瞳の裏側に映るもの


都市を抜け、二人はまた山道に入った。
なれた足取りで二人は山の中に入っていく。
勿論道なんてしったこっちゃない。
どんな獣道であろうと、気にせず二人は進んでいった。

勿論、二人の目の前に現れる魔物は後を絶たない。
山の中ではやはり人が少ないのか、魔物達は我先にと人間に食いついてくる。
シンの大剣が振り下ろされた。

「ふぅ、やっと戻ってこれたって感じだよなぁ・・・。
街道の敵は性にあわねぇ・・・。
こっちの敵は毒なんてもってないからな」

雅はシンの倒した魔物を封印し、消していく作業に専念する。
シンと行動してからは、魔物退治はずいぶん楽になった。
ただしその他のところで彼はトラブルを持ってくるらしく雅に取ってはどちらが良かったかと聞かれれば迷う。
雅は封印し終わって、シンに答えた。

「それはお前が何も考えずに行動するからだろ・・・。
風の向き、高低差、敵の状況把握。
それくらい気をつけて行動すれば・・・・」
「できるか。」

シンは即答した。敵の行動を読むのは苦手だ。
それよりも真正面からぶつかっていった方が気持ちがいい。
先に足を進めるシンの後についていきながら雅は一人ごちた。

「・・・私的にはこっちの方が厄介なのだがな・・・」

自然と苦笑がもれた。
降り注ぐ太陽、揺れる木陰。
とても気持ち良いものだった。

二人は相変わらず獣道をざくざくと進む。
最近気づいたことだが、ちゃんとした道を通った方が魔物の遭遇率が低いらしい。
道の途中に地蔵がたっており、それが魔よけの役割をしているのだとか。
しかし、二人の場合どうしても道からそれてしまう。
退治屋としては仕事熱心だが、生身の人間である以上疲れもたまる。
雅はまだ上にそびえる山頂を見上げた。
今日で越えられるだろう・・・・と予想していたが半日かかってもまだ頂上にはいけない。

「・・・・思ったより大変だったな・・・。
やはり街道沿いに行ったほうがよかったか・・・・」
「いやいや、そんなことないって。
こっちのほうが涼しくっていいしな♪」
「・・・そうか・・・?」

昼食を食べていたところだった。
一会話交わしてところで、何かの気配を感じる。

「・・・雅・・・・」

シンが茶をぐびっと飲んだ。
雅はシンの成長ぶりに少しだけ感心をした。以前よりも魔物を探知する力が伸びてきている。
やはり街道修行の賜物であったか・・・
しかし、これはかなりの魔力をもっているようだ。

「・・・そうだな・・・・
本気でいけ。
悪魔の一種だ・・・・」

魔物と悪魔の違いはあまりない。悪魔の方がより知能を持っていて、戦闘能力も高いのだ。
雅としては雑魚の部類に入るが、油断をすれば以前のシンみたいに体をのっとられてしまう。

お札を何枚か取り出し、精神を集中させる。
黒い影が雅にむかって飛び出した。

キンッ!!

シンの剣が動きを止める。

「へぇ・・・・。
思ってたより使いやすいじゃん、これ。」

シンがサイにもらった剣を使い試すようにしばらく悪魔とじゃれていた。
シンが悪魔の動きを封じているうちに雅は封印の準備をする。

「闇に染まりし者・・・。
今ここに我が封印するっ!!」

呪文を唱えたところで気づいた。
・・・一匹じゃない・・・

シンの前の敵を封印して雅は背後に視線だけ向ける。
複数いる。・・・しかも、これは囲まれているといった方がいいかもしれない。

「・・・なにっ!!」

いきなり、四方八方から飛び出してきた敵にシンがひるむ。
雅は危険を察知して、宝珠をつかんだ。

「・・・・『ウィン』!!」

・・・こいつらを吹き飛ばせ。

サクラが頷いた、ような感覚があった後、シンを囲むように強い風が吹き荒れた。
そしてあたりに魔物を吹き飛ばす。

「・・・・どうも。助かった」
「・・・あまり、使いたくなかったが緊急事態だな・・・。
・・・シンも一度使ってみてはどうだ??
もしものとき、使いこなせなかったらいけないからな・・・」

