星の光る展望台


シンに引きづられ、そこそこ時間がたった。

何故こいつはこんなにタフなんだ・・・・??
雅はこう思わずにはいられなかった。

ケーキを食べてからかれこれ、5件くらい店を回った。
雑貨や、武器を見て回った。
さすがに都会なのでいろんなものがたくさんある。
慣れてない雅はもう目が回ってしまいそうだ。
本屋だけでも何万単位の本がある。

こういう大きな都市によってもあまり店には立ち寄らなかった。
シンがこのようなところで暮らしていたなど、正直感心する。
そしてなんとなく家出したい気持ちも分かったような気がした。

「なぁ、雅。あの店いってみねぇ??」

シンのテンションは高かった。いつも陽気だが、まして楽しそうだ。
雅はため息をつき、苦笑した。正直体力的にも疲れていた。
・・・でも・・・

「・・・・そうだな・・・・」

なんとなく今日は付き合ってやろうと思った。


「どう?美味しい?
一応洋菓子が食べられるから、洋食も大丈夫と思ってここにしたんだけど・・・・」

二人は高級洋食店に入っていた。
お金は彼が払うというので雅もあまり強く出られなかったが、はっきりいって場違いだと思う。
雅はシンの問いに素直に答えた。

「あぁ、美味しい。
すべてにおいて贅を尽くしているな。
お前と出会わなかったら一生食せなかっただろう・・・」

和食しか食べてきていない、雅だが以外にナイフとフォークも上手く使っていた。
シンは流石、と感心しながら皿にのっているものを綺麗に食べ終わった。

「今からメインディッシュがくるからお腹いっぱいにしておいちゃ駄目だよ?」
「・・・・そうなのか・・・?」

やはり、マナーはつかんでいるが、このような店には入ったことはないらしい。
雅は驚いたように顔を上げる。確かに和食や中華は次々と食べ物がでてくることは少ない。
雅自身もシンの礼儀の良さというか、雰囲気の慣れ方に少し疑問を持った。

「・・・なぁ、シンってこういうところに来慣れているのか??」
「うん。小さい頃はこんなんのばっかし。つまんないたらありゃしないつーの。
雅が羨ましいぜ、ホント。
でも、マナーとかちゃんとなってるじゃん。
少し心配したけど」
「あぁ・・・。師匠のところでは色々こと学んだ。
たまに洋食器も使ったから基本は大体つかめている」

シンがワインを飲んだ。

「・・・へぇ・・・本当、いい環境で育ったんだね」
「お前とて人のことは言えたものではないだろう。
・・・というか。お前今飲んだの酒ではないか?」
「あーうんうん。
大丈夫、こう見えても小さい頃から少しずつならしてきているんだ。
だからちょっとくらい飲んでも平気。
雅はお酒は?」
「・・・さぁ?
並ではないか?・・・・多分」

そういって、雅も軽く口をつけてみる。
甘いものを選んでくれたようだ。予想以上に飲みやすかった。

「・・・思ったより飲めるものだな」
「でしょ?
俺結構強いのでも大丈夫だけど、雅はどうかな・・・・と思って飲みやすいの選んでみました」

シンの気遣いが少し嬉しかった。
その気持ちに気づいて雅はふと考える。
少し酔ってしまったのかもしれない・・・と。



店を出た時、あたりはもう暗くなっていた。
そして遠くから鐘の音が聞こえた。

「・・・・八時か・・・・」

雅は夜風にあたり目を細めた。少々アルコールが入ってしまった頭には気持ちいい。
しかし、シンは自分の腕時計に目をやる。

「・・・八時??やべっ!!
いっ、急ぐぞっ!!」

焦るシンを何事か?と頭の遠くで考えていると、雅の腕をシンが握り走り出した。
酔いから覚醒して雅は、急に走り出したシンに言う

「・・・・・どっ・・・・どうしたっ?
ちょっ・・・・ちょっとまてっ!」
「いいから!ついてきてっ!」

まるで魔物に追われているくらいに本気で走っていった。
事情が飲み込めない雅はなんとか彼についていこうと走る。
やはり彼の方が足が速く、半ば引っ張られる形になる。

人ごみの中を器用に抜け、シンは丘の上まで駆け上がる。

「・・・シン・・・ちょっと待て・・・」
「どうした?」
「・・・その・・・・足が・・・」

慣れない靴のせいか靴擦れを起こしている。おまけにどうやら捻ってしまったようだ。

「・・・・う〜む・・・・。
ゆっくり行きたいのは山々なんだけど時間ないしな。
しばらくの間これで。。」

シンが雅を横抱きにしてまた走り出した。
以前のことが自然と浮かんできて雅は苦笑した。
あの時はえらい目に遭った・・・。
流石に今回はそんな危険なことはないだろうと思う。

・・・しかし、こいつはどこに連れて行こうというんだ??
こんなに急いで・・・・。

丘を上ったところに、小さな展望台があった。
シンは時間を確認してほっとした表情を見せる。とにかく間に合ってよかった。
雅は抱きかかえられたままに気づいてシンの腕を叩く。

