悪魔の居場所


やっと日が落ち、娘達と別れたシンは精神的に疲れていた。

「・・・・はぁ・・・・。
やっと離してくれたぜ・・・あの娘共・・・・」

あること無いこと根掘り葉掘り聞かれ、流石のシンも対応に困った。
大体触れるだけでかなり不機嫌になる雅とそういい関係になれるはずもないじゃないか。
シンは心の中で愚痴りながら村長の家に向かった。
・・・いや、向かおうとしていたと言った方が良いかもしれない。
小さい規模の村だけど、よく迷う。

・・・そういや・・・雅どこにいるかな・・・?

シンは辺りを見回した。雅はなんとなくこの村のことを知っていそうだしなんとなく、村長の家を見つけてくれればラッキーだ。

「・・・シン・・・・」

息を切らして雅が走ってきた。
シンも手を振る。

「・・・おぉー、お帰り。
どうだった?探索。。」
「・・・・別に・・・・・。
村長の家に戻るぞ」

雅は、スタスタ歩いていった。
やはり場所を覚えていてくれたらしく彼女の足取りはしっかりしている。
しかし、シンは雅に少し違和感を持ってた。

確かにいろんな事実を聞かされ動揺しているのも分かるが・・・・・。
それとは違うまた別のもの。
聞いてもプライドの高い彼女は教えてくれないだろう。
こうなると、こっちも付き合いにくいから苦手だ。

「・・・どうした?行くぞ」
「・・・あぁ・・・悪い、悪い。」


村長の家に戻ると既に食事の支度は済んでいた。

「・・・お世話になります。」

雅が頭を下げた。それにつられ、シンも頭を下げる。
四十ほどの女性が笑顔で迎えてくれる。

「・・・あぁ・・・気にしないでいいよ。
旅をしていたんだね。
疲れていると思うし、ゆっくりしていきなよ。」
「ありがとうございます」


食事のあと、村長は二人を呼んだ。
先ほどのことだろう、顔が深刻そうだった。

「・・・あの悪魔の封印は徐々に薄まってきているようだ。
今日その場所に人をやったが、やはり封印してある洞窟の辺りには凄まじい邪気が漂っていて、とてもじゃないが近寄れないと言う話だった。
・・・それでも・・・・いくと言うのか?」

雅は頷いた。

「・・・龍達のこともありますし、それに・・・なんとかしなければまたその悪魔は暴れてしまうのでしょう?
以前私のようにたまたま封印できる存在がいたから村も世界も助かった。
もし、私がこの村を出た後悪魔が封印から覚めてしまえば、太刀打ちできません。
・・・・そうではありませんか?」
「その通りじゃ」

雅がこの村を出て行く、と言った瞬間、村長ははっとしたように顔を上げた。

「では・・・・私がその悪魔封印がてら、一緒に人間に戻してしまいます。
その方がすべて丸く収まります。
危険は承知の上。宝珠を集めるときも邪気までとは行かなくてもかなり強い魔力に当てられてますからそれなりには・・・。
浄化の札も持っていますので。
・・・・そうですね・・・・
村長殿はじめ、この村の方々には念のためさらに結界を張っていただけませんか?」

村長は頷いた。

「それくらいのことはさせていただこう。
うちの村の優秀な者達も・・・・」
「ご心配は結構です。私達二人で行かせていただきます。
邪魔・・・と言ってしまえばそれまでですが、死者が出ることは否めません。
出来るだけ悪魔の犠牲になる人は少ない方が良いでしょう。
村人は全て結界の外へ。
なるべく邪気が漏れ出さないように気をつけてください」
「・・・そうか・・・」

村長の顔は徐々に沈みこんでいった。

「大丈夫だって、村長。
俺達も死にに行くわけじゃないし、今までも死にそうなこと何度もあったから。
宝珠の力もあるし、雅は強いし、八歳・・・だっけ?くらいの雅に封印されたレベルの悪魔なら大丈夫。
・・・それに俺達龍を人間に戻すまで絶対に死ねないんだ。」

