新年の誓い


今年も静かに年が暮れようとしている。
年末の修羅場も何とか三十一日を持って終わり、は温かいお茶を飲みながら、一息ついていた。
隣には仮面を取った美麗の上司と目の前には優しい癒し系の上司がいた。
今年もこの二人とたくさんの戦友(とかいて仕事仲間と呼ぶ)と有意義に過ごすことができた。
いつまでこんなことをしていられるのか分からないが、今は永遠ではないこの時間を大切にしようと
は、目を閉じて今年の出来事を振り返ってみた。
はピクッと眉をしかめた。
・・・・うー・・・・戸部の日常、または他の部署の修羅場しか思い出せない・・・。

「・・・どうした?・・・」

妙な顔をして隣に座っているに気がついて鳳珠が声をかけた。

「気分が悪いなら付き合わずに休んでいていいんだぞ・・・」
「そうですよ。
せっかくの年明けに疲労で倒れるなんて冗談じゃないですから・・・」
「いえ・・・っ。そういうわけではなく・・・
その・・・今年を振り返ってみると修羅場しか思い出せないなーと思って・・・・」

それはそれで何か悲しいものがある。
鳳珠と柚梨はの言葉に黙り込んだ。

「らっ、来年はもっと楽しい年にしましょうね。
ねっ、鳳珠」
「・・・あぁ・・・善処する」

流石の鳳珠もなにやら思うところがあったらしい。

「あと仕事ですねー。もっと効率よくやらないと」
「それはあるな。流石に徹夜が辛くなってきた」
「おや、顔はそうでもないですが体の方はもう歳ですか、鳳珠?」
「・・・柚梨・・・」

鳳珠と柚梨の話を聞きながらはクスリと微笑んだ。
その時外から冷たい風が入ってきて髪を揺らす。
三人とも反射的に外を見た。

「・・・おや・・・戸は閉めたはずですが・・・」
「自然に開くことなんてないですよね・・・
・・・・ん・・・・?」

の目の前を何かが通過した。
は反射的にその何かを掴んだ。

「・・・羽根・・・」

その大きさ、色からしてすぐに持ち主は特定できた。
・・・龍蓮か・・・。貴陽に来ているのね・・・
いつも貴陽にいるときはこうやって知らせてくれた。
見慣れぬ羽根がの手にあることに鳳珠が気付いた。

「・・・それは・・・」
「あぁ、窓から入り込んできたみたいです。
・・・・あっ」

外から鐘の音が聞こえた。
新しい年が始まる。

「・・・あけましておめでとうございます。
今年もなにとぞよろしくお願いします」
「こちらこそ」

柚梨が微笑むのと鳳珠が微笑したのを見てからは外を眺めた。
今年も良いことがたくさんありますように・・・。


新年は朝廷の行事が常に行われている。
は新年からその手伝いに借り出されていた。
会場の指揮に大道具や小道具運び、酌や琴の演奏まで頼まれた。
・・・あれ、これ官吏の仕事じゃなくね?
同じく借り出されていた秀麗や影月、珀明も仕事時間が終わるまで馬車馬のように働かされた。
仕事が終わると空に星が綺麗に瞬いている。
四人で感慨深く空を眺めていると秀麗が思い出したように言った。

「・・・そういえば、今日龍蓮に呼ばれていたわよね。
時間大丈夫?」
「えっ、そうなの?」

そんなこと一言も聞いてない!!

