飛距離は伸びに伸び、結局落ちた地点からは死神の姿が見えないほどまできた。
1km2kmは軽く飛んでいるだろう。しかし、向こうのほうから聞こえる音で彼のいる方角は分かった。
一人になったアレンは辺りを見まわした。
ここはどの辺だろう。辺りを見まわしても何もない。
もしかしたらここに家が立っていたかもしれない。それとも畑だったのかもしれない。
今ではそれを思わせるようなものはなにもない。
無性に寂しくなって泣きたくなった。
この広い台地の中心で自分の無力さを悔やんだ。悔いたところで何もならないのだが。
前方を良く見ているとなにか、形のあるものがある。しかも妙に白い。アレンは不思議に思って近付いてみた。

「……ここは……」

感覚的にはあまり感じなかったが、
飛ばされた距離は2km所ではなかった。10kmくらい飛ばされている。
白いものは大きな石だった。無造作に置かれた白い細長い石が示すもの。
それは昔、神が降臨した場所、私達にとって聖地である。
普段は集落から離れた森の中にあり、年に一度王家や司祭達がここに訪れ神へ祈る。あとは個人の理由で誰か来るくらいだ。
神が地上に降臨したのはそれはそれは果てしなく昔の事。
地上は茶の大地に包まれ、食べ物はなく、人々は絶望の淵に立たされていた。
生きる気力をなくし、死を待つ人々だ増え、全て失っていったその時代、気休めにと人々は生贄の若い少女を神に差し出した。
その時奇跡が起きた。
神が天から降臨したのである。光を身にまとい、金にも銀にも形容しがたい綺麗な衣装に、背には翼。
神は、すぐに大地を緑に変えた。
そして、生贄の少女に自分の持っていたロザリオを渡し、また天にかえっていった。
その後、その少女により世界は復活し、今に至る……。

それがこの町伝わる神話。
そしてここはその神が降臨した場所なのである。
アレンは首から下げていたロザリオを握った。これも、その神からもらったものだという。そして自分は生贄の少女の末裔……。
どこからが本当でどこまでが嘘なのかは分からない。とりあえず、祈るしかない。
全ての夢が覚めるように……。
その時、遠くの方で轟音が鳴り響いた。そして突風がアレンを襲う。

「……何……っ!?」

あまりにも遠くで事が行われていたのですっかり忘れていた。
死神はどうなったのであろう。近くの石にしがみつきながらアレンは辺りを見まわした。ふっと何かが横を通りすぎたような気がした。
それふが何かわかったのは、石が崩れてその下に倒れている人物を見た時。

「死神っ!」
「チッ……思ったより時間が掛かる……」
「どうしたのよ、その怪我……。死神って怪我しないんじゃないの」
「馬鹿いえ。人間も神も構造は同じだ。神の方が頑丈に出来ているだけ……」

死神の口から血が溢れ出る。苦しそうにしている彼の背中を撫でてやった。あちこち傷だらけになっていて見ているのも辛かった。

「本当に勝てるの?」
「素で戦って勝てるわけないだろう。こっちは今まで殺した人間の魂の魔力を使って戦っている。
それと神、ましてや神王とやって、まず勝てる確率は果てしなくゼロに近いな。しかもそろそろ魔力切れだ」
「……何ですってっ!?それって凄くヤバイじゃない」
「ヤバイな……体も動かなくなってきている」
「そんな……っ」
「アレンッ!!」

強い力で首を押さえつけられ、アレンの体はそのまま宙に浮いた。

「ここにいたか。小娘」
「うっ……」

……こいつが神王……。
神話で見た神王はもっと若くてかっこよかったような気がする。
死神の話では神王はよく交替するらしいから、悪い方の神だろう。
光の世界だからといって全てが善というわけではないらし。
アレンがはもがいてみたが神王の腕を掴んでもびくともしない。
息も出来ないのでそろそろ苦しくなってきた。

「ふはは、動けまい、死神。大好きな人間と共に消えるがいい」
「黙れ、貴様こそ死にたくなければその手を離せっ」

死神はある魔力をもって鎌を召喚しようとするが、どうしても具現化できない。
体力、魔力共に足りないのだ。他の原因といえば、もしかしたら今苦しそうにしているアレンのせいなのかもしれない。
このまま何もしないでいればアレンは直に死ぬ。そうすれば自分も消える。
思考回路を最大限にまわしているがアレンが解放されない限りいい策が思いつかない。せめて時間稼ぎだけでも出来れば良いものを……。

