せっかくなので横になっていたらどうやら寝ていたようだ。
時計を見ると丁度13時を回ったころである。
枕元にどうやらCarryが置いて行ったらしい荷物があった。
ポーチを空けると化粧道具が溢れんばかりに詰まっていた。
『化粧崩れは女の恥!
自由に使ってね』
ご丁寧にメモ付きである。
・・・ていうかいつおいたんだ。
Tharrosは鏡をみて自分の顔を確認する。
いつもと少し違う自分の顔。
正解か不正解か分からず、そのままTharrosはベッドに座った。
外から入ってくる光と風が心地よい。
ブナハじゃなかったら・・・今頃水没林でロアルドロス狩りをしていただろう。
狩りにも行かずこんなところで寝ている自分が急に苛立たしくなった。
自分はハンターだ。
狩りをせず、こんなところで休んでいるなんて・・・馬鹿らしい。
Tharrosはポーチを腰につけ、かたげてあるハンマーに手をかけた。
もうなんでもいい。
今から行けるクエストに行こう。
++++
バタン、と勢いよく扉をあけたら目の前にRikuがいた。
『・・・・・・。』
2人とも驚きで見詰め合いながら固まった。
・・・なんでここにRikuが・・・。
・・・なんでこんなところからTharrosさんが?
先に我に返ったのはRikuだった。
「どうしたのTharrosさん。専用入口から」
「・・・別に・・・」
「ていうかブナハ完成したからねぇ。
うん、・・・うん・・・やっぱり似合うわぁ。私のチョイス天才的じゃね?」
勝手に自己満足するRiku。
Tharrosも褒められて悪い気はしない。
Rikuがいる場所は丁度クエストの受注書が張られている看板の前だった。
装備からして今からどこかにいくつもりなのだろう。
「今から狩りに行くの?」
「・・・えっ!?
・・・えぇ・・・まぁ‥‥?そんな感じ?」
今日は炭鉱夫になろうと思っている、とは流石のRikuもTharrosの前で言えなかった。
いくら見た目がオシャレ装備といったって背にしょっているハンマーは百戦錬磨のオーラをびんびんに放っている。
ガチだ。
Tharrosの実力から考えてまさに、『装備なんて飾りっすよww』だろう。
なんか一緒に行く雰囲気になってしまったのでRikuは改めてクエストを眺めた。
一応Rikuにもプライドというものはある。
Tharrosの前でだらしないところは見せたくない。
ので難しすぎるクエストはパス。
かといって簡単過ぎるクエストだとTharrosがつまらないだろう。
クエストは朝張り出される。
そのあと来たものから更新されていくが、基本朝の方がオイしいクエストが多い。
そして余った物から選ばなくてはいけないので、選出がさらに難しくなる。
極端な物しかない。
「Tharrosさん、なにか行きたいのある?」
ここはTharrosに任せてみようかと思ったがTharrosも渋い顔をしている。
どうやら求めていた物がなかったらしい。
うーん、と唸る2人の背に声が掛かった。
「上位のお二人さん!
