世界の中心で貴方を叫ぶ


今日は天気がいい。
静蘭と。二人は一緒に紫州の街を歩いてきた。
お金を使わないのであれば、一日中外に出ていいと秀麗がいって出してくれたのだ。
そんなわけで二人は弁当を持って出かけた。

「どこ行く?静蘭」
「どこでもいいですけどね・・・。
せっかくお弁当持ってきたんですし、遠くまでいきますか?
羽林軍で馬借りてきて」
「・・・・えっ、いいの?公私混同で」
「大丈夫ですよ。それなりに貢献してますし」

笑顔でいう静蘭にも頷いて二人はとりあえず、城に向かった。

「さて、行きましょうか?」
「えっと・・・・凄い立派な馬だけど・・・・」
「そりゃ、羽林軍でも名の高い名馬ですから。
白大将軍から借りてきました。
快く貸して頂けましたから」
「そう、じゃ・・・」

静蘭がを抱えて馬に乗せる。その後自分も後ろに乗った。

「少し走りますから体痛くなるかも・・・
私にしっかり捕まっていてくださいね」
「はーいっ」

馬が走り出した。

「・・・くそー騙されたっ!!」
「いっぱい食わされたな」

いい気味だ。
静蘭が立派な馬を借りてきた時、後ろの方で泣き声が聞こえたとか聞こえなかったとか。


「大丈夫ですか、。」
「うん、どっちかというと楽しいかも」

見たこと無い景色に。は目を輝かせる。
静蘭は微笑んで、そのまま馬を進めた。

「この辺は初めてですか?」
「あまり、街の中から出たこと無いから・・・・。
静蘭は?」
「私ですか・・・?」

静蘭は少し間をおいてから言った。

「昔・・・・馬に乗ったときは来ていたんです」
「へぇ・・・・誰と?」
「・・・・手厳しいですね。。」

静蘭は苦笑しながら、過去を思い出す。
それは一人しかいない。
以前、邵可達と会う前。自分が一番愛しいと思っていた人物。

「秘密です」
「あっ、酷」
「もう会うこともほとんどないですから・・・・」
「・・・ったく誰よ。
私知ってる人?」
「名前くらいならご存知かと」
「・・・・名前?」

そんなに有名人なのだろうか。
は頭をひねったが結局それらしい人物は出てこない。
そもそも女と思っている時点で分かるはずがない。

「昔の話です。
さてそろそろ・・・着きますよ。」

馬に揺られて進むこと半刻。ゆっくり丘を登ったところに開けた土地があった。
懐かしい景色に静蘭の口元も緩む。
長い年月が経ったがここは全く変わってない。

「つきましたよ」
「えっ、・・・・うわぁぁ」

は感激してすぐに馬から下りようとする。

「ちょっ、危ないですよ」

静蘭がを支えようとして彼女の勢いにバランスを崩す。

「わっ!!」
「きゃっ」

どさっ
なんとか、土と草のおかげで助かった。
二人は馬から落ちて何とか体を起こす。

「・・・・もう、静蘭・・・。大丈夫だって。私そこまで深窓のお嬢様じゃないんだから。
馬くらい一人で下りれますって」
「そう言いましてもね・・・・
いつものを見ていて落ちないと思う方がおかしいです」
「失敬な・・・・。
一応これでも運動神経ある方なんだけどな・・・」

は立ち上がって草を払う。

「怪我は無いですか?
足でも捻っているものなら私が怒られますから」
「大丈夫よ。少し痛いけど時期直るわ」
「・・・本当ですか?
全く・・・・危なっかしい・・・・」

は静蘭をおいて一人で奥に走っていってしまった。
静蘭は馬をその辺に放して、の後を追う。
羽林軍から借りた大人しいやつだ。その辺で自由に草でも食べていてくれるだろう。

、どこまで行くんですか?」
「街が見えるところまで〜っ!!」

青空の下に見えるのは広がるのは貴陽の城門、そして町並み。

「最高ーーっっ!!!」
「・・・・何叫んでるんですか」
「いやー、何だか叫びたくなるような風景だったから。静蘭もどう?」
「いえ、結構です。叫びたければ一人でどうぞ」

静蘭はその辺の大きな石に腰掛けた。
。は不満そうに静蘭を見る。

「さめるようなこと言わないでよ。
気持ちいいよ」
「そんなキャラじゃないので」
「誰も見てないしさ」
「結構です」
「・・・・そんなんなら『静蘭愛してる〜vv』ってここから叫ぶよ」

