぇ、はぁい。
Tharrosの脳内で、渡す、渡さないの選択肢がぐるぐる回っていた。
どうしよう・・・、
その時Rikuの背後の教室からBASの3人が出てくるのがみえた。
・・・う、あまり人にも見られたくない・・・

「Riku、すぐに追いつくから校門前で首洗って待ってて。
先に帰ったらぶっ飛ばす」
「・・・・は?ええ??」

何それ宣戦布告?果たし状?
教室に走って行くTharrosを見送ってRikuはやれやれと歩みを進めた。
彼女はいつでも物騒だ。


「お待たせ!」

息を切らして校門前まで走るTharrosにRikuは首を振った。

「いやいや、今来たところっすよ。いやマジで。Tharrosさん足早いっすね」
「そう、なら帰ろう」
「・・・?なんか用事あったんじゃないんスか?」
「別に、私も帰ろうと思っただけ」
「・・・そうですか。なら途中までお付き合いしますよ」

ヘラッと笑うRikuにTharrosはコクリと頷いた。

++++

「なぁ、SEVEN。今日家庭科でクッキーを作っていたことを知ってたか?」
「あ、あの匂いクッキーだったのかぁ・・・。
体育の途中であの匂いまき散らすとか鬼だよね!」

放課後、BASの3人は特にすることもなく、学校裏でたむろっている。
たまに他の部活の助っ人として抜き出されたりするが、最近は試合の季節でもないらしくお声はかからない。

「・・・で、結構ギリギリまで教室で粘っていたわけだが、Sakuraが俺に渡してこないのは照れ隠しととってもいいのだろうか」

悩ましげなポーズをとるAshを軽く無視してSEVENが続ける。

「え、元々お兄ちゃんの分はなかったっていうオチじゃないの?」
「もしくは他の人の分だったんじゃないの?俺とか」「俺とか」
「お前らに俺の姫はやらんぞ!」
『いや、いらんし』
「んだと、もいっぺん言ってみろ!」
「Ash面倒くさい」

AshとSEVENが取っ組み合いになるのをスルーしてBillyが時計をみた。

「んじゃ、俺はTharrosからクッキーをもらう系の仕事があるからこれで帰るわ」
「え、ちょ、Billyはん何気に勝利宣言辞めてぇぇ〜俺ら悲しくなるから!」
「はっ、そうか、学校では恥ずかしくて渡せないから家で・・・のパターンか。
よし分かったぞSakura!お兄ちゃんは今帰る!!」
「Ashは少し黙っていようか」

++++

「・・・ったく・・・SEVENはどこほっつき歩いてんのよ・・・」

委員会の仕事が長引いてしまい、すっかり日も傾いてしまった。
足早にFIVEは渡り廊下を歩く。
温かかったクッキーも少し冷えてしまった。
作ってすぐに渡せば良かったのだが・・・そんなこと、できるはずがない。

「・・・最初から・・・家で渡す方が良かったわね」

それでもなんとかして早めにという自分の気持ちがあり、こんな時間になってしまった。
もういつ渡しても変わらないだろう。
自分が素直じゃないのは認めているが、本当に損だ。
睡蓮みたいに真っ直ぐで、Carryみたいに余裕があって、Tharrosみたいに行動力があれば、私だって・・・

「もう、あいつのことで悩んでるなんてアホらしいわ。
時間の無・・・」

何かの気配を感じてFIVEは振り返った。

「SEVENトリニティアターック!」
「それはもう見切っているわ!」

華麗に交わし、SEVENにドヤ顔で返す。

「フッ、流石俺が認めたFIVEタソ‥・・。Ashに使う技じゃ歯がたたねぇ」
「そんな雑魚技で私を倒そうなんて百年早いわ」

更なる技を仕掛けようとしたSEVENだが、FIVEの手にあるものに気が付いてパアァァと表情が明るくなった。

「もしかしてFIVEタソそれクッキー??」
「・・・え・・・?」

FIVEの表情が強張る。こんな袋生で持っているんじゃなかった。
しかし、SEVENの嗅覚と野生の勘は伊達じゃない。
誤魔化す術もなくFIVEは降参した。

「・・・え、えぇそうよ・・・!
でも別にあんたの為に作ったわけじゃないんだから」

降参はしたが、最後まで素直に渡す彼女ではなかった。

「調理実習で作ったんだよね〜。丁度お腹減ったし俺に頂戴!半分で良いから分けて!!」
「・・・う・・・、そこまでいうなら、あげなくもないけど・・・」
「よっしゃ!
FIVEタソのクッキーゲットだぜ!」
「あんたの作ったものより、美味しくないかもだけど・・・」
「やー、そんなことはないっしょ。FIVEタソの料理俺好きだよー。
・・・ていうか・・・俺の作ったもの美味しい?そんなに美味しいの??」

