「・・・・さて、やりますか」

『アス』は大きく伸びをする。そして、軽くストレッチをする。
久しぶりの獲物に対して高揚感はぬぐえない。早く戦いたくてうずうずしている。
相手はかなり戦闘経験を積んであると見える。これはやりがいがありそうだ。

邪魔だと思って女の方を閉じ込めたが、少し相手の心を乱れさせてしまったらしい。
これは失敗した、と『アス』は思った。

「・・・お前・・・雅をどうした・・・?」
「・・・・別に・・・?ここん中に閉じ込めただけ」

『アス』は隣の岩をコンコン、と叩く。

「まぁしばらくは心配することはない。
怪我させたくないから閉じ込めただけ。
でも時間制限がある。一時間して決着がつかなければ彼女も危ない・・・かな?
その前にお前が死ぬか、俺が倒れるかしたら出してやるよ。」
「・・・まさか空気穴も・・・」
「ないぜ。
もしかして狂ってるかもしれないが・・・そこまで責任は取れない。
最初に言っただろ?何でもアリって。
かなり俺を物分りがいいと思っているようだが、一応俺はお前達を殺すためにここにいるんだぞ。
勘違いしてもらっては困る。」
「・・・・雅は生きてでてくるぜ?
俺が死んでも恐らく、お前を倒しにくる」

シンは刀を抜いた。このときにも雅の命は減っていくのだ。
話している時間などない。

「・・・・それは健気なお嬢さんで・・・・?
まぁそういうタイプは嫌いじゃねぇし、空気穴残して閉じ込めたままっていうのも、もしかしたらいいかも・・・。」

ここに一人っていうのもいいかげん飽きてきたし・・・。

「・・・なんだと・・・!?」
「冗談だ。」

シンがかなり怒っていることをみて『アス』は息をついた。
単純なのは結構なことだが、かなりやる気を出してしまったらしい。
強い奴とやるのは好きだが、自分が倒されるのは勘弁だ。

シンの剣が光っている。
あの女の方が『ウィン』と『ファイ』を持っていたからこいつが『ウォン』か・・・・

「一応、言っておく。
俺はすべての宝珠を扱う奴らと戦ってきた。
多少負けたが、流石に『ウォン』だけで挑んできた奴はいなかったぜ。」
「・・・・それでも・・・絶対お前を倒す!!」

シンの集中力は並のものではなかった。
『アス』は少し感心する。
ここまで心を揺さぶられても、集中力を乱さないとは・・・・。

「・・・・倒せるもんならな。
『ウォン』だけじゃ俺に絶対勝てねぇぞ?」

だって、水では岩を壊せない。
そういうと、『アス』は腕を振った。
左右にある岩が形を変え、まるで水のように自由自在に形を変えてシンに襲ってきた。

「・・・何っ!?
こりゃ・・・やべぇな・・・。
っていうか反則・・・」
「何でもありだと言っただろう?」

『アス』は楽しそうに言いながら、攻撃は休めなかった。
シンは、遅いくる岩を紙一重でよける。

・・・避けてばかりじゃあいつに近寄れない。

しかし、岩の攻撃のせいで近寄れない。
背中に強い衝撃を受けた。

「・・・グッ」

シンは川の中に投げ飛ばされる。
滝の規模も大きいので奥に行けば水の流れは強くなる。

痛みに耐えながらシンは自分の置かれている状態を理解しようともがく。
川のど真ん中に飛ばされたのであろう。
水の勢いが強く流される。川も深く足も届かない。
痛みで体が上手く動かない。

・・・早くあいつを倒さないといけないのに・・・雅が・・・。
気づけば滝がどんどん遠くなっている。早くしないと下流まで流されてしまう。
剣を握ったままだったのが幸いした。

・・・『ウォン』・・・


「・・・まさか流れていくだけで終わり・・・?
思ったよりつまらない奴だったのかも・・・」

『アス』は崖の上から見下ろしていた。
シンの姿は水に映ったり、飲まれたりしてたまに見えなくなる。
確実に流されていっていることだけは分かった。

「・・・期待して損した・・・かも。
どうせなら巫女さんも閉じ込めずに一緒に戦わせれば良かったかな・・・。
『ウィン』と『ファイ』がいるだけで全然違うもんな。
でもなぁ・・・女の子と戦うのは嫌だし。
・・・ん?」

独り言を呟いているうちにシンの姿を見失ってしまった。
これは困った、と『アス』はため息をこぼす。これでは死んだか死んでないかの区別もつかない。
下手に雅を出すわけにもいかないし・・・。
もしものことがあると困るし・・・・。

