記念日攻防戦




はいつものように、尚書室に入って、書簡を運ぶ。
そしてそれが終われば仕事環境を整える。
たまに上司からの頼みごとを引き受ける。

柚梨はそんなを微笑ましく見ていた。
今日この頃、こんなによく働いている子は珍しい。
そして珍しくも上司はこの子を気に入っているようだ。

ある日、がいつになくご機嫌なので柚梨は尋ねてみた。

「どうしましたか?くん。
いつになくご機嫌ですね」

柚梨に言われ、ははっとしたようにうつむく。
そんなに顔に出ていたのだろうか・・・。

「えっと・・・・その・・・。
誕生日が近いものでつい・・・・。
・・・特に予定はないですけど、嬉しくなっちゃいますよね」

そうか、と柚梨は微笑ましく思った。
はまだ若いし、誕生日がまた楽しみな年頃なんだろう。
・・・若いことはいいことだ。とひとりごちた。
そこで柚梨はあることに気づいた。そういえばいつも無口の彼もそういえば、近々誕生日ではなかったか・・・?

柚梨の目がキランと光った。
そこで上司の鳳珠が書きものをしていた手を休め顔を上げる。
付き合いが長かった分、彼も柚梨に対する抗体が出来ていた。

「・・・・柚梨・・・お前何かよからぬことを・・・・『そうだ、くん』

仮面にくぐもった声は柚梨の声に綺麗にかき消された。
ここまできたら鳳珠に勝ち目はなかった。

「なっ・・・なんでしょう?」
「鳳珠も実は近々誕生日なんですよ。
たまには早く帰って二人で祝うってのはどうです?」
「・・・なっ・・・」

明らかに鳳珠の焦る気配が伝わってきた。が、部下の柚梨は非常にも無視。
更に笑顔で柚梨は続けた。

「どーせ、鳳珠もすることといっても仕事しかないんですし、たまには美味しいものでもいかがでしょう」
「・・・・黄尚書も誕生日なんですか?」

の輝いた顔を見ると、鳳珠も頷かずにはいられなかった。

「・・・うわー、偶然でも嬉しいです。
黄尚書がよろしければ是非ご一緒させてください」

は笑顔で大量の書簡を抱え、室を出て行った。
取り残された鳳珠は、最後まで何もいえなかった。

「・・・ふふっ、やりましたね。鳳珠vv
ついでに、このまま・・・」
「余計なことを言うなっ。
・・・全く最近のお前はかなり強引過ぎるというか・・・・」
「年に一度の誕生日・・・。管尚書のお酒に付き合うだけなんて色気の無い。
たまにはよろしいのではないですか?」

ちなみに、飛翔は酒の相手を探して記念日を見つけては鳳珠を飲みに誘っていた。
それに誕生日というのは絶好の機会だった。

「・・・今更の誘いを断るわけにもいくまい」

の満面の笑みが、今でも離れない。
あんな純粋な笑顔で言われると、嫌でも断れない。
鳳珠は仮面の下でため息をついた。



そして目まぐるしく日々は過ぎていった。
あとで聞いてみるとなんと鳳珠と同じ日だったのである。これほどめでたい日は無い。
は朝から最高の気分で歩いていた。なんと鳳珠が高級な料亭を予約してくれたらしい。
まさかそんなことになるとは思ってもいなかったは、始めは断ったが、息抜きだ、と素顔で微笑した鳳珠に勝てるはずも無く。
というか、その後どうでもよくなってしまった。本当にあの顔は兵器だ。

「・・・どうした?そんな緩みきった顔で・・・・。
また嫌味を言われるぞ・・・」

後ろから声が掛かる。
が後ろを振り返ると、これまた吏部から書類を運んでいた珀明だった。
は顔が緩んでいたことに気づきすぐにきりっと表情を戻す。

「あっ、珀明。おはよう。。
・・・それが今日私の誕生日なのよ。それで、ほう・・・・知り合いがご飯食べに連れて行ってくれるって・・・。
いいでしょ?」

まさか上司とご飯食べに行く、などと軽々しく口にしてはいけない。
珀明はとりあえず、良かったな。と言っておいた。
誕生日にご馳走など七家育ちの珀明にとっては当たり前だったのだが、には嬉しいようだ。

