洞窟を抜けて・・・


二人は、暗い洞窟を延々と歩いていた。
妙な音が近づいてきているので、周りに気を配らせながら。

「ねぇ・・・光とかないの・・・?」
「・・・光・・・?
ないに決まっているだろう。ここは洞窟の中なんだぞ」
「いやそうじゃなくて。
懐中電灯とかさ。俺の電池が切れててさ・・・・」
「先ほどから妙な音が聞こえるから、敵に自分達の居場所を教えてどうする。
それにここまでくれば大分闇にも慣れてくるだろう」

シンには良く分からないが、雅にはちゃんと足元が見えているらしい。
シンは元々夜目は利かない方であった。

「でもよ、俺かん体細胞が弱いらしく暗いところ駄目なんだよ。
全然見えない。」
「・・・かん体・・・?
悪いが流石にそこまで私は学がない」
「とにかく夜目が利かないって事。
本当に光はないのっ?」
「・・・・あ、シン・・・」
「何っ?」

何かに躓いてシンが前のめりになる。なんとか足を手前に持ってきてこけるのを防いだ。
別に特別なものがなくて、石が転がっているだけである。

「・・・大丈夫か・・・?」
「くそ・・・・こんなところ歩けるかっつーの」
「・・・本当に見えないのだな。
では仕方ない」

雅はライトをつけた。
初めのころはいると思って持っていたが、必要ないことがわかりここ数年使ってないものだ。
邪魔なので売ってもよかったがこういうときに役に立つとは・・・。

雅はこれをシンに渡した。

「・・・行くぞ。
これくらいなら何とかいけるだろう?」
「・・・あぁ・・・助かります。
っていうかあるなら最初から言って・・・」


妙な音は洞窟に入ってからずっと鳴り止まない。
方向感覚が麻痺してきて四方八方から音が聞こえてくる。
普通の人なら気がどうにかなりそうだが、この二人は以上にタフであった。

「・・・・でよぉ、そいつがさ・・・
雅どう思う?」
「シン、熱弁しているところ悪いのだが、人間関係を私に相談されても返答に困る。
私はかなりの間、山にこもっていて人付き合いがない」
「・・・・そんなこといわずに聞くだけ聞けよ。」
「聞くだけなら別にいいが私に意見を求めるな」

雅は、スタスタと歩みを進める。
光があるところと同じように歩く雅にシンは感心した。
ライトをもってですらこっちは足元がおぼつかないのに・・・。
いきなり、シンの足元の地面がなくなった。

「・・・なっ・・・・」
「・・・シン・・・?」

雅が振り返ると彼の姿がない。
雅はその辺をみるが、まったく彼の姿は見当たらなかった。
微かな光が下から漏れる。
雅は足元に落とし穴があることに気づいた。

「・・・雅〜〜・・・・。」

下から情けない声が響く。

「・・・馬鹿だろう・・・」

雅がため息混じりにいう。

「・・・悪かったな・・・。
っていうか助けて・・・」
「自力でなんとかしろ」
「・・・なっ・・・ちょっとまって・・・。
助けてください、お願いします〜〜っ。」

・・・・何故今までこいつと旅してるんだろう・・・。
今更ながら後悔した。

「『アス』を呼べばいいだろう。
まったく・・・」
「あぁ、そうか・・・・」

まだまだ前途多難のようだ。



洞窟に入ってから三日ほどが過ぎた。
詳しい時間は良く分からない。
とりあえず進めるときに進み、疲れたら休む。
そんな日々を送っているとやはり少しばかり精神もやられてくるようだ。

「・・・・へぇ・・・・雅も妙な修行したのか・・・・?」
「・・・妙って・・・。やはり変わっていたのか・・・・。
ははは・・・・ッ。」

シンは雅の笑顔に絶句した。
雅が今までに見たことないくらい明るい。
こんなに笑った顔も初めてみる。
別に今は違和感を感じなかった。自分も少しおかしくなってきたのか・・・・。
シンは首をひねる。
しかし・・・早くこのような暗いところから抜け出したいものだ。

昔からあまり闇は好きではない。

前方から地響きと獣の鳴く声がした。
かなり近いというか・・・前方に何かいる?

