方向音痴と大草原


永遠と続く大草原。
丈のところ狭しと生えていて、道すらついていない。
どこまで続くかわからずに。
二人歩みを進めた。

ある意味ではここは砂漠なのかもしれない。

「・・・どこまで続くんだろうな・・・コレ。」
「・・・道がないからな・・・。
人も通った気配も残ってないし、まずここ数年は誰も立ち入っていないだろう・・・・」

=食料もない。
川でもあればいいのだがそれもない。
雅は淡々と返事をしたが、事態はかなり深刻であった。
荷物を見てみると十日は歩いているとすると完璧に餓死。

顔には出さないが内心少し焦っていたりする。
町が近くにあればいいのだが、それもない。
シンはよく食べるし、自分が食べないわけにはいかないし・・・・。

そして、この体力を使いたくないときに限って敵は多いものだ。

「・・・・雅・・・・前方数百メートル地点に敵発見。」
「・・・あぁ・・・・。
向かってきているな・・・・」

姿が隠せないため魔物に会う確立が多くなる。
そして、ここのは基本的に強い。
試練かなんだか知らないが、この調子じゃ食料不足どころの話じゃない。
体力を残しておかなかったらそれこそ、敵にやられてしまう。
ここは弱肉強食の世界だった。
残っているのはそんな厳しい世界を生き延びてきた強者ばかり。

ズドドドド・・・・

敵がこちらに向かってくるにつれて地響きが大きくなってきた。
二人は武器を構える。
敵は数秒後にはかなり大きく見えるようになってきた。
敵のタイプは闘牛型。

「牛か・・・・?こりゃ」
「牛ではないが・・・原型は牛だな」

とりあえず、パワーがケタはずれに高い。

「くるぞっ!!」
「・・・・わかっている」

突進してきた魔物を左右にかわして、挟み撃ちにする。
雅がおとりになっている間に後ろからシンが攻撃をする。
流石に今日をあわせて五日もこの草原にいることになるのだから、敵を倒すときの要領もわかってくる。
そして、敵の弱点も。

敵の動きが一瞬止まる。
私はそれを見逃さなかった。

「・・・シン・・・・今だっ!」
「おうっっ!!」

シンは大きく跳躍。
そして、抜かれた大剣を振りかぶる。

この敵の一瞬の動きがとまったとき、それは、敵が力を貯めているとき。
そして次の瞬間物凄い威力の技を発揮する。
しかし、力をためるため隙ができる。
その隙を見逃してはいなかった。

「・・・・たぁぁぁぁっっ!!」

ゴスッッ

鈍い音が響く。シンの剣は魔物の脳天を直撃した。
魔物は一拍おいて地面に倒れた。
二人は肩の力を抜いた。

「ふいーっ。一丁あがりっと」
「・・・流石に慣れてもくると早いな」

雅も武器をしまう。
二人はしばらく倒れた魔物を見ていた。
牛に似たその魔物は体格もよく、肉もしっかりついている。
雅はあえて黙っていた。
しかし、この食糧危機にシンが禁句の一言を言った。

「・・・食えねぇかな・・・コレ・・・・」
「・・・・・・・・・。」

・・・・・・・・・・・・。

「意外と食べられるものだな。
毒もなかったし・・・」
「本当に。久しぶりの肉もいいな」

先ほどまでそこに横たわっていた牛の魔物は今では骨のみになっていた。
二人は満足そうに息を吐く。
顔は久しぶりに味わう満腹感の幸せ。

魔物一頭丸々間食。

後に思ってのだが、自分達の倍はあるような魔物だった。
雅はどうして入ったのか不思議に思っていたがあまり気にしなかった。
調理する前に毒気や悪いものはすべて抜いておいた。
それが終われば、奴もただの大きな牛だった。

・・・これで食糧難も何とかなりそうだ。


かなり昼食に満足した二人は、また草原を歩く。
いいかげんこの景色にも飽きてきた。
いったいいつまで歩いていればいいのだろう・・・?
ただ太陽だけが動いていく。

「・・・久しぶりに変わった景色も見たいものだな・・・・」

雅がポツリと呟く。
意外そうにシンが言う。

「へぇー。雅もそう思うこともあるんだ」

がシンのほうを睨む。

「・・・・失礼な奴だな」
「だって、顔色一つ変えてないじゃない」
「・・・・うるさい」

もうちょっと笑えばいいのによ。
そういえば、洞窟の中では笑ってたっけ・・・・。
暗くてよくみえなかったけど・・・・。

「・・・運がよければでてもう二つの宝珠が手に入る。
悪ければ、この殺風景なところで死ぬ・・・」
「そうだなー。こんなとこで死ぬなんてやだな・・・・」
「・・・当たり前だ。」

風が吹いた。
もうすぐ日が暮れるらしい。風が冷たくて心地よい。

・・・・・・・!?

