悪魔と巫女と新しい出会い


よく晴れた朝のことであった。
村のはずれに一人の巫女と村人達がいた。

「本当にありがとうごぜぇますだ・・・・」
「・・・いえ、私は当たり前の事をしただけのことで・・・。
この辺は村の守り神もどうしようもありませんし・・・・・。
それに、私はお礼に宿とこんなにたくさんの食料をもらってしまって・・・・。
ありがとうございます。
それではこれで・・・・」
「はい・・・お気をつけて」

ある村の畑荒らしの妖怪を倒して、今出発しようとしている巫女が一人。
彼女の名は、雅。
今は修行の旅に出ていて、全国を周りながらその土地にいる悪魔や妖怪を退治している。

いつのころからか、この世界に妖怪がうろつくようになっていた。
人々はその妖怪を避けながら細々と暮らしていた。
あまりの妖怪の増えように、人間達は自分達を守る術を見つけた。
そして今では山奥にひそかに住む少数民族だけでその術は伝わり、世の中に退治屋として存在する。
雅もそのうちの一人だった。
今は巫女の見習いとして国中を周っている。

「・・・さて・・・・」

数時間歩るいたところにY字路があった。
右に行けば山道・・・・。左に行けば街道。
雅は双方の道をもう一度見て、顎に手をあて少し考える。

旅をしてもう一年にもなるし・・・・・。
そろそろ山に行ってもいいかな・・・。
妖怪や悪魔を戦う術も大体つかめてきた。
もうそろそろ次の段階に挑戦してきもいだろう・・・・。

昔師匠に教わった。山の化け物は人里のものよりも強いと・・・。
旅に出る前にもまずは街道にいけと教われた。

・・・・・では右に行くか・・・・・。

好奇心と向上心が強く、右に進む雅。
しかしこの選択が彼女にとって、運命を変える選択肢になるということはまだ彼女は知らない。



「・・・はぁ・・・はぁ・・・・」

坂もきつくなってきた。
舗装された道路に比べて何倍も歩きにくい。
久しぶりに息が上がる。雅は足をとめ立ち止まった。

木がたくさん生い茂ってあたりは結構暗くなっている。
何か嫌な予感がした。
こちらに何かが向かっている気配を感じた。
雅は構えた。

パシッ

腕にツルが巻きついた。

「・・・・・何っ!?」

パシパシッ

足首や手に草のツルが巻きついた。
まさかツルが・・・・気づかなかった・・・・・。
体力が普段よりも減っていて、集中力もかけていた。

しかし、今の状態を悔いるよりも打開する事が先決だ。
雅は身動きの取れない身体をなんとか動かしてみようと思う。
意外にツルの力は強く、雅の力ではびくともしない。
三本の手足はもう巻きつかれているから使えないものとして・・・・・。

ガサガサッ・・・・

木の化け物だ・・・・・。

『貴様ノ・・・・・貴様ノ魔力ヲ・・・・・。』

「・・・・私の・・・魔力・・・・・!?」

そういえばなんか体がだるいような・・・・。

「・・・・っ・・・・・。」

一気にトゲが刺さって血が流れている。
ツルの巻きつく勢いはとまらないし、このままじゃトゲにさされて終わり・・・・。

腰の小刀に手をかけた。
何とか切り落とさないと・・・。死んでしまう・・・
初めに腕に巻きついているツルに小刀を突きつける。
しかし、ツルに当たった瞬間小刀の動きは止まった。硬くて切れるどころか突き刺さらない。
力も抜けてきて手から小刀が落ちる。

「・・・・あっ・・・・」

最後の片手もツルに巻き取られてしまった。
身動きはもう取れない。

・・・・!?