「あぁ、昨日龍蓮さんが秀麗さんの家に突然現れて『明日、招待したいところがある』といって出て行ったんですよ」
「場所は僕が聞いた。招待状はに渡したと言っていたが・・・」
「は?龍蓮なんかに会ってないし・・・
はっ・・・招待状って・・・・もしかしなくても・・・」

は懐から昨日窓から吹き込んできた羽根を取り出した。

「それね」
「・・・ちょっとまて・・・。僕が招待されたのは・・・」

その場所を聞いて一同絶句した。

結局正体された場所についたが、勿論羽根だけでは入れるわけもなく四人は外で待つことにした。
冷たい風が吹く中、四人は固まりながら龍蓮を待つ。
途中肉まんを買い、ほおばっていた。このようなときに何よりのご馳走だと思う。
そして約束の時間をかなりすぎた時、どこからか奇妙な笛の音が聞こえてきた。
反射的に珀明が顔をしかめる。碧家に生まれた者としては敏感に反応しすぎてしまうらしい。

「全く・・・招待しておきながらなんなんだあいつは・・・」
「まぁいいじゃない。奢ってくれるようだし。
やっぱりなんだかんだ言っても藍家の力は凄いわねー」
「仮にも紅家と藍家と碧家の者が集まるんだ。
普通ならこれくらいが当然だぞ」

秀麗と珀明の会話に影月は本気で驚いていた。

「はえー・・・貴族の方って会うにつけてもお金かかるんですねぇ」
「っていうか時間守って欲しいんですけど・・・」
「よく来てくれたな、心の友達!
久方ぶりに会えて嬉しいぞ」

『龍蓮・・・・っ
・・・・・・・・・』

四人同時に口を開いたが、相変らずの衣装と性格と笛の音に怒る気が失せてしまった。

「・・・どーでもいいけど中に入りましょう。
心なしか国試の時を思い出したわ・・・」

は言ってから後悔した。心まで寒くなってしまったからだ。

龍蓮の招待してくれた店とは貴陽でも一、二位を争う高級料理店であった。
ここを使う人は最低でも彩七家と言われる。
一般庶民では一歩さえも入ることは許されない。
龍蓮は”双龍蓮泉”を見せて中に入った。
珀明は直紋を持ってこなかったことを後悔した。持っていたら中に入ることもできたかもしれないのに・・・。
着物と名前が一致していれば話は別かもしれないが、(紅家の姫もいることだし)仕事帰りなのでそうもいかない。
我ながらうっかりしていた。

中に入るととにかく目を引いた。
皆キラキラ光る着物を着ているのにこちらは先ほど外にいたときのままなの皺がついた着物。
流石にまずいと思ったのか従業員さん達が着物を貸してくれることになった。
そして、彼らの名前を聞いて更に驚くことになる。

「うわぁ・・・こんな服きたのいつ以来かしら・・・。
・・・後宮にいたとき以来・・・。
・・・ちょっ、これ汚したら弁償かしら・・・」
「いいじゃん。龍蓮に付けで」

用意された部屋に案内されるとそこは王宮の一室のような華やかさであった。
中で待っていた龍蓮や珀明も名相応の恰好をしている。影月は慣れない環境に小さくなっていた。

「影月くん可愛い〜っ」
「やっ、やめてください〜。
別にそのままでも良かったんですけど・・・」

に抱きしめられ、影月は一気に顔を赤くした。
とりあえず逃れようと動くが、高価な着物を着ている故、大きくは動けない。

「影月、どうせ大官になったらそんな恰好飽きるほどしなくちゃいけなくなるんだ。
今から慣れておけ。酒もだ!」
「・・・え・・・僕まだ十・・・。それに大官なんてとんでも・・・」
「僕より上位で国試を通っておきながらそんな事を言うか、小動物!!
よし僕が貴族という者を教えてやるからそこに座れ!
秀麗もだ。
お前も名前とそれ相応の自覚が足りなすぎる!!」
「・・・珀明・・・たった一杯で酔いすぎよ・・・。
・・・あ・・・」