ニコニコして詰め寄るSEVENにFIVEはフンッと顔を背けた。

「う、うるさいわっ。・・・もう、日が暮れる前に帰るわよ」
「はいはい、今日は何食べたい?」
「・・・カレー」
「了解♪」

顔が赤いのは夕日のせいに決まってる。

++++

タンッ
矢が真っ直ぐ的の真ん中に吸い込まれていく。
最後の矢を打ち終わり、Faltはふぅ、と息を吐いた。
静寂から後ろから歓声が上がる。

「いえ〜い!!皆見てたかこの野郎〜!!」

先程の集中力はなんだったのか、という程の変わりよう。
盛り上がりすぎて客席に尻まで降り始める始末。
素直に感動していたLamiaだが、その後の調子の乗り具合に直ぐに感動が消え去る。
もう本当なんなのアイツは!!
怒りに任せて傍に合った吸盤付きの玩具のダーツをFalt向けて投げた。
それはまっすぐに飛び、綺麗にFaltの額に当たった。

「いって」
「Falt、調子乗ってんじゃないわよ」
「ヘイヘイ・・・。久しぶりにパーフェクトだったから少しはっちゃけすぎただけじゃない」
「何が少しよ。上の弓道着脱ぎ始める馬鹿がこの世界のどこにいるのよっ」

籠の中に合ったダーツをもう2本とる。

「いい加減にしないと次は乳首狙うわよ」
「いやん、Lamiaちゃんたら大胆!
でもLamiaちゃんの為なら俺的になるわ!俺のハートを射抜いて!!」

ばっと腕を広げたFaltに、Lamiaの視線は氷点下まで下がった。

「・・・誰か。弓と矢持ってきて・・・。お望み通り射抜いてやるわよ」

既にこのくだりまで日常茶飯事になってしまった弓道部では既に慌てる者は1人もいなかった。
ひとしきり騒いで、何事もなかったように次の練習が始まる。
落ち着いたところでFaltが水分補給にやってきた。
Lamiaは無言でペットボトルをFaltに差し出す。

「・・・おめでと。久しぶりじゃない、完璧なのは・・・」
「まぁねぇ。ちょっと願掛けしてたのが良かったのかも?」

タオルで汗を拭きながらFaltが言った。

「・・・願掛け?」
「・・・『パーフェクト取れたらLamiaちゃんのクッキーが貰えますように』って」
「・・・ばっ・・・ばっかじゃないのっ!?」

動揺しすぎてスコア版を落としてしまった。
ていうか、なんで私がクッキー持ってんの知ってんのよ、こいつは・・・っ。
でも、悔しいがさっきのは素直に感動してしまった。
元々渡すつもりではいたが・・・。

Lamiaは鞄の中に手を突っ込んだ。
そしてFaltに投げつける。

「・・・こんなので良かったら・・・毎日あげるわよ。
その代わり全部完璧にこなしなさいよ」
「マジでっ!?
マジでくれるのLamiaちゃんっ!?」

少し餌付けしすぎたらしい。

「・・・えーと・・・やっぱり考えておく」
「よっしゃー、俺超やる気出た。
今なら世界一の射手になれる気がする・・・。ちゃんと見ててねLamiaちゃん!」
「・・・・はいはい」

あんたの才能だけは認めてるんだから・・・ね。
大きな息をついて、Lamiaは立ち上がった。
私も負けてはいられない。パーフェクトを取った暁にはFaltに何かせびるんだから!

++++

帰り道、駅前の雑貨屋を巡っていたSakuraは目立つ赤髪を見つけた。
この辺で赤髪といえば自分と兄しかいないのでよく分かる。

「あれ?お兄ちゃんどうしたの?こんなところで・・・」
「うお、Sakuraか!!」
「今帰り?」
「・・・おぉ、まぁな。Sakuraも寄り道か」
「うん。新しい髪留めが欲しくて・・・」
「見つかったのか?」
「うーん、あまり好きなのがなくて・・・」
「ふーん・・・」

Ashは目の前の雑貨屋の前の髪留めの前で立ち止まった。
品を一瞥して、おもむろに1つ掴んだ。

「・・・これ・・・」

すっとSakuraの髪に当ててみた。

「派手ではないが、Sakuraの髪にでもよく映る」
「・・・え」
「どうだ?」

Sakuraの手に選んだ髪留めを置く。
それは桜の形チャームが付いた髪留めであった。
元々目立つ赤髪なので、どんな髪留めを買っても髪の色に負けていたが・・・確かにこれなら目立ちはしなくても存在は主張できる。
何より、桜が可愛らしい。

