神の御告げ 事の真実


二人は久しぶりに街道に下りてきた。
緑色の草原。小さな村の集まり。

平和だ・・・

とにかく今はこう思えた。

「あの村に行くか・・・・。食料もぎりぎりもった。
・・・シン・・・
お前と出会ってから私の頭の中は食料の心配ばかりがよぎるのだが・・・・」
「良かったぁ。
じゃ、また補給できるって事でなんかくれ。」
「駄目だ。」

雅は即答で返事をした。
まったく聞いて欲しいことに限って、耳をふさぐ。
雅はため息をついた。
その後には決まっていつもの文句がついてくる。これももうなれた。

「なんでだよぉっっ!!」

いつも聞くような会話が続く。
これが平和な証拠。

しかし、そんな会話もとぎれた。
嫌な感じがする・・・・。

「シン、気をつけろ・・・・。
なにかいる・・・・」

雅が周囲を気を探る。
久しぶりに街道にきた。以前の勘を取り戻し対処しないと、少しの軽率な行動が命取りになるのである。
・・・それに・・・

「・・・・へっ!?
だって、何も動いている感じしねぇぞ」

きょとんと、シンが問い返す。
雅は軽い頭痛がした。
以前までは一人で対処していたから、まったく周囲に気にする必要がなかった。
しかし今は、シン、街道初心者な上、頭の構造は単純明快、敵に突っ込んでいく性格の持ち主がいるのだ。
話によると、山の敵としか戦ってきてないとしか聞いていないいし・・・。
街道の恐ろしさなんて分かっていないはず・・・・。

ここまで考えて、すぐに敵の対処法に思考は変わる。
そのとき、雅は強い気配を足元から感じた。

「下だっ!!」
「下ぁ!?」

雅とシンが同時に地を蹴った。
数秒送れて、地面が盛り上がり、触手が出てきたのだ。

「なにぃぃぃっ!?」

まったく気づかなかった。
敵の気配を少しでも読み取れると思っていたシンだが、雅に言われても敵の気配には気づけなかった。
・・・これは山にこもってばかりでよかったかも。
シンは雅との出会いに改めて感謝した。

「シン、これが街道の敵だ・・・・。
周囲と、風の向きに気をつけろ・・・」
「何故・・・・?」
「・・・それはっ・・・。
きたっっ」

次は四方八方から触手が襲ってくる。
雅はそれを器用によけた。
しかし、シンは剣を構えた。
それをみて、雅がすぐにやめさせる。

「馬鹿者!!剣を引けっ」
「遅いよ!!
これくらい俺でも切れるって!!」
「違うそれはっ!!」

シンが見事に触手の一本を切った瞬間そこから緑色の煙が出てきた。
雅はシンの腕を握り、走り出す。

「・・・吸ってないな?
あれは毒ガスだ。ああいうタイプのやつは、体内にも毒ガスを仕込んであり切り口からも毒を出す。
むやみに攻撃をしてはいけないのだ。
こういうタイプは私向きだな。
・・・・覚えておけ。特に街道の敵はむやみに刺激をしてはいけない」
「・・・はい・・・」

まったく雅がいなければ自分はもう敵のえさだったということか。
シンは口元が引きつるのを抑えられなかった。
雅は状況を冷静に判断した。

「とりあえず逃げるか・・・。
敵も近くに獲物がいると知って、毒ガスをあたりに撒き散らしている。
こういう敵は動けないんだ。ある程度離れると追ってこない。
あとは、敵の本体の居場所を見つけて、そこを叩けばいい」
「へぇ・・・・」
「とりあえず、あそこにある村へ向かうか。
このように村に近いところに魔物がいるのであれば、さぞかし村の住人も困っているだろうな」
「雅は、そんな人達を助けていたのか?」
「・・・まぁ一応、退治屋だしな。
それで生活している。」

敵は保留にしておいてシン達は身を隠しながら進んでいった。
丁度、この辺の草は背が高く身を隠しながら進むのには最適だった。
しかし、毒ガスが襲い掛かってきているこの状態では背の高い草むらは走りにくい。

「・・・くそ・・・足を取られるな・・・」

そのとき、シンは向こうからこちらに向かってくる音を聞き取った。
・・・敵か?
シンは一応剣を抜いた。
あの触手くらいなら切れそうだ。
しかし、予想と反して飛び出してきたのは、小さな子供だった。

