レイス・コレクション



『ヒメ。やっぱり推測通りアルファーノ家にはレイス・コレクションがあるらしいですよ』
「本当?・・・なんか無理言ってすいません」

気持ちが高揚するのを押さえながらタスクはパスランに礼を言う。
声音は本当に嬉しそうだ。
離れたところにいるパスランでもそれは容易く感じ取れて、苦笑する。普段でもこんな感じだともっと頼りにされるのに。

『いえいえ、どうせ暇だし』

あの後すぐにパスランに連絡をとり、調べてもらったら丁度夕食後に情報が届いた。
レイス・コレクションとは昔レイス・ゼルフが貴族から盗み集めた宝石で質の高いもののことを指し、全五百種ある。
これはレイス本人が盗んで裏世界にまわす際に良いものだけをメモに残しておいたことが始まりといわれる。
レイス・コレクションとゼルフ社が勝手に決め、その所有権を勝手にゼルフの物にした。
しかし、それを全て自分のところにもっているのも周りから怪しまれるため、各地に散らばせ、ゼルフの管理下に置いたり、世間に流している。
もし、また大不況が起きた時はゼルフ総出でコレクションを盗み、裏に回し、お金を作るという緊急システムともなっている。
不況になったら単純に、出せるところから出してもらう。

ゼルフ社に所属するものは一度は必ずレイス・コレクションを見る事を夢見て『怪盗』になるために頑張ったものだ。
そしてタスクもレイス・コレクションを夢見る一人だったのだ。レイスのためなら男であろうが関係ない。

そんなわけでレッツ怪盗。
タスクは動きやすく黒い服を選び、それを着る。
しかし、今決めた事なのでそれに合うような服はあまりない。
流石お嬢様。着るものほとんどがフリルがあって動きにくい・・・。
ノックの後、カイが入ってきた。

「・・・あっ、今回は本当にごめんなさい」

カイは首を振る。
タスクの留守中彼にはこの部屋にいてもらって、アリスがいなくなったことを誤魔化してもらおうというわけだ。
また騒ぎにでもなれば今度こそ、牢に監禁されそうだ。
カイが暇そうにソファーに座っているのをみてタスクがあることを思いついた。
しかしこんな事を頼んでしまって言いのだろうか。少し躊躇ったがタスクは少し言ってみた。

「・・・あの・・・また私的なこと頼んでもいいですか?」
「・・・なんだ?」
「・・・その・・・」


コルトとシルバがついてくれるから、多分大丈夫。
この家には重要なセキュリティーがなされていない、と事前にシルバからの調べもついている。
タスクは部屋のベランダから飛び降りて、待ち合わせ場所まで走る。
庭は広いし木の影で身を隠せるところはたくさんある。

裏口のところでシルバとコルトが待っていた。

「・・・遅れてしまって申し訳ないです」

タスクは息を切らして言う。シルバは笑って言った。

「大丈夫、時間はどれだけでもあるから。それにしても早く見たいね」

遅れた事よりも、コレクション見たさに胸ははずんでいるらしい。

「では、ミッション開始」


タスクは少し考えてはいけない事を考えた。
初めて、怪盗らしい事をする。が、コレクションを見るだけで帰って来る。
何とも情けない怪盗だ。

三人は庭から宝物庫近くの廊下まで忍び込んだ。
見張りはいないらしく、この辺は明かりもついていなく真っ暗だ。
レイス・コレクションがこんな薄い警備の中にあるなんてそれだけでタスクにとってはショックなことである。

・・・これでコレクションに傷ついてたら。あの親父絶対許さない。

タスクは自分のしたいと決めた事には何が何でも強気である。
宝物庫の鍵は機械でロックされていた。
パスワードを入れれば開くものである。すぐにコルトがパスワードを調べにかかる。
彼にとってこういう機械仕掛けものは鍵がかかってない扉に等しい。