は珀明と同じ酒を飲んでから気付いた。
・・・これ結構高濃度酒・・・

は一通り笑ってからいやに静かな龍蓮を見た。

「どうしたの?まぁ黙っていれば黙っていたでいいんだけど・・・」

かっこいいし、似合うし。
頓珍漢な衣装を脱いだ龍蓮はただの藍家の青年になっていた。
は龍蓮の隣に腰を下ろした。

「このような衣装は好かん」

ぶすっとした顔の龍蓮には苦笑した。
もう少し良い顔ができないものか。笑えばもっと素敵なのに・・・

「はい、お酒。
・・・飲めるんでしょ」
「無論だ」

龍蓮は渡された杯を一気に飲み干した。

「ほーっ。
・・・あっねぇ秀麗ちゃーん」
「何?」
「飲み比べしない?龍蓮いけるみたいだから」

秀麗は飛翔との最悪な思い出が脳裏を巡ったが、それほど大変なことになるまいと安易に頷いた。

「うぅ〜・・・ここで一曲〜!!
『心の友宵(酔い)の集い!!』」
「いいぞ〜!龍蓮さん」
「では僕も一曲」
『・・・・・・・・・・・・。』

秀麗とはこの惨状を見てどうすればいいかほとほと困っていた。
何故、自分達がこんな酒の強い星の下に生まれてしまったのか・・・これほど後悔したことはない。
何故、男達より強いのだ?いや強いは百歩譲って良いとして全く酔ってない自分に泣けてくる。
二人はとっくにしらけてしまった。

「どうしよっか。もう撤収する?
影月くん以外は軒に乗っければ何とかなるでしょう」
「・・・この食事・・・お持ち帰りってできるかしら・・・」
「・・・秀麗ちゃん?」

酔っているのかと思いきや意外と本気のようだ。
てきぱきと片づけをする秀麗をみて、も帰る準備を始めた。

「ほら、龍蓮、珀明笛は良いから」
「むっ、。丁度良かった。琴とあわせるぞ。心の友其の一は二胡の準備だ!」
「はいはい、明日ね。
そうだ、ねぇ今から皆で星見に行かない?
風流でしょ」
「なんと流石、話が分かる」
「だから外行きましょう。」

誘導作戦は成功。あとは軒に乗せるだけ・・・かと思っていたが、龍蓮は以外にもふらついていた。
お酒弱いなら最初から言ってよー!!(注:秀麗とが強いだけです)
肩を貸すだけなら良かったものの結局龍蓮はによしかかってきた。

「・・・えっ・・・ちょっ・・・重っっ!!
歩けっ・・・。あーっもうっっ!!」

仕方なく、店の入り口まで担ぐことにした。
途中でここの従業員さんにあったら預けてこよう・・・。
背中に半ば引きずるように歩いていると、横の回廊から同じような集団が見えた。

「どこも一緒ねぇ・・・。
・・・・あれ?」

見知った顔だと思ったらどうやら『悪夢の国試組』も新年会をしていたらしい。
鳳珠が黎深を担いでいる。
後ろには悠舜や飛翔もいた。

「鳳珠・・・様・・・」
「・・・か」

の担いでいる龍蓮を見るなり鳳珠の顔が険しくなった。
気付いているのかいないのか龍蓮の口元が微妙に笑っているのが頭にくる。

「鳳珠様達もここへ?
・・・黎深様は・・・どうなされました?」
「ちょっと姪御さんへの愛が行き過ぎましてね。
やけ酒一気飲みのつもりが飛翔への最終手段、茅炎白酒を飲んでしまって・・・」

悠舜が苦笑して答えた。
飛翔は早い帰宅に不満そうな顔だ。しかしの顔をみて表情が変わった。

「おっ、飲みなおしに
いっぱい良いよn・・・」
「良いわけないだろ」

鳳珠の絶対零度の視線が飛翔に突き刺さる。
仮面がない上少し酔ってきているのか、理性が壊れかけてきている。
本気で気功をぶっ飛ばされそうだ。

重くないか?」

担いだ龍蓮で体が半分以上見えなくなっているに流石の鳳珠も声をかけた。

「すんごい重いです。
・・・きゃっ・・・」

の足がもつれ、重心がずれる。
鳳珠は担いでいた黎深を飛翔の方に押し返し、片手で龍蓮の首元を、片手で倒れるを肩で支えた。
悠舜は遠くから、かっこいいなーと思いながら眺めていた。
仮面なんか被るから半減するんじゃないですか。勿体無い・・・

