ユクモ村に強風が吹き荒れる。
余計な物がなくすっきりした集会場でギルドマネージャーは、明かりのない中1人カウンターの定位置で酒を飲んでいた。
クエスト版に貼られた受注書は破れ残った紙面だけが中途半端に風に煽られる。
ハンター達で賑わった椅子や机も吹き飛ばされて今はない。
人々を癒す温泉も強風により荒々しく波を立ってている。
お湯はすっかりにごりまるで地獄のよう。

古龍出現の緊急事態として村から村長を筆頭に全員避難させた。
腕に覚えのあるハンターは討伐へ赴かせたし、それ以外のハンターは村人達の護衛を任せた。
そして自分はここにいる。

天災を纏いかの地から龍が舞い降りる。
残されるのは全てが破壊された不毛な地のみ。

湿気を纏い、生き物のようにうごめく暗雲を見上げる。
かの地へ討伐に行った気高きハンター達に幸あらんことを。

もう祈る意外に、道はなかった。

++++

まともに立っていられない程の強風に思わず膝をつく。
どれだけ叫んでも相手に声が届いているか自信がない。
自分がもう少し強ければ・・・そんな後悔ばかりが溢れるが今そんなことをしたところで何も変わらない。
そこにあるのは、絶対的な存在に挑む小さな人間だ。

「Tharrosちゃん!!」

メンバーの中でもひときわ小さな体が宙を舞う。
強い風に煽られ空中で弄ばれ、そして重力に従い地面に真っ直ぐ落ちていく。
強風を逆手にとってSakuraはTharrosの着地点まで走った。
上手く走れず、それでも地面に叩きつけられるよりはましだろうと体ごとぬかるんだ地面に突っ込んだ。
遅れてその上ににTharrosが降ってくる。

「・・・っ」
「Tharrosちゃん」

Sakuraの上に突っ伏したまま動けないTharrosをSakuraが抱きかかえる。

「・・・Sakura・・・?・・・なんで」
「無理はしないでっ!
Tharrosちゃんが倒れたら、この戦い・・・」
「・・・・・・・。」

Tharrosは悔しげに顔を歪める。
こんなはずじゃなかった。もっと、もっと戦えると思っていたのに・・・。

「・・・ユクモ村を、任されたのに・・・」

・・・兄さま、貴方なら・・・きっと。Rikuならもっと・・・。
暴虐女帝の名が聞いて呆れる。
古龍1体も、村1つも守れないのか。
なにより、
託された使命を守れないことがなにより悔しい。

「・・・Tharrosちゃん・・・」

傷だらけになりながらも、意志のある瞳で敵を睨むTharrosを見て、Sakuraも唇をかみしめた。
強くて優しい兄を思い出す。
どうして、どうして私じゃ護れないの・・・っ!?
護りたくて、ハンターになったのに。

「・・・お兄ちゃん・・・」

刃となった一陣の風が巨木をなぎ倒す。
見つめる先には嵐を纏い優雅に宙に浮かぶ、アマツマガツチの姿があった。


古龍の出現が各地で多数確認されたのは数ヶ月前の話。
滅多に来ないチャンスに学者たちがこぞって生態の調査に乗り出し、多くのハンターが死地に向かった。
ハンターの実力不足か、それとも古龍が強かったのか、死地から帰還した者はあまりに少なかった。
不審に思ったギルドが、ギルドナイトの精鋭を向かわせ討伐に踏み切ったところ精鋭体はほぼ全滅。
生き残りがやっと伝えた伝言は、『G級、いやG級以上のモンスターが多数出現している』という言葉のみであった。

古代遺跡に残る古龍の記録や肖像画。
一度滅んだ文明。
『太古の文明は古龍によって滅ぼされた』と誰かが主張していたその言葉も、今なら理解できるような状態に世界は包まれていた。

強大な力を持つ古龍の影響はじわじわ人間の生活に影響し始め、すでにいくつかの村や町が潰されている報告も日を追うごとに増える一方。
ハンターズギルドも対処はするが優秀なハンターが減る一方な現状を打開できず、最近は民の避難を優先している。
世界に広く分布しており、どこより確かな知識と情報網をもつハンターズギルドの機能も薄れ、世界は大混乱を極めていた。