まず彼の場合媒介があるとはいえ、きっと魔力の配分や操るコツなどあまり分かっていないだろう。
もし一発本番で使われ、自分まで巻き込まれてしまうのが一番困る。

「・・・・いいのか??」

シンの目がいくらか楽しそうだ。
やはり使ってみたかったらしい。雅は頷いた。

「・・・いいだろう・・・。しかし無理はするな。
サイも少しはフォローしてくれるだろう・・・」

シンはサイからもらった剣をかかげて唱える。

「・・・・『ウォン』きてくれっ!!」

剣の先から大きな水の球ができた。
そして、溢れ出すように周りに流れ出す。

「・・・何っ!?」

雅はすぐに反応して木の上に上る。

「・・・あれ??」

シンも予想以上の力に苦笑した。
流れること滝の如し。
これが暴走なのだろうか。雅にはいまいち判断ができないのだが、水は止まることを知らず流れ出ている。
悪魔たちは当の昔に流されてしまっていた。

「・・・シン、とにかく止めてみろ!!
周囲に被害が及ぶっ!」
「えー、無理。」

その負けを潔く認めるシンに雅は脱力感を覚えた。
どうしてこいつはこうなんだ・・・?

「・・・一応どのようにしたいかくらいは心の中にあるはずだろう?
サイも水を媒介にこの辺にいるから、呼びかけてみろ」
「・・・えっと・・・じゃあ・・・・
とりあえず、水は止めてくれるか?」

《OK。お兄さん。》

脳内にサイの声が響く。そしてすぐに水は止まった。
シンはその場で膝を突いて倒れた。

「大丈夫かっ!?」

確かに今回は魔力を使いすぎたのかもしれない。
もともとシンはあまり魔力がないように思われたから余計に体に負担がいっているはずだ。
雅がシンを抱き起こしたときには、シンは笑う余裕はあったらしい。

「どうよ、俺の力」
「・・・まだまだだな。
そのようでは使いこなせるかすら不安だ」

雅の辛口コメントにシンは撃沈した。
・・・少しは褒めてもらえると思っていたのに・・・。

しばらくその場で休んでから、二人はまた歩き出した。
雅は魔力を抑える術を使った。魔物達に存在を知られない工夫だ。

「・・・なかなかだな。ウォンの力は。」
「そうだよな・・・。いきなり滝みたいに水が落ちてくるんだもんよ。
・・・・でさ、雅。俺あんまり動いてないのに今凄い体に力が入らないんだけど。
なんかあるのか??」
「・・・魔力の使いすぎだ・・・。
使いすぎると精神面と共に体力も削る。
シンの場合は全力でやりすぎだ。もう少し押さえてやらないと長期戦に響くぞ・・・・」
「じゃあ、どうすんのさ」
「頑張れ。」
「・・・・オイ。」

もう少しわかりやすいアドバイスくれよ・・・・。
ふと空を見上げると、一筋の煙が立ち昇っていた。
二人は顔を見合わせる。

「・・・この辺に村とかあったかな??」
「・・・・さぁ??
地図はない上、この辺は来たことがないような気がする」

だよな。

「・・・あそこに煙が昇っているけど、行ってみるか?」
「そうだな・・・・。
シンもその様子だし、野宿はきついだろう。
できれば宿に止まった方がいい」

そういって、二人は煙向かって歩き出した。
近づくにつれて強い魔力を感じた。
やはり人がいるらしいが、大層な人種の人だと伺える。

隠れ里だろうか・・・?