「これがお前の助けた人間というものか……何と脆くて弱い生物……」

お前の助けた……?酸素不足で意識も飛びそうな中、アレンはその言葉を頭の中で繰り返した。
そしてある結論に至った。再度、自分の首をしめている神王の腕をほどこうとする。

「……死神……これあんたの……でしょ?」
「……!?」

最後の力で右手に持っていたロザリオを死神の元へ投げた。神王と死神二人の視線がそのロザリオに向かう。

「……それは神器っ!?」

神王はアレンを投げ出し、そのロザリオ向かって駆け出した。しかし、それを手にしたのは死神の方が早かった。

「……初めて役にたったな。アレン。」

五月蝿い。
そういいたかったが、投げられた時の痛みと首をしめられていたときの苦しさで声には出来なかった。

「……げほっげほっ……」
「この小娘……調子に乗りやがって……」

神王の手につくられた光の玉がアレンに向けて放たれた。反射で避けたが、その残波がわき腹を掠った。それだけで深くえぐれる。

「……いっ……」

味わった事ない痛みに、思わずわき腹を押さえる。
血が流れ出ている。押さえても塞がるほどの傷ではなかった。服は一気に赤に染まり、地面まで及んだ。

「人間ごときが神器を所持しているとは、恥を知れ。貴様、骨も魂すら残さず、ここで消えろっっ!!」

神王の怒りが頂点まできた。アレンでも感じるくらい殺気のこもった魔力と強い神気。もう死ぬ。そう思いアレンは目を閉じた。

「一発で殺してくれなくて本当に助かった」

涼やかな声と共に神王は左に吹っ飛んだ。顔をあげると、そこには死神がいた。
いや、死神ではない。髪も瞳も全ての黒が白に替わっている。彼は……

「まさか、身近に探し物があったとは見事な失態だ」
「……死神……?じゃなくて……グレア神……」
「ほぅ、よく俺の名が分かったな。誉めてやろう」

黒だったものは全て白というか薄い銀や金にかわった。
陰気くさい雰囲気も一新、見ていて爽やかである。
ロザリオは伸びグレアの杖として使われている。これが本来の死神の姿。
なんの原理かは分からないが、先ほどの傷はなくなっている。

「グレアッ!貴様死神の分際でその神器を使うかっ!?」

不本意にも死神に吹っ飛ばされた神王は怒鳴り散らした。

「十年間俺のものだったんだ。
そもそもそこまで長くこれを使ったものがいないから杖の方が俺に懐いているみたいだぞ。むしろお前を拒んでいる。
これでもう少しは時間稼ぎ出来る。やはりお前には運も実力もないみたいだ」
「貴様らみたいな雑魚は消えてしまえ!この世界と共にっっ!!」
「チッ、魔力が暴走している……」

グレアは私の後ろに回り、抱きしめるように肩の後ろから手を回した。そして、アレンの前に杖を置き何か呪文を唱え始めた。
神王を中心に地面がえぐれ、大きなクレーターが出来始めている。
私達の足場以外、の地面はどんどんえぐれていった。山も谷も関係ない。全てが力にしたがってえぐれていく。

「……痛いか?」

不意にグレアが話かけてきた。ありえない光景に呆然として痛みなんか忘れていたが、そうえいば、未だ大量の血が流れている。

「……ふらふらしてきた。血が足りない」

傷を押さえていた手にグレアの手が添えられる。
そこから温かいものが流れ込んできて、どんどん痛みが引いていった。血もとまり、皮膚も再生していく。
奇跡のわざを目の当たりにしてアレンは絶句した。どういう原理か分からないが神というものは万能だ。
ビシッ、と妙な音が聞こえた。けしてよいものとは思えない。

「……まずいな、向こうの魔力に耐えきれなくなっている……」

事実、グレアは結界術はあまり専門としてこなかった。
そして、久しぶりに使った神の力でまだ当時の感覚が戻ってきていないせいもある。とにかくこのままでは耐えられない事を悟った。

