それは昔々彩雲酷に伝わる伝説。
その伝説は若者達の手によって面白おかしく今ここに花開く。


都市伝説
〜願いを叶えるのは伝説の実〜


冬真っ只中。
彩雲国の王、側近、そしてその側近の彼女がある人物によってとある室に呼び出された。

「・・・・で、このクソ寒いのに何の用なのかしら」
・・・もう少し丁寧な言葉遣いにはならないのかい?
私の彼女としてはもう少しおしとやかな方が好みだよ」
「・・・珠翠殿みたいな?」
「そう、珠翠殿みたいな・・・ってなんで彼女が出てくるんだい」

暖もとってない個室に集められた四人は震えながら呼び出した人物を待っていた。
普通の官吏ならとうに帰っているものの、呼び出した人物が人物なので帰る事も出来ない。

王すら従わせる人物それは、朝廷百官を束ねる長。王から言わせればクソジジイこと霄太師。
彼に敵う者は彩雲国広しといえども一人しか聞いた事はない。

「・・・よくもこの寒いのにあの二人は言い合いなんか出来るな・・・」
「全くだ。
まぁ約一名脳だけは常春だからな・・・。きっとこの寒さも分からないんだろうよ」

あまりの寒さに、劉輝と絳攸は暖を取り、その前で温まりながら二人の痴話喧嘩を眺めている。
七割楸瑛が悪いのだが、二人は顔を見合わせれば言い合いばかりしている。
それでいて、恋人同士というのだから、『喧嘩するほど仲がいい』という言葉を証明してくれる。

「あ〜・・・・余も秀麗と話がしたいぞ」
「これ以上常春が増えてたまるか・・・・
っと、やっとお出ましか」

二人はここで会話を止める。
そして、暖から離れ、言い合いしている二人のところに行った。
言い合いも収まり四人は横に並ぶ。
扉が開く。王以外の三人が深く礼をとった。
やっと、このクソ寒い部屋に呼び出してくださった張本人のご登場だ。

「おぉ〜、来てくれてたか」
「遅いぞ、霄太師。
今何時だと思っている」
「おお、すまんの。まぁ若いからこのくらい平気じゃろ。
わしの若い頃はこの時期は、外で寒稽古」

そう話ながら自分はさっき取った暖の傍に行き、ぬくぬくとあたっている。
そして、彼の話す話題は想像するだけで寒くなるような話題。
ただでさえ寒いのに精神的にも彼らの体温は奪われていった。

・・・このクソジジイ・・・。

「霄太師、私達を呼び出したご用件とは何でしょう」

絳攸はなんとか鉄壁の理性を貫き通して、霄太師に問う。
しかし、その鉄壁の理性もそろそろ保てなくなっているのが、彼のこめかみを見れば容易く分かる。
霄太師はニヤリと顔に笑みを浮かべた。
予想はしていたが、どうせ大した用事でもないのだろう。

「お前達にはそこの絵にある実を取ってきて欲しい」

私達は額に入った絵を見た。
そこに描かれているのは雪玉を思わせるような白い実だった。

「・・・何故、私達なのでしょうか?」
「ん〜、昔から決まっているのじゃぞ。
若い有能な官吏達に取りに行かせるのが決まりなんじゃ。
・・・・じゃ、頑張って探してきて欲しい。
仕事の方は何とかしておくからこの三日で見つけてくるのじゃぞ」
「っていうか、それをする意味は?」

いつも騙されている劉輝も流石に今回は理不尽過ぎたらしい。

「お前さんたちのこれからの成長を祈って。
まぁ、そう渋い顔をするな。
この実を見つけた者の願い事を一つ叶える力があるらしいからのぅ。
それは、もう富、地位、権力を初めとして、恋愛、性格、なんでも叶えてくれるらしいからの」
『・・・なんでも?』