直ぐに鍵があき、三人は中に忍び込んだ。
宝物庫はひんやりしていて凄い数の宝石や美術品が置いてあった。
この部屋のものを売れば一生どころか人、三人分遊んで暮らせる。
大体見れば宝石の質の高さも保存の良さも完璧だ。
しかしどんなに高価なものも彼らの目には写らなかった。
ただ見たいのはレイス・コレクションのみ。普通の宝石はただの石と同じ。

しばらく見まわって、三人は集まった。

「・・・あった?」
「いや・・・それらしきものはどこにも」
「こっちも色々探してみたけどな」

パスランの情報によると、この家に『紅い雫』という大きなルビーのついたネックレスが保管されているという事だった。
それ以下のものもショーケースに入れられ大切に保管されている。
ないということは、どこかに流れていったのだろうか、それとも・・・。

「どうします?ヒメ。
ここの宝物庫はここしかないそうで」
「ここにないとしたら・・・あの親父の部屋にあるかもな。行って見るか?」

あの親父の部屋なんぞに行くのは勘弁だが、でもレイス・コレクションは見たい。タスクは頷いた。

「せっかくカイに変わってもらったんだし、見てこないと彼に悪いわ・・・。
今日一杯ねばろう。・・・良いよね?」

タスクは口調が敬語ではなくなったことに気づかなかった。しかし、二人はその変化に気づく。
なんか、違和感があるがこれが彼女の普通。
自信に満ち溢れ、楽しそうな雰囲気をかもちつつ、いざとなったらキレる頭。
この状態の彼女が思案している姿はりっぱな『怪盗』チームのリーダーだ。

会議室にいた時と雰囲気が全然違う。
二人はその姿に圧倒されつつも頷いた。

「乗りかかった船だ。最後まで付き合う」
「俺もここまできたら気になるからね。
パスランの情報に狂いはないと思うし、きっとこの城内にあるよ」
「じゃ、こんな寒いところとっとと退散して城の中に回りましょう」

自分達の前では見せる事なかった笑顔が今見れた。暗闇で良く見れないが彼女は確かにに笑っている。
幸い親父の方はお得意様が来ているらしく応接間の方で雑談をしている。三人は音もなく宝物庫から出た。

それから色んなところを回ってみたがそれらしきものは見つかる気配がない。
怪盗としてもしっかり訓練してきているはずなのにターゲットも見つけられないとは・・・三人のプライドの方が許さなかった。
何せ、怪盗としての成績はチーム内最強を誇る三人が揃っているのだ。

ベランダを行き来していると中の部屋から誰かの話し声が聞こえた。
それは、紛れもなくここの城の主のものだった。思案しながら歩いているといつの間にか応接室まで来てしまったらしい。

「・・・それにしても見事だ。よくここまで素晴らしいものを手に入れられましたな」
「貴方様のためなら、このくらい・・・。
つきましては例の話についてはご贔屓ください・・・」
『・・・。』

まるでどこぞの悪代官と越後屋の会話だ。
ないと思えば、自分達の目的の物はこの部屋にあるらしい。そっと三人が中を覗くとキラキラ輝く『紅い雫』がある。

「ひょっとしてその隣にあるのが『蒼い雫』じゃない?」

シルバが指を指したその先には大きな蒼いサファイアのついたネックレスがある。
『紅い雫』と対になっているそれは二つ揃えて価値がある。
滅多に見られない対のレイス・コレクションに感激に浸っていたが、それを素手で持っているガルグに殺意に近いものを持った。
・・・テメェの汚い手で触るなーっっ。と叫びたいところをぐっと堪える。
とりあえず、何やら面白い話をしているので、傍聴させてもらう事にした。
近々この人達は中央の御用になりそうだし、その仕事が回ってきた時のために情報収集である。

「そういえば、アリス嬢の方はクリハーツ家の息子と婚約なさるそうで・・・」
「その節もお世話になりました」

その家名を聞いて三人の目が細められる。
クリハーツ家というのはアルファーノ家よりも更に裏世界には名高い名家。この結婚で更に上にいこうというのか、このオヤジは。
オヤジ達の会話は更にタスク達の耳を疑う内容となっていった。

「明後日にはディアマンテでグロン王子と会わせる予定になっております。自慢の娘ですから、さぞかし王子も気に入る事でしょう」

なんですと!?

