ここ一週間、雅とシンは森を歩きつづけた。
全く村に着く気配がしない。
もはや今歩いているとこも道なのかすら分からない。

「・・・雅ぃ・・・。
本当にここであってんの?」
「・・・さぁ・・・?」

地図がないので、ここがどこなのか、この道があっているのか、そんなこと雅には分からない。
雅の旅は永遠に続く目的地のない旅。
雅は自分の直感を信じてひたすら歩いた。

何かあったときはそれも運命。
そこで死ぬのも運命。
そこで選ばれるのも運命・・・・・。


風の森で待つ少女



「・・・雅ぃ・・・。
村とか・・・せめて山を降りようとは思わないわけ?」
「思ってはいるが、つかないものは仕方ない。
道があるのだからどこかには通じているはずだろう・・・」
「それはそうだけどさぁ・・・・」

このような会話は今まで何度も繰り返された。
ここにマイペースな旅を続けているもの二人。名は雅とシン。
偶然出会って、一緒に旅を勧めているのだがこれといってお互い目的地も無しに旅をしている。
はっきりいうとお互い方向音痴。進むものも進まない。
ちなみに、雅は道とは言い切っているが実際二人が歩いているところは道とは言い難い。
森の中の敵にも大分慣れてきてさっさと倒せるようになった。
雅は、何故師匠が街道から行けというのが分かったような気がする。
街道に住む妖怪は賢く倒すには少々頭がいる。しかし体力がないので弱点を見つけてしまえば案外弱い。
しかし山の敵は少し癖がある。
体が大きいので少しの攻撃では倒せないのである。
まぁどのみち封印してしまえば関係ないのだが・・・・。

雅は空を見上げた。
もう空は赤色に染まっている。
そろそろ日も落ちて暗くなりそうだ。
視界も悪くなってきた。
森の中は暗くなるのも早い。

「そろそろ休むか・・・。これ以上進んでも危険なだけだ」
「やったぁっ!飯っ!!」

無邪気に喜ぶシンを見て、雅は嘆息した。
・・・・こいつは・・・・。
雅は荷物を置き、食事の準備を始める。

「お前の頭の中はそれだけか・・・・。
しかし・・・シンのいうことは一理あるな。
近いうちにどこかの村につかないとこの前もらった食料も底をつきかけてる・・・」
「えっ・・・本当か・・・」
「あぁ・・・。ここで嘘をついてもしょうがないからな・・・。
どうしようか、度々動物にもらうっていうのも情けない・・・」

もって、あと一日、二日・・・・。
そろそろ村のひとつも見えてきてもいいようなものなのだが。

雅は立ち上がって周囲を見渡した。
なんとか飢え死だけは避けたいところだ・・・。
シンがだんだん五月蝿くなってくるのもイラつきが増す原因になるし。

フッ

何かが木の影を通り過ぎたような気がした。
雅は顔を上げた。
シンが遅れて雅の見つめた方向を見る。

「・・・どうした・・・?何かいたか?
ウサギとかなら嬉しいけど・・・」
「来た・・・かもしれない・・・・。
動物ではなさそうだったが・・・・。
そういえば結界を張っておくのを忘れていた・・・」

雅はそう言って、立ち上がった。

「・・・・・!?」

また目の前を白いものが通り過ぎた。
今のは・・・・?

「・・・あの木の影・・・」

雅は気配を消してゆっくり近づいていった。

・・・・悪魔か・・・?

それにしては嫌な感じもしないし、強い魔力も感じない。
もしも悪魔だったら厄介な敵になる・・・。
気配を消すのが上手すぎる。きっと戦いになったら向こうの方が有利だろう・・・。
なにせここは隠れるところもも多いし、容易に逃げも出来る。