この機会をなくせば、今度こそ龍達は人間と関わることをやめてしまいそうな気がする。
だから、そんな悲しい螺旋は終わらせなくてはいけない。

シンの笑顔に村長は涙した。

「・・・村長殿。
私達は、悪魔は早いうちに退治してしまった方が良いと考えています。
邪気が広がると面倒なことになりますし・・・・。
明日・・・・何とかなりますでしょうか」
「・・・やってみよう・・・。
場所は・・・分かるかの?」
「・・・多分・・・覚えています」



絶対寝付けない。
そう思い雅は外に出た。
夜風か髪を揺らす。

今までに無いくらい落ち着かない夜だった。
暗闇は一番落ち着かせてくれるのに・・・・・。

雅は集中して気配を探った。
確かにもう少し上の方に微かな邪気を感じた。
結界で囲ってあるのだろう。それでも漏れてくるとは・・・・

「・・・・おうっ、雅もここにいたか?」
「・・・シン・・・・?」

こいつが・・・何故こんなところに・・・?

「・・・寝たんじゃないのか・・・?」
「寝れるか・・・・
というか・・・ここは空気が綺麗過ぎて寝付けない」
「・・・明日は本当に行くんだぞ・・・・。
大丈夫か・・・?」
「・・・雅のほうこそ・・・・大丈夫なのか?
っていうか何焦ってんの?」

シンは雅の目の前にきた。
雅の肩がびくりと揺れる。
彼女にしてはかなり動揺していると見た。

「・・・・この村にきてから・・・・様子がおかしすぎるぞ・・・・」
「・・・・・・・。」

雅は顔を背けた。
シンに指摘されるとは自分も落ちたものだと思う。
何もいえないのが辛かった。

「・・・シン・・・・・
私は・・・・ここにいては、いけないような気がする・・・・」
「・・・はぁ?」
「・・・なんというか・・・・。
自分の意見がまとまらないというかなんというか・・・
どうしよう」
「・・・どうしようとか言われても・・・うーん・・・
・・・とにかく、周りのことは気にするな。
周りのことを気にするから、そうなるんだよ思うよ。俺の見た限り。
いいことだと思うけど、雅はそんなのにまだ慣れてないだけと思うんだよね。
俺だって一人のときは凄い不安になるし。」

雅は自分と反対のタイプだと思う。
雅は人に囲まれると不安になるし、自分は一人だと不安になる。

「・・・そうなのか?」
「だって雅、今村長さんのこととか両親のこととかこの村の人のこととか頭で考えているんだろ?
明日どうやって悪魔倒そうか、とかどうやったら手っ取りばやく倒せるかとか・・・」

シンに言われるのは悔しいが、確かにそうだ。
雅は素直に頷いた。

「・・・少し今混乱しているけだから。
悪魔のことばかり考えろってわけじゃないけど・・・・。
むしろ、人のこと考えられりするのはいいことだと思う。
だから・・・・えーっと・・・・」

何故良い言葉が出てこないのだろう。
シンは焦った。こんなときかっこよく言えたら、普段あんなに馬鹿にされることはないのに・・・。
しかし雅の方は怒っているようにも、呆れているようにも見られた。

「・・・そうだな。
私は少し考えすぎていたのかもしれない。
・・・今は・・・悪魔のことを考えなくてはいけないな・・・」
「・・・そうだよ。
まぁ俺がいるし、雅は絶対守るから」
「・・・シンに守られるなんて、私も落ちたものだな・・・・」
「会った時、言っただろう!」
「・・・あぁ・・・・聞いたような気がする」

雅はその場で座りこんだ。
糸が切れたように、体の力が抜けた。

「・・・雅・・・・!?」
「・・・大丈夫・・・・・立っていたくないと思っただけだ。
なんとなく・・・」

雅がシンに寄りかかる。

「・・・疲れた。
何故か知らないが凄く疲れた。」
「戻る?」
「・・・・いや・・・・・」

雅は空を見上げた。
見事な星空だった。

「・・・・もう少し外にいたいかも・・・・」
「雅・・・俺もう眠い」
「朝になったら起こしてやる」
「・・・え?外で寝ろと?」

雅がくすくすと笑っている。
シンは驚いた。先ほどの娘達の会話を思い出す。
そういえば雅って昔は明るい子だったっけ・・・。

「・・・明日か・・・・。
どうにでもなるような気がするよ」

雅のつぶやきは闇に消えていった。


    

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