光のさす場所


「暗いな・・・・ここ・・・」

前に入った洞窟並に暗かった。
シンは懐中電灯を忘れたことに気がついた。
今更後悔しても遅い。
もしかして雅がまた持っているかもしれないが、今彼女はここにいない。

「・・・参ったな・・・・俺こういうところ苦手なんだよな・・・」

雅みたいに夜目が利くわけじゃないし・・・。
シンはため息をついた。
暗いし、嫌な魔力はひしひしと感じるし、正直帰りたい。

ゴッ

「・・・・ったぁ・・・・。
ったく・・・面倒だな・・・・。」

目の前に合ったらしい岩に当たり頭を押さえつつ、シンは前に進んだ。

壁伝いに、前に進んでいく。
足場は悪くないらしく、転ぶようなものはない。

・・・・?

感覚的に広い場所に出た。
急に気温が下がったように感じた。

シンはとりあえず、剣を抜いた。
そういえば宝珠は光るのだ。この光でなんとか・・・・・

鋭い衝撃が頬を掠った。

「・・・・・っ!?」

ただの風じゃない。
空気を切ったような鋭い衝撃波。
暗いので周りがよくわからない。
でもこれだけはわかった。

・・・・何かいる・・・・・。

「・・・よくきたな。
光の剣士よ・・・・」

奥から、男の声がした。
シンはその方向に顔を向ける。
相手には自分の姿が見えているのか?
いや、きっとそうだろう。そうでなければ、確実に自分に攻撃してこられない。

シンはとっさに自分にとって不利な相手ということに気づいた。
雅に任せればよかったと後悔しても遅い。
もうここまできてしまったのだ。
逃げることすら許されない。

「・・・誰だ?テメェは・・・。
いきなり攻撃してきて危ねぇじゃねぇかよっ!!」

声が洞窟内に響く。
声は、低く響く。

「それは悪かった。
しかし私がお前の前にいても、お前は気づかないだろう?
それならば、不意打ちもあるまい」
「・・・・むむっ・・・・」

確かにそうだ。

洞窟内に風が吹く。
次は先ほどとは違い、たくさんのかまいたちがあるようだ。
シンは目を閉じた。
今ここで頼れるのは目以外の器官。

服が切れる。
皮膚が切られ血が出る。

「・・・っ・・・。
この野郎・・・・」

大体、敵の位置はわかっている。
・・・・だったらそこに突っ込んでいくだけ・・・。

「・・・何も見えないくせに・・・・。
馬鹿だな・・・・」
「・・・馬鹿で結構・・・・っ!!
もう言われなれてるよ!!」

シンが地を蹴った。
跳躍して、敵の上に剣を振りかぶる。
剣が空中をきった。
あまりの手ごたえのなさにシンは驚愕した。

「・・・・なっ。」
「・・・後ろだ。」

・・・・・シンが後ろを振り返った。
それを同時に、大きな塊みたいものが胸にあたった。
シンの体は吹き飛ばされる。
そして、壁に思いっきり思った。

「・・・・っ・・・・」
「・・・さっさと死ね。
時間の無駄だ」

・・・時間なんて・・・・いらないほどあるのに・・・。

そう、自分の心の中で思う。
自分達はいつまでこのようなことを続ければいいのだろうか?
ニンゲンが滅びるとき?それとも世界が滅びるとき?
どちらにしてもまだまだ先の話である。

そのようなくだらない考えを一掃して、目の前の敵を倒すことに集中する。
ニンゲンごときにかけてやる時間など一秒も惜しい。


・・・・やべぇな・・・・。

シンは動けない体をなんとか動かそうともがく。
頭を強く打ったから神経の伝達が上手くいっていないのかもしれない。
・・・・『ウォン』使っとけばよかった・・・。
今更、後悔しても遅いけど・・・。

体制を整えようとゆっくり体を起こした。
そのとき前方から巨大な魔力を感じた。

「・・・うそん・・・・・」

向こうは、一気に決着をつける気らしい。
今、動けそうにないな・・・・
でも、死ぬわけにはいかない。
まず自分の頭を覚ますためにサイを呼ぶ。
そして自分に大量の水をかぶせた。
ぼんやりしていた意識がはっきりする。

