滝と岩ととらわれの姫


変わらない景色が続いていた。
今の位置はどこら辺かもわからない。
しかし、それは二人にとってはどうでもいいことであった。

滝というのであれば、水が流れているところを上流に向かって上っていけばいい、雅はそんなことに気づいた。
ただ迷っているのであれば、こんなに大きな山のあるところ何年の月日を費やせば抜けられるのであろう。
食料のことも気になるし、ここは意図的に会いに行った方が得策だと考えた。
川の近くであれば魚も取れるし、いい事尽くしだ。
そんなわけで二人は大きな川を見つけるなり、そこを上っていくことにした。
きっと新たな試練が待ち構えているだろう。

しかし、そこまで考えたはいいもの、なかなか大きな川とは巡り合えないものだ。

「・・・あれから結構歩いたよな・・・。
それにしてもこの山こんなに大きかったか・・・?」
「・・・・まぁ規模の大きい山だ。
そう感じるのも無理はない・・・」

雅があたりを見回す。
まわりはいつも見ている木ばかり。
耳を澄ましても水の音など聞こえてこない。

「・・・大体、大きな滝っていうのがまた微妙な・・・。
本当にあるのか・・・・?
そんなに大きな川なんて見てないのに・・・・」
「・・・そうだな・・・・
もしかしたら逆の方向へ歩いてきているという可能性も十分にありうることだ。
しかし焦っていても仕方ないだろう。
山を下りられたらそれはそれで運がいい。同じものばかり毎日食べているのも飽きるしな。
滝があればそれはそれで先に進める
・・・そして迷い続ければ迷い続けるほど・・・・」

雅は懐から札を取り出した。
シンが剣を抜ききりかかる。
魔物はすぐにシンの太刀で倒れた。

「・・・修行にはなる。
大分腕を上げたな・・・」
「お褒めの言葉光栄でございます♪
なんかご褒美ないの?」
「今褒めただろうに・・・」

雅はさっさと魔物を封印して先に進む。

どこへいっても降りるしかなかった。頂上まで辿り着いたらしく、景色は最高だった。
この辺では一番高い山らしく、いろんな方向向いて景色を見ることが出来る。
滝を探そうとしたが、流石にそれらしきところは見当たらなかった。

太陽も真上の位置にあった。
雅はシンに話しかけた。

「・・・少し休むか。
昼飯だ」
「ヤリィッ!!」

シンが嬉々として雅から握り飯を受け取った。
食べている間は基本的に会話はない。
シンが食べ終わったのを見計らって雅が言った。

「・・・シン・・・お前はどう思う・・・・?
何故、龍達がニンゲンを嫌うのか・・・・
確かに道具のように使われたようだが・・・それだけでここまで怒れるようなものなのか。
まだ・・・何か深い理由がありそうなものだが・・・」
「・・・さぁ?
俺にはそんな難しいことわかんないよ。考えるだけ無駄じゃない?
とにかく、宝珠をすべて集めて龍達を解放してあげられれば、少なくともその怒りとか悲しみとか少しでも軽くなると思う。
・・・そのために頑張っているんだろう。
・・・早く滝を見つけないとね」
「・・・そうだな・・・」

理由はよく分からないが、単純ながらも彼の意見に少し納得させられてしまう。
人を安心させる力が彼の言葉にはある。

「・・・さて、いくか。
先ほどはあちらから来たのだから、次はこちらに・・・」
「あれ?こっちから来たんじゃなかったっけ・・・・?」
「戯けたことを言うな。
一応のためそこの木に印をつけておいた。
流石に滝を探しているのに、同じところを回っているなんて阿呆らしいからな」
「流石、雅。」
「・・・別に・・・考えれば気づくことだ」

二人が立ち上がった瞬間、宝珠が光りだした。
二人は宝珠を眺める。

「・・・おい、これって・・・・」
「・・・宝珠が反応しているということは・・・・
・・・・近いかもな」

二人はすぐに足を進めた。
宝珠のナビゲーションはかなり役立つものだった。
遠くに行けば光は弱まるし、近くに行けば強くなる。
その宝珠に従って進んでいくと、二人の耳に水の落ちる音が聞こえてきた。

・・・滝だ・・・。

水の音を頼りに二人は更に足を早める。
そして奥の方から光が差し込んだ場所を前方に見つけた。
森を抜けるとそこにあったのは、岩とその間から流れ落ちる、巨大な滝の姿だった。
二人は初めて見る巨大な滝の姿に言葉を失った。
以前見たものとは比べ物にならない。
かなり遠くにいても水しぶきが飛んできた。

「・・・本当にこんなところに人なんているのか・・・?」

胡乱気にシンは辺りを見回した。
ごつごつした岩が多く、足場は悪い。
雅はなんとかシンについていっている状態だ。あまりこういった場所は慣れていないらしい。
雅は辺りの気配を探ったが、人のいる様子はなかった。
サクラのように霊の姿であっても気配だけはうすうす感じるものだ。
ここまで集中しても分からないなんて・・・。