雅はこちらに向かってくる気配に気がついた。
それはとても速い速度でこちらに向かってきている。
そして木の枝が揺れたかと思うと・・・・。
次の瞬間、体が自由になった。
雅はすかさずお札を取り出し、構える。

『クソッ・・・・・・・・。今度コソ・・・ッ。』
「闇に染まったもの・・・・・。今こそ我が封印するっ!!」

雅の元へ伸びてきたツルから彼女のかざした札に吸い込まれていく。

『ギッ・・・ギャァァァァッ!!』

不快感を思わせる叫びとともに木の化け物は消えた。

「・・・ふぅ・・・・・」

雅のお札はその場で消えた。
危ないところであった。鋭い棘のおかげでところどころに傷ができてしまった。
白い巫女装束にも赤の斑点が出来ている。
とりあえず、周りに妙な気配がないのを確かめてから、雅はその場にへたり込んだ。
力が入らない。
しかし、視線は背後の木の上に向けていた。

「はははっ、君って結構強いんだねぇ・・・・」
「・・・・貴方は誰・・・?
なぜ私を助けた・・・・??」
「別に?通りかかって大変そうだったからね。
人が死にそうなのにそのまま見過ごすなんてできないし・・・・」

木の上にいたのは同じ歳くらいの青年。
金髪で身体は細いがそれなりにいい体格をしている。腰には大剣があった。
人懐っこい笑顔から、悪い奴には見えない。
今の力量からみて、同業者というところだろうか。

「・・・・・・とりあえず助けてくれたことには礼を言う・・・・。
ありがとう・・・・」
「どういたしまして・・・・・おっと・・・今動くのはよしたほうがいいよ??」
「・・・・??」
「さっきの化け物。君に棘刺していたでしょ??多分麻痺させるなんかがあったと思うよ。」
「・・・・えっ・・・・??」

傷口は数カ所。
雅は大きく息吐をいた。また面倒な敵と出会ってしまった。
青年は続ける。

「どういう理由で旅してるのか知らないけどさ・・・・。
山の中に入るのは危険だよ?特に一人で」

青年が木から飛び降りて雅の前にしゃがんだ。

「でも・・・・。今から引き返すわけにもいかない・・・・。
誰が何と言おうと私は道を進む」
「じゃあ、この森の出口まで案内するよ。その方が安全だろ??」

少年がにっこり笑った。
雅は少し考えてから答えた。

「・・・ありがとう・・・」



なんとか歩けるまで回復した雅は山の麓向けて歩き出した・・・・・のだが・・・・・。
麻痺と怪我方は雅の術で大分治った。
治癒の術を覚えていて本当に良かったと思う。

「本当にこの道であっているのか??
どんどん森の奥にいっているみたいだが・・・」

登るわけでもなく、下るわけでもなく、平坦な森の中を歩いていた。
木が所狭しと生え、辺りはどんどん暗くなっていく。
雅の心配をよそに青年は笑顔を崩さない。

「大丈夫だって♪この辺が近道なんだ♪」
「・・・本当に??」

明らかに胡散臭い。
雅は、ため息をついた。別に急ぐわけではないが、無駄な道を進むのは好きではない。
しかも、長時間歩いていることで苦手な山の悪魔や妖怪と会う可能性が多い。
そう思いをめぐらせていると、早速頭の中に言葉が響いた。

《サァ 来イッ! ココニ来ルンダッ!!》


今度は読めた。
何かがこっちにやってくる。
なんとなく雅は身構えた。

「どうしたんだ??」
「何かがこちらに来る。気をつけろ」
「・・・・なに・・・・!?」
青年も大剣を構える。

ザザッ

目の前に大きい蜘蛛が現れた。

「・・・・・・・・・」
「・・・・蜘蛛の化け物か・・・」

その大きさに怯んだが冷静を保つ。
今度こそ捕らわれたら終わりと思う。

「なぁ、こいつを倒せるか・・・・??」
「あぁ、俺の手にかかれば軽い、軽い♪」
「すまぬが・・・・・。私は蜘蛛とかそういうやつは苦手なのだ・・・。
だから早めに倒したい」
「大丈夫だって♪俺がすぐ倒してやるからさ!!」

雅を背に青年は蜘蛛に向かって大剣を構えた。

「・・・いや私がやる。動かないでくれ」

雅はお札を出した。
しかもさっきよりも強力なものを。

「この世に住み着く悪魔よ・・・・。今我が汝を封印するっ!!」

雅は目の前にいる青年に思い切りお札を貼り付けた。
札に刻んである文字が赤く浮かび上がる。

「・・・なっ・・・なにするんだっ!!」

青年の抗議も雅はさらりと流す。この札を貼られてしまえば低級悪魔くらいならもう逃げられはしない。

「貴様こそ何するんだ。
勝手に樹海まで迷いこませてその挙句に蜘蛛まで呼ぶとは・・・」
「さっきの木の化け物もお前の手先だろう??
相手が悪かったな。私は貴様に会ったときから気づいていた。大人しく封印されろ。
・・・助けてくれたことには心から感謝する」