「・・・シン、そろそろ下ろしてくれ。。
・・・それと・・・ここはどこだ?」
「ここか??とりあえず、ここで見るといいんだって。」
「・・・・・??
なにを??」

「それはねぇ・・・・」

ヒューっと音とともに光が地上から空へとつきあがる。
雅は視線をそこに移した。
大きい音ともに、空に大きな花が咲く。
・・・これは・・・。

雅は目を見開いた。

「凄いだろっ!!花火花火♪」
「・・・あぁ・・・・」

大きな都会へ行くと、規模の大きい花火大会があることは聞いていた。
実際、雅が空に咲く花火を見たのは初めてだった。
その美しさに、言葉が出ない。手が自然に震えた。
一瞬開いて、すぐに消えてしまう大輪。
これも見ることはない、と思っていた。

こんなに綺麗なものがあるなんて・・・・

「ここの町、月に一回花火大会があるんだって♪
で、ここで見るとよく見えるってどっかのおっちゃんがいってたからね♪
やっぱりこういうものはよく見える位置で見ないと。
地元の人は見飽きちゃったらしいからねぇ。で、この場所予約しておいた」
「・・・いつそんなことを・・・・」
「雅が着替えてるとき。
町ぶらぶらしてたら、張り紙見つけてね」
「・・・そうか・・・」

シンの情報収集能力を今更ながら凄いと感じて雅はまた花火に目を向ける。
夢の中にいるようだ。

「・・・私達だけでここを独占するのはなんだか悪い気がするな・・・」

そう呟いた雅に、よし、とシンが剣を取り出した。

「こい、『ウォン』」

辺りに強い魔力が満ちる。しばらく強いままでいたがすぐにそれは弱くなった。

《・・・お兄さん?》

魔物がいないことを感じ取ったサイはシンに話しかけた。

「久しぶりだな。霊の姿くらいにはなれないか?
ほら。」

サイは目の前の光景に息を呑んだ。
いくらお金がある家の息子だといってもあの村の周辺からは一歩も出られない。
このような大きな花火を見るのは初めてだった。
雅もサクラを呼んだ。

《・・・まぁ・・・》

サクラも初めて見る花火に感嘆した。

「確かにこの景色を俺達だけで見るのは勿体無い気がしてな」



こうして四人で静かに花火を見た。
それから三十分間、花火はやむことなく空に咲き続けた。

《・・・ねぇ、ウォン・・・。
もしかしなくても私達って邪魔じゃないかしら?》

花火の音に紛れるようにサクラが囁いた。それにサイも頷く。

《・・・・やっぱり、そう思う?》

どうやら主人達はここへ来る前酒を少々口にしているらしい。
おかげで後ろからみて寄り添う二人はそれっぽい雰囲気である。
確かに素敵な花火の光景を見せてくれた、その心遣いはありがたいが二人の邪魔だけはしたくない。
というか・・・・本人達にその気はないとしても、目の前でくっつかれるのは少々目のやり場に困る。

《・・・でもこの景色。兄上達に見せたいね・・・》

サクラがポツリと呟いた。
まだ見ぬ地に囚われている四人の兄姉。
サイも頷いた。

《きっとあの人たちなら僕達を揃えてくれるさ・・・。
そしてまた、こんな景色を見せてくれる・・・》



最後の花火が散り、辺りに静寂と闇がおりた。
しばらく余韻に浸ってからシンが大きく伸びをした。

「花火は終わった後が悲しいよな・・・・」
「そうだな・・・。まぁそれも醍醐味だ。
さて、お前のやりたいことはすべて終わったか?
そろそろ宿に戻りたいのだが・・・。
いい宿を取っておいてくれたのだろうな?」
「あぁ、任せろ★
・・・・・・あ・・・・・・・」

シンの顔を見て、雅の顔は固まった。
彼のことだから、ちゃんと宿は取ってきてくれただろう。
そしてそれ以外に考えられることはただ一つ。

「・・・言うまでもないが・・・
どうやったその宿まで辿り着けるか勿論分かっているだろうな?」
「いっ・・・一応地図もらってきたけど・・・・」
「ふざけたことを抜かすな。
私に地図を出されても、無意味なことくらい承知の上だろう」
「ですよね?
・・・あっvv」

《・・・・え?》

雅とシンはそろって後ろを振り返った。
サイとサクラは二人の視線を取り、冷や汗をかく。

・・・・この流れは・・・・まさか・・・。

「地図・・・・読めるか??」

《・・・・まぁ・・・・一応・・・・》

「ここまでいけそうか??」

《多分・・・》

「・・・・じゃ案内よろしくvv」

《・・・・・前言撤回・・・・》
《同じく》

「なんだ?どうした??」

なんとか龍達のおかげで二人は宿に戻ることができた。
龍と力は使いよう、といったところだろうか。

そして二人は知らない。
この展望台で花火を見たカップルは結ばれるというジンクスがあるこということを・・・・。


     

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