時は夏。
照りつける太陽が痛い中、暑いながらも平凡に過ごしていた。

ある都で行われた召喚実験。
そして、その術によって召喚されし式神はその時期をパシられて過ごすことになる。
今まで生きてきてある意味充実した、ある意味屈辱的だった。
本当に忘れられない夏を過ごしたのである。


陰陽師In彩雲国
異郷の都を駆け回れ


嫌な瘴気があたりを包む。
陰陽師を囲む様に神将達は神経を研ぎ澄まし周りを良く確認する。
敵は強い。
まだどう見ても子供の陰陽師、安部昌浩は昨年元服したばかり。
しかし、それを苦とせずどんどん陰陽師としての力を伸ばしていった。
彼を囲んでいるのは昌浩の祖父である、安部清明の式。

「切り裂いても、燃やしてもまた元に戻るとは厄介なやつだな・・・。」

昌浩にいつもついている火将騰蛇がげっそりと呟く。
こいつは瘴気も強いし、元にも戻るが、基本的には弱いのだ。
だからこそ余計にムカついてしまう。

この妖怪と退治してはや半刻となる。
昌浩も出きる限りの術を使ってしまい、今は精神力だけで立っている状態だ。
昌浩を護衛する三人の神将、騰蛇、六合、勾陳はとにかく早くこの戦闘を終わらせることを優先的に考えていた。
そのとき瘴気の中から聞き覚えのある声が聞こえた。

「こういうのは、まとめて送っちゃうのが一番良いんだよねぇ。」
・・・・?
何故ここに・・・。」

勾陳が突然現れた仲間に困惑の声を上げるが、次に彼女の後ろにいる青年には他の三人も声をあげる事になってしまった。

『清明っ!?』

霧の中から現れたのは、最近やってきたばかりの十三人目の神将、と青龍、そして主の清明。
離魂の術を使っているため、今は二十代半ばの姿である。
の力によって、清明の離魂の術の身体に対する負担が大分軽減されたがそれでも老体には響くはず。
それでも彼は苦とせず、可愛い孫の苦戦している様子を見て少し表情を苦くする。

「流石に、昌浩にはこの件つらかったか・・・。」
「というか、最初に私も連れていってくれれば一発ですんだはずですけど・・・清明様。」

の呟きに清明はクスリと笑う。

「何事も経験じゃ。」
『・・・・・・。』

やはり姿形は変わっても狸健在。
それはそうと、昌浩の保護とここ一体の浄化にあてるため、なるべく事は急いだ方が良い。

。とりあえず、やってくれるかの。」
「では、まずあの中心にいる昌浩を隅のほうにやって・・・・。清明様も下がっていてください。
あと、騰蛇とか借りても良いですか?」
「・・・構わんよ。
青龍・・・昌浩達までの道をあけてくれ。」

狙っているのか、そうでないのか最近清明はやたらと騰蛇と青龍を会わせたがる。
それを彼は良く思わない。
青龍は舌打ちしながらも清明の言う事に素直に従った。
主の指示を聞き中心にいた三人も攻撃する体制から引く大勢に戻った。
六合が昌浩を担ぎ、四人は青龍のあけた道から妖怪の外に出る。

「騰蛇、六合、青龍・・・・私の援護頼めるかしら?」

昌浩とすれ違いには妖怪の中心向けて走っていった。
それに青龍もついていく。
騰蛇は、その辺にいた雑魚を蹴散らしていた。
六合も昌浩を勾陳に預け、戻ってくる。

三人が視界に入ったところでは敵から逃れていた動きを止め静止する。
に飛び掛ってくる敵は皆三人に止められた。

「・・・じゃ、しっかり頼むよ。」

は精神を集中させた。
仲間は入らない様に。そして、完璧にこの妖怪を『黄泉』に送れるように。
妖怪を囲む様に円が出来る。
そしての掛け声と共にその円内が暗闇に包まれた。

『黄泉送りっっ!!』

これが彼女最大の技。黄泉への扉をこじ開けて面倒な妖怪をそのままあの世に送ってしまうというかなり大胆な技。
これもかなりの神気を必要とし、無駄に神気を持っている彼女にしかなせない技。
妖怪を見送ってはまた戻ろうと意識を変えた。
三人はすぐ近くに降り呼べば来てくれるだろう。
ふと暗闇の中に光があるように感じは眉をひそめる。
そしてその光の元が自分だと言う事に気づいた。
何故か、自分の身体が出るはずもない光に包まれている。
当たり一面闇なのでそれは誰が見ても分かった。
他の神将達もの異変に気づいた。

「どうした?
また変な特殊能力でも身につけたか?」

騰蛇が胡散臭そうな声を掛けてくる。
はすぐにそれを否定する。

「こんな身体光る能力なんていらないわよっっ。
ちょっと本当にどうなってんのこれ・・・・」

わけがわからず、元の世界に戻る事も忘れては叫ぶ。
それを何とかなだめる様に騰蛇がの方を押さえた。

「落ちつけ、とりあえず後で清明にみてもらうことにして、今は帰るぞ。」
「・・・ねぇ、これ・・・私・・・消えてないっ!?
どうしようっっ、なんか薄くなってるよっっ。」