二人は信じられないといった顔でタスクをみる。当の本人は面白いように固まっていた。

「オイオイ、見合いなんて一言も聞いてないぞ」

思わずシルバが呟いた。見合いなんてここにいる全員が初耳だった。
アリス本人も知らないであろう。この場に動揺が走る。
明後日はまだタスクがアリス代行だ。
人の見合いで勝手に返事してしまっていいのだろうか。いや良いわけがない。
こちらの都合などお構いなしのようにここの親父は次々爆弾発言をかましていった。

「ディアマンテで一泊して仲を深めてもらおうと思っておるのですがね」
「話もできるだけ早くして結婚してしまえば、地位も確定ですな」

オヤジ達の笑い声がタスクの脳内響く。
一泊って親父さんよ。若い男女には少々展開早すぎやしないかい?

「これは少々まずいことになったな・・・」

流石のコルトもこれには難しい顔をした。
アリスとの契約もあるが、ほおっておけばタスクが危ない。

「ヒメ・・・。ディアマンテだしアリス姫に事情話して交代してもらう?」
「・・・それは駄目。アリスにとってこれは一生に一度の自由になれたチャンスなんだから・・・」

これだけは何としても譲れない。彼女には絶対に楽しんできてもらいたいのだ。
かといって自分が犠牲になるのも嫌だ。

「仮病使えないかしら・・・」
「あの親父なら、いくら熱が高かろうと無理矢理連れていかれそうだぞ」

せめて見合いだけなら何とかなったものを。タスクは望み薄で二人に問う。

「ねぇ・・・王子と姫が仲を深めるために一泊っていったら・・・。やっぱり夜も一緒なわけですよね・・・」
「当然そうなるだろうな」

コルトがすぐに希望を切り捨てる。
悪いがタスクは今の男に囲まれて仕事している生活でいっぱいいっぱいなのだ。
抱きつかれようものなら反射で一発殴ってしまいそうだ。

「・・・コルト・・・変わって頂けませんか?」
「無理だろ。普通に考えて」

・・・どうしよう何とか止めさせる手立てを考えなくてはいけない。
レイス・コレクションどころではなくなってきた。
いつもより彼女が饒舌なのは精神的余裕がなくなってきたからであろう。
時が経つにつれて意味不明な事も話すようになった。これは危ない。

「・・・私部屋に戻るわ。これからのこと考えないと・・・。
シークルにこのことを伝えておいて。もしもときにアリスに伝える事にして、ギリギリまで粘ってみるわ・・・
いっそのことこの見合いぶち壊してくれる・・・」

口調が変化したタスクに二人は思わず口元を引きつらせた。本当に余裕がないらしい。

「・・・あぁ、そうだパスランに一応アリスの婚約者のこと調べてこっちに送ってもらえるように言ってくれる?」

よろつきながら戻っていくタスクの後姿は相当参っているようだった。
気の毒そうに彼女を見送ってから、シルバはイヤホンに手を当てた。

「パースラン今の話聞いてた?」
『ん、ばっちり。
・・・大変な事になったね、ヒメも』
「全くその通り・・・」

シルバは会話を続けず、中から響く声に耳を傾けた。

「そういえば、妙な噂を耳にしましてねぇ。
この結婚にあまり良いとは思っていない輩がいるらしい。
アリス姫はご婚約前。身の回りに十分注意しなくては・・・。特に暗殺集団には・・・。
既に裏で動き回っているようですね。ディアマンテ行きにはどうぞご注意を。」
『・・・・・・。』

二人と通信機の向こう側にいる一人は絶句した。

つくづく彼女には運が向いてこないようだ。
というか、どうして楽に終わるはずの身代わり任務一つでここまで事件が舞いこんでくるのだろう。
仮にも今日ここにきてからまだ八時間あまりしか経っていない。