「・・・この魔力・・・」
「雅?」

まさかこんな隠れ里で巡り合えるとは思ってもいなかった。
やはり宝珠同士は引き合うらしい。
雅は苦笑した。

「・・・この宝珠と同じかにの魔力だ・・・・。
もしかしたら、この奥にあるのかもしれない・・・」


ザッ

後ろの木が揺れたと思うと、小刀が投げられた。
雅はシンを突き飛ばし、短剣でその小刀を弾く。
そして、続いて出てきた人影向かって走る。

金属音がぶつかった。
ギリギリ・・・と二人の力がぶつかり合う。
シンはその光景を唖然と見守っていた。
雅が目を細めたままで言う。

「・・・私とそこにいる男は旅のものだ。
一晩だけでもそこの宿に泊めていただきたい。
勿論貴方方に危害を加えるつもりはない」
「・・・ほぅ・・・しかし、貴様らの狙いはそれだけではなかろう」

雅と対峙している女性は皮肉気に笑った。
雅が視線を落とすと彼女の胸元に赤い宝珠が下がっている。
間違いなく、自分達の探している龍の宝珠。

雅は後退さって、短剣をしまった。
目の前には赤い髪と赤い瞳を持つ雅と同じくらいの年齢の女性。
長い髪は後ろで一つにくくっている。

「・・・・あんた達だね。
『ウィン』と『ウォン』を味方につけたってニンゲンは・・・」

赤い瞳がこっちを睨む。
それには殺気も多少含まれている。
隠すこともないだろうと、雅は頷いた。

「・・・そうだが?」

冷静さを保っているが、かなり彼女の目は据わっている。
両者の睨み合いは周囲にいる者を凍らせた。

・・・・女って怖えぇ・・・。

それがシンの第一感想だった。
もし、体力があったら雅の代わりに自分が対峙していたことになるだろうが、とてもじゃないが雅のように対応することはできない。
両者の睨み合いは続く。

「・・・貴方が龍だとお見受けするが・・・
名前を伺ってもよろしいか?」
「『ファイ』という・・・
でも、あんたらには関係のないことだ。
私の言いたいことは唯一つ。これを渡す気はない・・・・」

これは以外にも直球だった。
雅は面白い、と思う。
今までは少々騙されてきた面もあったが、このような反応をされてはかえって楽な気持ちになる。

多分・・・自分の中での決着はここで決まりそうだ。

「そうしたいのであれば、そうするのもいいだろう・・・。
・・・・私は、無理に宝珠を受け取ろうなんて一つも思ってはいない」

彼女は一瞬眉をひそめた。
我々の力は通常より強く、この宝珠を手に入れたものはその力に溺れてしまうことが多い。
しかし、この女はそのような欲に溺れるどころか・・・。
雅は続けた。

「私達の要求は一つだ。
今夜この村に一泊させていただきたい。
先ほども言ったとおり危害を加えるつもりはないし、無理にその宝珠を奪うつもりもない」

・・・・こいつは何を考えているのか・・・・?
ファイ自身が混乱してきた。
先日聞いたばかりの弟妹の声と、兄姉の声が同時に脳裏に蘇る。

・・・信じろ、という弟達。
・・・殺せ、と命じる兄達。

頭を振る。騙されてはいけない。そのせいで自分達は何度も深い絶望を味だった。

「・・・これを手に入れるつもりがないなら今すぐここから立ち去れっ!
村にも入れさせるつもりはない。
私の目の前から消えろっ!!」

ファイの声のトーンが上がる。
久しぶりにこんなに怒鳴ったのかもしれない。

「・・・雅ぃ・・・・。
どうする??」
「・・・・そうだな・・・・。
仕方ない。拒否されているのならば立ち去るしかないだろう。
・・・邪魔をしたな。」

雅はシンに手を差し出した。
そういえば、突き飛ばしてしまったような気がする。

「・・・悪かったな」
「・・・ん?いいって」

やけに雅が素直だ。シンは雅の手を貸して立ち上がった。
あまり感情をぶつけ合う喧嘩をしたことがないのだろう。
雅の表情はさえなかった。

チッ

ファイは内心舌打ちした。
この女、あまりにもあっさりとしすぎている。

「・・・貴様ら・・・何しにここに来た!?」

雅の動きが止まる。そして振り返った。
その瞳に、感情の色はなかった。

「貴方こそ、何故私達に会いにきた・・・?
わざわざそんなことをいうにくるために?
それとも、私たちを殺しにでもきたか・・・?」

ファイは明らかに困惑の色が見えた。
雅はそれを見逃さなかった。

「私達に何を期待するかは貴方達の勝手だ。・・・そうだろう?
サクラもサイも私達を信じて力を貸してくれているそうだが・・・。
私は球を集める気は初めからさらさらなかった。
・・・今も・・・迷っているところがある。正直、珠を集めたところでこれといって私にメリットがあるわけでもなし。
逆に命を落とす可能性も十分あるしな。
それならば、今すぐこの任を辞めても良い。
宝珠は宝珠をひきつけるそうだから、ここまで来たのは成り行きだ。
貴方方に好かれようが好かれまいが、関係ない。」