MHDにもギルドからの正式な救援要請が来てNobutunaを始めとしたメンバーが頭を悩ませていたところに、ある一匹のアイル―が集会場にやってきた。

「Nobutuna、Nobutunaはいるかっ!?」
「ネコートさんっ!?」

その姿にいち早く反応したのはRikuで、Rikuの姿を見た途端崩れるように座り込んだ彼女を抱える。
いつもの気高い姿から想像つかないほど衰弱しているようにみえる。

「どうしたの?貴方らしくもない」
「・・・Riku・・・Nobutunaは・・・」
「いるよ、奥に」
「・・・どうしたんだ?そんなに慌てて」

かつてポッケ村で上位クエストを受注する際お世話になった仲だ。
ここは笑顔で迎えてあげたかったが状況が許してくれなさそうだ。
RikuがNobutunaに近い自分の席にネコートを座らせ、新しい水を用意する。
Rikuの用意した水を一口飲み、ネコートは力なくいった。

「・・・ポッケ村に、G級、・・・いやG級ではランク付けられない程の古龍の出現が確認された」
『・・・・っ!』

ネコートの言葉にその場の全員が固まる。
噂に聞いていたが、ポッケ村にも魔の手が忍び寄ってきたということだ。

「・・・雪山にクシャルダオラの出現が報告された。
現在村に直接的な被害はないが、奴の呼ぶ風のせいで連日大吹雪・・・。
地熱のお蔭で村が埋もれることはないが・・・。
それも時間の問題であろう・・・」

雪による被害を免れても雪山に孤立してしまう。住人にとっては命が少しだけ伸びただけだ。
涙を貯めながら、でも流さまいと気丈に話すネコートにメンバーが口を閉ざす。

「今、ユクモ村の専属ハンターをしていることは分かっている。
クシャルダオラを倒してくれともいわない・・・。
・・・でももし手を貸してくれるのなら、住人の避難を手伝って欲しい。
クシャルダオラの出現で雪山のモンスターが下山してきているのだ。
村長からの手紙を預かっている。あとクエストの受注書も。もし受けてくれるのならば・・・」

Nobutunaが村長の手紙を読み瞑目した。
シンとした空気が集会場を包む。

「・・・どうなんだ?こういうのは・・・」
「ワタシにそれをきくかねぇチミは」

背後で静かに話を聞いていたギルドマネージャーが口を開いた。

「俺達はあんたに雇われてるようなもんだ。
あんたの許可なしに離れるのは契約違反だろ」
「離れたいときは積極的に交渉するのにこんな時だけワタシに判断仰がれてもねぇ・・・。
私が行けと言ったら行くのかのぅ」
「・・・そのつもりだ。
・・・できれば、全員連れて行く」

ギルドマネージャーは目を開いた。

「それを許可すると思う?」
「許可しないといけないだろ?
俺らのG級装備はポッケ村にしかないんだぜ。
上位装備でG級クエストなんて、そんな縛りゲー俺はしたくないわ」
「・・・・。」

世界がこのような情勢にある中、ユクモ村近辺にも古龍が出現する可能性は極めて高い。
少し考え、ギルドマネージャーは大きな息をついた。

「全くお前らときたら・・・」
「決まりだな」

MHDメンバーはNobutunaの言葉と共に立ち上がった。

「おっしゃー!久しぶりのG級だぜぇ!!」
「早くポッケ村行きたいガルルガたんhshs」
「レウス装備はこっちの方が好きだったんだけどなぁ・・・」

騒ぎ出すメンバーに一瞬驚いてネコートは苦笑した。

「・・・まったく、お前たちには恐れ入るよ」
「まぁそれがMHDですかねぇ、はぁい」

ネコートはギルドマネージャーに一礼した。

「お心遣い痛み入る」
「なぁに。そのG級装備でユクモを守ってもらうだけの話じゃよ。
他人事とは思えないからのぅ」

ギルドマネージャーはそういい遠くの空を見た。
まだ災厄を乗せた風は吹いていない。

++++

Nobutuna達が一度アマツマガツチと対戦した話は聞いていたがその時彼らは上位装備で討伐に向かっていた。
自分達が彼らに劣ることを考えたとしても、どの攻撃もアマツマガツチに効果がないということはない。・・・はずだった。

G級以上のモンスター。

未知なる存在に気丈に立ち向かった彼女達であったが、その堅い鱗に全ての攻撃が効かなかった。
Sakuraの太刀や睡蓮の槍は堅い鱗に阻まれ、Tharrosのハンマーも傷をつけることすらできなかった。
Lamiaの貫通矢は弾かれ、FIVEの貫通弾Lv3がやっと突き刺さるくらいだ。
その弾もすぐに尽きてしまい、決定打にはならない。
拡散弾も目くらまし程度にしか効果はないようであった。
流石にバリスタは効果はあるように見えたが、弾もすぐに尽きてしまった。