ベランダから部屋に入って、タスクはひとまず、深呼吸した。どうも落ちついてはいられないようだ。
部屋の中には出ていった時とは代わらないようにカイがソファーに座っていた。

「ありがとう、カイ」
「いや・・・見たいものは見れたのか?」

タスクはこくんと首を動かし肯定した。
しかしその表情はここを出ていった時のものよりも沈んでいる。
少し目を細めた彼の考えをとってタスクは話した。認めるのも嫌だけど。

「・・・レイス・コレクション以上の凄い情報を手に入れたんです。今着替えてきますから、それから話しを」

服を着替えて、タスクは自分とカイの分の茶を入れる。
本当は逆なのだが、タスクの癖だ。カイに茶を出し、タスクは彼の反対側の席に座る。
改めて向き合えば、カイは髪を一つに後ろでまとめていていつもよりかは顔が見える。
コルトとまではいかないが、彼も綺麗な顔をしていた。髪で隠しているのが勿体無い。
私は、とりあえずガルグの言った事を話した。
カイは驚くでもなく、ただ一つ頷いただけだった。

タスクはふいに壁の棚を見る。綺麗なガラス細工が目に入った。

「・・・ありがとうございます。
こんな事押しつけてしまって・・・」
「構わない・・・。
・・・しかし、何故俺に頼んだ?」

真面目なタスクだ。自分の嫌なことを直接人に押し付けるようなことはしない。
先ほどシルバ達にパスランとシークルに連絡する事を頼んだのは気の動転からである。
普段の彼女なら掃除くらいはちゃんとするだろう。

「・・・ガラスは・・・壊れちゃうから。
落としたら壊れてしまうから・・・」

ポツリと言われたタスクの言葉にカイは何も言えなかった。いつもと明らかに雰囲気違う。

「・・・昔、私・・・」

タスクの記憶と雅の記憶が重なった。本当に私達は似ていたのだ。

「ビー玉を壊された事があるんです」

それはまだ学校に入る前の話。
その時のタスクは男女関係なく仲良く遊べた。
そして今とは立場が違っていた。タスクにとって、人生最高ともいえる時期だった。

「くじ運が悪い私は、百あって九十九個当たりでも外れを引いてしまう、ある意味天性じみたとも言えるくらいくじ運が悪いんです。
それは子供の時から続いていました。
・・・ある時、あるお菓子が子供の間で流行りました」

おまけ付きのお菓子だった。当たりが出ると店に行ってくじを引く。
そしてそのくじで出た商品と交換してもらえるものだった。
周りは当たりを引いているのに一向にタスクのところには当たりのお菓子はこなかった。
友達に当たり券をもらいくじを引いてもいらないものが当たる日々だった。

「半ば諦めていた時、やっと当たりが出たんです。
私は喜んでしまって、すぐにくじを引きに向かいました。そして引いた結果、ビー玉が当たったんです。
女の子の間では皆欲しがっていたものなんで・・・。
その店には一つしかなくて皆狙っていたものが私に来たんです。」

嬉しかった。今までの苦労が報われた気がした。勿論皆に見せびらかした。
あの時の私は人生で一番幸せだったかもしれない。

「ある、とても仲の良い男の子がいたんです。
私は、彼を見つけると当たったビー玉を見せに行きました。彼も一緒に喜んでくれました。
・・・でも・・・。彼から私がビー玉を受け取ろうとしたら彼が手を滑らせ、落としてしまったんです」

静かに聞いていたカイが顔を上げた。

「私は幸せの絶頂から地獄に突き落とされた感覚に陥りました。
相当ショックだったんです。
彼をそのままにして、走って家に帰りました。それからは部屋にずっとこもって泣く日々が続きました」

