都会と巫女とケーキ



サイと分かれ、二人は街道を沿って歩く。
シンがやっと敵になれてきたころに新しい町が見えた。
機械的な、発達した都市。

「・・・・久しぶりだな。ああいう大きい都市に行くのは・・・・」
「・・・俺は見慣れているからな・・・・。
もう人がいっぱいいるとこ嫌だ・・・・」

渋っているシンを雅は無視して雅は先を進む。

「いくぞ」
「やだぁぁっ!!本当に嫌だから・・・・。
お願いします雅、様ぁっっ!!」

なんか、嫌がり方がいちいち癪に障る。
雅はあっそ、と無視してそのまま中へ入っていった。

「・・・そんなに嫌なら外で待っていろ。
二、三日滞在するから」

シンにとっては街道の敵は雅がいないとまだ戦えない状態。
はっきりいって無防備に外で野宿は自殺行為である。
しかし、そんなこと雅には関係ない。

「殺す気か。」

シンはぼそりと呟いた。
雅は立ち止まり、あくまで自然に振り返る。

「・・・なんかいったか?」

その声には威圧があった。
シンは思わず固まってしまった。

「・・・いいえ・・・お供します・・・・」

なんだろう・・・最近雅は強くなってきたような気がする。
シンは泣く泣く門をくぐったのであった。



入国手続きをして中に入る。

「・・・やはり都会は空気が悪いな・・・」

抽象的な表現だが、シンは彼女の言いたいことがなんとなく分かった。

「だろ??だから・・・・」
「シン。お前は今日泊まる宿を見つけて来い。
私は買出しに行くから・・・」

雅はシンに反論する隙を与えず、そのまま人ごみの中に消えていった。

「・・・はーい」

今日はついていないのかもしれない。
こうして二人は別行動に出た。

「はぁ・・・・。ったく、こんな人ごみ歩くの本当に嫌なんだなぁ・・・。
あの国を思い出すぜ・・・。
・・・・くそぉ・・・・。」

かといって雅に逆らうと命ないし・・・。宿なかったらきっと外で野宿・・・・。
いやまだそれはいいかもしれない・・・・。
きっと、雅の張る結界の中から追い出されるだろうなぁ・・・。
絶好の餌食になるもんなぁ・・・。夜は視界が利かないし・・・。

それだけは避けたい・・・。
今までの苦い経験をシンは思い出していた。

一番辛かったのが、毒を吸い込んでしまっときだ。
本当にあの時は花畑が目の前にあった。

元は都会育ちのシンは、雰囲気だけでどこに何の店があるのか大体分かっている。
彼の勘通り、すぐに宿が連なる場所へ付いた。
シンはすぐに目星をつける。

「あぁ・・・この宿いいかも・・・・。
宿泊費も安いし・・・・料理も美味そう・・・・・。
部屋もいいし・・・・。じゃここにするか。」

・・・さて。
宿も無事にとれたところで、シンは辺りを見回す。
そういえば、忘れていたが、どうやったら雅にあえるのであろうか。
仕方ないか・・・買出し行くとか行っていたし、市場の方かな?
シンはまた人ごみの中に繰り出した。

久しぶりの都市の雰囲気にシンは懐かしさを抑えられられなかった。
左右を見れば、最近の服や、靴が並んでいる。
都会の雰囲気は実家を思い出すから嫌だ
しかし、こういう華やかな雰囲気はシン好みだった。
道端にたむろっている青年達に声をかければ盛り上がれる自信がある。
あとで服とか見ていこう・・・っと。
・・・・そういえば、ここに銀行ありそうだな。少しお金下ろして・・・・

「・・・あれ?」

喫茶店が並ぶショッピング街で、シンは見かけた顔を見つけた。
むしろこの都会の中にあっては、雅の格好はどうしても目立つのだ。
なにか、熱心にショーウインドウを眺めている。

・・・で、何してんだ??

雅があんなに熱心に物欲しがることないしな・・・・。
いつも何か買ってやる、といっても断るのに・・・・。

「おーいっ、雅っ!!」
「・・・・・シンッ!!」

以外にも驚いたようだ。
しかも何故か焦っている。
珍しいこともあるものだ。と思って、シンは雅の元へ走っていった。
そういえば、今日は朝からそっけないというか、ちょっといつもと違っていたというか・・・・。

「・・・・どうしたんだ??こんなところで。」
「・・・いっいや・・・別に・・・。
買出し終わったし・・・。
シンは??」
「あぁ、いい宿取れたぜっ!!
・・・で、何見てるんだ?」
「・・えっ・・・・それは・・・」

ショーウインドの中には美味しそうなケーキやパフェのサンプルが並んでいた。
やっぱり女の子なんだなぁ。と内心思う。

「へぇ、雅ケーキが好きなのか?
まぁ美味しいよな。普通の村じゃ中々食べられないし・・・」
「・・・あぁ・・・」

見られたことがそんなに気まずいのか目をそらしている。
雅が照れているところなんて初めて見た。
これはレアだ。
まぁ雅が食べたいというのだ。
シンは、雅の腕を握った。