「へぇ・・・誕生日か」
「うん、まぁ誕生日つったって私が覚えているわけでもなく、親が『お前はこの日に生まれた』って言った日だけど・・・」
「正論だ」

同じ工部への届け物だったらしく、二人は連れたって歩いていた。
思い出したように、珀明が言った。

「・・・そうだ。
お前は運がいいな。あとで吏部に来る用事はあるか?」
「・・・うん、多分吏部宛の書簡ならたまっていると思うけど・・・
「偶然碧家の方から菓子が送られてきてな。
今朝吏部尚書と絳攸様に渡したところなのだが、予備に一個余計にもってきていたんだ。
それをやろう。
碧家御用達で紫州にいれば恐らく一生食べられないほど高級で珍しい代物だ。
朝賀には主上にも献上されている」

碧家は詩文、芸能に長ける家である。その碧家御用達の菓子とはどのようなものなのだろうか。
の目が輝く。誕生日が近くなると引き寄せられるように運気がやってくる。

「本当っ!?碧州のお菓子は本当に美味しいわ。
・・・嬉しい。絶対行くから!!」
「・・・碧州の菓子を食べたことがあるのか・・・?」
「えぇ、たまに黄尚書が持ってきてくださるから・・・」
「なるほど、黄尚書も中々いいところに目をつける・・・」

珀明とは工部の入り口で別れた。は、以前の書簡の件で工部尚書に物申さねばならない。
こんなことができるのも黄尚書の後ろ盾があってこそだ。


「・・・・失礼します」

中ではの入室にも気づかずいつもの光景が広がっていた。
この人達が口を閉じるのはいつなのだろう・・・とは思う。
この室を訪ねると、必ずといっていいほど、管尚書と欧陽侍郎が喧嘩している。
この喧嘩は大したことでは収まらないと学習したは最初から最終手段に出る。

「・・・黄尚書から伝言をお持ちしました」
「黄尚書っ!?・・・・あぁ、殿」

欧陽侍郎が笑顔で出迎えてくれた。反応の速さと身代わりといったらどうだろう。
はいつも苦笑してしまう。

「・・・勝手に失礼させていただきました。
・・・では、管尚書・・・・こちらの件で黄尚書から・・・・」

が差し出した書簡を玉が受け取り、中をちらりと見てから飛翔に渡される。
書簡を見たなり飛翔が『げっ』と嫌な声を上げた。

「・・・ちょっとまて嬢ちゃん・・・。
これはこれ以上どうも・・・・」
「・・・『詰めが甘い。やり直し』・・・だそうです」
「無理。絶対無理」
「・・・『酒飲む前に、本を読め』とも言っておられました」
「くそ・・・あの仮面野郎言いたい放題・・・。
『これ以上は無理だ。橋が壊れたらどうするつもりだ。
やるならお前がしておけ、このくそ仮面』と奴にいっとけ。」
「・・・どうでもいいですけど、私を無駄な伝言役にしないでくださいね・・・。
早めに決着をお願いします。
では私はこれで」

は礼をして尚書室を去ろうとすると玉が声をかけた。

「そうだ、殿。黄尚書にこれを渡してもらえますか?」

玉から渡されたものは立派な桐の箱と手紙。

「今日は黄尚書の誕生日ですよね?
あっ勿論、賄賂ではなく気持ちです。とお伝えください」
「・・・おっ、そうだったか・・・。そういえば奇人の・・・
、ついでに奴に伝えておいてくれ。
『例の店で待っているから』って」

は一瞬言葉に詰まった。が、すぐに笑顔を取り戻した。

「はい、必ず」



すぐに戸部に戻ろうと思っていたが、途中で同部署の上司に呼び止められ吏部へ少し手伝いをしてこいと、命じられた。
吏部になら珀明もいるし、丁度お菓子を取りにいけるからいいか・・・。と思ったが心に先ほどの飛翔の言葉と尚書室に残っている吏部宛の書簡が引っかかっていた。
忙しい日の二度手間はできるだけ避けたいのだ。