確かに徐々にの身体が光に包まれ消えていく。
それは間近で見ている騰蛇にも分かった。
しかし、それをどうする事もできない。

の術の効果が切れ、また景色は平安京に戻った。
しかし、の身体の光はやまぬばかり。
青龍も六合も不審に思って近づいてきた。

『・・・・!?』

不意にに飛び掛ってきた残党が二体。
六合と青龍は、それに反応して、手に持っていた槍と鎌で応戦する。
更にの光が強くなり身体も消えかかっていた。

『・・・嫌ぁぁぁぁぁっっ!!!』
『・・・・・なっ・・・・。』
『・・・は??』

『・・・・・・。』

また、闇に視界が暗くなった。
その光景を見ていた、清明を始め昌浩、勾陳は開いた口がふさがらなかった。
どういう事だろう。

の光が一番強くなった時、一緒に他の三人の神将も一緒に光に包まれ、消えた。
摩訶不思議な事が目の前で起きているが、清明も昌浩も何故か嫌な予感というものはしなかった。

「・・・・まぁこれは後で調べてみるとして・・・。
帰るか昌浩。」
「・・・・はい。」

目の前でみんなが消えたのにちっとも不安な気分にならなかった。
何でだろう。



凄い煙と共に四人の身体が地に落ちた。
ドスンと景気の良い音が室内に響く。

「・・・イタタ・・・どうなってんのこれ・・・・・?」

さっきまで闇にいたのに、今はちゃんと明かりがついている。
ここはどこかの部屋みたいだ。
しかし・・・ここはどこだろう。
隣には、青龍と六合がしりもちをついた感じになっていた。
それは光が最大限になった時、両脇にいた彼らの髪の毛を思いっきり引っ張ってしまったため。

・・・素晴らしくさらさらの髪の毛でした。(何故か得した気分)

一人だけ着地した騰蛇が辺りを不審そうに見渡し、そしてその視線がとまる。
騰蛇の顔が険しくなった。

「・・・誰だ・・・テメェ・・・。」

その声に私達も前方を見る。
そこに立っていたのは清明くらいの歳の老人二人。
一人は本当に清明を感じさせるような狸のオーラをかもし出している老人。
一人は頑固そうで、まだ現役で剣を振るっていそうな老人。

「ほっほっほ・・・成功したわい。
少し形は違うが、よしとするか。」
「本当にやってのけるとは・・・流石だな・・・霄。」

わけがわからず首をかしげる
騰蛇が口を開く。

「どういうことだ・・・テメェらは一体・・・」
「あぁ・・・そうじゃな。お前さんたちは初めてここに来たんじゃったな。
ここは彩雲国、王都貴陽。そして、ここが中心の朝廷の城じゃ。
お前さんたちを呼んだのは他でもない。
この夏連日の猛暑での、朝廷の役人がバタバタと倒れていったのじゃ。
故に・・・夏が終わるまで雑用をして欲しくて呼んだんじゃ。」

霄と呼ばれた老人が話す。
私達はその緊張のなさと会話のないように少し絶句した。
というか、聞き間違いじゃないかと言うくらいに信じられない話だった。

「・・・・彩雲国・・・?
・・・ってか雑用って・・・。」
「あぁー、仕事の方は大丈夫じゃ。
各部署に書類を配布したり、役人の言われた事をそのまますれば良いだけじゃから。
馬鹿でも出来る。」

いや、じいさん、そういうわけじゃなくて・・・。
私達の困惑をよそに彼は話しつづける。

「我が名は霄太師。大師といっても役職名じゃが・・・。
現役の役人人生を終えて、今は若い王をいじめ・・・コホン、教育することを生き甲斐にしておる。
まだまだこの国も不安定でのぅ・・・。
ちなみに隣にいるのは宋太傅。」

神将達なんとも言えぬ表情で霄太師を見る。
なんか、某じいさんと見事に被ってきた。
そして、うすうすながらも自分達のこれからの運命を思った。
それはここにいる四人、綺麗にかさなった。

とても嫌な予感がするのは自分だけではないはずだ。

「ただで、俺がそんな事をすると思うか?ジジイ・・・。」

今まで黙っていた青龍が痺れを切らして激怒する。
そして大鎌を召喚して霄太師に切りかかった。

「青龍っっ、流石にそれは・・・」

の言葉も途中で止まった。
青龍の鎌がとまっている。
いつ剣を抜いたのか、移動したのか、宋太傅がその鎌を止めていた。
青龍が舌打ちをする。
宋太傅は静かに剣を鞘に収めた。
しかしその動作に油断はなく、また切りかかれば次は首にその剣が飛んできそうだ。

「別にこの後先短い老いぼれをいくら殺してもらっても構わんが・・・
早とちりはいかんぞ。
誰がここまでつれてきたと思っている?
わしがいなければお前達も元の世界に戻れんぞ。」
「・・・・なんですってっ!?
元の世界って・・・ここ西にある巨大大陸の国じゃないのっ!?」

・・・たしか隋とか・・・いったっけ・・・。
ちなみに、彼女が言っているのは現代でいう中国。
平安時代に合わせれば宋である。
更にいうなら、彼女の中の時間は数百年前で止まっていた。
だから時代の流れにはとことん疎い。