「・・・おぉ。。」

地面から伝わってくる。シンの気が。
『アス』は滝壺の近くをみた。水しぶきの霧のせいで奴の姿は確認できないが、奴はそこにいる。
『ウォン』の力を使ったのだろう。思った以上に頭も使えるらしい。

アスは下の方へ飛び降りた。


「・・・やっぱりばれたか・・・」

《『アス』は地面から気を探ることが出来るからね・・・
地上にいる限り『アス』に感じられないものはない。そういう意味では一番『ウィン』が人探し上手いかもね》

脳内にサイの声が聞こえる。
ここに隠れられたのもすべてサイのおかげだ。
こういう目にあって雅の大切さをしみじみ思う。
あいつは俺の行動を予測して、次の手段にでる。
俺はただつっこんでいくだけ、または雅の指示に従うだけ。

今もサイに助けられているけど・・・今こそ自分の頭と力であいつに・・・
そして、早く雅を助けないと・・・・

・・・絶対・・・勝ってやる・・・。

シンの中で強い闘志が燃えた。

「・・・あのなぁ・・・・。地面は俺の味方だぜ?
いくら霧に隠れてもおまえの居場所はすぐにわかっちまう。
それに霧に入ることでお前の有利になると思ったら大間違いだぜ」

《お兄さん・・・前方から岩が来る!》

サイの助言により、紙一重に岩を避ける。
確かに、『アス』からはこちらの状態が見えないが、こちらからも『アス』の状態がわからない。
『アス』が地面からの気でこちらの居場所が分かる。圧倒的にこちらの方が不利だった。
たとえ『ウォン』がついていてくれたとしてもあちらが有利なことには変わりない。

「・・・サイ・・・もしかしてこういうことも出来たりする?」

《へぇ・・・流石お兄さんって感じ。
勿論出来るよ。》

容赦なく霧の中に岩の飛礫がぶち込まれる。
霧の中からシンの姿が見えた。
『アス』はにやりと笑む。
やっと・・・とどめをさせるか・・・・?
ひときわ大きな岩をシン向けて投げる。
それはシンに辺り、滝壺の中へ落ちていった。
シンの気配が地上から消える。
地面の上にシンの一部がついていれば彼の気配を探ることができる。
しかし地面から離れて、例えば水の中、空中などに彼がいる場合は自分の管轄外になり、『ウィン』や『ウォン』の専門となる。


・・・終わったか・・・。

『アス』はその辺に落ちている岩のかけらを元の岩に戻した。
岩をどんな形にすることができるこの力は便利であって強い。
俺はこの手で、何人ものニンゲンを殺してきた。
ここはいい。
死体は川に勝手に流れていくから。まず死体を見て後悔することはない。

「・・・・さて、男の方は終わったし、あの女はどうしようか・・・」

シンを倒してしまった以上、恐らくこちらに向かってくるだろう。
女というものは切れたとき本当に怖い。
暇つぶしに『ファイ』と話をしていたときがあるが、あいつが切れたら本当に手が出せなかった。
雅にも少し同じような気配を感じ取っていた。

「・・・さて・・・どうしようか・・・」
「・・・あのなぁ・・・・俺を勝手に・・・
殺すなぁぁぁぁっ!!」
「・・・んなっ!?」

シンの声が聞こえるまで彼の気配はまったく感じなかった。
大量の水と一緒にシンが大剣を振りかぶる。
『アス』はギリギリのところでよけた。髪を少し持っていかれたが、気にしている場合ではない。
まさかここまで近づかれるとは思ってもいなかった。