「・・・やっぱり人生って上手くいかないものね・・・」

の言葉は誰もいない廊下に小さく響き渡った。



吏部で尚書室の片づけを命じられ、はその任務を遂行しようと尚書室の前に立つ。
正直今まで受けた命の中で最悪ベスト三には入る最悪な命だ。
珀明も一緒にすることになったが、彼は今日一度この室に入っている。この室の惨状を知っている分彼の方がいささか顔色が悪い。
をただ慰めてくれているのは先ほど珀明からもらった碧州の高級菓子だけである。
二人は決心してその室の扉を開けた。
予想通り、扉を開けた瞬間書簡がバラバラ降ってきた。

『・・・失礼・・・・します・・・』

どうやって入ったのか不思議なのだが、何故か黎深はこの室の中にいた。
更に不思議なことに黎深の周りだけはいくら散らかっていても窮屈そうには見えない。

「・・・あの・・・ここを掃除に・・・」
「あぁ、ご苦労。」

黎深は二人を一瞥したあと、パチンと扇を閉め、室から優雅な足取りで出て行った。
主が室からいなくなったあと大きなため息が二つもれた。

・・・これだけ仕事をためてよく朝廷が機能しているものだ。
そしてこれだけの量の仕事を一日半で片付くなんて信じられない。
二人は無駄な思考を消して無心で働いた。ここで色々考えてはいけない。



室を出た黎深はそのまま戸部へ向かう。

そしてまるで自分の家のように躊躇わずに尚書室の扉を開いた。

「・・・やぁ、鳳珠」
「・・・何をしにきた。
を返せ」

恐らく吏部尚書室の次辺りに書簡が詰まった室はここであろう。
ここはいくら仕事をしても一向に減るようすをみせない。
鳳珠の声音に少しの怒りがこめられていた。

「・・・まぁそう怒らずに。いつも仮面尚書にこき使われているから開放してあげただけじゃないか」
「貴様の室を掃除するくらいなら、喜んで私の雑用をしてくれると思うがな」

一般人にしてみれば五十歩百歩である。

「・・・まぁそう怒らずに。あとで戸部に一人人材を送ってあげるから。
どうだ?素敵な誕生日プレゼントだろう?」
「使える奴だったらこれほど素敵なものはないな。黎深」
「・・・で?今夜の予定は」

鳳珠の手が少し止まる。

「・・・まさか、いつものように飛翔と酒屋・・・なんてことはないよね。
せっかくいいお嬢さんが手元にいる・・・」
「貴様、ここに何をしに来た」
「誕生日の祝辞を述べに」
「それはもう聞いた。用が済んだなら帰れ」
「・・・では、これで帰るよ・・・。彼女も大変なようだけどね・・・
では、いい夜を・・・」

含み笑いを残し、黎深は戻っていった。
あまりもあっさり帰っていった黎深を鳳珠は逆に不気味に思う。
何か裏があることは明白だ。

「・・・妙なところで『真性の天才』を発揮しやがって・・・・」

何を知っているのか分からないが、あまりいいことは怒りそうにない。
鳳珠は仮面越しに大きなため息をついた。

「・・・あれ、紅尚書はもうお帰りになったのですか・・・?」

お茶をもってきた柚梨は首を傾げた。珍しいことがあるもんだ。
そして主を見る。さっきより明らかに不機嫌になっている。
あまりいいことが無かったんだな・・・と柚梨はため息をついた。


お昼をはさんでそれからまた二刻。
と珀明は何とか室をまともなものに片付けて座り込んだ。
気を利かせて、同じ種類の書簡は書簡でまとめ、本棚も整理し、埃一つないように机案、窓枠、本棚などを完璧に吹き上げた。
紙も墨も筆もちゃんと整っている。仕事する環境は全て整った。
・・・・まぁ本人のやる気がなければ、この苦労は無駄になるのだが。