何日も何日も泣き続けた。ビー玉が壊れた瞬間自分の人生が見えなくなった。自分の中の大きな光が消えたような気がした。

「彼や友達も心配して私を訪ねてきました。私は誰にも会わず、ずっとずっと部屋にいました。
中でも彼は最後まで私を訪ねてきてくれました。今となっては・・・とても酷い事をしたと悔やんでも悔やみきれません。
時期は、学校に入学する直前だったんです。親は何とかして私を学校に行かせました。流石に二ヶ月もこもっていれば私も落ちついていました。
また、皆と楽しく過ごせる。そう思った私を待っていたのは、知っている人が誰もいない世界でした。
私は友の顔を忘れてしまっていたんです」

あまりのショックにタスクは友達の顔を忘れてしまっていた。あんなに仲良くしていたのに。
唯一、男の子と一緒に撮った写真が家に残っていたのでそれで彼の顔だけは何とか覚えたが後は未だに思い出していない。
それからだ。

人と接するのが怖くなったのは。本当は男女問わず初めは誰かと話すのも怖かった。
最初の授業でフロートが話しかけてくれなければタスクは人間不信に陥り今ここにはいないだろう。
彼女のお陰でなんとか女の子とだけは話せるようになった。
今でも男と話せないのは、また傷つけてしまうことを恐れるから。

「彼のことは、学校に入学してからすぐに探しました。けれど、彼は見つからなかった。
入学式の前の日まで私を訪ねてきたらしいのですが、それ以降、姿をくらましてしまったんです。
母から聞いた話ですが、新しい同じビー玉を持ってきてくれたそうです。
記憶にはないんですが、母から渡されたそれを私は窓から投げ捨てて割ってしまった・・・。外には彼がいたそうです。
本当に・・・本当に酷い事をしてしまった。
人間として・・・最低です」

目から涙がこぼれていた。声もなくタスクは涙を流す。タスクが今まで流してきた涙はいつも、この事だ。
彼が悪くないことは理解していた。
ただ、やり場のない怒りをぶつける事が出来なくて彼にぶつけてしまった。

「彼は私を恨みに思っているでしょう。当たり前ですよね。
・・・やはり、私がどれだけ会いたいと願っても会ってくれないですね・・・。
彼にもう一度会えるならば心からごめんなさい、と謝りたい。許してもらおうなんてことは思っていません」

声も上手く出せなかった。目の前にハンカチが出された。
視線を上げると、無表情の彼がいた。今の自分はさぞかし酷い顔になっているだろう。
タスクはハンカチを素直に受けとって、涙を拭いた・・・がここで重大な事に気がついた。

・・・私・・・なに他人に自分のつまらない過去話語ってんねん。
今日一番のビックリなので思わず大阪弁。

恥ずかしさのあまり、涙も一気に引いていった。
彼には物凄く申し訳ない事をしてしまった。
今まで誰にもに語ったこともない話だ。勿論フロートも知らないだろう。
それを今まで一日数回も言葉を交わさない人に話してしまうなんて。

話してしまったものはもう戻せない。
顔が赤くなるのを止めれそうにもなく、タスクはうつむいたままでいた。
明日からはまともに彼の顔も見れないかもしれない。

「すっ、すいません・・・何話しちゃってるんでしょう私。
忘れてください。迷惑でしたよね・・・。
何だか、今日は精神的に参っていたようです。
・・・それに疲れたし・・・もう寝ますので・・・。
本当に今日はありがとうございました」
「・・・ヒメ」

カイからヒメと呼ばれたのは初めてだった。
思わず顔を上げてしまう。

「・・・今の貴方ならきっと彼を見つけ出す事が出来ると思う。
小さい頃一緒に遊んでいたのなら、何か特別な事がない限りゼルフ内にいるだろうから。
・・・諦めないで探してみては・・・」

彼なりに励ましてくれているのだろうか。タスクはまた涙がこぼれた。

「・・・ありがとう・・・カイには迷惑だったと思うけど・・・私はなんだか楽になりました。
今はもう諦めてしまていたのですが・・・。この仕事が終わってからまた探してみたいと思います」