「・・・まだ生きてたのか・・・・。
てっきり流されていたと思ったぜ」
「俺がそんな簡単にくたばると思うか・・・?」

そんなことがあろうものなら、あの世で雅に何を言われるか分かったもんじゃない。
想像するだけでぞっとした。

シンが剣を握りなおす。

『アス』は間合いを取った。予想通り剣の腕はいい。力もある。
だから近づけないようにしていたのに・・・。『ウォン』か・・・・。

「・・・やっぱり、確実に傷つけてから流したほうがいいか・・・」
「・・・やれるもんならやってみろって。」

シンが自信たっぷりに言う。
アスが後ろの岩をある程度崩して、先を尖らせた・。

「・・・これだけの岩よけきるか・・・?」
数十個の岩がシン向かって飛んできた。

水で弾こうとしたが、水を貫通して岩はシンに向かって飛んでくる。
幾つかは剣で弾いたが、弾ききれないものはそのまま腕や足に刺さった。

「・・・・っ・・・・」

シンはがくり、と膝を突いた。
刺さった岩を抜き取る。痛みと傷の方は今更気にしている余裕はない。

「・・・最後くらいは俺がとどめさしてやる」

飛んでいった岩を集め剣にする。
その表面は滑らかだ。

「・・・・ただの岩だと思っていたら大間違いだぞ。
普通の刃物よりは切れる」

『アス』がシン向かって走ってくる。
シンはなんとか剣を持った。もっとましな状態であったら相手と対等に、いやそれ以上にやりあえる自信があるのに・・・っ。
歯噛みしながらシンは剣を受けた。
傷口から血が滲み、痛みが全身を貫く。

「・・・・くっ・・・・・」
「そこまで我慢することはないだろうっ!」
「・・・我慢しなくちゃいけないときだってあるんだよ!!」

『アス』が剣を横になぎ払う。
シンの腕から剣が落ちた。

「・・・・いい加減に死になっ。」
「・・・お前ががな・・・」

シンの手には『ウォン』の宝珠が握られていた。
剣から外したらしい。
剣を振り下ろす前に、シンが宝珠を持った手をかざす。

このときを待っていた。
自分の傍へ『アス』がやってきてくれる時を。

「サイッ!ありったけの力で水を出せっっ!!」
「・・・・しまっ・・・」

相当の量の水がふき出した。
それは『アス』に直接あたり、体は後方に大きく跳ぶ。
体制を立て直そうとしたとき、彼の周りに先ほどと逆の光景が見えた。
それは岩ではなく、水の押収。
大きな水の固まりに飛ばされ『アス』は川の真ん中に落とされた。

・・・まずい・・・。
水の中はあいつの一番の・・・・

急いで地上に出ようとするが、急に水圧が高くなった。

「(・・・くっ)・・・」

水は圧力を持って『アス』を潰しにかかる。
けして岩みたいに硬くない。しかし、それに匹敵する力がそこにあった。
・・・なめすぎていたようだ。
思った以上に攻撃の成果が出ていて、シンは少しほっとした。
サイの攻撃の受け売りだが、それでも、勝つためには仕方ない。
しばらくしてから水圧を緩めた。
すぐに『アス』は水から出てくる。シンに向けてすぐに攻撃してきた。

そのとき上から爆音が聞こえた。
二人ははっと上を見た。
崖の一角の岩が飛び散る。

「・・・雅っ!?」

どう考えてもあのようなところから爆発が起こるしかない。

「・・・『アス』・・・。テメェ・・・」
「ちょっとまて、俺じゃない・・・・」

『アス』もわけの分からないという表情をしている。
あの岩の中で何が起こったんだ?というかあの娘・・・何をしたんだ・・・?
そして上から巫女姿の少女が落ちてくる。
シンは自然に体が動いた。
赤いのは袴だけではなかった。右肩も赤く染まっている。

「・・・雅っ!!」
「・・・シンッ!?」

お互いの傷の深さに驚きを隠せなかった。
雅は『ウィン』を呼んで落下速度を落とす。

シンが地面寸前で受け止めた。

「・・・ありがと・・・」
「雅、お前何したんだよ!
右腕血だらけじゃないかっ!!」
「・・・あぁ・・・」

雅は右手を動かしてみる。とりあえず神経的な不都合はない。ちゃんと思ったとおりに動く。
これくらいで済んでまだ良い方だと思う。
雅もシンの顔を見た。
柄もなくぼろぼろになっている。
どこかでぶつけたか、ぶつけられたか・・・頭から血が流れている。

雅はすっと左手でシンの顔についた血をぬぐった。

「・・・お前こそ何をしている・・・・。
体のあちこちが軋んでいるようだ・・・・」

自分を受け止めた際、彼の表情が歪んだのは視界に入っていた。
相手は岩を使う。少しの攻撃を食らっただけでそのダメージは大きいだろう。
それに、『ウォン』も使っていたらしい。
体力も残り少ないようだ。

「・・・あとは私に任せろ。
もうあいつに勝機はない」

「・・・・おい・・・・テメェら・・・・」

シンと同じようにぼろぼろになった『アス』が前方に立っていた。
二人は目を細めた。
お互いに、そろそろ限界なのだろう。

「・・・・まさか女の方がでてくるとは・・・・」
「別に出てはいけないということは聞いていない。
何をしてもいいといったのはお前の方だ」

雅はにやりと笑む。
『アス』の背後で岩が形を変えてゆく。規模が今までの比ではなかった。
この滝全体が歪んでゆく。
水の流れる方向が変わってゆく。こちらに一直線にくるように。