「う〜む、何を言っているのかさっぱり分からんが・・・。
まぁ異文化の国と思ってくれて結構。ただ次元が違うだけじゃ。
ということで明日から頼むぞ、諸君。」

鎌をしまった青龍の肩をポンと叩く、霄太師。
青龍の怒気は更に増すが、彼はお構いなしなようだ。

「おいおい、まだやると言ったわけじゃ・・・・。」
「お前達がここに来た時点でそれはもう確定済みじゃて・・・・
一応、お前達の主人にも後に了解を取っておくから・・・。
さて、その姿ではちと不便かの?
人型になれるんじゃろ?なってみなされ。」

『・・・・。』

本当にこのじいさんは何者なのだろうか。
自分達が異形のものというのは誰でも見て分かると思うが、自分達に主がいて、それでもって人間にもなれると知っているなんて。
これは流石に逆らえないかもしれない。
は、神気を強め人間を想像した。
そして、髪と目は黒い少女になる。
どうみても普通の人間だ。

「・・・おい、・・・・こいつに従うつもりか?」
「仕方ないでしょう?どうせ私達が何しても帰してもらえないんだし。
まぁ異国で少しお手伝いするのも楽しそうだしいいんじゃない?
平安の方は結構安定してきたみたいだし大丈夫★」
「うんうん。賢いお嬢さんじゃの。
大丈夫じゃ。言われた事をしっかりとやってくれたら帰してやるから。
衣食住はこちらで用意するし褒美も与えよう。」

は、騰蛇と青龍をなだめ終えて霄太師に向き直った。

「・・・・貴方が誰であれ・・・・
もしこの約束を破る事があろうものなら、私が全力で排除しますから。
そのおつもりで。
楽には逝かせてあげませんからね。」
「・・・・・・分かっておる。
さて、これからこの国について少し知ってもらわんといかんのぅ・・・・
ついてきなされ。そして明日から完璧にこの国の住人となるんじゃぞ。」


その夜は霄太師にみっちり彩雲国の事を聞かされた。
もう頭になにも入らないくらい。
別にこんな事知らなくても、仕事には全く差し障りのないことだと知ったのはその後だった。
物凄いショックだ。

とりあえず、各自霄太師の用意した服に着替える。
勿論朝廷の中には女性は入れないそうなので私は必然的に男装になる。
長い黒い髪を束ねて後ろでひとくくりにして布をかぶせる。
元々きりりとした顔立ちなのでぱっと見男に見えるだろう。
身長もそんなに低くはない。

指定された場所に向かうとも霄太師始め、皆そろっていた。
私はふいと隣を見て驚いた。

「・・・・えっと・・・騰蛇に、六合に・・・青龍だよね??」
『・・・・・・。』

彼らの人間の姿はこれが初めてとなる。
別に今まで生きてきて人間の姿を取るという機会がないに等しかったから。
というか、別に穏形して見えなくしていれば良かっただけなのだが。
しかし今回ばかりはそういうわけにもいかず三人そろって見事な美形三人衆を作っていた。
衣服はたいしたことないのに顔だけで光っているところが凄い。
彼らは瞳の色は同じだが、全員髪の色は黒だった。
顔かたちはほとんど変わらない。

騰蛇はいつもと対して髪型は変わってないが、青龍は髪を私みたいに束ね綺麗にしてある。
元々綺麗な顔立ちなので髪を上げたことで更に綺麗に見える。
女としてかなり悔しい。
六合は髪を根元で縛っていた。
彼の髪はボリュームがあるのでまとめにくかったと思われる。
かなり変わった三人に見とれながらいると霄太師がこっちをみていた。

「さて、今から仕事先に向かう事になるが、くれぐれも上司に逆らわない様に。
今のお前達は下っ端。雑用。何を言われても何をさせられても口答えはしないようにな。
・・・・全てわしの責任になるから。(ボソリ)
というわけで、まず赤いのは・・・そうじゃの・・・吏部へいってくれるか?
青いのは左羽林軍で雑魚の始末を手伝ってくれ。
で、茶色いのは戸部へ。あー、ここが一番大変だと思うから・・・。
・・・最後お前じゃが・・・。」

最初から名前を聞こうとせず、髪の色で彼は私達を呼んでいた。

「・・・です。」
、お前は王室の方へいってくれ。」
「分かりました。」


「王室かぁ・・・・どんなところなんでしょう?
というか、王様・・・がいるんですよね。
どんな人ですか?」

霄太師の後を付いていきながら、は尋ねる。
神将として長い時を過ごしているにとって人間のどんなに偉い人だろうが格下同然。
正体がばれている霄太師に対して恐れ多くもため口だ。

藤原の屋敷だけであの豪華さだ。
ここは西の異国と良く似ている。
日本より文明がはるかに進んだ地域なら王室もさぞかし豪華・・・。

「いや、執務室は特にぱっとはせんのぅ・・・。
教育係にあの小僧をつけておいたからまず贅沢はできんし・・・・本人も全くする気はないみたいじゃ。
王は・・・そうじゃのう・・・強いて言えば犬。じゃな。
たいそうな事をしない限り、怒られはしないじゃろ。
少しおかしい奴じゃが仲良くしてやってくれ。
ついたぞい。
ここが王の執務室じゃ。」
「ここが・・・。」

素晴らしく立派な扉の前に立ち、私はつばを飲む。
どんな王様なんだろうか。

霄太師はノックもせず、一声もかけずにそのままドアに手をつけそのまま引いた。
流石の私もそれには驚いた。

おいおいおい・・・・一国の王に会うのにそんな態度でよろしいものか?