青年の顔が険しくなる。もはや悪魔の本性を隠しきれないようだ。
蜘蛛が二人に襲い掛かってきた。
雅は造作もなく、蜘蛛に札を貼り付けた。

「・・・悪しきものよ。安らかに眠りたまえ」
『ギッギャァァァァァァァッ!!』

蜘蛛の姿が消えた。
そして、青年も倒れた。

辺りに静寂が訪れた。
やはり悪魔の術にかかっていたらしく、周囲はどこか分からないが山の中だった。

雅はため息を吐いて前髪を掻き揚げた。
残ったのは先ほどの少年の抜け殻。
顔色が悪いが体に異常はないらしい・・・・・。

「さて・・・・どうしたものか・・・・」



「・・・・・・ん?」
「・・・起きたか・・・」

雅は、何とかさっきの青年を担いで道らしい道に出た。
そして水源らしくところを見つけ、そこで一休みすることに決めた。
周りに結界は張っておいたので周囲に敵が入ってくることはないであろう。
もう夜になる。

青年は大きな欠伸と伸びをして、周囲を見回した。
そして大きく首をかしげる。

「・・・・・ここはどこだ??・・・・そしてあんたは誰だ・・・??」
「お前はさっきまで悪魔に取り付かれていた。それを私が助けた。
気分はどうだ??」
「・・・・うーん??別に普通だけど・・・」
「それは良かった」

雅はまた先ほどまで読んでいた書物に目を落とした。
青年は身体の調子を見てからまた周囲を見回し、そして雅にまた話しかけた。

「ねぇ・・・助けてもらって厚かましいんだけど・・・」
「何だ?」
「お腹減っちゃったんだけど・・・何か食べる物ってない?
俺の荷物はないし、あるのはこの大剣だけで・・・・」
「・・・・・・・・・・・。」



「ぷっぱぁーーっ・・・・・。ありがとうっ!!ほんとに死ぬかと思った。」
「・・・それにしても食べたな・・・」

自分の食料を分けてやったが、この青年、雅の三日分の食事を全て平らげてしまった。
おかげで自分のこれからの旅の予定が大いにくるってしまったことになる。
雅はこの青年を連れてきて初めて後悔した。

「あっ、ごめんごめん・・・・。
それにしても、最近の記憶がない・・・・・。昨日何食べたっけ・・・・??」
「記憶がないのはきっとおまえの意識を吸って力にしていたんだろう・・・・。
早めに私が見つけてよかったな。手遅れになると死んでいたぞ??」
「マジか!?じゃあんたは俺の命の恩人だなっ!!
・・・なんかお礼できればいいんだけど・・・・・。
そうだっ!!そのようだと旅をしているようだな。じゃあ俺を護衛として連れていってくれっ!!」
「断る。」

雅は即答で答えた。
別に一人でもやっていける自信は大いにある。
しかも、この男一人でも五月蝿そうだ。

「そんなぁーいいだろ??」
「私は別にお礼など入らないし、護衛などもいらない。
それに私も一応お前には助けてもらった。借りは十分に返せたし、返してもらった」
「嫌だ。絶対ついていく。うん、ついていく。」
「断る。私の旅は悪魔を倒す修行の旅なんだ。危険になるし私のせいで怪我させたくない」
「別にかまわないからついていく!!怪我したってなんとかなるさ!!俺頑丈だし。
あんたの盾くらいにはなれるよ。
それに、俺はもう決めたんだっ!!」
「私の意見を聞け・・・・」

しかし、青年の抗議は延々と続き、雅はいい加減うっとうしくなってきた。
・・・・まぁ・・・・先ほどの大剣のつかいようから見ると、悪くないし・・・。
また後々に説得していくとするか。
山を降りるまではどうせ一緒に行かないといけないといけないのだし。

「・・・・分かった・・・。もう勝手にしろっ。」

雅の方が先に折れた。

「やったぁ♪
じゃ勝手にする。よろしくなっ・・・えっと・・・」
「雅だ」
「雅か・・・。いい名前だな。俺はシン」
「シン・・・ね・・・」


こうして二人の旅は始まった。
これが、始まりの一歩。


   

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