相手は相当のやり手だと見える。

かなり水の勢いも激しくなり、水しぶきで二人はもうずぶ濡れの状態だった。
雅が長い髪を後ろに払う。
もっと奥へ進もうかと思案していたとき、上から人の声が聞こえた。

「思ったより遅かったじゃねぇか。
せっかく案内してやったって言うのに・・・」


青年は自分達の前まで落ちてきた。
シンと同じような性格のようだ。のりが言いというか軽いというか。
茶色の髪は無造作にはねていて、長い部分は後ろで一つにくくられていた。
彼は二人の様子をみて、こう評した。

「・・・へぇ・・・・あんたらがねぇ・・・・。
思ったより、若い・・・。まさか女の子なんて予想してなかったな。
・・・名前は?」
「雅だ」
「・・・・俺はシン。」
「俺の名前は『アス』だ。
『ファイ』のやつに聞いたかな・・・・?
まぁここまできたことは誉めてやる。
・・・さて、早速やるか。」

喧嘩っ早い奴だ。と雅は思った。
しかし、正々堂々として小細工をしてこないところが好ましいと思う。
こちらも気を張る必要はない。

「・・・方法は・・・?」
「俺を跪かせることができたら合格だ。
宝珠でも何でも持っていけ。
面倒なことは嫌いなんでな。ルールはなし。
どんな手を使っても良い。ウォンのやつ呼んでもかまわねぇ・・・
それでいいな?」

アスの申し出に二人はうなづいた。
これほど分かりやすいものはない。
雅もシンもかなりの戦闘をここに来る前にやってきた。
シンも少しは『ウォン』を使えるようにはなってきている。
水も多くあるここでは有利なはずだ。

「・・・・そうか・・・では・・・・」
「ちょっと待て。」

動こうとする雅にアスは静止をかけた。
雅は不服そうに言った。

「・・・なんだ・・・?」

アスは一瞬躊躇ったが、言った。

「・・・俺、女と戦うのは苦手って言うか・・・・。
あんまり戦いたくないんだよな・・・」
「・・・見てろというのか・・・・?」

内心雅は焦った。シンだけに龍を相手にするのは少々心もとない。
龍は頭もいいし、この辺のちょっと強い悪魔よりも厄介な相手だ。

雅の少し怒りを含んだ言葉にアスは悪戯な笑みを浮かべた。

「・・・いや、ちょっと違うんだな・・・」

アスが腕を少し動かす。
地面が揺れた。
あるところは隆起し、あるとこは沈む。
こいつは地面を操ることが出来るらしい。
シンと雅は辺りに警戒する。頭をぶつけただけで運が悪ければ死んでしまう。

「・・・・暗くて狭いかもしれないが、ちょっとだけ我慢してくれよ」
「・・・・なっ・・・・」

雅の足元から真っ直ぐに地面が隆起した。
それは雅を一緒に上まで押し上げた。
すぐに雅は岩の中に閉じ込められた形になる。

「・・・雅っ!!」

シンの声が下から聞こえる。
雅は自分を落ち着けることに精一杯だった。
そしてすぐにあたりは真っ暗になる。

「・・・なに・・・・これ・・・」

岩の中に閉じ込められてしまったようだ。
外からなんの音も聞こえない。完全に外界から隔離されてしまったようだ。
しかも、穴もない。このままでは窒息してしまう。

「・・・それが狙いか・・・」

『アス』の性格から推測できることといえば、正々堂々とシンと対峙するであろう。
そしてシンが『アス』に勝つことができたら、自分をここから開放・・・そういうことだろう。
逆に考えればシンが勝てなかったら、またはシンが負けたら自分はこの中で窒息死。
これだけ暗く、何も聞こえなければ大抵の者は狂ってしまうと聞く。
残念だが、雅の神経はそこまで繊細でもなかった。

・・・冗談じゃない。

雅は不適に笑った。
そんな最悪な死に方自分の予定にはない。
・・・最低、次に師匠に出会えるまで自分は死ぬことは出来ない。
それに何もしないなんて自分の性に合わない。

・・・『アス』・・・私を深窓と見たのが運の尽きだな。

雅は久しぶりに、面白い、と思った。
カイラと会ったときも少し思ったが、自分は羽目をはずして暴れるのが一番好きらしい。
雅は宝珠を握った。善は急げ。穴の中の酸素がなるなる前に早く・・・。

「・・・『ウィン』、『ファイ』・・・来てくれ」

私は首に下げた宝珠を握る。淡い光と共に二人の気配が穴の中にあった。

《・・・どうした・・・?
・・・とういうかここはどこだ?》
《何か御用でしょうか?》

二人はこの暗闇に少しうろたえながらも雅の指示を待つ。
雅はふっと笑む。

「・・・貴方達に今から言うことを聞いてもらいたい。
能力の限界もあるかもしれないが、まぁ・・・そのときはそのときで出来る限りやって欲しい」

いつも冷めた雰囲気の彼女がここまで楽しそうなのを二人は初めて見た。
そして雅の言ったことに目を丸くすることになる。


     

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