「・・・シン・・・・まだサイを使う力はあるな」
「あぁ・・・」
「水を何とかしろ。
後は私がやる」

滝から落ちてくる水は一直線にこちらに向かって流れてきた。
シンは残りの力を集中して水を操ることに専念した。
雅は二つの宝珠を握る。

「・・・サクラ、カイラ・・・。
先ほど同じように頼む」

《・・・承知》

『アス』は崖の上からその様子を見守った。ここまでしたのは久しぶりだ。
大抵はこの水に流される。いくら『ウォン』を使おうがこの大量の水の量は操れない。
操れる者と言えばかなり熟練した術の使い手か、『ウォン』本人のみだ。

「死ねっ!!そして流されろ!!
俺の前から消えてなくなれ!!」

『アス』がそう叫んだ瞬間足元で爆発が起こった。
岩の破片が『アス』を襲う。足場が失われ水流へ真っ逆さまに落ちていく。

「・・・はっ、そんな手に乗るか」

『アス』は横から岩を呼び寄せて足場を作ろうとする。しかし、それも爆発で崩された。

「・・・何っ!?」
「・・・どうあがいてもお前の負けだ」

『アス』の体が水流すれすれで止まる。
風の力で宙に浮いているのであった。
『アス』が声のする方を向けば、流されていたと思ったシンと雅の姿があった。
水の密度を高くすれば自然に浮けるものだ。

「・・・はぁ・・・・。やっぱり理科の勉強はしておくもんだ・・・」

シンがため息をつく。絶対このような大量の水を操ることも力も自分にはないことを悟ったシンは浮くことを考えた。
偶然理科の水銀を思い出した。そう、密度を高くすれば金属だって浮くことができるのだ。
雅は勝ち誇ったように言った。

「シンはともかく私はまだまだ力はあるぞ。
軽い爆発の連続くらいたやすいことだ。この谷を破壊することくらい造作もない。・・・もうお気づきだと思うがお前の周りにあるのは全て『酸素』だ。
・・・その中に『ファイ』を突っ込むと・・・お前でも分かるよな。
しかもそこは流れのど真ん中。
爆発でぼろぼろになった体でこの量の水に流されるとは、どういうことか分かるよな。
いくら龍とはいえ、体は人間のようだ・・・・。回復にも少し時間がかかるだろう?
その間にお前はどこまで流されていると思う?

・・・私達の勝ちだ」

雅の威圧に『アス』は口元がひきつるのを隠せなかった。
どうして女というものは、こんなに怖いんだ・・・?特にこの巫女に限っては容赦というものがない。
『アス』は諦めたように首を振った。
そして降参、といったように両手を挙げる。

「・・・わかったよ。
もういい。お前らの勝ちだ。
そんな宝珠の使い方ができるとは考えのつかなかったぜ・・・。
今までのやつより骨のあるやつと見た」

『アス』が指を鳴らした。
岩が動いて元の滝に戻る。そして、階段が出来た。

「・・・・上ってこいよ。
お望みのものをやる」
『・・・・・・・。』

雅とシンは立ち上がって歩き出した。

何故こんなに怪我をしているときに、こんなに高いところまで上らなくてはいけないのだろうか。
そんな理不尽さを感じながら二人は頂上まで着いた。
相当高い位置にあり、滝が一望できる。見晴らしは最高だ。

岩でできた椅子に『アス』が座っていた。
横には二つの椅子が設置されている。

「まぁ、座れ。
おまえたちの実力はわかった。ほれ」

『アス』は宝珠を出した。栗色に光る宝珠。
しかし二人は動かなかった。

「・・・とらないのか?雅」
「お前が戦ってもらったんだろう?
ならお前のものだ」
「でも、最後は雅が・・・」
「私は何もしていない」
「・・・どっちでもいいんだが・・・」

二人の痴話喧嘩に飽きてきた『アス』が言った。

「・・・・わかったよ。
じゃ、ありがたくいただくぜ」
「あぁ、『アス』と呼んでくれ。いつでも力になる。
力は先ほど見たとおりだ。物理攻撃としては六つの中で一番強いだろう」
「うん、ありがとう」
「・・・・で、ここまで上がらせておいたんだから、少しくらい話は聞かせてもらえるのだろうな?」

雅が言った。
シンと『アス』はきょとんとした顔で雅をみる。

『・・・・なんの話を?』

声までハモった。
雅は眩暈がした。
何故こいつらはここまで鈍い・・・・?