「大丈夫か?」
「えぇ・・・ありがとうございます」
「こいつは俺が持っていこう」

担ぐか、よければ姫抱っこ・・・を想像していただが、首元をつかんだまま龍蓮は引きずられ、従業員に引き渡された。
突き飛ばされた黎深はその反動で覚醒し、くわっと起き上がった。

「おっ、気がついたか黎し・・・」
「クォラ!!鳳珠!!
貴様この私をよくも突き飛ばし・・・」
〜っ!!」

黎深はその少女の声に音速で振り返った。
それは今まで影から見守ることしかできなかった存在。
その愛しい姪が今自分の元に走ってきてくれている。(注:妄想。正確にはの元へ)

「秀れ・・・・」
「おっ、秀麗もいたのか。今から俺と・・・」

腕を広げる黎深よりも先に飛翔が一歩前に出た。
飛翔の姿を確認した秀麗はうっ、とうめき声を上げた。
・・・・きてたんだ、この人・・・。
その時、飛翔の背後から高速で何かが飛んできた。
小さな風を生みそれは、壁に突き刺さる。
飛翔の頬が小さく切れた。

『・・・私の姪に軟派とは、良い度胸だな飛翔・・・』

地獄から這い上がるようなドスの聞いた声を飛翔は一生忘れることはなかった。
鳳珠はそんな二人を無視して、達に話しかける。

、今から帰りか?」
「はいっ、えっと・・・あと珀明と影月くんは秀麗ちゃんに任せてもいいかな?」
「うん、まだ足取りもしっかりしてるし、夜風に当たれば意識もしっかりしてくるから・・・」

鳳珠は秀麗の言葉に眉を潜めた。

「・・・こんな遅くに、徒歩で帰るのか?
軒は私が出すからそれに乗っていきなさい」
「・・・・え?」

と親しそうに話していたのはなんと、夏に出会った黄東区の超絶美形。(確か女装評議会にもいた気が・・・)
話しかけられて秀麗も一瞬見惚れてしまった。

「・・・えっ・・・あっ・・・・
・・・いやでも悪いです」
「遠慮せずに乗ってきなって。
こんな時間でも人は多いしこの気に乗じて悪い人がわんさかいるし・・・」
「でも・・・」
「大丈夫だって。ここに来る人皆お金持ちだから。軒の一つや二つどうってことないって」
「・・・そう・・・じゃあ・・・。
いつぞやの親切なお方・・・ご好意に甘えさせていただきます」

秀麗は丁寧に頭を下げた。
その様子をみて鳳珠はふわりと微笑んだ。

「・・・なっ、鳳珠私の台詞・・・」
「だったら今名乗ってみるか?秀麗もそこにいることだし・・・」

鳳珠が意地の悪い笑みで黎深にいった。黎深はぐっと詰まる。
・・・まだ・・・心の準備ができていない。
秀麗を見ていると、秀麗も黎深の方向いた。二人の眼が合う。

「あれ?貴方は・・・」

黎深ははっと秀麗を見た。

「”おじさん”?」

・・・・おじさん・・・おじさん・・・・叔父さんっっ!!

「秀れ・・・ッムグ!!」

抱きつかんばかりの勢いの黎深を片手でとめ、鳳珠は奥の方を指差した。

「軒が用意できた。あれに乗るといい」
「ありがとうございます」

華麗な天使、もとい秀麗はたまたま国試の時に一緒になった小動物と一緒に聖地(邵可邸)へ帰っていった。
かぐや姫に、置いていかれたおじいさんのように黎深は床に突っ伏した。

「秀麗・・・・うっぐっ・・・・秀麗〜〜っっ」
「・・・さて、帰るか。
「・・・え・・・良いんですか。黎深様」
「捨てておけ。
悠舜も巻き込まれないうちに帰れよ」
「えぇ・・・そろそろ凛が迎えに来ますので」