今まで黙ったいたシンが動いた。

「・・・雅っ!!それは・・・違うと思うぞ・・・・。
俺はそう思う。
サクラもシンも俺らを期待しているんだぞ!」

「・・・・・・。」

「助けるためには全ての宝珠を集めなければいけないんだろ!?
頼まれた以上、力を貸してもらっている以上、俺達は全ての宝珠を集めなくてはいけない義務があると思わないかっ!?
少なくとも、サクラとサイは俺達を信じているっ!!

・・・二人を裏切るようなことを言っているんだぞ、雅っ!!」

「・・・・分かっている・・・。
承知の上だ・・・」

雅は無表情で歩みを進めた。
シンはファイと雅を見比べて、少し考えてから雅の後についていった。


「・・・・・・っ」

二人が去った後、ファイは強く拳を握った。

《・・・・・ニンゲンに頼るな・・・・・》
《あなただったらわかるだろう!?
ニンゲンが私たちにしたことを・・・・》


分かっている・・・。
分かっているけど・・・あの二人をみて期待できないわけがない。
女の方は冷めているが凄まじい力を持っている。そして男の方は本気で自分達を助けようとしてくれている。
あそこで、逆に欲をみせてくれたら躊躇いなく手をかけられたのに。

・・・・私は・・・どうすれば・・・。

首から下がっている宝珠が赤く光っている。

・・・・しまった・・・・。

感情を出しすぎると宝珠に力が行き過ぎる。
強く光る宝珠を抑える。
ここで力を発揮してしまうと大変なことになる。
今日は風か強い。
自分は火の力をつかさどっている。このような森の中で力を発揮してしばえばたちまちあたりは火の海だ。

感情を沈めて、ファイは息を吐いた。
あの二人はしばらくこの辺りをでないだろう。もう少し考える時間はある。

・・・さて、村に戻るか。
ファイは村の方向を向いた。

「・・・・何っ!?」

村から立ち上っている煙は、大きく、そして黒い。
ファイの顔色が変わる。血が引いていく感覚がある。
そして焦げ臭い匂いが立ち込めている。

「・・・嘘でしょうッ!?」

ファイは走り出した。



「・・・・・雅、さっきなんであんなこと言ったんだ!?」

シンがいつにもなく怒っている。
雅も頭が冷えてきた。確かに言いすぎだったかもしれない。

「・・・あれが私の本心だ・・・。
言い過ぎた・・・・とも思うが・・・」
「雅は頭良いからちゃんと後のことまで考えていて、だから俺は雅の手伝いをして龍達を助けてあげようと思っていたのに!」
「流石にそれはお前の思い込みだ。
私は龍達のことはこれっぽっちも考えてなかった。
・・・・しかし・・・ここまできて、私はもう逃げられないことくらい分かっている。
これを終わらせるには、私達が死ぬか、全ての宝珠を集めるか・・・・
一つに二つだ・・・覚悟はとうに決まっている・・・」

だけど、あんなことを言ってしまうのはやはり自分の中で否定したかったのかもしれない。

シンが強い瞳でこちらを見てくる。
雅は苦笑した。

「・・・分かっている・・・。
彼女はあの村にいると言ったな・・・」

雅は顔を上げた。あの村には煙が立ち上って・・・・

「・・・ちょっ・・・・シン・・・」

思わずシンの腕を握ってしまった。
シンも雅と同じように言葉を失う。

空に立ち上っているのは、先程の細い一本の煙ではなく、空を包み込むように勢いを増した黒い煙。
そして考えられるのは・・・・

『・・・火事かっ!?』

二人は同時に走り出した。


    

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