「限界だな」

金色のガラスが弾けとんだようだった。結界が割れたのだ。その瞬間強い魔力にあてられた。
肌が焼けるように痛い。それでもまだ無事なのはグレアが庇ってくれているから。
こちらに気づいたのか魔力の暴走は止んだ。
空気が収まって辺りを見まわすと下は、底が見えないほど大きな穴になっていた。今いる場所もすぐに折れそうな細い地面だけになっている。
その中心に神王は浮いていた。彼の周りには目に見えるほどの魔力が渦巻いていた。
当たれば骨も残らないだろうほどに。

「その分だともう、動けまい。グレア、そして人間の小娘……。
さぁ、今こそ我の手にかかり死ねっっ!!」

濃縮された魔力の塊がこちらむかって飛んでくる……はずだった。
が、それはポスンという気の抜けた音で終わってしまった。
荒々しい魔力もなくなり、神々しく煌いていた彼の光も徐々に収まっていく。

グレアはフッと笑った。

「貴様の負けだな」
「……なっ、何が起こった……っ!?」

本人も何が起こったか分かっていないのであろう。一応自分の魔力がなくなっていっていること自体は把握できているらしいが。グレアは言う。

「お前、俺が何故神王から堕とされたか知っているか?」
「神器を人間に渡したからだろう……」
「いいや、それはおまけでしかない。人間といえども、臣下という形で神器を授ければ別に罪にはならないらしい。
俺が堕とされた根本的な理由は人間界にきたこと。掟ではそれ自体が罪になるらしい。
そして、今回お前が神王から堕とされる理由はそれになる」
「なん……だと……
認めん……そんなの絶対に認めるかぁぁぁぁ!!!」
「それはあんたが認めるんじゃない。元老院のじいさん達が認めることだよ。堕神」

中性的ともとれる声が天から響くように耳から聞こえた。
暗い空がぱっと明るくなり、地上を光が照らす。空から光と共に降りてくるのは、光り輝く長髪と翼が印象的な新しい神王であった。

「貴様は……シトラス……」
「うん、名前を覚えてくれて光栄だね。
あんたが堕ちてくれたお陰で神王になれたよ。心から感謝する」
「……シトラス……」

確か、男神にも関わらずその美しさは並ではなく、神の中でもっとも美しいと評されている。
たくさんいる神の中で、彼の名は結構有名であった。
本の記述通り、近くで見れば美しく、その中性的な顔は微笑めばその場に花が咲きそうである。
ただでさえ、美しい容姿に光り輝く神王のオプションをつければもう完璧だ。
前神王なだけに、どうしてもこっちの方が神王っぽい。

「さて、仕事仕事」

シトラスの手に光の玉がつくられた。それはどんどん大きくなっていく。

「やめろ……やめてくれ……」

懇願する前神王の衣服や神が徐々に黒く染まっていく。
なるほど、彼の手の中にあるのは前神王の光の力。
こうやって、神王は堕とされ死神となる。
すっかり黒に包まれた神は今まであった覇気が抜け落ちたように静かになった。

「クククク……貴様も一緒に堕ちるのだシトラス……。人間界にきた事を後悔するがいいっ!!」
「……いや、あんたと一緒のレベルにしないでくれる?
ここに来ることはじいさんたちに許可とってのことであって、別に無断で来てるわけじゃないから。私の神格はそのまま。
もし消えたとしてもあんたと一緒に堕ちるのは願い下げだね」

ふっとシトラスの手から光の玉が消えた。

「転生の環に送ったよ。あとは死神やるなり死ぬなり好きにしなよ」
「言われずとも……死んでやるわっっ!!」

ディルネは腰にある剣を抜きそのまま腹に突き刺した。
アレンは突然のことに口元を押さえた。剣が突き刺したところから黒い光が漏れ、そしてディルネの姿は消えていった。
天上神達はそれを無関心な目で見ていた。彼らにとって同胞の死は何の感慨も沸いてこない。これが日常茶飯事のことであるから。