「・・・何っ!?」

突然のことに体が動かない。
子供の方も必死に走ってきたらしく、急に止まることは出来なかった。

「・・・・うわっ」

倒れこむ子供をシンはなんとか抱えた。

「シンッ!?」

異変に気づいた雅が振り返る。
敵ではないことに安堵した雅だが、上を向いてすぐに顔は剣呑になる。
シン達の前には毒ガスが迫ってきている。

「とっとと逃げるぜ!
お前もここで死にたくないだろう?」
「・・・え?」

シンは子供をかついで走り出した。
雅はシンと子供を先に行かせて宝珠に呼びかける。

「・・・『ウォン』・・・来てもらえる・・・?」

宝珠が光り、風が起こる。
風の操り方なら、以前一度やったことがある。
雅は風向きを変えた。毒ガスが逆方向に流れている。
これで少しの時間稼ぎが出来るだろう。

「・・・・ありがとう」

やはり、これを使うにはかなりの精神力がいるらしい。
雅は苦笑した。

村の目の前まで二人は走った。

「シン・・・その子供、誰だ・・・?」

雅はシンのかついでいる子供について問う。
年は十歳くらいだろうか。結構良い環境で育ってきたらしい、服がそれを物語っている。

「あぁ、さっき急に飛び出してきたから、かついできた」

少年はシンにしがみついていたが、安全だということが分かると、大人しくシンから離れた。

「・・・うん。
ありがとう・・・お兄さん」

子供はシンにむかって微笑んだ。
シンも笑顔になって、少年の頭をなでた。

「おう。これからは気をつけろよっ!!
外にはあんな化け物がたくさんいるんだからなっ!!」
「お前もな。」

すかさず雅も突っ込む。
あの場で倒すつもりでいたのだが、毒ガスをまかれては、手を出せない。

「・・・・はい」

雅はまた少年に向き直った。

「・・・・で、どこから来たんだ?
あの村の者か??」
「うん。ちょっと外まで散歩してみたくなっちゃって・・・・。
家の人に黙って出てきちゃったんだ」

たしかに身なりからしてお金持ちの子。
自由に危険な外に出してもらえないだろう・・・・。
外は魔物がいるから危ない、そう一言くらい教えておかないからこんなことになるのだ。
雅は人事ながら思った。

「・・・・名前は??」
「・・・・サイっていいます。」
「・・・サイか・・・。
私達もあの村に行くんだ。一緒に行こう。
・・・・それとこれから外出するときは家の人に断ってから出るように。
もしくは、家の人と一緒に行くか・・・・」
「でも、俺もその気持ちわかるぜ・・・・
だしてもらえないんだろ?」
「うん・・・」

雅はシンを横目で見た。
やつも昔こういった境遇にあったのか?
師匠の言うとおりほとんど行動していた雅は、それがすべてであった。
言いつけを破ろうと思ったことはない。
・・・・男とはそんなものなのだろうか?
また自分の中で疑問が増えた。



前方から人が数人こっちに向かって走ってくる。

「おっ、あれが家の人か??」
「あっ・・・そうだね・・・」

従者らしき人はサイの姿を見るなり、顔色を変えて、こちらに全力疾走してきた。
何事かと雅達は首をかしげる。
従者らしきものは自分達と間を置いて、こちらに銃を構えた。

『・・・・・はい?』

まったく二人は今の状態が読めない。

「・・・あの・・・」
「サ・・・ッ、サイ様になにをしたっ!?」

緊張のせいか、声が裏返っている。
私達が何をしたというのだろうか。

「・・・・サッ・・・サササ・・・・サイ様に少しでも手を出したら打つぞっ!!」

シンが苦笑していった。

「おいおい、それじゃサイにあたっちゃうだろうが」

従者がはっ、とした表情になる。
雅はあまり事態を飲み込めていなかったが、シンはなんとなく分かってきたようだ。

「もしかしなくても、俺達誘拐犯だと思われてる?
それは、まったくの誤解だから。
ほら、サイはちゃんと返しますよ」
「そっ・・・そんなことが信じられるか!!
要求はなんだ!!
巫女の格好をしてあくどいことをするものだな!!祟られるぞ」

その台詞に雅はむっとした。
確かに巫女ではないが、悪いことをしているとは思ったことはない。
まったく誤解もいいところだ。

サイは雅達をかばうように前に立った。

「あっ、別にこの人たちは悪い人じゃないよ。
魔物から僕を助けてくれたんだ。」
「なんとっ!!あの魔物から!?」

話が通じそうなので雅が口を開く。

「私達は、退治屋だ。
先ほどこの村の近くで魔物とであったゆえ、退治しようと思ったのだが・・・・
そのときこの子供とあったので、こちらまで連れてきた」
「うん。だから、いい人なんだ。とりあえず銃は下ろして・・・。
ねぇお兄さんたちはこの村に泊まってく予定?」
「あぁ、そうだな・・・」

シンが先に返事をした。雅の方をみたら雅もうなづく。
とりあえず、明日まであの魔物の様子を見る必要がありそうだ。
今日はもう警戒心をその辺に張り巡らせているはずだ。近づくのはかなり危険だ。