良いクエストが届きましたよー。お迷いならいかがですか?」
渡されたのは、孤島のリオレイアの討伐クエスト。
確かに地形、報酬、難易度も丁度いい感じだ。
「へぇ、悪くないねぇ。
Tharrosさんどうする?」
Tharrosもそう思ったのだろう。頷いた。
「これで良い」
「では、お気をつけて〜」
++++
ネコタクに揺られ、海を渡って孤島にたどり着いた。
天気もいいし、散歩をするには丁度いい天気だ。
Rikuは思い切り腕を伸ばした。このまま昼寝とか最高だと思うんだけど。
自然と欠伸も出る。
Tharrosはムスッとした表情でRikuを見た。
今からモンスターと命のやりとりをするのだ。
まだリオレイアの出現エリアではないにしろ、その気の抜き方はなんだ。
遠くをみて、『あ、あの雲ラピュタあるんじゃね?』と呟いたRikuにTharrosの中で何かが切れた。
「‥‥Riku」
「なに?Tharrosさん」
「今からリオレイアを狩りに行くの」
「まぁ、そうなるねぇ」
「なんでそんなに緊張感がないのっ!?」
「・・・ん?」
RikuはきょとんとTharrosをみた。
Tharrosの言っていることの意味が分からない顔をしている。
Tharrosにはそれが理解できなかった。
ふつふつと怒りが沸いてきて、力任せに言葉を吐こうと息を吸ったところでRikuが苦笑した。
「・・・ごめんねぇ。
俺空気読めなくて」
「・・・え・・・」
「あいつらは移動中もくそやかましいからさー。
そうだよね、狩りの前には集中したいよねぇ」
次はTharrosが理解できなかった。
なんで、この人は笑うのだろう。
他人に強い言葉をぶつけると、必ずこちらに敵意を向ける。
Rikuには、それがない。
どれだけぶつけても、さらりと交わしてしまう。
かと思えば、ふらりと近寄ってくるし。
「・・・やっぱり、私あなた嫌いだわ」
「・・・お?」
狩りが始まる前にこれですか?
Tharrosとはどう考えても相性はよくないだろうと思っていたがここまでとは。
Rikuは苦笑するだけだった。
「まぁ・・・相性って、あるよねぇ。人間だもの」
TharrosはそんなRikuを見て、1つの結論を出した。
私を1人のハンターとして見ていない。
私の言葉をただの子供の癇癪として受け止める。
それが悔しくて、Tharrosはぎゅっとこぶしを握った。
気づけば、1エリアの端まで歩いてきていた。
空気が震える。
RikuとTharrosは同時に目を細めた。
耳に微かに入ってきた竜の咆哮。
「こっちよ」
Tharrosが走り出した。
Rikuもヘビィボウガンに弾を装填し、その後を追う。
隣のエリアにリオレイアはいた。
どうやら食事中のようだ。
「いやぁ、こんなに近くにいるとはラッキーだねぇ」
敵の前だというのにTharrosの勘に触る軽口を叩くRikuにイラッとしたが今は無視だ。
狩り中の雑念は己を殺す。
Tharrosはハンマーの柄に手をかける。
敵に近付くにつれて走りを加速させる。
タイミングを掴み、ハンマーを持つ手に力を込める。
先手必勝。
獲物に齧り付くリオレイアの頭部を思いきりハンマーで振りぬいた。。
あまりの衝撃にリオレイアは仰け反る。
そして首を戻し、Tharrosを怒りの目で見降ろした。
Tharrosも冷めた目で見返す。
お互いがお互いを敵とみなした瞬間。
火の粉がリオレイアの口元でパチパチっと散る。
オオオオォォオオオオオオ!
耳をふさぎたくなるほどの咆哮、衝撃。
Tharrosは黙ってハンマーを構えなおした。
++++
Tharrosさん、マジパネェ。
TharrosにBillyを重ねて見てもいいくらいだ。
見た目は可愛らしい小柄の女の子だが、果敢にリオレイアに向かっていく様はまさに『暴虐女帝』の名にふさわしい。
ていうかうちのメンバーの中でも上位に入るんじゃないかこの強さ。
流石Billyの秘蔵っ子。
ロリで暴虐でブラコンな妹とか・・・Billyはんったら最強ね!