私たちの突っ込みも虚しく、霄太師は飄々と友達の家に入る感覚で中に入っていった。
そして、その後についていったが私たちは予想もしなかった展開に立ち会ったのだ。

「これじゃ、まだたりん、やり直し。
あと、この書類かなり間違いがあった、すぐに直しておく事。
あっ、そうそう昨日草案に目を通しておいたがあれではまだまだ甘い。
三ページ目から十ページまで全て書きなおしておけ。
あと知識的にもまだたりんようだから邵可様に会いに行くついでに参考書類に目を通しておく事。
あぁ、今日は雑用の書類がかなりたまっているからそれを全て片付けること。
勿論今日中に。」
「・・・・はい。」

『・・・・・・。』

なんでしょう?この光景は・・・・。
私は目を疑った。というか、この中に王様が果たしているのだろうか。
ここの部屋にいるのは若い青年が三人。
一人は武官、一人は机に座っている二十歳くらいの青年を叱っており、その青年はそれを聞いてしょげている。

「その辺でいいかな?李侍郎」
「・・・なっ、しょっ、霄太師」

青年を叱っていた李侍郎と呼ばれた人物はすぐに表情を変え、霄太師に例をする。
一方、叱られていた青年はあからさまに嫌な顔をした。
恐らく彼が王様なのであろう。本当に霄太師は彼をいじめているらしい。

これとよく似たパターンを知っているのであえて何も言わないことにしておく。

「なんだ、クソジ・・・霄太師。
何か用か?」
「いやいや、この暑い中大変な仕事をしている王様のために手伝い人を連れてきてやったのじゃ。
正式な官吏じゃない故、雑用しかできんが使ってやってくれ」

私は軽く礼をした。
三人はこっちに注目する。

「えっとこいつは霄
『・・・・はい?』

私は間の抜けた返事をした。
今この人何言いましたか?
なんか、勝手に名前つけられたような気がするのですが・・・・。

「えっと、だな。」

王様は頷いて私達の前に来た。

「・・・えっ・・・あっ、はい。
よろしくお願いします」
「では改めて紹介しよう。
これが、この国の王、紫 劉輝。
その隣が、吏部侍郎の李 絳攸。
そして、そこの武官が藍 楸瑛。
二人は王の側近じゃ。仕事はこの二人から受けてくれ」
「・・・・はぁ」
「じゃ、頑張るんじゃぞ」
「・・・お待ちください、霄太師」

帰っていこうとする霄太師を絳攸が止めた。

「何じゃ?」
「・・・は・・・・」

絳攸の問いはすぐにさえぎられた。

「人手不足じゃ。多めに見てやってくれ。
お前達はかまわんだろう?」
「・・・えぇ・・・・。」

そういって、霄太師は出ていった。
劉輝はべーっと舌を出して霄太師を見送った。
相当嫌っているらしい。

そして、見送ったあと王は、私に向き直った。
「はぁ・・・これでやっと楽になる。
じゃ、さっそくこの仕事を・・・・」

と自分の机案の隣にある書類を指差した。
がその手は絳攸に叩かれる。

「霄太師の話を良く聞いていたのか、この馬鹿王。
二人は一般人といっていた。政に関わる仕事を任せられるわけがないだろう。
仮にも王の仕事だぞ。俺でも無理だ。
ということで、とっとと机につく。手を動かせ、手を」
「・・・はい。」

少し王様が気の毒に見えました。
というか、これではどちらが偉いのか分からない。

「・・・さて・・・・」

王を机に座らせ、絳攸が私に向き直った。
歳は二十三歳といったところか。
若いのに王の側近とは相当偉いんだよな・・・こりゃ。
私なりの感想を抱き、絳攸を見る。

「お前にはまずこの書類を各部署に運んで欲しい。
ここのところ人手不足でこの係りもこの暑さで倒れてしまっていてな。
実は数日分そのままにしてある」

絳攸に配らせると一向にはかどらない以上に、逆に他の仕事がとまってしまい更に回りが悪くなる。
だから楸瑛一人で配っているのだ。
悲しいかな。武官だからといって、休みなしに暑い中朝廷を歩き回らされる。
一応これでも将軍の地位はもっているのに絳攸の前ではただの雑用だ。

「えっと、朝廷の地図はこれをみてくれ。
上の方にどこにもっていくか書いてあるから」

絳攸から渡されたものはかなり使いこんであり、かなりしわもついていた。
思いっきり握りつぶしたらしき後も。
彼・・・・方向音痴なのだろうか・・・?
次に、私は書類の山を見た。
なんか、巻物たくさんもった成親を思い出す。
は手っ取り早くその辺にある書類を持ち上げた。

「・・・・おっ、オイ」
「・・・なんでしょう??」

はたくさんの紙を持ったまま思わず声を掛けた絳攸に向き直った。
今にでも崩れ落ちそうな紙の山である。

「大丈夫か?というか、重くないか?」
「・・・・え??」

・・・しまった。

神将は人間の姿になっても普通の人間より力ははるかに強い。
だから紙の重さだけでいえば、ここにある束全部持っても良いほどだ。
流石に落ちると困るので限界ギリギリのところで持っているのだが。
はもう弁解するのも諦めて笑って誤魔化した。