新婚オーラをびんびん出してくる悠舜に鳳珠と飛翔はうっと一歩引いた。
悔しいが、・・・正直羨ましい。

「・・・っ
・・・・帰るぞ」
「えっ、はい・・・」

あらかじめ止めておいた軒に鳳珠とは乗り込んだ。
寒いと思ったら雪がちらついていたらしい。
は鳳珠に断って、窓を開けた。
手を伸ばすと、雪が手のひらに乗って、すぐに消える。

「初雪ですね〜」
「この分だと積もるのはもう少し後か・・・」
「残念」
「何がだ。面倒なだけだ」
「綺麗じゃないですか。確かにたくさんはいりませんけれど・・・」
「まぁ・・・そうだな」


しばらく外に手を出していたが、流石に寒くなってきたのでは窓を閉めた。
鳳珠は、軽く酔いが回ってきたのか大人しく軒に揺られている。

「・・・うぅ、寒っ。調子乗りすぎた・・・」
「大丈夫か?」

鳳珠の手が冷たくなったの手を包む。
は驚いて鳳珠の顔を見た。
鳳珠は不機嫌そうに眉を潜めている。

「・・・こんなに冷たくなるまでどうして外に手を出しているんだ」
「すいません」
「酒は飲めるな?少しは温まる」

酒宴のために持ってきたのか鳳珠は中瓶をに渡した。
生憎、杯まではこの軒に用意していなかった。

「このままぐぐっといいですか?」
「俺は気にしない

は蓋をあけてぐぐっと酒を流し込んだ。
喉が熱くなるが、気にせずそのまま一気に飲み干す。
それは鳳珠も感嘆の言葉を上げるほど、良い飲みっぷりであった。

「ごちそうさまでした!」
「・・・全部飲むやつがあるか?
これ結構高かったんだぞ・・・」

この味どこかで・・・と気づいた時にはの視界がぐらりと、揺れた。

「・・・っ!?」

倒れ掛かるを支えながら鳳珠はの持っている瓶を取り上げた。
飛翔と飲み比べしたことのあるにとってこれくらい、大丈夫だと思ったが・・・。
鳳珠は一滴指に取って舐めてみた。

「・・・あ・・・」

対飛翔用の最終策で、名酒と見せかけて茅炎白酒を入れておいたことを忘れていた。
茅炎白酒中瓶一本を一気に飲み干すとは、普通の人間なら致死量だ。

「おい、。大丈夫か?」
「えへへ〜、鳳珠たまぁ〜」

呂律がしっかりしてないが、なんとか酔う程度で済んだらしい。
なんという・・・鳳珠は、苦笑するしかなかった。
酔った勢いでは鳳珠の腕にしがみついた。

「鳳珠様大好きですぅ〜」
「・・・・・え・・・・・・」
「これからもず〜っと一緒にいましょうね?
絶対離しません」
『・・・・・・・・』

本心か冗談なのかは分からないが鳳珠を動揺させるには十分すぎるほどの効果があった。
その時丁度軒が止まった。家についたらしい。

、降りるぞ。離せ・・・」
「いーやーでーすー」
「こら・・・・・
・・・・はぁ・・・・」

腕がしびれるほど強く捕まられて鳳珠は観念した。
自分で悪いところだと思ってはいるが、かなり押しに弱い。
鳳珠は仕方なくそのまま軒をおり、部屋に向かう。

しかし困ったのがここからで・・・。

「あの・・・・・・そろそろ寝たいのだが・・・離して・・・」
「いやですっ!!
鳳珠様はをお捨てになるおつもりですか!!」

・・・捨て・・・っ!?