「・・・終わった・・・。人間頑張れば何とかなるものね・・・」
「・・・まさか朝廷に入ってこんな仕事が任されるなんて・・・」
「まぁ今日は珀明の菓子をご褒美としてもらったから・・・元は取れた感じ・・・
・・・・・あ・・・・・」

は鳳珠の室にまだ配り終えてない書簡が山のように積みあがっていることに気づいた。
そして、飛翔達から伝言を預かっていることも思い出す。
が一生懸命配っている最中ですら、崩れるほどあったのだ。きっとこの一日鳳珠はバリバリ仕事をこなしているはずだから・・・・。

「・・・最悪・・・今日は残業かも・・・」
「・・・は?今日どこかに食べに行くのだろう」
「・・・まぁ・・・そうだけど・・・。
どうなるかはその時の黄尚書次第よ・・・」

よろよろと立ち上がり、は戸部へ向かった。

「あぁ、

吏部を出てすぐに絳攸と楸瑛に出会った。
絳攸は苦笑していった。

「助かった・・・大変だっただろう・・・」
「・・・正直今日は帰られないかと思いました」

絳攸は心底申し訳ない顔でを見た。
本当は自分の仕事かもしれないが、自分だって暇じゃない・・・というより黎深の分の仕事をしなくてはいけない上、王の世話。
そこまで体が回らない。

「・・・そういえば、殿。今日誕生日でしたよね。
おめでとうございます」

楸瑛がキラースマイルで話しかけてくる。

「ありがとうございます。」
「そうなのか。偶然にも今日は邵可殿の家に行く予定なのだが、どうだ?」
殿がよければ、何か美味しいものでも頼んでお祝いでもしましょうか?」

楸瑛達の誘いには言葉に詰まった。
・・・どうすればいいだろうか。

鳳珠はどうやら飛翔との約束があるらしい。
でも、料亭は予約してくれたっていうし・・・。
どうせ私の約束が駄目になるのなら邵可様の家に行って祝ってもらうのも悪くは無い。

・・・でも・・・もしかして。本当にもしかして鳳珠様が私の方を選んでくれたら・・・

その可能性を捨てきれない。
難しい顔をして悩み始めたに楸瑛が気を利かせて言葉をかけた。

「もしかして、先約があるのかな?」
「・・・えっと・・・は、はい・・・・」
「そうか、それでは仕方ないな。
後日また邵可殿の家で祝うとしよう」
「本当ですかっ!?」

は嬉しそうに微笑んだ。そういえば最近仕事が忙しくて邵可とはご無沙汰だ。

「えぇ、そのときまでにはちゃんと贈り物を用意しておきましょう。
ねっ、絳攸・・・」
「・・・・えっ・・・。あっ・・・あぁ・・・・」

いきなり話を振られ、絳攸は生返事を返す。
そして冷静を保ちながら脳内では真剣に悩んでいた。
・・・何をあげればいいんだ・・・?

「いえ、気持ちだけで嬉しいです。
そこまでお気遣いしていただけるなんて、私は幸せ者ですね」

そういって、は一礼して二人の元をさった。
そう、祝ってくれる人がいるだけで自分は十分幸せ者だ。



それから戸部へ戻り、時間いっぱい全力で仕事に取り組んだが、仕事が綺麗に片付くことなく。
仕事終わりの銅鑼がなったとき、は大量の書簡の前に呆然としていた。
今日の朝まではこれを綺麗に片付けて、鳳珠様と一緒に料亭に行くはずだったのに・・・。
黎深の室を片付けろと言われたとき以上に泣きたくなった。