「大丈夫です。私こう見えてもかなり力持ちなんですよ。
重いものでも任せてください」
「・・・しかし貴方は・・・・」
「・・・・・?」

絳攸の少しだけかしこまった言い様には首をかしげる。
何かばれるような事をしたのであろうか。
人間ならこれくらいの書類持てる人は持てると思うのだが・・・。
絳攸は言おうかいわまいか一瞬迷ったが口を閉じた。

「いや、なんでもない」
「そうですか?」

はそのまま書類を運びにいった。

「いやー、凄いね。
っていうか、あの子本当に女の子?」

楸瑛が驚いたように言う。
絳攸も動揺を隠せないでいた。

「何故・・・人手不足だからといって女を寄越した・・・?
霄太師の意図が全くよめん・・・・」
「ん〜、やっぱり男ばっかでつまらないこの朝廷に華をと霄太師が連れてきてくれたんじゃない?
あと、君の女嫌いを直すためとか、主上の秀麗離れを促す対策とか・・・」
「王はともかく俺のは余計だ。
というか、楸瑛、お前もさっさと行って来い。
女のあいつがあれだけ持ってんだから・・・・」

ニヤリと絳攸が笑う。
そして、丁度首まであった楸瑛の持っている書類の上にまた書類を付け足した。

「重ッ!!
さすがにこれはひどいんじゃないかい?絳攸・・・・」
「気合だ。
頑張れ、武官」

このまま書類を減らしていけばまた絳攸にどやされるので楸瑛は泣く泣くその大量の書類を運ぶ事に決めたのであった。


「えっと・・・ここが吏部・・・・か・・・」

書類は大体分けてあるので指四本ほどの厚さの紙を運ぶ。

「えっと・・・どこに置けば良いのかな・・・・?
というか私がここに入っても良いのかしら・・・」

吏部書の前で迷うこと数秒。
後ろから声が掛かった。

「なにか用かね?」

振り向くと三十代くらいの男性が立っていた。
かなり偉そうなので、侍郎か尚書クラスだと思われる。

「えっと・・・王のところから書類を運んできました。
どちらに置けばよろしいでしょう?」
「あぁ、それはご苦労・・・。
では中に・・・」

その男性にドアを開けてもらい中に入る。
彼が入った途端その場の空気は一気に緊張したものになる。
『悪鬼巣窟課』との異名を持つ吏部でもっとも恐れられている男。
それがこの紅 黎深。官位尚書。はこの時点で気づいた。

ふとみれば騰蛇が忙しそうに働いていた。
というか半ば面倒くさそうに。

「おう、
「頑張ってるみたいねー。
大変じゃない?本の整理・・・」
「いや、清明や昌浩にやらされたから半ばなれたもんだ」

・・・うわー、なんか凄く悲しいよ。それ・・・。

「私語を慎むように、蓮」
「・・・蓮??」

聞きなれない単語には首を傾げた。
騰蛇が耳打ちして教えてくれた。

「なんかしらねぇがあのじいさんが勝手に『紅(コウ)蓮』って名づけやがったんだ」
「・・・紅・・・・蓮・・・・?」

紅蓮とも普通に呼べる。
しかしその名は清明がつけたもので昌浩と清明しか呼べないはずだ。
何故霄太師がその名を知っているのだろうか。
本当に、謎は深まるばかり。

・・・・といったかな、吏部への書類はここにおいておいてくれ」
「はい。
・・・紅尚書・・・一つよろしいですか?」
「なんだ?」
「その手に持っているものってお饅頭ですよね。」

あぁ、と吏部尚書はそれをみて頷く。
そして、この部署では滅多に見られない、笑顔を見せた。
今日初めてこの人を知った騰蛇と以外の部下たちはその笑顔に寒気さえ感じた。
吏部尚書は語り出す。

「今日兄上から分けてもらったんだ。
これは私の姪が手作りしてくれた饅頭でね」
「・・・はぁ・・・」

ここで吏部尚書の姪、兄自慢を聞くこと半刻。
既にかなりのタイムロスをしてしまった。
これぞ、天才と馬鹿は紙一重ってやつでしょうか?
ここまで生きてきたがそんな人ははじめてお目に掛かった。
ちなみには今の時点でこの彩雲国にはそういうタイプが山のように転がっている事を知らなかった。


はすぐに次の部署に急いだ。
目的地は戸部。ここへの書類が一番多いみたいではほっと息をつく。
しかし、気を抜きすぎたのか、角で誰かと鉢合わせしかけた。
は持っている書類を落とさないようにバランスをとりながら謝る。

「・・・ッ、すいませんっっ・・・」
「いや・・・
・・・?」
「・・・あっ、六合。奇遇ね」

六合はと同じくかなりの巻物と本を抱えている。
ここの尚書はかなり人使いが荒いらしく騰蛇や青龍では半刻で切れて首になりそうなのでここは霄太師も考えたところだ。
普段無口であまり口答えも少ない六合なら大丈夫だ。

