絶対手放したくないものを見つけたから。
だから、自分は守り続ける。


大切なモノは自分の傍に


今日も仕事の終了を告げる鐘が鳴る。
朝廷内から、緊張の色が消える。
官吏達は大きく伸びをして、各自の岐路に着く。

もきりのいいところで仕事を止め、立ち上がる。
外を見れば空も赤くなっており、すぐに暗くなるだろう。
仲間の官吏たちに頭をさげながら、外に出た。

「やぁ、。今帰るのかい?」
「これは、藍将軍と、吏部侍朗」

聞き覚えのある声に、後ろを振り返るとこちらに向かって手を振る男性がいた。
は深く礼をした。一応、日常でも付き合いはしているが上司である。
楸瑛は、流し目を使いながらに話しかける。

「今日は、主上が早く帰してくれてねぇ。今から絳攸と一杯飲みに行こうと思っていたところなんだ。
一緒にどうだい?」

が、その素敵な視線もそれなりに付き合っているの前では何の効果もなさなかった。
は苦笑交じりにいう。

「妓楼に行かれるのではないのですか?
お二人で楽しんできた方がよろしいかと・・・・」

の台詞に二人共目を丸くする。
そんなイメージがあったのかと、楸瑛は苦笑して絳攸は一瞬呆気に取られたがいつもの調子にすぐ戻る。

「・・・ほぅ、妓楼に行くつもりだったのか楸瑛」

後ろにいる絳攸が楸瑛を睨みつける。

「あれ、違うんですか?絳攸様。
・・・・一緒に遊んでるのかと思った」

真顔で言ったに絳攸の顔が怒りに満ちてくる。
楸瑛は思わず噴出した。面白い噂も流れているもんだ。

「こいつと一緒にするなっっ!!
・・・くそ、お前といると変な噂までついてくる。
誤解するなよ。俺はこいつと無関係・・・・」
「酷いなぁ絳攸。
私達の仲じゃないですか・・・(ここで絳攸の蹴りが入る)
・・・・・まぁ、それはいいとして。
ちゃんとしたお食事処で飲みませんか?久しぶりに会いしましたしね」
「それなんですが・・・今夜は・・・・」
「これはこれは藍将軍に絳攸殿」

の後ろから腕が伸びてきてそのまま抱きつかれた。
視線を上げると、恋人の綺麗な笑顔がある。

そして、双花菖蒲と称される二人は一気に口元が引きつった。
まずいところを見られてしまったようだ。

「静蘭っっ!!」
「仕事お疲れ様でした。

ふわふわとした、彼の髪の感触が気持ちいい。
彼は、優しい笑顔での頭をなでる。
そして彼女とは対照的に冷ややかな目で二人を見た。

「・・・私のに何声をかけてるんですか」
「いえ、丁度今ここで会ったから飲みに誘っただけですよ。
別に下心があったわけでは・・・」
「飲みにですか?」
「えぇ」

静蘭は非がない笑顔であっさり言い放った。

「無理ですね。今夜はお嬢様とが手料理を作ってくれるので」
「そうなのよ。早く帰らないとっ」

も嬉しそうに手を叩いて同意した。
これ以上口答えしたら刀より鋭い言葉で切り捨てられそうだ。
勿論、口が裂けても『では、おじゃましてもよろしいか?』などと言ってはいけない。

「それは、それは・・・よろしいことで・・・・」
「えぇ、本当に。
それでは、この辺で失礼します」
「遊びすぎにはご注意ですよ。今後どこで足を引っ張られるか分かりませんから」

『・・・・・・・・・・。』

何気にこの二人は最強だ。そう悟った双花菖蒲の二人であった。

「・・・じゃ、絳攸・・・行こうか」
「・・・仕方ないな・・・・。妓楼だったら即行帰るからな」


人が行きかう中、順調に紅家に向かって歩いていく。
ついでに手ごろな材料を見つけていく。

「静蘭っ、果物が安いわね。どう後口に食べる?」
「そうですね、いいんじゃないですか」
「じゃ、おばさ〜ん。
りんごと柿もらえる?」
「あいよ」

袋に入れてもらい受け取ろうと手を伸ばすと、静蘭が間に入りその袋を受け取った。

「・・・・静蘭・・・」

顔を上げると、彼の優しい笑顔が視界に入る。

「私が持ちますよ。何のために付き合っていると思っているのですか」
「・・・・ありがとう」

顔を見合わせて笑うと、おばさんも嬉しそうに笑う。

「あんたら本当に仲いいねぇ。」
「いえっ・・・そんなことは・・・っっ」
「照れなくていいって、ほら、梨おまけするよ」
「・・・あっ、では、遠慮なくいただきます」

そこはきちんと貰っておいて、店を後にした。
日も落ち暗くなりかけている。

「・・・少し得したね。」
「良かったですね。

はさきほどのおばさんの言葉を思い出し、少し考えた。
以前から思っていたことだ。

「・・・ねぇ、静蘭。」

は思いきって聞いてみた。

「なんでしょう?」
「秀麗ちゃんと私。どっちが好き?」
「・・・・はい?」
「だって、静蘭って誰にも優しいでしょ・・・・。
だから・・・どうかなって・・・・」

結局、さっき後ろから抱きしめてくれたけど、それは秀麗ちゃんに対しても同じこと。
だから時々不安になる。
彼は紅家の家人だから。
潔ツと秀麗のことを一番に思っている。

「選べってことですか?」
「そんなわけじゃないけど・・・・あっ、やっぱり良いや。
忘れて。」

答えを聞いてしまったらきっと目もあわせられなくなるような気がするから。
この関係を崩したくないから。
うつむいてしまった、を見て静蘭が微笑む。
暗くて表情も読めないがなんとなく予想ができた。

「馬鹿ですね。
私は貴方が一番ですよ」
「・・・静蘭?」

は思わず顔を上げた。
不安いっぱいの顔だ。
静蘭はまたの頭をなでた。

「私は貴方の傍から離れませんから。絶対に。
旦那様もお嬢様も大切ですが・・・・でも今は・・・
が一番大切なんです。」

ですから・・・・そんな不安そうな顔をしないで下さい。

多分、初め誰も予期してなかった自分の義弟劉輝が即位することから運命は少しずつ変わってきたのだろう。
自分は、もう公子ではないし、縛られるものは何もない。
長年守ってきた少女ももう一人で歩いていける。自分以外に彼女を守るべき存在が出来たから。

・・・・自分はもう自由なんだ

「・・・もし、貴方が信じてくれないようだったら・・・・・
私も信じきれませんよ?」
「そんなっ・・・・私・・・・そんなつもりで言ったつもりじゃ・・・・」
「分かってます。
さぁ、戻りましょう。皆さんがお待ちですから」

はうなづいて、また歩き出した。
先ほどの不安な影はもう彼女にない。

「静蘭っ、本当にずっと傍にいてくるよね。」
「えぇ、離れたいといわれても離しませんよ?」

二人は同時に笑った。
こんなに幸せなときがあっただろうか。

大丈夫、未来はきっと明るい。
そう確信せずにはいられなかった。


ーあとがきー

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