「じゃ、ここは後でくるということで、まずは着替えよっか?」
「・・・はっ?着替えって・・・」
「この都会じゃその服目立つじゃん。
ということで、違う服も着てみようっ!!」

もうのりのりのシンを誰も止められない。

「服って・・・私が似合うわけないだろう?」
「そうかなぁ・・・いつも同じ格好だからあまり気づかないけど似合うと思うぜ。
それに雅の顔って結構可愛いと思うし。
心配ないって、金なら俺が払うから♪」

シンがカードを取り出す。

「・・・・あんたどこからそれを・・・・」
「それは企業秘密ってわけで♪」

実は家出する際に親父から盗んできたものだった。
別に少しくらい使ったって怒られるわけがない。というか気づかないだろう。

雅は止められなくなったシンに引きずられるしかなかった。

「えっと、じゃあ服だけど・・・・」
「・・・いや・・・。別にいいから・・・」

シンは適当に店員を探して、雅を突き出した。

「あっ、すいませ〜ん。この子に合う服探してもらえます?」
「はーい。お任せください♪」
「・・・えっ・・・あのっ・・・」

こうして雅は元気な店員さんに引きずられ、店の奥に入っていった。

「じゃ俺はそのへんぶらぶらしてくるから」
「ちょっ、シン・・・・ッ!?」



そして、服選びに一時間。髪のセットに三十分。
雅は精神的に疲労して、店を出たときにはもうふらふらだった。
だから、都会というのは苦手だ。

「はーいっ!おまたせしましたぁぁvv」
「あっ、似合うじゃん雅。」
「・・・・・////////。」

いつもの長い髪はアップにまとめられていてところどころに綺麗な髪留めがつけられていた。
服もいつもの巫女服とは違い、明るい色になっていた。
シンもシンで、新しい服を購入してきたらしい。
店員さんも思わず我を忘れて見入ってしまうほどに、似合っている。

「じゃあ、この服の代金全部あわせてこのカードで」
「ありがとうございます。
お客さんこれからデートですかぁ?」
「そうなのvv
本当ドキドキ・・・」
「・・・シン・・・」

何口走っているんだ、こいつは・・・・
怒鳴りたい衝動を抑え、雅は拳を握った。



店を出て、その辺をぶらぶら歩いた。
慣れない格好で雅はかなり周りを気にしているようだ。

「・・・どうした?雅・・・・」
「・・・いや・・・周りの視線が気になって・・・」
「そりゃ雅が可愛いから・・・」
「・・・冗談はよしてほしいのだが・・・」

シンも周囲に目を配る。
確かに、こちらに視線は向いているようだ。

「・・・でも確かにこっち見てるよな・・・・。
・・・・まさか・・・・」

まさか、俺お尋ねものになってるっ!?
あのくそ親父め・・・・。
嫌な予感も感じつつ、シンは道を進む。

「・・・・シン??」

急に真面目な顔で悩み始めたシンに雅は少し不信感を持った。
角を曲がり、シンは美味しそうなクリームの匂いをかぎつけた。

「あっ、あの店だな。じゃ食おうっ!!うん。
よし入ろうっ!!」
「えっ・・・ちょっと・・・」

雅の手をぐいぐいひっぱってシンは店に入っていった。
ちなみに町の人の目は普通に『お似合いのカップル』としか見えてなかった。

偶然入ったその店はいい雰囲気のオープンカフェになっていた。
シンは二階のベランダの日当たりの良い席を選んだ。
風も穏やかに吹き、太陽も優しく地上を照らしている。
雅は慣れない様子でまだ辺りの様子を伺っていた。
シンはメニューをみて一人で楽しんでいる。

「へぇ・・・・ここ珍しいケーキがおいてあるな・・・・。
こんなの普通の店じゃ食べられないぜ。
適当に入ったけど辺りかもな」
「・・・・そんなもんなのか?」
「あぁ、こういうのは一流のパテシエくらいしか、作れないぞ・・・」
「・・・ぱてしえ?」

聞きなれない単語に雅は首をかしげた。
いつもと雰囲気の違う彼女に、シンは微笑ましく思えた。

「デザートを作る料理人のことだよ。
デザート専門のね。本当に凄い人になると、芸術品みたいんだ。
もうあそこまでいけば食べもんじゃねぇな。
よく家でパーティやっててよく見たもんだぜ」

・・・パーティ・・・・。
シンは相当な金持ちだと見た。
そんな雅の視線にシンは気づいて、メニュー表を差し出した。

「あっ、雅も見る?」

シンがメニューを机の上において、二人で眺め始める。

「へぇ・・・どれがおいしい?」

たくさんある写真を雅は交互に眺める。あまり食べられないのでどのようなものが美味しいのか分からない。
多分、どれも美味しいものだと思うのだが。

「俺的には、これ・・・いや、このチョコレートも捨てがたい・・・・」
「・・・このパフェとかいうのも美味しそうだな」
「うん、絶対美味しいと思う!!」

二人で盛り上がっていたら、店員さんが話しかけてきた。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

シンはメニュー表の写真を指差していった。

「じゃ、俺はこのチーズケーキを。
それと、紅茶かな?」
「私はチョコレートデラックスパフェのをもらおう。それとコーヒーを。」

ちょっと奮発して欲張りしてみる。シンはおぉ、と心の中で雅に拍手をした。
正直食べてみたかったのだ。

「かしこまりました。」

店員さんが微笑ましそうに笑顔を残して去っていった。
雅はその視線に違和感を感じる。・・・そんなにおかしいだろうか?
しかし、雅の違和感はすぐに消え、思考はケーキに移る。