「・・・・ん?」
「・・・・なにっ!?どうした?」

シンのライトは前方を照らす。
先ほどまでなかった壁が目の前に立ちふさがった。
しかも動いている。
全く様子がわからないシンは戸惑うばかりだが、雅は鼻で笑っている。
かなり大きい敵のはずなのに。

「シンっ、これくらいの敵に何ひるんでいるのよ。
その口でよく私を守るとか言えたものね」
「・・・・雅・・・?」

明らかに性格がおかしくなっている雅にシンが一歩引く。
ここはあまり関わらない方がいい、と本能が告げている。

「・・・いっけーーっっ!!
『ファイ』ッッ!!」

一気に周りが高熱になって肌を焼く。
炎があたりをつつんだ。次に焦げ臭い匂いが鼻をつく。
敵の叫び声が聞こえる。
それでも雅は容赦しなかった。

「・・・・『フィン』ッ、あんたもいきなっっ!!」

風が吹いて竜巻が起こる。
火がそれに付け加わって大きな炎の渦になる。

―――ギャァァァァァッッ!!

敵の悲痛な叫びは洞窟内に響き渡った。
シンは心底敵に同情した。雅は多分この闇で少しおかしくなっているのだ。
いつもは自分から向かっていかないし、札を使って封印をするはずなのに・・・・。
目の前にいる敵はしっかり炎にあぶられ焼け焦げたあとであった。

「・・・・はっ、雑魚がっ」
「・・・・・雅・・・・さん?」
「・・・何だ、シン・・・?」
「・・・いえ・・・・」

敵をまたいで雅は歩みを進めた。
先ほどの声を聞いて他の敵が集まってきた。
囲まれているようだ。
シンはとりあえず剣を抜くが、意識は隣にいる雅にどうしても言ってしまった。
暗い中雅の持つ二つの宝珠はまばゆい光を放っている。

「・・・シン、下がっていな」
「はい」

逆らえない。

「『ウィン』『ファイ』ここの敵を焼き尽くせっ!!」

壁を削り、炎が洞窟内に広がる。
まるで地獄絵図の光景であった。
火にあぶられ敵が苦しみもがく。
シンは一言も口が聞けなかった。
そして食欲も徐々に落ちていき、後しばらくは食べ物は喉も通らなかった。
対照的に雅はすっきりしたようだ。

「雑魚がどれだけ束になったところで結果は同じなんだよ」

シンは家出してから初めて家を恋しく思った。



そしてしばらく歩いたところで、雅は足を止めた。

「・・・どうした?雅・・・・?」

雅の足音が止まった。(結局見えてない)

「・・・出口だ、シン」
「・・・・・出口か・・・」

シンの元に天使が降りてきたようだ。
二人は自然に歩みが速くなった。

外に出たとき、太陽が高く上っていた。
どれだけ歩いていたのかは覚えていないが、太陽の光が気持ちよかった。

雅は雅で性格も元通りだ。
いつものような鋭い目つき。
口調も戻っている。

「・・・・さぁ、行くぞ。
・・・・といいたいところだが・・・・」
「・・・・あぁ・・・」

二人は洞窟を出てから立ち止まったままだ。
見渡す限りの大草原。
目印も何もない。
ただ地平線が広がり、草が生えているだけだ。

「これは・・・餓死するな。」
「・・・・そうだな・・・・。
あいつらには悪いが、これはこえられそうにもないかも・・・」

運がよければ宝珠が導いてくれるだろう。
それに頼るしか、生きる道はなかった。

『・・・・はぁ・・・・』

しばらく呆然としていたが二人は歩き出す。
何もしなければ、何も変わらない。
こんなところで死ぬのが一番嫌だ。

何とかなる。

そんな不確定な自信が胸の隅にあった。


    

[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析