「・・・・『アス』っ」

とにかく相手の攻撃を避けるのが先決だ。
本能が相手に恐怖を感じている。
相手は闇そのものらしい。

シンは地面が変化するのと一緒に自分もそれにのる。
そして相手の大きな攻撃を避けた。
洞窟内に大きな音が聞こえる。

地面が大きく響く。
『アス』がある限り、洞窟が崩れる心配はない。
崩れても自分は何とか助かることができそうだ。

しかし、アスを大きく使いすぎると、問題点があった。
移動する地面の体積は同じだ。どこかが盛り上がればどこかがへこむ。

シンは攻撃を避けるため岩からおりたが、予想以上に地面まで深かった。

「まずい・・・」

このまま落ちてしまっても体に負担をかけるだけだ。
奴はどこにいる・・・・?
あたりを探しても、見つかるはずがない。
気配を探っても、向こうは闇と同化してしまっていて四方八方から気配を感じる。
遠くにいるようにも思えるし、近くにいるようにも思える。

「・・・・なにか・・・光を・・・・」

光を求めるには外に出るしかない。
しかし、外に出る手段も恐らくここにはない。

とにかく、奴が見えないことには何も始まらない。
『アス』・・・・俺に光をくれ・・・。

ゴゴゴゴ・・・
地響きはやむことなく洞窟は変化をしていた。

「・・・・何だ・・・・?
・・・『アス』の力を使ったのか・・・・?
何をするか分からないが、俺には何も効かない・・・。
中を大幅に改造してくれたようだが、それではお前に不利になるだけではないか?」
「お前を倒すわけじゃないっ・・・・・ただ・・・・
俺には光が必要でねっっ!!」

大きな洞窟だったが、一気に上に穴があく。
そして、光が洞窟内に差した。
その瞬間シンは強く地面に叩きつけられた。
しかし、それよりも光がある事のほうが嬉しかった。
シンは倒れたまま自分に当たった光を十分に浴びた。
やはり暗いところよりも明るいところが好きみたいだ。

「・・・・・なっ」

敵は突然のことにひるんでいる。
シンは調子に乗ってどんどん洞窟を崩していった。
そしてすぐに洞窟は開けた場所に変わる。
光の当たりやすいコロシアム状の建物に。

「さて・・・・始めますか。闇の住人さん」

シンは起き上がった。
自然とやる気が沸いてくる。痛みも何故か今は感じない。
敵の姿が見える。
一言で言えば黒尽くめだった。
彼の周辺にも闇のもやがかかっていて表情が見えない。

「形勢逆転ってやつ?」

シンは剣を握りなおした。
そして闇に向かって走る。
あいつを倒せば宝珠が手に入るはずだ。
黒いかまいたちが襲ってきたが、構わず突っ込んでいった。
やはり自分は正々堂々とした勝負が好きなようだ。
シンは相手向かって鋭い突きをかました。

敵は後方に飛ぶ。
しかし、大きな黒い球体をこちらに飛ばしてきた。
シンはそれをもろにくらう。

「・・・つぅ・・・・・」

骨にヒビがはいったかもしれない。
光があることに浮かれていたが、やはり少し考えて行動した方が良かったようだ。
傷も今更ながら痛んできた。

「『アス』『ウォン』・・・あいつを捕獲できるか?」

岩と水は闇に向かって進んでいった。しかしそれはあっけなく弾き飛ばされる。

《・・・ごめん、お兄さん・・・。
僕達じゃ兄上に太刀打ちできない・・・》
《悪いな・・・出来るのはお前のサポートだけだ・・・》

シンは少し反省する。確かに、自分達の兄を傷つけるのは辛いことだ。

シンは立ち上がった。
やはり自分の力で頑張ったものこそ、後の達成感があるものだ。

体の方はすでに、使い物にならないはずだ。
魔力もある程度使い切っている。
こいつの魔力だけなら既に、残りは少ないはずだ。

「・・・・何をそんなに頑張る・・・・・?」

何度も剣を交えた。
お互い残りの体力は減っている。
シンが数十回目立ち上がったとき、闇は呟いた。
シンは剣を地面に刺していった。

「・・・何が・・・?
頑張るって・・・・そりゃ、お前たちを助けるためだろ?
今俺らが助けてやる。
大丈夫だって。雅はかなり強い巫女・・・・。・・・・巫女?
まぁとりあえず、凄い奴なんだから。
絶対お前達を人間にしてやれるよ」
「・・・助ける・・・・・?
何を言っているんだ・・・。
私達は助けなど要らない。しかもニンゲンなどに・・・」