雅はある異変を感じた。
風が運んでくる匂いは乾いた草のものではない。
それは湿気を含んだ、水や草の匂い。
森に広がる、その空気だ。

「・・・・・シン・・・・・。私達は相当運がいいのかもな」
「・・・・そうだな」

日か沈んできた。
そして、前方には黒い大きなシルエット。
それはまず二つ見えた。
そしてそれが、長く大きくなってくる。
山だ。

『アス』が宝珠は二つの山にあるといっていた。

「・・・やったーっっ!!
何とか生き伸びたーっ!!」
「・・・確かに・・・・」

山までいけば、水もある。食料もある。
そして、日陰も・・・。

流石に四六時中日光に当たりっぱなしでは旅になれている二人も辛いものがある。
それにほとんど森の中を彷徨っていることが多かったので、こういうところは苦手らしい。

「・・・では、日も暮れてきたということで今日はここで休むか」
「そうだな。ここで寝るのも最後か・・・・
そう考えると名残惜し・・・。」

・・・・・・!?

結界を張ろうとした瞬間だった。
後ろに黒い影があった。
それはこっちに向かって攻撃を仕掛けてきた。
一発のパンチで地面がえぐれる。
雅はそれを紙一重で避けた。

「・・・雅っ!!大丈夫かっ!?」

遠くからシンの声が聞こえる。
その辺をうろうろしていてこの敵に気づかなかったらしい。

「・・・あぁ・・・・なんとか・・・」

特に敵に形はない。闇がそのまま人型になったものであった。
今までこのようなタイプの敵は見たことがなかった。
明らかにこの草原で生きていた者とは違う。
スピード、パワーのどちらも今まで戦ってきたものよりも優れている。

「・・・・シン・・・・日が落ちたらこちらの分が悪い。
宝珠の力を使う」
「・・・・そうだな・・・。
久しぶりにお披露目か・・・・っ!!」

四つの宝珠が光る。

「・・・・『ウィン』ッ、『ファイ』ッ!!
こいっ!!」
「・・・『ウォン』ッ、『アス』ッ!!」

四つの宝珠から四種の力があふれる。
それは形となって、敵を襲った。

久しぶりに呼んで、お互い張り切っていた。
交じり合ったり、離れたり、不規則な形を取って敵を襲う。
久しぶりに宝珠を使った高揚感は静まるところがなかった。
やがて四つの力は一つとなり、敵に向かって放たれた。
敵がよろめいたところで、シンから剣を振るう。
そして、雅からは札の攻撃。

これでもか、というほどの攻撃を受けて、敵は解けるように消えていった。
二人は自然と脱力感を覚えた。
これほど集中して戦ったのはアスとやったとき以来だ。

「・・・・なんだ・・・?
普通のやつじゃないな・・・」
「・・・あぁ・・・・。
もしかすると、追っ手。
というかこれも試練かもしれない」

なるほど・・・。
この奥に宝珠があるということを強く確信した。
これで旅は終わる。

「・・・近いな・・・」
「・・・・・・。」

返事はない。

「・・・・シンッ!?」

シンは雅の足元で座り込んでいた。

「・・・あぁ・・・。
ちょっと魔力使いすぎたかも・・・」

雅は呆れて息を吐いた。

「まず、宝珠を使いこなせるだけの魔力がお前にはまだない。
魔力というのはあっても言い訳ではないが・・・。
それを使いこなせる力も必要だ」

しかし、シンはコントロールの要領はなんとなく掴めてきたのかもしれない。
後は、魔力をあげればいい。

「・・・・悪りぃ・・・・」

この調子で本当に宝珠を集められるのだろうか。
雅は周囲に結界を張った。そして自然と前方にある二つの山に目が行く。
あそこに二つの宝珠がある。

新鮮な景色と、強大な力。
不安と期待と入り混じって二人は眠りについた。


     

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