四人は声を被らせた。
霄太師は至極真面目に頷いた。

「昔の話じゃが、孤児がその実を偶然見つけて『偉い人になりたい』と願った結果、紫家に拾われその後名誉職まで上り詰めたという噂がある。
後は、足の動かなかった奴がその実を見つけて足が治るように願うと、次の日正常に足が動くようになったり・・・
恋敵を蹴散らし、見事意中の者を手に入れることが出来たとか、方向音痴が治ったり、性格が良くなり人々に愛されたり・・・・その他色々じゃな」

・・・・恋敵を蹴散らす!?
・・・・方向音痴を直せるのか。
・・・・あ〜、なんか便利な実があるもんね・・・。今から願い事考えておかなくちゃ・・・。

「やってくださるかの?」
「任せろ、霄太師」

劉輝が目を輝かせてうなづく。
珍しい事に絳攸まで見事に引っかかっちゃっているところが面白い。
も何やら願い事を考えているらしく、悩みこんでいる。

・・・・この三日間。面白いことになりそうだ。
そう思い楸瑛はふと微笑した。


早速霄太師が仕事を変わってくれるというので四人は府庫に行く。
まずはあの実がなんなのか調べなくてはいけない。

「・・・・しかし、冬になる実なんてあるのかしら?
あれじゃ、雪と間違えそうなもんだけど・・・・」
「間違えるから見つけるのに難易度が高いということではないか・・・・。
しかし、そんな実の話今まで聞いた事ないが・・・・」

朝廷の官吏たちが揃って府庫で植物辞典を開き眺めている光景はあまりにも異様すぎた。
しかも、目が真剣だ。

「あのジジイのことだからな・・・・
もしかして、本に載っていないかも知しれない・・・」
「なるほどな・・・。
しかし三日で探してこいということは、最高二日離れている場所にはないということだな」

はパラパラと植物図鑑を眺めながらふと目にした事がある植物が沢山あることに気づいた。

「・・・あれ?
私どこでこんなに植物見たかな・・・・。
・・・・あ、そうか。そうよっ!!」

はパンと手を叩いた。三人が何事かとを見る。
「楸瑛、今から貴方の家に行きましょう」
「・・・何故・・・・。
・・・あぁ・・・」

訝しげな顔をしていた楸瑛だがなんとなくの指している事に気づき頷く。

「なんだ?楸瑛の家に何かあるのか?」
「うちには全州の植物があるんだよ。
もしかしたらその中にあるかもしれないってことだね。
・・・しかし、かれこれ十年くらい住んでるけど、こんな実見たことあったかな・・・」
「お前の目が節穴で雪と見間違えているんじゃないか?」
「一応庭師にでも聞いてみるか。
・・・今から行きますか?」
「じゃ、今日は楸瑛の家に泊まれるのかっ!?」

王が目を輝かせる。

「まぁ・・・明日お休みならそれでもいいですけど・・・。
も泊まるかい?」
「いや、帰る。
あの屋敷はなんか恐ろしいわ」
「・・・そんな遠慮しなくてもいいんだよ(ニコ+肩ポン)」
「・・・・してません。というか、その笑顔が怪しいのよ!!
絶対夜とか危ないし!!」

王は、二人の会話に首をかしげ、絳攸は徹底的無視。

「・・・とにかく、行くなら行くぞ」
「そうよ、帰り遅くなるの嫌だし」
「だから、泊まっていけば・・・『却下。』」



「庭師に聞いてみたけどそんな実はないそうだよ。」

藍家を訪ねて十分後、庭師と共に髪を下ろした楸瑛がやってきた。

「・・・庭師も知らない実か・・・。
正直その話が本当かどうかの方が問題だな・・・」

絳攸が考え込む。

「一応ジジイが言うんだ。
かなり希少価値が高くて・・・・」
「もしかして時期にもよるんじゃないかしら?
『有能な官吏』に限定してあるんだったら、楸瑛達の及第したときにこの難題をぶつけているし・・・」
「数年、・・・いや数十年に一度とかいう性質の悪いパターンか・・・」