カイは頷いて、一礼した。そして部屋を出ていく。
カイが出ていった扉を見つめながら私は思った。
そう、同じ歳なのだ私達は。

学校に入ったばかりの頃より目は確かなものになっていて変装も見ぬける。
情報を一から見なおせばきっと彼に辿りつける。
前まで難しかった事が今では容易に出来る事を忘れていた。
ただ、彼への罪悪感がそれを無意識のうちに拒んでいた。
きっと会うのが怖いのだろう。罵られて、罵声を浴びて、また絶望に落とされるのが。

タスクは首を振った。
・・・もし彼に謝れた暁にはこのチームの人達ともっと仲良くなろう。
そして、最高のチームだと誇れるようなチームを私が作っていこう。

・・・昔『天才』と呼ばれていた私になら、きっとそれは難しい事ではないと思う。


金と銀の髪を持つ二人は月を眺めながら城の屋根に座っていた。
ここから眺める風景は思った以上に最適。屋根の上もゼルフにいた時も、よく二人で座って話をしていた。

「・・・どうするんだ?暗殺の話。ヒメに言っておくか?」
「・・・どうしようかねぇ。一応カイには知らせておくとして・・・。
裏の動きもパスランが見てくれているからなんとも言えないね。結果次第ってところかな。今ヒメ、精神的にヤバそうだし」

シルバが苦笑いする。彼女の『この見合いをぶち壊す』発言には本気で驚いた。

「・・・あれくらいで動揺する奴が良く隊長格になれたもんだ」
「『本人は努力だけ』っていってたけど、違うね。
隊長クラスは努力だけでは決してなれない。元々持っている天性と運を味方につけないと・・・。
・・・そういえば、当初に比べて、ヒメへの批判がかなり減ったね。コルト」

コルトの眉がピクリと動く。シルバはその反応を楽しんでから続けた。

「今は結構認めてきてるんじゃない?
初めは、絶対認めないって言い張っていたのに」
「・・・別に今も認めたわけではない。
彼女には自尊心が足りない」

この仕事は時には命をかけた任務もあるのだ。
その時に頼れるのは何よりも自分自身。どんな時も相手より上に立ち、見下ろす立場にいないと、上手く仕事をこなせない。
自尊心は何よりも重要な武器になる。
シルバは無理矢理批判を考えて言ったようなコルトに気づき苦笑する。

「嘘つくと地獄に落ちるよ」
「・・・・・・。
お前とまともな話は幾つになったらできるんだ?」

訝しげにシルバを見る。彼は笑うだけだった。
時々羨ましくなる。コルトは意識をしないとほとんど表情を変えることはない。
不満に思っている時以外は。
笑わない彼を見たのは出会ってから三日間だけだった。
あの時は自分よりも表情乏しかったが、それは一週間もすれば立場が逆転し、今では、コルトが無表情な分、シルバが表情豊かになっていく。

「そういえば、アリス姫が来るまで二人きりになったらしいな。何か話したか?」
「何故、そういう話になる・・・」
「別に、好奇心で。
・・・・・・で?」

コルトは無視しようとしたが、長年の付き合いだ。シルバに黙秘が長く通じるわけがない。

「彼女から宣戦布告してきた。お互い嫌いなのなら仕事以外は干渉しないと。
後は紅茶の話を・・・
・・・いやなんでもない」
「・・・は?」

宣戦布告はいいとして、(よくないが)紅茶?

「それより、これからのことを考えろ。ディアマンテに入ると更にややこしいことになりそうだ。」

話をはぐらかされてしまったようだ。
とりあえず、彼の言う通りなにかいい案がなければ、このままタスクとどっかの王子が見合いすることになってしまう。
これは何としても止めなくてはいけない。


   

[★高収入が可能!WEBデザインのプロになってみない?! Click Here! 自宅で仕事がしたい人必見! Click Here!]
[ CGIレンタルサービス | 100MBの無料HPスペース | 検索エンジン登録代行サービス ]
[ 初心者でも安心なレンタルサーバー。50MBで250円から。CGI・SSI・PHPが使えます。 ]


FC2 キャッシング 出会い 無料アクセス解析