「・・・
「・・・はい・・・残業ですか・・・これ・・・・」

鳳珠の声には我に返り、鳳珠の方を向く。覚悟はもう決まっている。
誕生日の馬鹿野郎っっ。。
鳳珠は筆をおいた。

「今日はもう帰れ。支度も必要だろう・・・。
料亭の場所は分かっているな。
私はこれから少し王のところへ行ってくるがすぐに帰る」

はその言葉に耳を疑った。

「・・・え?・・・あの・・・管尚書と・・・」
「別に奴とはいつでも飲めるしな」

飛翔に関しては機会さえ与えておけば問題ない。

「・・・でもこの書簡・・・」
「そんなもの明日でも明後日でもいつでも配れるだろう。
誕生日という日は今日しかない」

鳳珠の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。そして彼は正式に書いた書簡を持って席を立つ。

「・・・では、待っている・・・」

鳳珠は仮面の下で微笑し室を出て行った。



しばらく呆然として鳳珠の背中を見送っただが、はっと我に返りまずは頬をつねってみる。
・・・痛い・・・。夢じゃない・・・。
それからすぐに朝廷を退出した。鳳珠を待たせるなんてとんでもない。
すぐに着替えて、薄く化粧を施す。
せっかくの高級料亭。ここは完璧に出迎えたい。
苦労して髪を綺麗に結い、簪など丁寧にさしてゆく。
鏡を見て微笑してみる。・・・良し。

しかしはすぐに悟る。自分がどれだけ着飾っても鳳珠が隣にいるだけで全てが無になってしまうことを。
・・・ふふ・・・馬子にも衣装よ。畜生。。


それから急いで料亭に向かった。鳳珠はまだきていないようだ。は安堵して案内された室に入る。
かなり高級なところを予約していてくれたのか、普段では見られないくらい豪勢な室だった。
はとりあえず、長椅子の隅のほうに座って時を過ごした。むしろ周りの飾りに圧倒されて、自分の居場所が無い。
用意された茶菓子もお茶も高級品だ。
外見をつくろいながら内心ひやひやしながら頂く。
女将さんが直接相手をしてくださり、本当に冷や汗がでた。鳳珠様のためにも完璧な娘を演じなくてはいけない。

扉が開いた。
そこには仮面をはずし、綺麗な衣装をきた鳳珠がいた。
思わずその美貌に固まってしまう。何度見ても美しさは損なわれることなく、この豪華な部屋も彼を引き立たせる小物になっている。

「・・・遅くなった・・・。すまない・・・」
「いえ・・・そんな・・・・」

正直緊張しすぎていて時間の経過など忘れていた。は丁寧に跪拝をした。

「本日は・・・お招きいただき真に感謝しております」
「・・・いい。
顔を上げろ」

鳳珠がの前に膝をつき、手を取る。
目の前には、全ての人を魅了させる微笑。そして凛とした美声。

「・・・そろそろ・・・料理のほうをお願いできるか?」
「かしこまりました」
「・・・こんなことをしたのは初めてだな・・・。
付き合ってくれてこちらそこ感謝する」
「そのような・・・お言葉勿体無いです・・・」

うつむいてしまったの手を取り指に軽く唇を落とす。

「・・・・鳳珠様っ!?」

くすくすと鳳珠は笑い、そのまま机まで誘導する。
されるがままに椅子に座り、は内心首を傾げた。
・・・なんか違うような気がする。

「・・・勝手に料理を選んでしまったが・・・」
「構いません。鳳珠様の選ぶものは何でも美味しいですから・・・・
あっ、友人から碧州の高級菓子をいただいたのですが、あとでいかがでしょう?」
「・・・ほう・・・・それは珍しい・・・」

料理が次々と運ばれてくる。
鳳珠はその辺の人に碧州の菓子を最後に持ってくるようにと頼んだ。


料理は滅多に食べられないようなものばかりだった。
どれをとっても美味しい以外の言葉が見つからない。
始終感心しながらは綺麗に完食した。最後に珀明からもらった菓子が運ばれてくる。それにあった高級茶と一緒に。
流石、高級料理店。茶と菓子の相性は抜群だった。

「・・・本当にお招きありがとうございました。
こんなに美味しいものを一気に食べたことなんてありませんでしたので本当・・・なんといっていいやら。
これからも、鳳珠様の下でばりばり働かさせていただきます。」
「あぁ、期待している。
・・・さて、帰るか」
「・・・泊まって・・・・いかないのですか?」