「戸部に用か?」
「えぇ、この書類をね」
「知り合いですか?六合」

六合の陰で見えなかったが、その奥には優しそうな男性がいた。
彼も同じくたくさんの巻物を抱えている。

「あっ・・・えっと・・・・」
「戸部侍郎の景柚梨殿だ」
「あぁ、どうもです」
「話は聞いてるよ。くんだね。
あぁ、うちの部署の重かったでしょう。
さっ、さっさと置いていってください」

柚梨は物腰は穏やかで丁寧。
きっといい人なのだろう。というかいい人オーラが凄い出ている。
こんな人がとっても厳しい上司の下にいるなんて少し考えがたいが・・・・。

柚梨の後について尚書の元に連れて行かれた。
その後に六合は続く。

「・・・・黄尚書、王室からの書類が一気にきましたが」
「・・・・・・。」

は一瞬固まった。
・・・・仮面??
戸部尚書と呼ばれた人物は仮面をつけていた。他の官吏とは違って髪も結ってない。
なにかわけありなのだろうか。というか素顔が気になってしょうがない。
なるほど、これも六合を選んだ理由の一つか・・・・。
大切なことしか口に出さない彼は多分、この仮面の事も何一つ口にはしていないだろう。

心で何を思っているかは別としても。
の持ってきた書類を眺めると、彼はいった。

「王に伝えておいてくれ」
「かしこまりました。なんでしょう?」
「何日前に出した書類だと思っているのだ、この馬鹿王が。
くだらない事を言っている暇があれば手を動かしてさっさと書類をもってこいと。
提出期限を守らないなんて問題外だ。
・・・以上、これを一字一句たがえずに伝えて来い」
「・・・・・・」

流石の彼女もなにも言えなかった。
そして、六合が彼の机案の上に持ってきたものを並べ終えた途端、次の指示が出る。

「その巻物はそこの戸棚へ。
この書類はすべて捨てろ。この書類は各部署へ届け、・・・あぁここに書いてある官吏を呼びつけておいてくれ。
直接申したい事がある。
この本は府庫へ戻しておいてくれ。
秀は、そこの巻物を各部署に運んでくれ。
燕青はそこにある書物を全て棚にいれて、そこに書いてある本を府庫から借りて来い。
その前に吏部にいって尚書から報告書をもらって来い。必ずだ。
手段はとわん。どうなっても私がなんとかしてやるから絶対にもらってこい。」

指示もさながら、彼の手は一向に止まる気配を見せなかった。
有能だが、なにか違和感がありすぎる。
あれだけ一気に言われ、六合が動く。
私なら忘れてしまいそうなものなんだが・・・。

柚梨はその間ずっと苦笑いしていた。
そして直接呼び出される人に少し同情もしながら。

・・・あぁまた鳳珠が減給でもしちゃうのでしょうか・・・。可哀想に。。
ちなみに、賄賂なんぞが発覚したら黄尚書じきじきに呼び出され事実が明確になるそうな。
で、賄賂にまわす金があるならそれはそれは裕福な家だな。などなど嫌味を散々並べられ、挙句の果てに減給。
もう同情したくてたまらない。

は黄尚書に頭を下げ戻ろうとしたら呼びとめられた。

「これを王の元に届けてはもらえないだろうか」
「分かりました。お任せください」


なんとか書類を片付け終えて帰ったに絳攸の怒声が響く。

「お前、今まで何をやっていたのだ。
出ていってから一刻も立っているじゃないか」
「・・・すっ・・・・すいません・・・・」
「気にする事ないよ。
彼なんてここ数年朝廷にいるけど、吏部に行って戻ってくるだけで一刻以上かかってるから」

楸瑛がの肩を叩いてフォローに回った。
絳攸がピクリと反応する。
そして、何か言ってやろうと口をあけた瞬間、が言った。

「すいません、吏部尚書の話を聞いていたら時間が・・・・」

『吏部尚書』の単語で絳攸の顔が固まる。
言おうと思っていた言葉さえも出てこない模様。
もう、吏部尚書で半刻話を聞いていたというのならその話の内容は容易に想像できる。
そして、彼がなにより吏部尚書に弱いという事が浮き彫りになった。
絳攸は、なにか落ちつかない様子でそれ以上怒るのを止めた。

「そっ・・・そうか・・・。
仕事を続けてくれ・・・」

そういえば、と、戸部から預かった書類を王に渡す。
劉輝はそれを見て、少し顔を青くした。

「黄尚書は・・・なにか言ってはおらんだか?」
「あぁ・・・・えっと・・・。
『何日前に出した書類だと思っているのだ、この馬鹿王が。
くだらない事を言っている暇があれば手を動かしてさっさと書類をもってこいと。
提出期限を守らないなんて問題外だ。』と」

それには、劉輝は勿論の事、絳攸までもが青ざめた。
部屋の気温が一気に十度くらい下がった感じだ。
劉輝は泣かんばかりの勢いで絳攸に訴えかけた。

「・・・絳攸・・・余は、余はもう朝議会に出たくない・・・。(ガタブル」
「そんなの俺とて同じだ。
お前はまだいい。
俺なんて黄尚書が斜め前に座っているのだぞ。
『王の教育はどうなっている?基本的な事も出来ないのかうちの馬鹿王は。』
と嫌味を言われるのが目に見えている・・・・」