静蘭は笑顔で返した。

「じゃ、叫んでもらえますか?」
「・・・えっ、マジで?」
「えぇ、どうぞ。
むしろ貴陽の真ん中で叫んで欲しいくらいです」

・・・えっと・・・こんなキャラでしたっけこの人。
さらりととんでもないことを言う彼に最近は慣れてきたが、ここまで・・・・?
一応、叫んでみようかな・・・・と思ってみるが、喉まできて引っかかる。
こういうのはテンションもあるだろう。
四苦八苦しているをみて静蘭がくつくつ笑い出した。

「何よ」
「いや・・・以前来たときも連れが叫んでいたなーっと思って・・・・」

小さいながらも一生懸命大きな声を出していた弟を思い出す。
あの頃もまだ平和だったと思う。
屈託の無い笑顔を向けてくれた弟。
そして今はがいる。

ふとあることを思いついて、自分で意地悪だな・・・と思う。

「その子はちゃんと叫んでくれたけど?」
「・・・・え?」
「『静蘭大好き』って」

正確には『清苑兄上大好き』だったけど。
にこにこしている静蘭には目をそらす。
誰だか知らないが、叫んだらしい

・・・なんか叫ばないと、負けているような気がする。

「・・・叫んだら・・・・」
「はい?」
「叫んだら・・・・静蘭も叫んでくれる?」
「・・・・えっ、それは・・・えっと・・・・
私が満足しましたら」
「・・・・うぅ〜ん・・・。
まぁいっか。満足したら叫んでもらいますからね」
「えぇ、じゃそうします」

は満足に頷いた。
・・・・絶対叫ばせてやる。
は大きく息を吸った。

『静蘭とっても愛してる〜〜っっ!!!』
「・・・・・」

やっぱりいざ言われると少し照れるものがある。
静蘭は口元に手を当てた。

「・・・・はぁ・・・・、どう?
叫んだわよ」
「本当に叫びましたね」

自信満々にしていうに静蘭は息をついた。
本当にやられてしまってはしょうがない。
静蘭はを抱きしめて耳元でささやいた。

「私も、ずっと貴方のことを愛してますよ」
「・・・・!?」

あまりの優しい響きには目を丸くした。
彼の顔を見るといつもと変わらぬ笑顔。

「目を閉じて・・・・」

触れるだけのキス。

「どうです?これで叫んだのに値しますよね」
「・・・・せっ・・・静蘭ねぇ・・・・」

赤くなった顔が更に赤くなるのを感じる。
耳がとても熱い。

「そろそろお昼ですね。
お弁当食べましょうか」
「・・・えっ・・・うん・・・」

にとって平気な顔していられる彼が分からない。

「静蘭・・・一つ聞いていい?」
「なんですか?」

敷物を敷きながら静蘭が答えた。

「・・・前・・・ここに一緒にきた人って・・・・誰?」

あぁ、と静蘭は笑顔で答えた。
そろそろネタばらししてやってもいいだろう。

「弟です」
「・・・・弟?」
「可愛かったですね。
丁度私が馬乗れるようになったついでに弟を連れてここまで来たんですよ。
その時に『兄上大好き』って・・・・。
嬉しかったですね」
「・・・・あぁ・・・そう・・・」

その弟さんと張り合うために私は頑張ったということか。
なんか、脱力してきた。

「弟さん・・・・元気?」
「えぇ、元気ですよ。物凄く」

昨日楸瑛と一緒に絳攸をストーカーしてましたから。(暇だな、王よ)

「・・・・なんか不満そうですね。。。まだ何かして欲しいですか?」

不敵な笑みを浮かべる静蘭に背中に変な汗が流れた。

「いえ、もう結構です」
「そんなに遠慮しなくてもいいですよ」
「嗚呼ーっっ誰か助けてっっ」
「先ほど貴方自身が言いましたが叫んでも誰にも聞こえませんから」

押し倒される寸前で静蘭が引いた。

「・・・・本当に面白いですね。貴方」
「からかわないでよ。凄い・・・・どきどきした」

は秀麗の作ってくれた弁当に手を伸ばした。

「・・・・全く・・・弁当に癒されるなんて思っても見なかった。
静蘭・・・・」
「はい?」
「・・・凄い照れたけど・・・・嬉しかったり」
「それは良かった。
言ってくれればいつでも」

なんだろう、絶対勝てない気がする。この人には。
そう思いながら、は空を見上げた。
ムカつくくらいにしっかり晴れた青空だった。


ーあとがきー

こちらは88888Hitを踏まれました綵璃様に贈られました『彩雲国物語の静蘭夢』です。

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