「…さて、名も泣き世界の姫…」

シトラスが優しくアレンに話しかけた。
その笑みは慈愛に満ち、見ているだけで暖かいものに包まれたような感覚に陥る。そしてシトラスはそっとアレンの手を握った。

「このたびは、我が同胞がご迷惑をおか
けしました。代わって謝罪を申し上げます」

丁寧にさげられた頭にアレンは首を振った。言葉を出そうとしても喉から出てこない。完全にシトラスの雰囲気に飲まれている。

「…勿論、失ったもの全てを返させていただきます」

シトラスが指を鳴らすと荒れ果てた大地に緑が戻った。
そして自分が生まれ育った町も目の前に広がっている。そこにはちゃんと活気が戻っていた。
アレンは目の前で起こっていることが信じられる呆然と立ちすくんだ。
今まで起こってきたことが夢のようだ。しかし夢は覚めることなく続いている。目の前にはシトラスを初めグレアもいる。

「…これで元の生活が送れます。本当にご迷惑をおかけいたしました」
「…いいえ…」
やっとの思いでアレンは言葉を出した。その言葉にシトラスは満足したように頷き次にグレアに向き直った。

「・・・久しぶり・・・愛しき友…」

グレアはシトラスの笑みにも動じなかった。
むしろ瞳は迷惑そうな色を出していた。シトラスは気にすることもなくグレアの方に歩いていった。

「あぁ、まぁ案の定変わっていないみたいだな、容姿は変えようにもないが…」
「うーん、やっぱり直に聞くとグサリとくるねぇ…。まぁいいや。完結に言うけど天上界に戻る気はない?
四十八人の綺麗な女神をそろえてあるよ。それはもう選び放題」
「断る」
「即答だね。そんなにこの世界が気に入った?…それとも…彼女に魅せられた?」
「……」

グレアは答えずそのまま視線をずらした。シトラスはそれを面白そうに見つめた。
でもシトラスの中にある答えが正解ということでもない。
長年付き合っていてもグレアという人物を理解しきれたことはない。
だからシトラスはグレアと付き合うことを好む。
まぁ・・・他にも彼がこの地にとどまる理由はあるのだが…。
シトラスは息をついた。彼の意思は彼ではないと変えられない。自分がどれだけ説得しようとも無駄である。

「…じゃ、また遊びにくるよ。名も無き世界の姫とお幸せに…」
「…え?」

その言葉にアレンだけでなく、グレアも顔を上げた。

「…一応ねぇ…許可なしで天上界の杖を名も無き世界においてきておまけに無くしたとか実は罪になるんだけど、まぁそれは今見つけてグレアの手にあるのはいいとして。
死神の分際でその杖を使うのは本当は駄目なんだって」
「知るか、天上界と掟とここの掟は違う」
「…まぁ…理不尽なのは分からなくもないけど…。
グレア、一応罰として名も無き世界の姫君が死ぬまで人間でいること」

シトラスの言葉に二人は耳を疑った。
彼は特有の笑みを絶やさずにいった。非の打ち所がないので反論もしにくい。

「私は天上界からいつも見守っているから、末永くお幸せに…。
あぁ、その杖はグレアに預けておくよ。
知り合いの占い師の予言ではここ数十年間色んなことが起こるらしいから…。
何かあったらその杖を使って姫を守ること。
死んだら一生かけて呪うからね。グレア」

そういって、シトラスは消えていった。
アレンはその光景に呆然とするしかなかった。
本当に…今までのことは夢だったのであろうか。
アレンはグレアを見上げた。会ったときと代わらない黒尽くめであった。
しかし雰囲気は変わったような気がする。
なんとなく、人間・・・という感じがグレアに備わった。

二人が街に戻るとほとんどの人から戸口一番こんなことを言われた。
『後ろにいる人は誰ですか?』と。
天上界の神王がおっしゃったことによると、アレンが死ぬまでグレアは人間として生きることになった。
黒い髪と黒い瞳、黒ずくめの衣装は変わらない。ただ胸に下げたロザリオが白く光っていた。
その珍しい容姿に皆注目したのである。
そんな人達にアレンは何事もなく、グレアを紹介していく。

「先ほど森の中の聖地まで足を運んだら、聖地に彼がいたのです。
容姿もこのようなので他の国から迫害を受けたそうで…。
いくところがないそうので連れてきちゃいました」

そんな理由が通じるか。
そう初めグレアは思ったが、どこまでお人好しなのかこの国の人はグレアを喜んで受け入れた。
この国には迫害を受けた人も多く住んでおり、同情して涙目になる人もいた。
恐らく整った容姿もまた好感がもてたのであろう。
嘘だろ・・・とグレアは内心驚いた。