「・・・シン、チーズケーキとはどういうものだ??」
「あぁ、食ったことないのか?
じゃあわけてやるよ。そのかわりパフェを少し分けてくれ。
デラックスってあるからな・・・食べられなかったらいくらでも食べてやるから」
「心配してもらわなくても大丈夫だ。
少しくらいならわけてあげてもかまわないが・・・」

いつもなら即却下されるところだが、雅が素直に頷いた。
ケーキがあれば性格がちょっと、丸くなるのかもしれない。

「おまたせしました。
ご注文の品はこちらでよろしいでしょうか??」
「おうっ!!」
「あぁ、ありがとう。」

大きな器にたくさんの果物と生クリーム、アイスクリームなどにチョコレートクリームを乗せたパフェに雅の目は少し輝いた。
こんなところを見るとやはり女の子だと感じてしてしまう。
二人は手を合わせた。

『いただきます。』

「・・・ほう・・・これはなかなかおいしいな。」

滅多に食べられない洋菓子に雅の表情にも笑みがこぼれる。
シンもよく味わって頷いた。

「これもいけるぜっ!!
ここのパテシエ凄腕だな」
「・・・で、そのケーキくれ」
「なんだよ、雅。もう少しそのパフェ味わってからでもいいじゃんよ。」
「しかし、お前の場合、その程度のケーキすぐに食べてしまうだろう」

確かに正論だ。
シンは頷いて、チーズケーキを一欠けらすくう。そして雅の前に差し出した。

「じゃ、はい。あーんっvv」

雅は一瞬、事の内容が飲み込めずに固まっていたが、理解すると急に表情が怒りに変わっていった。

「・・・オイ・・・・」

しかし、今日のシンはなかなか折れることはなく、さらに勧めてくる。

「まっいいじゃん♪食べないの??」

喉から手が出るほど欲しいが、雅のプライドが邪魔をする。
どうしてこいつは普通にできないのか・・・。

「はいvv」

シンが満面の笑みで見ている。
チーズの美味しそうな匂いが雅を折れさせた。
雅はシンのフォークを取り上げ、口に運ぶ。

「どう??美味しい?」

変わった味に雅はしばし無言する。しかしすぐに笑顔は戻った。

「・・・あぁ・・・おいしい。
変わった味だな・・・。嫌いではない。」
「じゃ、俺にもそのパフェくれ。」
「あぁ・・・・」

雅がパフェの器を差し出した。

「えっ、食べさせてくんないの??」

シンは物凄く残念そうだ。
雅の額に青筋が浮かんだ。

「・・・貴様・・・いいかげんに・・・・」
「いいじゃん♪」
「・・・・分かった」

・・・なんだか、もうどうでもよくなってきた。
甘いものは人を丸くさせるような効果があるのだろうか。
雅はちょうど、クリームとアイスにチョコレートがかかっている部分をとってシンに差し出す。
シンは嬉しそうに

「・・・おっ!!これ超うめぇ・・・!!
やっぱり、チョコレートはいいねぇvv」
「はぁ・・・・」

こいつには付き合いきれん・・・。
雅はさっさと、パフェを食べることに専念した。
大きな器はすぐに空になる。
久しぶりに満足した。雅はこの時間が大好きだった。
コーヒーを飲んでいると、シンが話しかけてくる。

「さて、これからどうするか?
せっかく服買ったんだからもう少し歩こうぜっ!!」

雅は苦い顔でいった。

「いや・・・。
私はさっさと宿で休みたいのだが・・・・」

特に疲れているというわけでもないが、実際今の自分の格好は人目につく。
というか、着ていて恥ずかしいのだ。
できれば、早く帰って着替えたい。

「・・・なんだよ。外では暗くなっても休もうとしないくせに」
「外は外だ。こう人が多くては疲れるだけだ」
「分かってねぇなぁ・・・・。こういうとこは、夜が本当に盛り上がるんだぜ?」
「あのなぁ・・・・。こういうとここそは宿でゆっくり休みのがいいんだ。」

二人の平行線の会話が続いた。

「・・・いやね、ちょっと小耳に挟んだことがあるんだけど・・・。
どうせ、贅沢をするんだから最後まで贅沢しようぜ?」
「・・・・何をする気だ?」
「それは後のお楽しみ。
ということで、今夜も付き合ってね。。」

店を出てからも、何故かシンに振り回されっぱなしだった。
そして夕日が山にかかる。
シンは雅をつれ、あるところに向かった。


     

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