の言葉に一瞬鳳珠の方が固まった。

「・・・そのつもりは無かったが・・・別にそれがいいなら部屋を取るぞ・・・」
「えっ・・・いえ、すいませんっっ。。
てっきり最後まで贅沢して帰るのかと・・・・」

確かこの料亭には宿泊施設もあったはずだ。だから日頃の疲れを取って、贅沢を満喫して帰るものだと思っていたが・・・鳳珠はその気はまったくなかったらしい。
たしかに料金の方はかなり破格のものになるが、鳳珠はそんなこと気にする性格ではない。

「・・・まぁそれもいいかもな・・・・
雨も降ってきたし・・・」

外を見れば、いつの間にか小雨が降っていた。
たしかに、着物を濡らしてしまうのはあまり得策ではない。

「室は一つでいいか?」
「構いませんよ」
「・・・ほう・・・一緒に寝るか?」

にこりと微笑した鳳珠には固まった。
なんか自分はとんでもないことを今まで口走っていたことに気づいた。

「・・・えっ・・・えっと・・・・」
「冗談だ。
二つとっておくから・・・」
「いや、一つでいいです。勿体無いじゃないですか」
「・・・別に金額を気にしなくても・・・」
「流石にここまで贅沢させていただいた上に、そこまでお金かけさせるわけにはいきません。
どんなにお礼を言ってもいい足りません」
「・・・そうか・・・?」


はとにかく一年分の贅沢を一晩でしたような気分になった。
美肌の湯にはつかれたし、そのあとマッサージもしてもらって全身のコリがほぐれた。
明日から倍速で仕事が出来そうだ。
朝廷の仕事は本当に大変なので、たまにはこういうことも必要だ。とは実感した。体が軽い。

室に戻ったら、鳳珠が本を読んでいた。
いつ見ても絵になる光景には扉の前で立ち止まってしまう。

「・・・・どうだ?」
「もう凄い最高でした。
あの書簡の山も一瞬で片付けられそうな気がします」
「それは頼もしい限りだ」

鳳珠は本を閉じて、机の上においた。

「・・・あぁ・・・そろそろ寝ないといけませんね。
明日も仕事だし・・・」
「そうだな・・・はそこの寝台使ってもいいぞ」
「・・・はぁ?何いっているんですか。
鳳珠様がお使いくださいませ。私はこの長椅子でかまいませんから」
「・・・しかし・・・せっかく疲れを取ったのに・・・」
「この長椅子だって十分にふかふかじゃないですか。
悪い寝台よりもいいですよ」

この分でははいっても聞かないだろう。
鳳珠はため息をついて立ち上がった。

「・・・では一緒に寝るか。
かなり広いし邪魔にもなるまい」
「・・・え・・・」
「安心しろ、手は出さないから・・・」
「しかし・・・」

的に問題なのは、鳳珠の顔が隣にあって寝れるかどうかだ。
しかし鳳珠の申し出を無下に断ってしまうのも悪いし・・・寝台も大きいし・・・・隅に寝れば邪魔になることも無かろう。
大人しく従ったに、絶句したのは鳳珠だった。
この娘には冗談というものが通じないのだろうか・・・・。

「・・・では、おやすみなさい」
「・・・あぁ・・・」

そのまま背中を向けて寝てしまうを見て鳳珠は苦笑した。
手を伸ばせばどうにでもできてしまうが、鳳珠にもその気はなかった。
というか、まだ早いような気がする。
もう寝付いてしまったの髪をとり口付けをする。
やはり、今はこの状態が一番楽しいような気がする。

明日、黄州から大量の贈り物と両親と柚梨の嫌味がくるだろうな・・・と鳳珠は苦笑したが、今日は今日で楽しかった。
いつもなら、酒で忘れていたが・・・このような過ごし方も悪くない。
そう思いながら鳳珠も眠りについた。

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