長時間の戦闘の上、強風に叩きつけるような雨ぬかるむ地面に体力を削られ、彼女達にも限界が来ていた。
3つの竜巻が地面を襲う。

それを何とか避けながらLamiaは矢を打ち続けた。
時に強風に煽られ、時に鱗に阻まれる。
貫通矢がモンスターに届かないことなんてなかった。ましてやユクモでも最上ランクの弓だ。

「なんで届かないのよっ」

Lamiaが歯噛みする。
FIVEも残った通常弾を打ち続けるがすべて堅い鱗に弾かれ地面に虚しく落ちるのみである。

「もーっ!!ちゃんと刺さりなさいよ、根性なしが!!」

文句を言いながらも、効かないと知りながらも2人が続けるのはせめてもの足掻きだ。
近接組は今までの戦いで怪我もしているし体力も限界にきてしまっている。
回復薬も尽きた今、自分達が動かなければ、ここで何もしなければアマツマガツチはユクモ村へ進んでしまう。
私達は村を守るためにここに来た。
そのクエストを受けた以上、ここで引くわけにはいかない。

FIVEは走りながら顔に狙いを定める。
宙に浮く巨大な龍の部位破壊をどんな状況でも的確に狙えるのはこのパーティの中で自分だけだ。
目を潰せれば・・・もしかしたら、何かが変わるかもしれない。
ライトボウガンを打ち続け、ボウガン自体が熱をもつ。
支える腕も、指も反動で痺れて思うように狙えない。雨で視界がぶれる。
出来ない自分に腹が立つ。

「・・・アイツだったら・・・」

家にいるときも、皆の前にいるときも、狩りの最中も。
SEVENの、SIXの笑った表情しか思い出せない。
どんな状態に追い詰められても、人生の崖っぷちに立たされた時だって
それすら楽しんでいるのに。
FIVEは頭を振って立ち止まり、アマツマガツチを再度睨みつける。

「・・・やってやろうじゃないの。ここで終わるとかNUMBERSの名が廃るわ」

絶望すら、楽しみに変えて。
口元にうっすら笑みすら浮かべ、FIVEは弾を入れ替えた。


「せめて・・・時間だけでも・・・っ。・・・っうわっ!」

泥濘にはまり、Lamiaがバランスを崩した。
その瞬間、Lamia向かって水球が放たれる。

「・・・しま・・・っ」
「Lamia!」

Lamiaの前にCarryが躍り出る。

「Carry!?」
「・・・いたたた・・・。
・・・大丈夫よ、水耐性これでも結構あるから・・・」
「何馬鹿なことしてんのよCarryっ!?
あんたがまともに受ける事ないじゃないっ!?・・・粉塵だって、回復薬だって・・・」
「・・・だって貴方達が倒れたらそれこそ・・・」
「・・・やめて・・・よ・・・」

滲む視界を、声にならない声をLamiaは全て飲み込んだ。
涙なら、お礼なら、謝罪なら・・・全部あとでするべきだ、

「・・・Falt、私はもう絶対失わないわ」

自分も、友達も・・・
全部、守ってみせる。
きしむ体を叱咤して立ち上がり、弓をつがえる。

「・・・Carry、もう少し頑張ってね」

Lamiaが遠ざかる足音と風が吹き荒れる音、叩きつける雨音。
疲れ切った身体には全てがもうどうでも良いものに感じた。
既に恐怖など感じることはなく、いっそ死んでしまえればいいのになんて思ってしまう。
痛みに顔をしかめながらCarryは起き上がる。
そういえば久しぶりに痛みを我慢している自分に気づく。
自分のため、他人の為に粉塵を使っているため、長く強い疼痛とは縁がなかった。

護ったつもりが護られるなんて・・・粉塵王の名が泣くわ。

先程のダメージで起き上がるのが今は精一杯だった。
頑張ってくれているLamiaのためにも死ねない。
あぁこんなことなら回復笛でも持ってこれば良かった。
jack、貴方ならこの状態でどうやって仲間を助けてあげる?