う〜ん、と四人は考え込む。
この藍家のすべての植物を取り扱っている庭師でも知らない多分、数十年に一度しか見られないらしい実を見つけることができるのだろうか。

「じゃ、私はこれで失礼するわ。
頑張って三人でいい目星付けておいてね」
「・・・・え?」

はすっと立って引き止める間もなく去っていった。
残された三人は閉められた扉をみて唖然とする。

「・・・なるほど、今のはいい逃げ方だ」
「通りで、お前がに近づけなかった訳もわかるな・・・。
秀麗よりもある意味厄介だぞ」
「承知の上だよ・・・・」

この後も紫、紅、藍、三家の力をもってして探してもその実らしきものは見つからなかった。

タイムリミットまであと数刻。
は白い実の額が飾ってある部屋で思案していた。
なんとなく見覚えがあるのだ。実がなっている葉の色形、その木の輪郭としては頭にきれいに残っている。

「・・・あ〜〜っっ。
大体冬に実なんて普通ならないわよ。
種落ちても雪の上だし、芽を出す確立少ないし・・・」

シャラン

何か落ちる音がした。
が床を見ればこの部屋に飾ってあった、金の首飾りが落ちた。多分歩き回っていて自分の袖にあたったのであろう。
は拾おうとしゃがみこんだその時、ははっと気づいた。

「・・・もしかして・・・」

いやそんなはずはない。
というか、答えがそんな簡単な場所にあるとは考えにくい。

は最後の可能性にかけて部屋を飛び出した。


やってきたのは朝廷の奥の方にある庭。
今年は雪が少なく、今日は晴れていたので日陰にしか雪は積もっていないという状態だった。
が角を曲がったとき、ある人物が目に入った。

「・・・・楸瑛・・・・」
「やぁ、君も気づいたかい?」

にこりと非のない笑顔で返事をしてくれたのはいつもと変わらぬ彼。
は息を整えながらも、少し苛立った口調で言った。

「・・・・あんた・・・・もしかして最初から気づいていた?」
「さて、何のことだろうね?」

楸瑛の横には冬にもかかわらず葉が茂っている木が立っていた。
そこになっているのは一つの白い実。

「・・・きっとこれのことだろうね。
ほら、白い実がなっている」
「・・・本当だ・・・。
まさか朝廷内にあったなんて・・・やられたわね」
「・・・さて、どうする?
願いが一つ叶うんだろう・・・」
「あんたが最初に見つけたんでしょ。あんたの願いしかきっと叶わないわよ」
「いや、私もさっき来たところなんだけど・・・」

多分最初から知っていたはずなのに、こんなことを言う。
いつも先をこされてばかりで腹が立つ。

「まぁ、。願いを言ってみれば?
私も同じものを願ってあげよう・・・・そうすればどちらにしても叶うだろう?」
「・・・・あんたはどうしてそう人をからかうようなことばかり言う?」
「からかってないんだけどな・・・。
それに私は欲しいものは全て手に入れたし、これからも手に入れれる」

綺麗な衣装も、宝石も、食べ物も、地位も、権力も・・・・
そして、今では大切な人も、愛しい人も、全て自分は持っている。

「・・・私は全て手に入れてしまったようだからね。
だから、願いなんてない」

あるとしたら、この状態を永遠に保ち続けることのみ。

「・・・本当に卑怯よ・・・。
出会ったときから全く変わってない・・・」

自分がどんなに越えようとしても越えられない。
いつも自分の先を歩いてそして、自分を待っている。
悔しいが・・・彼には叶いそうもない。
は手を伸ばして白い実をとった。

「・・・不本意だけどこれといった願いが思いつかないわ・・・。
どうせだから、あんたとずっと一緒にいられるように・・・そう願うわよ」
「・・・嬉しいこといってくれるね。
でも、大丈夫・・・
私は君を逃がすつもりはないから・・・」
「・・・・・。」
「愛しているよ。