・・・こいつ・・・・何か矛盾したこといっている・・・・。
ほかの奴らは、確かに俺らに助けを求めていた。
試してはいたが、ここまで殺されかけることも少なかった。
ただ試すだけ・・・・。

今まではよくわからなかったが、こいつからは物凄く殺気が出ている。
敵の殺気にはじめて気がついた。
こんなに・・・恐ろしいもの・・・・。

でも、シンは笑う。

「・・・まぁ宝珠持って行かないと雅に殺されそうだからな・・・・。
どうせ痛い目見るなら雅の方がいいや・・・・」

・・・・それにこの勾玉返さないといけないし・・・・。

目には何かの決意があった。

・・・・確かに光の力は恐ろしい。

自分の決意が揺らいでいきそうで怖い。

「・・・貴様・・・ここで死んだほうがいい・・・・。
あとついでに言うが、雅という娘。今ごろは死んでいるはずだ。
お前達は最後の最後で運がなかったな」
「嘘吐け」
「あいつの力にニンゲンが敵うはずがない。
そして、手加減するはずがない。」

闇が光に染まるのも早い。
そして、その逆も・・・・。
こっちに引き込んでしまえば勝負は見えたの同じ。

シンの周りを闇が覆う。

「・・・・雅が・・・・」
「・・・・・?」

止めを刺そうと近づいたとき、シンが真正面からこちらに視線を向けた。

「雅が死ぬわけないだろっ!?
あいつあぁ見えても結構強いんだぞ。
それに・・・・ぜんぜんそんな気がしない。
俺はあきらめない・・・・
サクラやサイやカイラ、『アス』のためにもな!!」
「・・・・なっ」

剣についている宝珠の光が強くなった。
剣が鈍る。
そして正面からシンが思いっきり突っ込んでくる。
闇の塊が砕けた。

黒髪の青年が姿を見せた。

「・・・っ・・・貴様・・・・・っ。」
「・・・・やりぃっ♪」

シンがもう一度剣を構える。
しかし、それは自分に向かってくる用途ではなかった。

「・・・『ウォン』!こいつの周りに水をまけっ!!」
「・・・・なにを・・・・っ
・・・・っあ・・・・。」

上から差し込まれる光が水に反射して彼に当たる。
眩しい・・・・。

その場に倒れこんだ。
そこまでシンは予想していなかったらしい。
まさかこんなに効果抜群だとは・・・・。

「・・・・おいっ・・・・大丈夫か・・・・!?」

とりあえず、水を消して、シンは青年に近づいた。

「・・・・負けだ・・・・。
ここにはもう闇はない・・・」

シンはもう一度辺りを見渡した。
自分が改造してしまったこともあるが、確かにあたりは光に満ちている。

「・・・・まさか・・・・こんな方法で負けるとは・・・・」
「まぁ・・・俺馬鹿だからこんなことしか思い浮かばないのよ。
心理戦は雅の専門分野だから」

シンはその場で座り込んだ。
体は痛いし、力も入らない。気を失いそうになるのを頑張ってとめる。
宝珠を手に入れて雅のところまで行かなくてはいけない。
そこまでが、自分に任された責任なのだから。

「・・・ねぇ・・・俺もうへとへとなんだ。
ちょっと調子乗りすぎた。
・・・・宝珠は?」

黒い光と共に漆黒の宝珠がシンの元に落ちてきた。

「・・・なんだ・・・?」
「あんた名前は?」
「『ダクス』」
「雅は生きてるよな。」
「・・・あぁ・・・・今のところは」

曖昧な表現で返ってきた。
とりあえず、生きているらしい。

「・・・じゃ、主人俺でいい?
まぁ・・・確かに出来が悪いけどさ。うん。
大丈夫、すぐにニンゲンにするから少しくらい我慢して。
・・・・どうした?」

『ダクス』が立ち上がらない。
その場に、うつぶせになって動こうともしない。

「・・・・いや、初めて・・・・こんな感情になったから・・・・。
忘れていたことが・・・一気に溢れてきて・・・・。
・・・ひとつ・・・・頼んでいいか・・・?」
「・・・・なんだ・・・・?」

「『ライ』に会わせてくれ」

・・・『ライ』?

それだけ言い残し『ダクス』は消えた。


    

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