そして、上司も助け舟を出してくれるかと思いきやそれを楽しそうに眺めているではないか。
泣きたい。

は少し同情しながら次の書類に手をつけた。
次はもっと早く帰ってこよう。


そうこうしているうちに五日が経った。
執務室に合った書類の山は消え、にも暇が出来た。
そういうわけで、今日は青龍と一緒に野盗退治だ。
この国には妖怪はいないが人間のほうの悪い奴が多いらしい。
それもここ最近。
指揮を問っているのは黒燿世と白雷炎の両大将軍。
この二人の元にも大量の武官が勢ぞろいである。
このクソ暑いのに倒れもしない丈夫な人達は相当鍛えられているのであろう。

「で、何すんの?ここでは・・・?」
「人間の盗賊を捕まえるらしい」
「・・・そういえば理・・・ってのがあったよね。
どうしてんの?青龍・・・」

神将には理が合って人間を傷つけてはいけない。
いつも容赦なく愛用の大鎌で敵を切って捨てる青龍にとっては難しい事だろう。
しかし、彼なりに何とかしているらしい。


そして、各分担場所にわかれて仕事をすることになった。
一応青龍とは知り合いということで一緒に行動を許されていた。
静蘭という若者がその辺を案内してくれるらしい。

「紫州は初めてですか?」
「えっ・・・はい。そうなんです。
本当に大きな都で・・・」

見たところ錆びれていそうなところもないし、平安京とは違う。
青龍は黙ってそれをみていたが少し思う。

「・・・・・・」
「何?」
「お前・・・もしかしてずっとそんな調子であの中にいたのか?」
「・・・うん。そうだけど??」

青龍は息をはいた。

「・・・・お前・・・・それでは男装している意味がまるでない・・・・」
「・・・・・・・」

そういえば、今私、男の役しなくちゃいけなかったんだっけ。
うっわー、一日目からあの王様と付き合っていたから毒が一気に抜けてしまったわ・・・。

前を歩いていた静蘭が立ち止まった。

「今から少し山に入りますが、足元に気をつけてくださいね。
最近たちの悪いものが不意打ちで襲ってくる時がありますから・・・。」

そういっている途中に黒装束をきた人間が二人ほど上からふってきた。
静蘭は見事な手さばきで剣を抜く。
私はそのまま黒装束の手を掴みそのままねじふせた。

「・・・これでいいの??」
「あぁ、上出来だ。」

青龍は慣れた手つきで縛り上げる。
静蘭もこれには驚いて内心拍手をあげた。

「剣とかは・・・いらないみたいようですね・・・・。」
「はい、剣は慣れてないので・・・。」

普段神気だけで戦っているに近いは剣なんて持ったことはあまりない。
たまに扇などをもってみるが。

そして、かなりの野党をかり昼も近くなった。
太陽が照りつけ、陰が多い山の中でも蒸し暑い。
神将のときならこんなのは気にならならないのに・・・・。

「・・・うぅ・・・暑い・・・。
青龍・・・死ぬ」
「死ぬか」
「っていうか・・・少し気分悪いんだけど・・・」
「・・・大丈夫か・・・?
・・・・・・!?」

何かへんな気配がする。
ここは平安みたいに異形がいない。

「・・・・この気配は・・・・。
・・・」
「・・・・えぇ・・・・流石に私への怨念かしら。
本当に・・・つら・・・・っっ」

倒れかけた体を青龍が受け止める。
青龍は舌打ちする。
これ以上人間の体でいれば本当に体が壊れてしまう。
陰陽師みたいに自分を守る術は神将たちは心得ていない。

「・・・ここにもいるのね・・・。
というか・・・・私達が連れてきたのかも」
「そのようだな」
「静蘭には悪いけど・・・・異形・・・退治しないとね」

青龍がうなづく。
静蘭はあたりにいない。
二人は術を解いた。
青龍の髪は綺麗な青に戻り、神気も戻る。
も男装はとき、いつもの格好に戻る。
気分も既に治っている。
人間と神将ではここまで違うのか。
人間のもろさを改めて実感する。

「あぁ・・・・やっぱりこうでなくちゃ」

が大きく伸びをした。
青龍が目を細めて都の方を見る。
異形の気配が広がっていく。
その範囲は貴陽全体。

「・・・とっとと倒すぞ。
これ以上広がると大変なことになる」

カサッ

『・・・・!?』

二人はすぐに穏形する。静蘭が自分達を探しているらしい。
青龍は草陰で人間の姿に戻り、静蘭の前に出る。

が暑さで気分が悪くなったと言い出した。
少し下に連れて行くから、しばらくこの辺にいてくれ。
直ぐに戻る」
「・・・えっ・・・・?」

静蘭はあまりにも急いだ青龍の様子を不思議に思うが、青龍が消えてしまったため、聞き返せなかった。
青龍が行った後の茂みの奥にはもう誰の姿もなかった。

「・・・少し強引だったけど、ナイスよ青龍・・・・。
さぁ、急ぎましょう」

二人は、神将の姿に戻り、最速の速度で都へ下っていった。
目に見えるほどの瘴気が都ないに広がっており、多分中にいる人達は全員倒れているだろう。
周りを気にせず、暴れられるのはいいがこの瘴気をなんとかしないと町の人が全員死んでしまう。