Rikuも加勢するため、ヘビィボウガンを展開させる。
スコープを覗き、素早く頭に照準を合わせ引き金を引く。
ハンマー使いであるTharrosも主に頭を狙うため、攻撃が被らないようにリズミカルに引き金を引いていく。
敵にあたるたびバチバチと光る電撃弾。
ちゃんと準備してきてよかった。とRikuは思った。
ここで弾切れなんてやらかしたら、レイアよりもTharrosに倒されてしまいそうだ。
こちらの攻撃にも気づいたのかレイアがこちらに飛んできた。
ポッケ村を拠点にしていたころにもレイアはいたのだが、地方によってレイアの攻撃モーションも違うらしい。
前のレイアの方が良かったんだけど、そう思いながら転がって回避する。
そして背後に素早く照準を合わせた。
経験を積むとスコープを使用せずとも敵の位置に合わせ打つことも可能だ。
止まらない電撃弾の威力にレイアがたまらず悲鳴を上げた。
「まぁ私ですからねぇ。はぁい。」
後ろから閃光のようにTharrosが駆け抜けていく。
溜めていた力を全てボウガンに託す。
リオレイアの首が垂れた瞬間、タイミングよくTharrosは飛んだ。
跳躍からの振りおろし。
リオレイアの頭部が破壊された。
低いうなり声と共にリオレイアの口から炎が溢れる。
収まりきらない炎は周囲を一気に高温にした。
Tharrosがそれを悟り、少し距離を置く。
周囲を震わせる大きな咆哮。
リオレイアが怒った。
火球ブレスを絶妙によけながら、Tharrosは果敢に挑む。
軽装からか体が軽い。
体全体が炎の熱で熱くなるのは厄介だが、この軽さはなにものにも代えがたい。
敵が怒り状態時でも猛攻するTharrosにRikuはほとほと感心した。
こっちは、敵が射程内からどんどん離れていって移動すら面倒くさく感じてきてしまっているのに。
これだからパーティプレイは・・・。
そう思いながら、ベビィボウガンを担いでリオレイアの元へ走った。
攻撃射程範囲内まで辿り着き、ボウガンを展開させようとしたときRikuはあることに気づいた。
そういえば、Tharrosさん強走薬飲んでたっけ?
Tharrosと狩りにいったことはほとんどないので分からないが、Billyはよく飲んでいる。
それがどううということはないのだが、なんというか違和感がする。
Tharrosの止むことのない攻めは強力だ。しかしそれは諸刃の剣。
昔、弓を使っていたから分かるが、溜め攻撃で減るスタミナの消費量は半端ない。
強走薬を飲まず、調子にのって猛攻した結果、溜まりに溜まった疲労は・・・
Rikuは反射的にボウガンを担いで走り出した。
リオレイアの目の前。
喉から溢れ出てくる炎の渦。
Tharrosは火球だと判断し、Tharrosは横に回避しようとした。
が、麻痺したように体が動かない。
それがスタミナ切れだと気づいた時には目の前に大きな丸い火の玉が見えた。
「・・・・っ」
真正面から受ける熱気。
次に来る衝撃に耐えるため顔を庇った瞬間、
「Tharrosさん!!」
横から思いきり突き飛ばされた。
スタミナ切れの束縛から逃れた体は反射的に後ろを振り返る。
そこにはいるはずのないRikuがいた。
火球が爆発する。
「Riku・・・ッ!!!」
地面にうまく着地して叫ぶ。
自分でも驚くほど大きな声がでた。
なんでRikuが私を庇って・・・だって後ろでヘビィボウガン打ってたはず・・・。
私のこと、嫌いなんじゃないの?
後悔、屈辱、心配、怒り、悲しみ・・・
色んな感情がTharrosの中で荒れ狂う。
しかし、怒りを露わにするリオレイアの前で悔やんでいる暇はない。
下手をすればRikuが死ぬ。
全ての感情をハンターいうプライドで抑え込んだ。
Tharrosから表情が消える。
Tharrosはハンマーを手に走り出した。
「あつぅ・・・レイアさんパないわぁ。想像以上。
・・・・・・お?・・・え、あの、Tharrosさん?」
標的はリオレイアではなく、Riku。そのままハンマーで水のある方角へ吹き飛ばす。
これで火属性やられはなくなっただろう。
そしてTharrosはリオレイアに向き合った。
感情は高ぶっているのに、頭の中心はえらく冷めている。
強走薬を飲んだような昂揚感が全身を包む。
体が、軽い。
負ける気がしない。
リオレイアが飛び上り咆哮する。
着地の風圧に髪とスカートがなびいた。
「絶対に、許さない」
自分の弱さを。
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