「じゃ、うちに泊まっていってよ。」
「・・・いいのか・・・?」
「うん。」
「では・・・お言葉に甘えて・・・」

それで青くなったのは従者の人達。
サイが脱走したことですら、問題であるのに、身元も分からぬ旅のものを家に泊めるとは・・・。

「サイ様っ!!そんな勝手に決めてはいけませんっ!!
身元の分からぬ者達を家に上げるなんて・・・」
「・・・僕が決めたんだ。誰にも文句は言わせないよ。」

サイは見た目こそ幼いが、人を従える質というのをもう持ち合わせているみたいだ。
雅とシンは少し感心した。
村長の息子であろうか。これは将来期待できるかもしれない。

「・・・しかし、旦那様がなんというか・・・」
「大丈夫。パパには僕から何とか言っておくよ。
じゃあ帰ろう」

サイに連れられ、雅たちは村の中に案内された。
予想した通り、村長の息子だった。屋敷もそこらと比べ物にならないくらい大きい。
今日は神社に泊めてもらおうと考えていた雅だが、どこか得した気分になる。
巫女服を着ていても、中身は巫女ではない。
贅沢を禁じる理由などどこにもない。



ある地下の一室に、少年がいた。
小さな祠には青に光る水晶が置かれていた。

・・・時は来た。
僕でめるよ・・・

ニンゲンなんて信用しない。
僕たちの痛みに比べれば、ニンゲンの一人や二人の命など、どうでもいい。
これまでもずっとこうしてきた。
そして、これからも・・・。



広がる手入れの行き届いた庭園。
雅とシンは縁側に座っていた。
このような見事な庭園を見られる機会も滅多にない。
出されたお茶と茶菓子をいただきながら、二人はその景色を堪能した。

「ふぃぃぃっ〜〜〜!!久しぶりの宿だな。
なんかくつろげるぜ」
「・・・はしたない。
自分の家ではないのだぞ。
・・・・まったく」
「はっ、あんな家でくつろげるかよ。
やっぱり俺は畳が好きだなぁ・・・・」

金髪碧眼。そこまでははっきり言えないが、シンは薄い黄色の髪と、碧色の瞳の持ち主であった。
先入観もあって、あまり畳が似合わない。
畳の上にごろっとなってシンは久しぶりの和室を満喫した。
雅は注意するのも馬鹿らしくなって、茶をすすった。
本当に・・・久しぶりに贅沢するのもいい。

しかし・・・雅は目を細めた。
このような素敵な思いを満喫できない理由があった。

「シン・・・・。
なにやらこの屋敷、あまり良い感じがしないのだが・・・
気のせいだろうか?」
「・・・そういや・・・確かに違和感とかあるかもしれない・・・」
「そうか・・・・やはり・・・・」

特に強く感じる魔力もない。
別に出された食べ物には毒も入っていなかった。
うまい成り行きでこのような場所に泊まれて、上手くいきすぎ故のものかと思っていたが・・・
ふと何か気がついたようにシンが立ち上がった。
そして部屋中をうろうろする。

「・・・・どうした??」
「・・・いや・・・。ほら、こういう屋敷とかってよく言うじゃん」
「・・・何を?」
「掛け軸の裏にお札が張ってあるとかさぁ」

無謀にもシンは高そうな掛け軸に手をかけた。

「・・・そんなこと・・・この家に限って・・・」

雅は半信半疑でシンの行動を見守った。

ペラッ

「・・・・あり??」
「・・・・・・・」

否定しようとした雅の言葉が止まった。
めくったシンの動きも止まった。
雅たちを驚かせた掛け軸の裏にあったものとは、からくりがしてあります、といわんばかりの四角い切込みであった。
なんてお約束な・・・・。
しかし、こんなの現実にあったなんて誰が信じるのであろうか。
しばらく、それを見つめてからシンが呟いた。

「・・・なんでこんなものかこんなところにあるんだよ・・・」

雅も興味を持ち、シンの元にやってきた。
切り込みに触れると、壁がずれて奥になにか通路があるようだ。
また二人はしばらく絶句することになる。

「やっぱり、こういうところに財宝があるんじゃないか?」

輝かせて言うシンとは対照的に雅は至極真面目に言った。

「いや、こういうところにこそ死体とか隠してあるものではないか?」
「・・・・オイオイ・・・・
そんなもんがこんなとこにあるわけないだろ。大体隠す理由なんてないんじゃないか??」
「まぁ、そうればごもっともだが、そう考えればこの嫌な感じも説明がつく」

・・・・ごくり。

実際嫌な感じがしているのも今では否めない事実になっている。
あまり関わりたくない、という心境とは反比例して知りたいという好奇心が沸いてくる。

「やっぱり、こういうのは言った方がいいのかな・・・・」
「しかし・・・・人の家でしかも泊めてもらっている身・・・。
失礼だとは思うが、この嫌な感じの中にいるのも嫌だし・・・」
『行ってみるか。

珍しく二人の意見があった。
雅の方もこの好奇心には勝てなったらしい。
雅の了承を得てしまえばこっちのものだと、シンはいそいそとからくりの中へ入っていく。

こうして二人の洞窟探検は始まった。


    

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