「・・・その言葉信じていいのかしら?」
「この木の前では嘘はつきたくないよ」

自分達が出会ったのはこの木の前。
いつも強気でいるだが、朝廷に入った当初のイジメはかなりのものだった。
流石に耐え切れずここで憂さを晴らしていた時に、この男がやってきたのだ。
やってきたというか、何をしていたのかは知らないが、金数十両もする首飾りをの元に上から落としたのである。
とりにやってきた楸瑛は、惜しげもなしに首飾りをにあげて、そのまま去っていった。
それが最初の出会い。

「・・・していてくれているんだね。嬉しいよ」
「こんな高いもの家に置いておけないだけよ」

日が落ちてきた。
とっととこの実を霄太師に届けなければいけない。

「行こうか・・・。暗くなる」
「えぇ・・・」


霄太師の元に行く際に偶然、王と絳攸に出会った。
そして、三人は同時に同じ実を手に持っていたのである。

「ちょっ・・・・なんで二人共持ってんのよ」
「・・・いや、初めから見覚えがあったのだ・・・。
まさか裏庭に植えてあったとは・・・」
「俺も、見覚えがあってな。まさかと思って庭を散策してみれば見つけた」

絳攸の場合、散策というか迷ったという単語の方がふさわしいように思うのだが・・・。
霄太師の部屋に入った四人は同時に絶句した。
彼らの部屋にはたくさんの白い実。

「・・・・しょっ霄太師・・・。
なんだこれは・・・」
「おお・・・有能な官吏だと思ってすぐに持ってきてくれると思っていたのに、結構遅かったのぅ」
「っていうか、何でこんなにたくさんの実がここにあるんですか?」
「新官吏諸君に協力を要請したらこんなに集まって・・・
これは、彩雲国の将来安泰じゃ」

フォッフォッフォッと笑いながら実を受け取る霄太師に殴りかかりたいと思っているのは私だけじゃないはずだ。
これまで彩八家最高の三家の力を使っても見つからなかったものが朝廷内に山ほどなっているのは思いもしなかった。
こんなことに気づかなかった自分達もまだまだだということか・・・・。

「じゃ、ご苦労様じゃの。
王にしか出来ない仕事は残しておいたのでこれから励むことじゃな」
「・・・あぁ・・・」

なんだろう、凄く騙された気になるのだが。
なんだかすっきりしない気持ちで四人は部屋を出た。


「・・・おお、これは凄い集まったな。霄よ」

四人とすれ違いに入ってきたのは宋太傅。
あまりの実の多さに驚き半分嬉しさ半分の顔をしている。

「まぁわしの手にかかればこんなもんよ。
・・・さぁ、食べるか」
「雪が降らない年にしかならないからな。
これは絶品じゃ」

霄太師と宋太傅がにまりと笑い、いそいそとひちりんを用意して、火をつける。
そして、網をかぶせ、白い実をその上に置く。
数分もすればいい匂いが部屋中に漂い、ぱちんと実が割れ中身が出てきた。
それを酒のつまみとして二人は杯を交わした。

「まさか、こんなに沢山見つかるとは正直思わなかったぞ、若造と頭は使いようじゃのぅ」

この白い実は、この辺では朝廷にしか植えられていない珍しい木からなるもので、雪が少ない年に実をつける。
その実は外が固くて中にはぎっしり栄養となる実が詰まっていておいしい。
それをいちいち集めてくるのが面倒なので、王含め使えそうな奴らに声をかけてみたのだ。

「・・・・騙された・・・」

王室に戻った王と側近達は盛大に固まった。
あのジジイ、絶対仕事していない。
確かに、王がした方が好ましいという仕事しか残してないが、それはいつもしている仕事と内容は変わらなかった。
それが三日分。

「・・・・絳攸・・・楸瑛」

涙目ですがりついてくる王を無下に断ることもできず、数日彼らは徹夜する生活を送ったそうな。



ーあとがきー

こちらは65000Hitを踏まれました月夜凪様に贈られた彩雲国の『霄太師に遊ばれる王と双花とドリ主』です。
楸瑛の恋人希望ということで、そのように・・・。
ちなみにこの話のモデルになった実とかはありません。全て管理人の作り話です。

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