地面を割るような勢いでアマツマガツチが水ブレスを吐く。

「・・・・っ!」

その進路をみて、Sakuraが慌てて移動する。
Tharrosを抱えての移動は中々思うように進めなかった。

「・・・Sakura。おいていって」
「絶対いや」
「Sakura!」
「いやよ!!」

アマツマガツチから高圧で噴出される水の刃は真っ直ぐ2人に向かっていった。

「大丈夫だよ、2人共」

2人の前に睡蓮が盾を構えて立った。

「睡蓮ちゃんっ!?」
「・・・すい、れん・・・?」

睡蓮の盾に当たって水がはじけ飛ぶ。

「・・・・っ」

耐えきれない。
勢いに睡蓮の体は大きく宙に投げ飛ばされた。

「睡蓮ちゃんっ!」

後ろでSakuraの声が聞こえる。
耐えきれなかったけど、2人は無事なのだろうか。
ミスターと狩りに行って少しは強くなったかと思ったけれど・・・。
全然強くなかった。
少しは、足並み揃えて並べると思ったのに。

ミスターは今元気だろうか。
どうせここで終わるのならもう一度、ミスターの笑顔が見たい。
ミスターの声が聴きたい。

「睡蓮!」

吹き荒れる風の中で、幻聴が聞こえたかと思った。
ふわりと温かい風が周囲を取り巻き、傷が癒えていく感覚に、閉じかけた瞳を開く。
誰かに受け止められて、視界いっぱいに入った顔を見て睡蓮は息が止まるほど驚いた。

「・・・ミスター?」
「ユクモ村の近くにアマツマガツチが出たっていうのを聞いたから心配で心配で・・・。
生きててくれて良かった」

抱きしめられた腕が暖かくて、睡蓮も抱きしめ返す。

「・・・ミスター・・・」

ミスターは睡蓮の顔を見ていつもの笑顔で微笑み返し、そしてアマツマガツチを見た。
感動の再会に浸っていたいのは山々だがその前に解決しなければいけない問題がある。

「なんで君らが戦ってんの?ノブちゃんたちはっ!?」
「ポッケ村でG級クシャルダオラが目撃されたからってそこに・・・」
「ポッケ村にいるのっ!?
・・・うそだー、すれ違いとか・・・」

ミスターはガクリと項垂れた。
ミスターの装備はユクモで見かけるものと少し違う。

「SakuraちゃんやTharrosさんが倒れてるってことは、それほど強いってことだよね」
「うん、G級・・・よりも強いかもって・・・」

ユクモ村にいて、上位モンスターしかしらない睡蓮はそれ以上のことは分からない。
ミスターは少し俯いて真剣な顔で思案し始めた。

「・・・ミスター?」

睡蓮が不安そうな顔でミスターの顔を覗き込む。
いくつかの足音がミスターと睡蓮に近付いてきた。

「ミスター、粉塵ありがとう」
「・・・皆、生きててくれて本当良かったよ。
遅れてごめんね」
「・・・で、ここに来たからには何か策はあるんでしょうね」

Carryが戸口一番に問う。ミスターは苦笑して頷いた。

「・・・1つある、かもしれない。
あるけれど、これは本当はノブちゃん達に渡そうと思っていたんだ。
でも、今の状態をなんとかしないわけには前に進めない・・・」

全滅よりは、マシ、か・・・。
立派なハンターの瞳をした少女らをみてミスターも覚悟を決めた。
・・・皆シスコンだし、後々凄く怖いけれど・・・。
それでも戻ってきた時に動かなくなっている彼女らをみるよりずっとマシだろう。

ミスターは腰から布袋を取り出した。
その中には紅玉にも、護石にも似た石が詰め込まれていた。

「これは・・・なんて言うか、モンスターの力を凝縮した宝珠なんだ。
紅玉とかとは違う。
護石みたいに持っているだけで、そのモンスターの力が得られるという特殊な宝珠。
でもこれは直接モンスターの力を自分のものにするものだから使う時は体に凄い負担が・・・ってちょっと!」

ミスターが話をしている最中、Tharrosは勝手に袋を開けて中を物色していた。

「・・・要するに、これを使えば強くなれるってことね」
「強く、うん、凄く強くなる。その強さはモンスターに匹敵するほどなんだ。
これは人間の枠を超えてしまう力」
「・・・分かったわ、ありがとう」

黒い宝珠を詰まんで立ち上がるTharrosの腕をミスターは慌てて掴む。
分かってない、全然分かってない!

