この家で働き始めてからかなり経つが未だに全ての場所を見尽くしたわけではなかった。
黄州文化を選りすぐって建てられたこの建物は紫州の家とは少し違う感じもする。
今日もまた一つ、私は新たな発見をする。


主捜索隊


「すみませんっっ、遅れました、鳳珠様・・・・
・・・・・あれ??」

今日は、秀麗の家に少し足を運んでいた。
で、結局話が長引き夕飯までご馳走になってしまったのだ。
案の定外は暗くなっておりは全力ダッシュで黄東区まで行った。
元から体力はある方なので速度は落ちるどころか早くなる一方。
拍手喝采の韋駄天走りでなんとか怒られない範囲で黄宅についた。

そして、急いで主の元へ向かったが部屋には誰もいなかった。
確か門番の話だと既に帰ってきているとの話だが・・・間違いだったか?いや、そんなはずはない。
机案には先ほどまで何かしていたのか、書類が色々並べられていた。
どこかに行っているのだろうと思い、まずはその辺に散らかったゴミを片付ける。
戸部は忙しいとの話なので朝廷ではどのような仕事場になっているのか想像も出来ない。
それこそ優秀な部下(雑用)がいないとさぞかし大変であろう。
筆先が割れているのでそれも新しいものにかえ、散らかった書類をまとめ、いらないものは捨て、その辺の長椅子に積んである用済みの本は棚にしまった。
流石にここまで長く付き合っていたら、いらないものと、いつものの区別がなんとなくつくようになってきた。
一通りの仕事を終え、ほっと一息、開いた椅子に座る。

『・・・・・・・・・・・。』

・・・・遅い。
彼はいつもここでご飯を食べているし、食器を持っていっているとしても(律儀にも以前はちゃんと返しに行っていたらしい)もう戻ってきても良い頃だろう。
逆に不安になってきた。
客が来ていたなんて様子じゃなかったし、どうしたのだろうか?
とりあえず、私は探しに出かけた。
半年間秀麗と並ぶ、鉄腕アルバイターの異名を持つ
仕事に関しては暇な時間が一番苦手であった。
『何かしないとクビになる。』ここでは多分そんなことはないだろうが、身体に染み付いたものは離れなかった。

とりあえず、聞きこみに出かけてみるとするか・・・。
はそう思い、席を立った。

まずは厨房。
知り合いのおばちゃんに聞いてみる。

「・・・あぁ、お館様ならさっき食器を返しに来てくださったよ。
なにか都合か悪かったのかい?ちゃん」
「・・・いえ・・・全面的に私の否です・・・。
鳳珠様それからどうなさってますか?」
「・・・う〜ん・・・特に何もなかったからねぇ。
またお部屋でお仕事でもなさってるんじゃないかね・・・。
そういえば、ちゃん晩御飯はどうする?
残り物になっちゃうけど簡単なもんで良かったら作るよ」
「いえ、すいません。
外で食べてきちゃいました。
・・・では、これで・・・。」

・・・どこにいかれたのだろうか・・・。
次は管理長だ。

「・・・お館様かい?
さぁ・・・・とりあえず、帰っていらしたのは見たけどそれから見てないね。
外に出た報告もないし、誰かが来るって報告もここ最近ないね・・・」

・・・・ここ最近って・・・三日に一回の割合で紅黎深殿がいらしておいでですが、不法侵入でしょうか?

心の中で密かな突っ込みをしながら私は頭を下げた。
黎深様が来ているのかしら・・・。でも部屋には誰もいなかったし、縁側・・・?
ここの家の縁側は、素敵な庭が見られてくつろぐスペースになっている。
ここで月見をするのも一興であろう。
しかし、この家の主様は仕事熱心なため悲しいかな、縁側に出られたのはささいな客人がきた時だけだ。

私は、縁側も見てきたけどそれらしき人影もない。
部屋に戻っても同じだった。

「・・・・何故・・・・?」
「あれ?・・・」

その声に振りかえると、同じ歳の掃除係の友達だった。
私はすぐに聞き込みを開始する。

「ねぇ、鳳珠様見なかった?」
「・・・お館様ね・・・私、最近午前中しか来てなかったから最近顔見てすらないわね・・・。そういえば、今日ここのお風呂掃除したんだけど物凄いの。
絶対庶民の家では味わえない素敵風呂。
人生で一度は入ってみたいNO1の風呂がここにあったのよ〜vv」
「・・・・はぁ・・・・」