「・・・お前たちのことだ。
そろそろ話してくれてもいいだろう?」
「・・・ふーん・・・。
本当は兄貴達が話すことなんだけど、まぁいいや。
まさか閉じ込められて出てきた奴は初めてだしな。
それに敬意をこめて」
「あぁ、それはどうも」

『アス』はしばらく考えて話し始めた。

「・・・俺たちがニンゲンじゃないっていうことはわかるな」
「・・・あぁ・・・」

シンがうなづく。

「一応、龍と名乗ってはいるが
詳しくは『神になったニンゲンの心の一部』。
その神になった奴が龍の姿をしていたため、俺たちは龍と呼ぶことにした」

「・・・心・・・?」

雅が眉をひそめる。

「・・・ある地域の伝説にも残っているらしい。ニンゲンが神になる話。
詳しいところはともかく、ニンゲンが神になるためにはニンゲンとしての感情を捨てなければならなかった。
神になったニンゲンは二人いたから、一人三つに感情をわけた。そこから出来たのが俺達。
ほんと勝手なもんだよな。
俺たちは人間じゃない。
歳もとらない。
何もないまま時間が過ぎていく。
周りの奴らは死んでいくのに・・・。
神になるニンゲンだから精神力は強いとはいえ、やはりニンゲンの心。
かなり脆い。その中で俺達は自分達が受けた呪いについて憎み、悲しみ生きてきた。
そう考えるのが一番生きやすいから・・・」
『・・・・・。』
「神になった奴らは地上に残した俺達に宝珠を与えた。
この宝珠を操れるものにニンゲンにしてもらえばいい・・・と。
それで俺達は救われる。と。
しかし、力のある奴なんてそうそういなかった。
俺達を裏切り力を私利私欲に使う奴らが後を立たなかった。
そもそも俺達を助けるメリットってもんがない。
力を貸す代わりに、自分の命をかけなくてはいけない。
助けた後なんて、俺達はただのニンゲンだ。最強の力も消える。
そんなわけで俺達を助けてくれる人間なんてこの世界にいるかいないか・・・。
まぁそんな中お前達みたいなまだましな奴らが現れたわけだが。
あとは呪いのオプションとしてこの地に縛り付けられた。
俺なんてこんな山ん中。誰もいないし本当暇なんだよなぁ・・・」

アスはそこまで言って立ち上がった。

「一応悪いと思ってはいる。まさか、そこまで傷つくとは思っていなかったし・・・」

シンに渡した宝珠を『アス』はもう一度握った。宝珠から光が漏れ、二人の体を癒す。
傷もすっかり元通りになった。

「俺は自然の気も操れるんだ。
どうだ?体も軽くなっただろう」

確かに。二日間宿でゆっくり疲れを取ったときのように体は軽い。

「後は運次第だ。
お前らなら兄貴らの心を開けるだろう・・・・」

雅とシンは立ち上がった。

「・・・話してくれてありがとう・・・。
なんとなくお前らの事情はわかった」
「では、そろそろ行くか。
次はどっちにいけばいい?」

アスが無言で手を動かした。
滝が二つに割れる。

『・・・・なっ・・・・・』

ありえない光景に二人は言葉を失う。
滝の奥には大きな穴が開いていた。
二人の反応を楽しんでから『アス』が言った。

「・・・そこを通っていけ。
そこを抜けると草原が広がっている。
そしてひたすら真っ直ぐ。
そうすると、二つの山がある。そこに二人ともいるはずだ。」
「・・・ありがとう」

岩を降りて上を見た。
『アス』がこっちを見ている。

「・・・頑張れよっ!
死ぬんじゃねぇよ。」
「・・・・あぁ・・・」

『アス』に一度礼をしてから歩き出した。
これから太陽を拝めるのは何日後のことになるだろうか・・・・。
どれだけ続くのか分からないほど長い洞窟に二人は足を踏み入れた。
この中で死ぬのはどうしても避けたいところだ。
闇に慣れてしまえば雅の足取りは軽い。シンは苦戦しながらも歩いている。
たまに雅が注意をするので、なんとか進めている。

「・・・・罠とかないよな・・・」
「・・・いや、あながち・・・・」

よく耳を澄ますと奥から変な音が聞こえる。
何かがこっちに向かってきているようだ。

・・・・・・・・・。

この洞窟を生きて出るのも至難の技だったりする。


    

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