「さっきもいったけどこれは人間の枠を超える力。
言うの忘れてたけれどこれを使った人間の正式な資料やデータは存在しないんだ。
ただの言い伝え、一種の伝説に近い。
もし失敗すれば宝珠の中で荒れ狂うモンスターの力に飲まれてTharrosさんは人ではなくなってしまうかもしれない・・・。
それでも使う覚悟と力を制御する精神力がいるんだ。
あとその力をその体で使いこなさなきゃいけないから体にも凄い負担がかかる」
「忠告ありがとう、それくらいの覚悟は出来てる」

宝珠をもつ手から巨大な力が感じられる。
まるでモンスターと対峙しているような圧迫感。

「・・・もう一つ、考えて欲しい」

ミスターの手を掴む力が強くなる。

「Tharrosさんを凄く大好きで心配している人がたくさんいることも、忘れないで。
Tharrosさんにもしなんかあったら・・・BillyやGoodmanや・・・その、Rikuとかも・・・」

Tharrosは少し驚いたように目を大きくし、そして少し笑った。

「兄さまだったら迷わず宝珠を手に取るわ。
あと・・・例え私が獣になったって、Rikuが私を嫌いになるわけがない」

そう言い切ったTharrosをみて、あぁ、なんて強い人だろう。と思わずにはいられなかった。

「なら私はこれかしら。へぇ結構綺麗じゃない」
「私はこれに決めたー!」
「ちょ、Carryさんっ!?FIVEちゃんも!!
これその辺に売ってる宝石じゃないんですからねっ!?
それに・・・」

Carryの人差し指がミスターの口元にあてられる。
焦るミスターに2人は飛び切りの笑顔を見せた。

「・・・これしきのことでガタガタいう弟がいたら教育のしなおしね。
私の躾が足りない証拠よ」
「こんな面白そうなもの、乗らなきゃNUMBERSの名が廃るわ」
「面白そうなことって・・・あの・・・」
「本当に綺麗ねー、この宝珠!」
「でもただの宝石とは違う感じがする。凄い力を感じるもの」
「Lamiaちゃん、Sakuraちゃん」

前向きすぎる彼女らにおろおろするしかないミスター。
SakuraとLamiaは微笑みながら言った。

「・・・もし何かあってもミスターさんのせいじゃないです。
これは私が決めて、私が勝手にやったことですから。
お兄ちゃんに何か言われても無視でいいです」
「そーよ、そーよ。
もしFaltも突っかかってきたら追い返してやって。
これは私の強さでもあり、弱さなんだから・・・何があっても自己責任、でしょ?」

「・・・あ、」

本当はもっと考えて欲しかったのだけれど。
状況が状況でも、君たちを愛する人って、君たちが思ってる以上に君たちの事を思ってるんだから。
やはり止めようかと思い動こうとしたとき睡蓮が口を開いた。

「ねぇ、ミスター」
「・・・睡蓮。・・・睡蓮は・・・」

睡蓮はミスターの皮袋から何も宝珠を取らず口を縛ってミスターに渡した。
何も宝珠を選ばなかったことにミスターは少し安心した。
選ばないことも勇気だ。
これを使うのは禁忌に振れることに等しい。

「ミスターは、私がその宝珠で力を手に入れたら、私を嫌いになる?」
「なるわけないよ!でも、・・・」
「そう、・・・それを聞いて安心した」

そういって睡蓮はミスターの首に腕を回した。

「・・・睡蓮?」
「・・・その袋の中にピンとくる宝珠がなくてね」

睡蓮の言葉の意味に気づいたミスターは顔を強張らせた。

「睡蓮、だめっ」
「ここにあった。
・・・ミスター、これ、もらうね」

ミスターの首から紐で下がっていた赤茶色の宝珠を睡蓮は手に取った。

「大丈夫、ちゃんと戻ってくるから。
大丈夫だよ、ミスター」
「すいっ!!」

そう言って睡蓮は皆の元に走っていった。

―汝、力を望むか。

―全てを、護る力を。

宝珠の光が増し、強い光が辺りを包む。
ミスターは思わず目を瞑った。
そして開いた時に見た光景は、新しい装備と、新しい武器を持った6人の少女の姿があった。

急に存在感を増した人間たちをみてアマツマガツチが咆哮を上げる。
その咆哮を物ともせず、彼女達が各々の武器を構えた。
武器の使い方は、既に知っている。
先程までの体の重さはなく、強風も気にならない。

迫力を増し続けるアマツマガツチであったが、既に恐怖は薄れていた。
新たに手にした力が解放されたいと荒れ狂う。

再度アマツマガツチが咆哮したと同時に彼女たちは同時に地を蹴った。

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