なんか、どうでもいいような話になっていっている。

「本当素敵風呂だからvv
も見てきなって。あっ、そうそう・・・
シャンプーが切れてたから新しいの買ってきたのね。
これおいてくるついでに見てきなよ」
「・・・あー・・・・うん」

じゃ、私これで帰るから〜。と友にシャンプーを渡されて彼女を見送る。
なんと幸せそうなんだろうか。
というか風呂くらいで・・・そんなねぇ・・・。
私は、シャンプーをちらりと見た。

「・・・・こっ・・・これは・・・」

ア●エ●スッ!!
あの結ってもあとがつかない髪のキャッチフレーズで有名なあれですね。
鳳珠様これ使ってあんなにサラサラに・・・。
まさにアジアンビューティー。
・・・・っていうか鳳珠様・・・・・髪結えないじゃん。(サラサラ過ぎて。)

私も使ってみよう・・・とそんなことを思いつつ風呂場に向かう。
既にお湯が張ってあるらしく中は湯気で見えなかった。
でも大体広いことは分かった。

「・・・凄っっ・・・。
さすが入りたい風呂NO1っていうだけあるわね・・・」

向こうはガラス張りで綺麗な庭も見えるようになっている。
勿論夜はライトアップつき。
流石に、ライオンの口からお湯は出てないが、一般庶民にしては贅沢品だ。

「・・・うわー、これは一回入ってみたいかも・・・」
「別に入っても構わんが・・・・」
「・・・えっ、本当ですかvvじゃ友達でも誘って・・・・・
・・・・って・・・・」

私はビシリと固まった。
シャンプーの容器がボトリと手から落ちる。
湯気で見えなかったが先客がいたらしい。
しかも、その声は聞き覚えがあり浴場に響いて更に美声となる。
入り口を開けっ放しにしたため、湯気が逃げていく。
その声の主がはっきり見えた。
入浴中の彼は良い感じに濡れていて更に美しさをましている。
まさに水も滴るいい男・・・・じゃなくて。

「・・・・ほ、ほほほ・・・鳳珠様っっ!?」

彼は気にした様子もなく会話を続ける。
私は、思考回路が一気に停止する。
一生懸命戻そうとするが、頭の中で空回りする。

「あぁ・・・もしかして探させてしまったか・・・。
悪かったな」
「・・・いえっっ、とんでもございませんっっ。
っていうか、すみません。
秀麗の家に行ってきて晩御飯ご馳走になってきましたっっ」
「あぁ、分かった。
出来れば次からは連絡も欲しい」
「はいっっ・・・・・
じゃなくてっ、入浴中に申し訳ないですっっ、
ここにシャンプーおいておきますのでごゆっくりっっ。
では、失礼しました」
「・・・・あぁ・・・ありがとう・・・。」


急いでは浴場から出る。
廊下に出て脱力した。

・・・・なんて間の悪い・・・・
っていうか、なんでこんなタイミング良くシャンプーなんか渡すのよ・・・。
狙ってたのか、これ・・・。

そもそもいないってことはここにいることも予測できなかった自分も悪いけど・・・あぁなんて失態。
『明日にでももう来なくて良い。』とか言われたらどうしよう・・・・。
というか、着替え置いてあることくらい気づけ。


・・・あぁ・・・・明日からどうやって生きていこうか・・・。
またバイト雇ってくれる優しい人はいるのかしら・・・・とはふらつきながら鳳珠の部屋に戻った。


「・・・・・。」

それをひそかに後ろから見ている人影にはは気づかなかった。


「・・・・やぁ、鳳珠。
湯加減はいかがかな?」
「・・・・黎深・・・お前不法侵入・・・・いや、ストーカーにもほどがあるぞ・・・」

次に訪ねてきたのは三日に一度遊びにというか、わざわざ愚痴か自慢話をしにくる吏部尚書、紅黎深。
鳳珠はうんざりした顔で彼を見上げた。

「全く、お前はに何をさせていたんだ・・・」
「別に?なにもしていないが・・・・」
「・・・まさかっっ・・・・『一緒に風呂に入ろう』・・・なんぞと不埒なことを・・・っっ」
「するかっっ。
貴様・・・・不法侵入罪で訴えるぞ。
既に家人とという証人もちゃんといるし・・・」
「くそ、羨ましいぞ鳳珠・・・。
悔しいが秀麗には抱きつかれ、には手厚く身の回りの手伝いをしてもらい・・・・っっ。
・・・・このロリコンが」
「貴様に言われたかないわ。
と言うか・・・持ち歩いているんだろう?秀麗に貰った刺繍入りのハンカチ・・・」