「・・・いや、そんなことは・・・」
「はぁ・・・眠たくなってきました。寝よ・・・・」
「ちょっ・・・おい、まて、ここで寝るな。せめてその衣装脱げっ!!っていうか離せ!!」

今日一日の酷使した体の疲れと、酒の酔いのせいでの眠りは深かった。
しかもしっかりと腕は掴んだままである。
鳳珠も正式な黄家の着物を着ていたのでせめて上だけでも脱ぎたかったのだがこの状態では無理である。

「・・・もういいか・・・」

鳳珠も疲れからかそのまま眠りに落ちてしまった。

次の日、寒さからは目が覚めた。
動くと頭がずきりと痛み、昨日酒を大量に飲んだことが思い出される。

「・・・あいたた・・・
あぁ私ったらこの恰好で寝ちゃって・・・しかも椅子で・・・
・・・・あれ?」

何故か知らないが隣で鳳珠も寝ている。
寝顔もまた素敵・・・。
じゃなくて、なんて鳳珠様が隣で寝てんの?
は気がつくとしっかりと鳳珠の腕を掴んでいた。

「あれ・・・?あれれ・・・」

もしかしなくても鳳珠に多大なる迷惑をかけたようだ。
そうでなければ鳳珠が正装のままこんなところで寝ているはずが無い。
の頭からさーっと血の気が引いた。

「いやーっっ!!申し訳ありません鳳珠さまぁぁぁぁっっっ!!!
・・・・ガッ!!!」

一通り叫んでからは頭を抱えた。
二日酔いがきてること忘れてた。

「・・・・ん・・・?」
「・・・うぅ・・・。おはようございます、鳳珠様・・・・昨日は多大なる迷惑をかけてしまったようで・・・」
「・・・あぁ・・・・そうだな。
離せといっても離してくれなかったり・・・。
挙句の果てにはお捨てになるおつもりですか?って言われて・・・
流石に返答に困ったぞ」
「・・・・なっ」

そんなこと言ってたのか自分。思い出せないが凄い恥ずかしいことを平気でのたまっていたらしい。

「申し訳ありません・・・」
「まぁ新年だし無礼講だな。
・・・それとも・・・冗談でとってはいけなかったか?」
「・・・え・・・」

覚えていないが、鳳珠の言っていることから普段いえない本音が出ているのだと思う。

「・・・あの・・・その・・・・」

は俯いた。記憶の無い自分の言葉に責任は取れないけれども・・・

「本音でした」

鳳珠は目を見開いた。

「・・・そう・・・か・・・・」

鳳珠の微妙な反応にはまた顔を青くした。
もしかして、『また女装評議会に出た際には衣装、化粧その他もろもろ自分にお任せくださいませ!!』・・・なんてこととかポロっと言ってしまったのだろうか。(思ってたんかい)
変な風に思われてないと良いんだけど・・・。

「それではそのように考えておかねばな」

開き直ったように笑った鳳珠には首を傾げた。

「・・・はい?」

鳳珠に向き直り、ついと顎を持ち上げ、軽く唇を合わせた。

「・・・・なっ・・・・」
「予約」

何のっ!?

「私はこれから朝賀に出なくてはいけないからもう行くが・・・
は今日は家で休んでいなさい。
適当に言い訳しておいてやる」
「・・・はぁ・・・」

颯爽と去っていく鳳珠をは眺めるしかなかった。
・・・っていうか・・・。
何を言ったんだろう自分・・・。
酷い頭痛と戦いながら布団の中では一日悩んでいた。


あけましておめでとうございます。
今年も良い年でありますように・・・・・・・



ーあとがきー

あけましておめでとうございます。
新年第一回目の更新はなんとキリリク!・・・普通に微長編じゃなくてそれはそれでよかったです。

こちらは、380000Hitを踏まれました裕嬰様に贈ります『彩雲国物語鳳珠夢』でございます。
心の友も出しましたがどっちかというと・・・悪夢の方が多い気がしないでもない。( 何 故 だ )
そしてラッブラブとは程遠い・・・(すいません)
っていうか全体的にギャグが・・・

こんなヘタレ作品ですが喜んでくだされば光栄です。

2007.1.2 月城チアキ

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