そしてアレンはそのまま城に入っていき、その足で王の元へ向かった。

「…父上、この方が国民登録したいそうなのですが…」
「おぉ、そうか。では今すぐ書類を作成しなくてはな。
ここまでくるのはさぞ大変だっただろう。
今生活する部屋を用意するから、今日はそこで泊まりなさい。
仕事はまた後ほど話し合おう。できれば好きな仕事のほうがいいだろう・・・」
「…はぁ…」

慣れているのか王の行動は見事に素早いものだった。
グレアは出された書類の質問事項を埋めていく。自分の名前以外全て嘘だ。
色々国を回ってきて色んな知識を学んできて本当に良かったと思う。
書き終わった書類をみて王はほぅ、ともらした。

「…『グレア』か…。
この土地では天上界のグレア神を奉っているのだよ。偶然だが同じ名前とは…。
しかもアレンとは聖地で出会ったそうじゃないか。
これもまた何か良い縁になるであろう…」

その言葉にグレアとアレンははっとした。
確かに、生贄の聖女の末裔が天上神グレアにロザリオを返したのは運命だと思った。
そういえば、気づきもしなかった。
まだ自分達には繋がりがある。

「…そういえば、初代天上界神王の名は『アレン』だったな…。
グレアにアレンが揃うなんてこれほどいいことはないな」

初代天上界神王『アレン』はグレアに続き、長く神王を努めていた神である。
神王も初めは真面目な王としての職務だったのだが、規律が決められてからはそれがほとんど守られることなく神王達は堕ちていった。
あまりの運命的な偶然の一致に二人は開いた口が塞がらなかった。
何も知らない国王だけが楽しそうに話を進めていく。
最後にアレンが言った。

「…あの…父上…。
グレアを私付きの騎士にしていただけませんか?
彼の力量は道中お話したときに色々聞きました。とても強いらしいです」
「アレンがそのようなことを言い出すのは珍しいな。
自分より弱い奴を騎士としてつけるのは嫌だと平然と言ってのけたのに…。
それは好きにしなさい。一応兄の方にも連絡を入れておいて力量を調べることになるが・・・」
「構いません」

では、ゆっくり休みなさい。と二人は退出を命じられた。
アレンはことが上手くいったことにほっとしてグレアの方を見た。

「…あーっと…勝手に決めちゃったけどいいよね?」
「構わない。傍にいられる方がこっちとしては好都合だ」
「…そう…」

その言葉にどういう意味が含まれているのか気になるところだが、この無表情そうな顔を見る限りではあまりいい意味は期待できない。
『守る』と真剣に言われても、裏ではあまり本気で考えてないことも最近分かってきた。
そのままアレンの部屋に行き長椅子に腰掛けた。
窓から入ってくる桜の花びらに、思わず笑みがこぼれた。
先ほどまで神々と対峙していたのが嘘のようだ。

「アレン…」
「何?」

グレアがアレンに小さな小瓶を手渡した。
中には白い光が入っていて小瓶の中で輝いていた。

「…これを渡しておく。ずっと持っていて欲しい…
絶対なくすな」
「…うん…。
でも…何これ?」
「まぁお守りみたいなものだ…
杖をもらったからな…代わりに…」
「…そっか」

小瓶を見つめるとその光に心が癒される気がした。神から直接もらったものだ。何か縁起がいいものに違いない。
アレンはまた外に視線を移した。
これからずっと死神といられる日々が続くなんて…。
全てが夢のままで終わってもいい。
ただこの幸せが続くのであれば…。



預言書が手元に戻ってきた。
影はにっと微笑む。
運命はなんとでも操れる。
これから全ての世界を巻き込んだ大喜劇が始まるのだ。
そして最後には破滅というフィナーレを迎える。

影は笑った。
その笑みは光とも闇とも判断が付かない空間の中にただ響き渡った。


  

ーあとがきー

なんかきり悪く終わってしまったようで申し訳ないです。
一応これで『死神編』は終わったのですが、まだ天上界のお話や天下界のお話名も無き世界の他の国のお話…。
などなど管理人の脳内ではかなり広い範囲で妄想が存在していたりします。
また次回作がありましたら、お付き合いいただけたらいいと思います。

…うん、色々伏線がありまくりでしたからね…(苦笑)

[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析