これは『おじさん』として朝廷で手伝っていた時、最後の日に秀麗がお礼にくれたものである。
一生肌身はなさずもっていそうだこの人。むしろ墓の中まで一緒かもしれない。

「これは秀麗が私のために夜なべして縫ってくれたんだぞっっ!!
勉強もしなくてはいけないのに私のために・・・・っっ」
「・・・いい歳してそんな事で泣くな」

同僚とも呼びたくない奴をなんともいえない視線でみてから鳳珠はため息をついた。



「・・・・・・・あぁ・・・・どーしよう・・・・」

綺麗になった主の部屋の長椅子では世界の終わりを感じるように嘆いていた。
いや、まだ世界の終わりが来た方がましだったかもしれない。

鳳珠様になんて謝ろうか・・・・・
もうこの際、腹切りしか・・・・っっ。
あぁ、父上、母上・・・・私をこんなに素晴らしく育ててくれたのに、こんなことで人生を絶ってしまう娘をお許しください・・・。

そう天に祈った瞬間ガラと扉が開いた。

「・・・どうした・・・?
・・・・」

長椅子に肘をつき思いっきり天に祈っている家人の娘を見て、この家の主はとりあえず、声をかけてみた。
いつもの彼女にはありえない。
ビクリとの肩はゆれ、ゆっくり鳳珠の姿を見る。
それから彼女は早かった。

「鳳珠様本当に申し訳ありませんでしたっっ!!!」
「・・・・・?
・・・あぁ・・・・別に気にしてはいないが・・・」

仮面をとって鳳珠は疲れたような顔をした。

「・・・あの・・・鳳珠様何かありましたか・・・?」
「いや、大丈夫だ」

そのまま部屋の中に入ろうと一歩踏み出すが、頭がくらりと揺れる。
・・・・しまっ


「鳳珠様っ!?!?」

鳳珠の意識が一瞬無くなって、そして気づけばに支えられている状態だった。
勿論彼女の方は支えきれずそのまま倒れこむ。。

「・・・っ・・・・・
大丈夫ですか?顔赤いですよっ!?
風邪ですか・・・あぁっっ、大変!!
とりあえず、寝てくださいっっ!!」

なんとか起き上がる。
鳳珠の方は自分から動く気配がない。本気で焦る。
彼もなんとか起き上がるが身体の方はうまく動いてくれないらしい。

「・・・・・うぅ・・・・」

あまりにも近くで見る彼の顔が美しすぎて見とれてしまう。
髪の毛は私の頬にあたり心地いい。
そのうつろな瞳も素敵です。

やべー、これだけで逝っちゃいそう・・・・。

「あっ・・・・大丈夫・・・・ですか?」

なんとか理性でとどめておいて主の健康状態を問う。
鳳珠の方もなんとか意識は戻ってきたようだ。

「・・・いや、大丈夫だ・・・。
のぼせただけだ・・・・
・・・くそっ、あの馬鹿のせいで・・・・」
「えっ・・・・?」

もしかして、あの時私が『ごゆっくり』なんて言っちゃったから鳳珠様気を使って・・・・っっ。(頭抱え)

「すっ、すみませんっっ」
「・・・・・・・?
・・・何のことだ?」

Let’s勘違い。

「とりあえず・・・お水でも持ってきますね・・・とりあえず、長椅子で寝ててください。」
「・・・・あぁ・・・・
すまないな・・・」
「いえ。」

私の方は本当に助かりました。
普通の高貴族ならもう首にされ、悪けりゃ暗殺モノだ。
これからも出来る限りつくしていこう。そう心に誓ったであった。



ーあとがきー

これは49000Hitを踏まれました伽耶様に贈られた『彩雲国物語の鳳珠様夢』です。


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