「可愛い・・・これに、しようかな」
「よし、お兄ちゃんが買ってやる」
「え、そんな。いいよ・・・」
「気にすんな」

Sakuraの頭を軽く叩いてAshは店の中に入っていった。

「ほれ」
「ありがとう・・・」
「いいってことよ。さて、帰るかー。Aquaの手料理が楽しみだ!」
「あの、お兄ちゃん」
「・・・ん?」

Sakuraが鞄の中からクッキーを取り出しAshに差し出した。

「これっ、お礼ってわけじゃないけど・・・あげる」
「・・・お、おう・・・」

貰えるか、貰えないか正直気になってはいたが、そんな損得感情など一瞬で消え去った。
素直に嬉しい。ていうかSakuraが超可愛い。

「サンキュー。俺以外の奴に渡してないよな」
「ないよ、お兄ちゃんだけ。
・・・あ、あともう一人・・・」
「なっ、誰だっ!?俺の目が黒いうちは他の男には・・・」
「・・・Aquaお姉ちゃん・・・」

・・・何この天使・・・っ。
Ashは感動した。本気で感動した。
感動しすぎて今日記念にケーキを買っていこうかどうしようか物凄く迷った。

++++

「ただいま」
「おかえり、兄さま」
「オカエリナサーイ、Billyサン」

既にTharrosは帰宅していた。
そのまま台所に行き、冷蔵庫を開ける。あった、ジュース。
Tharrosの様子を横目で見ると別段変わった様子はない。

とにかく気になることは1つだけ。
Rikuにクッキーを渡したか、渡してないか。

「Tharros・・・今日・・・」
「・・・?・・・あぁ、兄さま」

Tharrosが目の前にあった小袋をBillyに渡した。

「クッキー。調理実習で作ったの。
ハチミツも少し入れたから・・・甘いと思う」
「・・・ん、ありがとう」

淡々とほぼ無表情で行われているこの会話だが、Goodmanは微笑ましすぎる視線を送っていた。
なんか2人の背後にぽわぽわお花がみえる。
トテモ和ミマース!

丁度汲んだジュースと一緒にクッキーを頂く。
ハチミツが入っているとはいえ程よい甘さに仕上がっており、普通に美味しい。

「うん、美味しい」
「そう?」
「・・・皆で食べたのか?」
「うん、・・・あと、Rikuにもあげた」
「そうか」
「うん」

ぽわぽわと2人の周りには変わらずお花が浮かんでいたがGoodmanが内心穏やかではなかったのは言うまでもなく。
後日遊びに来たRikuがGoodmanから凄い視線で睨まれていたのはまた別に話。
ないわー、マジないわー(^ω^)

++++

おまけ

「ねぇ、Nobutunaさん」
「なんだ、Sky」

日が傾くにはまだちょっと早い時間帯。
日の当たる屋上に2人はいた。

「俺らにはクッキーないんですかね?余り物でいいから・・・」
「まぁフラグがないからな」

どんなメタ発言も通ってしまう。それがMHD。
Skyははぁ、とため息をついた。

「えー、そんなことなら俺本当は作者の中ではAquaさんから貰える予t」
「マジかッ!?マジでかっ!?そうなのかっ!?
Skyだけは信じていたのにっ!」
「ほら、NobutunaさんはあれじゃないですかHidetunaさんとなんか仲良くやってればいいと思いますよ。
地味に人気出てるじゃないですか」
「野郎じゃねぇか!!
俺はおっぱいでかいお姉さんが良い!」
「ほらティガ子さんとか熱烈なファンがいるじゃないですか」
「せめて人間にしてぇぇ!!」
『・・・・。』

一通り騒ぎきって、2人はまた空を見上げた。
遠くから喧騒が聞こえる。

「まぁ、ここで騒いでも仕方ないしな」
「そうですね、腹の足しにもなりませんし不毛ですね。」

Nobutunaはポケットからチュッパチャップスを取り出しSkyに差し出した。

「うぅ、Nobutunaさん優しい」
「野郎から貰って喜べるなら何よりだ」
「あらー、お邪魔だったかしら?」
「あっ、Carryさん!」

Skyがガバリと起き上がる。

「教室行ったらいなかったし少し探したのよー。
飴があるならこれは不要かしら?」
「ええっ!!マジでっ!?貰えるんですか!!」

Carryの手には2つの袋があった。

「まぁ日頃お世話になってるからね。どうぞ」
「ありがとうございますっ!
ひゃっほぅ!女子の手作りクッキー!」
「お前は素直でいいね、・・・あんがとさん」
「Nobutunaさんの心境を代わりに表現したにすぎません(キリッ)」
「はっ倒すよ、お前」

Carryはクスクス笑って手を振った。

「早く余り物じゃないお菓子貰えるといいわねぇ」
「うるさいわ、それに帰ったんじゃないのか?」
「忘れ物があったからねぇ。・・・要らないなら返してもらってもいいんだけどそのクッキー。
私食べるし」
「有難く頂戴いたします」

そんなこんなある日常の一欠片。

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