・・・それだけは避けなくては・・・
は大きく跳躍し、都の端の民家の屋根に飛び移る。
そして、都の中心へ向かって走り出した。
どんどん瘴気は強くなっていく。

敵も私たちの事を察知したのか襲いかかってきた。
私は相手にもせず、そのまま走る。青龍が何とかしてくれるだろう。

「・・・ここね」

街の中心に来た。瘴気が一番酷いところだ。
遅れて青龍が到着する。この中で人間がどれほどもつかは分からない。
は辺りを見まわした。

「・・・敵は満遍なく都を包んでいる。
・・・もう少し狭い範囲だったら良かったんだけど・・・・仕方ない」
『・・・っ!!』

騰蛇たちも遅れて合流した。
四人の神将がそろう。
私は彼らに目で合図を送る。三人が頷いた。
私は手を合わせて術を唱えた。

私の声に合わせて空気が、瘴気が動こく。
何か異変を感じて察知しているのであろう。
私の周りは三人が守ってくれている。だから安心して術を発動できる。
この都全体をの術が囲む。そして

「黄泉送りっっ!!」

巨大な闇が貴陽を包んだ。
瘴気だけをそのまま闇に持ってきた感覚だ。
地獄への扉が開き、そこに瘴気はすいこまれていく。
それを見送った私はまた元の世界へ戻った。

「・・・・はぁ・・・・」
っ!?」

傍にいた六合が倒れ掛かるを支える。
流石にこれだけの広範囲となるとかなりの神気が必要だ。
タフな自分でもこれはこたえる。

その時後ろから拍手が聞こえた。
私たちは嫌な予感と共に振り向いた。

そこには若い青年が立っていた。
それは丁度主を思わせる容貌。

『・・・・・。』

こんな展開をこの神将立ちは嫌と言うほど知っていた。

『・・・霄・・・・太師・・・』
「ご名答。良く分かったな。」
いや、もう慣れてますから・・・

彼らの心の突っ込みを無視して彼は辺りを見まわす。
さっきとはかなり違う空気が町に広がる。
あとは人々が起きあがるのも時間の問題であろう。

「流石じゃな。どこから来たかしらんが異形たちよ」
「一応、これでも神の部類に入ってるんですけど・・・」
「そーか、そーか・・・。
ご苦労、助かった。じゃ、今から仕事に戻ってくれ」

そういって青年は姿を消す。
何から何まで清明そっくりだ。特に最後の人使いが荒いところなんて。

「・・・と言うか・・・・。
あのじーさんだけでもこの瘴気は払えたんじゃない?」

が思ったことを口に出す。
三人は黙ったが恐らく、それは肯定を表しているだろう。
自分達が持ってきたとはいえ・・・・やはりどこの世界もじじいは食えない奴ばかり。
まわりの人々が起き上がってきたので私たちは早々に退散した。
上司にこれがばれると後が怖い。(特に吏部、戸部)


次の日。
やっと返してもらえることになった神将たちは、また召喚された部屋の中にいた。

「いやー、本当に助かった。皆からそんな言葉が返って来たぞい。
また呼んでやるから、働いてくれ」
『断る。』

見事にはもった。
霄太師は思い出したように一つの手紙を取り出して、彼らに渡した。
それは見なれた字でこう書いてあった。

『神将たちへ

異世界での奉仕活動ご苦労じゃったな。
しかし、主の元を勝手に離れ他の者の下につくなんて言語道断。
下っ端でも、端くれでも、一応、『神』の部類に入っている神将が人間ごときに扱われ恥ずかしいとは思わんか?
まぁ先方にもお礼が来たのでまぁ今日のところはよしとするが、二度と勝手にいなくなること★
そして、妖怪の始末は最後まできっちりやっておくこと★

とりあえず、無事帰ってわしに元気な顔をみせておくれ。。
ば〜い、清明。』

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』

長い無言が室内にたまった。
それぞれがそれぞれ怒りをもっている。
はその手紙を真っ二つに裂きぐしゃぐしゃにして地面に投げ捨てた。

「・・・・クソ・・・・言わせておけば・・・」
「・・・というか、手紙の内容を見ると、俺たちでも無理なところもあるのでは・・・?」
「いや、あんまりそこは問題じゃないから、六合」

そして、清明の顔をみるのが本当に嫌になってきた。
あぁ・・・昌浩。今、君の気持ちがいたいほど良く分かる。(遠い目)


そして霄太師の術によってまた平安の地に戻ってきた。
物凄く懐かしく見えた。
良く見るとここは安部低の庭。
そして、後ろには・・・

「思ったより早かったの」
『・・・・・!!!』

清明が扇を仰ぎながらこっちを見ていた。
私たちは顔を引きつらせる。

「どうじゃったか?異国の地は・・・・。
ま・さ・か、手ぶらで帰ってきたと言う事はあるまいな。
わしはお土産を楽しみにしておったのじゃが・・・」

ぶっちゃけた話、忙しくてそこまで気を使っている時間などあるはずがない。
神将たちは半刻ほど清明の話を永遠ときかされる事になる。
・・・あぁ、戻りてぇ彩雲国。

先ほどまでいた異国で働いていた方が数倍も楽な事を神将はふつふつと感じていた。


ーあとがきー

五万ヒットということで珍しいものを書いてみました。名づけて『陰陽師IN彩雲国。』
タイトルも少年陰陽師パクって見て命令形です。(笑)

[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析