雅の行動を見て一応シンも剣に手をかける。
雅が木の影を覗くと、白いものがしゃがんでいる。

《・・・あっ・・・》

「・・・お前は・・・」
「・・・・・?
どうした雅?」

シンも雅の元に向かう。
雅は白いものいものに話しかけた。

「大丈夫だ・・・。
私は貴方に危害を加えることはしない」

《・・・・・・・(こくん)》

できてきたのは十三歳くらいの少女。
しかし、ただの子供ではなく体は透けて後ろの景色も見える。
そう・・・・

一般に言う幽霊。
出てきた意外なものにシンは絶句した。

「・・・おっ、おい・・・そいつ・・・」
「・・・シンも視えるのか。一応・・・」
「失礼だぞ・・・雅・・・」
「・・・霊感はあるらしいな・・・」

女の子は雅とシンを交互に見る。

《・・・・・あのっ・・・・》

雅は偶然その辺にあった切り株に少女を招いた。

「・・・とりあえず、ここに座って・・・。少しここで話をしよう。
よろしいか?」

《・・・・・はい・・・・・》

雅は周囲に結界を張り終えて火を炊く。
何故か夕ご飯の準備はシンがやっている。

・・・何で俺が・・・?

確かに二人の会話には入っていけるわけもないが、少し寂しい気分になった。
シンは鍋をかき混ぜながらあることに気がついた。。

「その結界、こいつも入れるのか・・・?」

「あぁ・・・悪魔よけのためのものだからな・・・。
邪気がなければ大丈夫だ」

雅は少女をこの場に慣れさせてから、彼女の隣に座った。
一応、お茶も出しておく。

「私は、雅という。見ての通り、巫女で妖怪退治をしている。
・・・・私から聞きたいことがある。
よろしいか?」

《どうぞ・・・・・・》

「まず、名前はなんという??」

《・・・・サクラと申します・・・・・。》

「サクラ・・・・か・・・・・。
いい名前だな。サクラと呼んでいいか?」

《はい》


少女は安心して笑顔を見せた。

「ちなみに、俺はシンだ。よろしくなっ!
はい。夕ご飯」

ちゃんと気を使ってか、シンもサクラの分も用意した。
雅の分も彼女の前に置く。

「それでは・・・・まず、サクラは自分が今どのような状態なのか分かっているか・・・?」

これを聞くには彼女の精神を不安定にする恐れもある。
雅は刺激しない程度に聞いてみた。
心配をよそにサクラは頷いた。

《・・・はい・・・。わかってます・・・。私は死んでしまったのでしょう?
しかし・・・どうして私はここにいるのか・・・?
死んでしまったら意識はこの地上にあるはずないのに・・・》

雅はシンのスープに口をつけた。
・・・うん、味は悪くない。

「・・・それはもっともな意見だ。
この国にはいろんな宗教とか考えがあるから死んでしまったらどこに行くなんて人それぞれ。
私自身も死んだ後のことなんて分からないしな・・・。興味もないが」

《・・・私のせいでここにくる人が減っています・・・。
幽霊が出るから危険だって・・・。
ここの近くの村に住む人たちはここの木を切って生活をしているんです。
でも私が出るようになってから・・・。
私もはやく楽になりたいんですけど・・・。巫女の貴方なら成仏とかの方法知りませんか?》

なかなかしっかりしていている幽霊だ。
ここまで考えられるなんて・・・。
雅は関心しながら言った。

「・・・結論から言う。答えはどちらでもない。
私は確かに巫女かもしれないが、悪魔退治を主に習ってきた。
師匠も、自縛霊の対処法は教えてくれなかったし、私も実際霊に会ったのは初めてだ。
悪いが供養の仕方は事実知らない。
無理矢理成仏させることも出来るが、それをサクラにするのは気が向かない。
私は、サクラも納得した方法でするのが一番だと考える」
「・・・で、雅なんか良い方法あるのか?」

お椀片手にシンが聞いてきた。

「それなのだが、それはサクラ次第・・・。
まず、どうして死んだか覚えているか・・・?」

《・・・・はい。覚えています。私は何かの宝珠を取ろうとして崖から落ちました。
きっとそれが原因です・・・。
死んだって分かったのも、気づいたら自分の体が隣にあったから・・・》

少女の顔が暗くなった。
悪いことを聞いたと後悔したが今更遅い。
雅はさらに尋ねた。

「宝珠というのは・・・?」

《・・・私自身は何か知りません。
村の人に取って来いと言われました》

「・・・まずその宝珠について調べるか。
この辺にサクラの住んでいた村はあるか?」

《・・・はい・・・この近くに・・・》

その言葉に雅とシンの目が光った。

「・・・では、明日その村に案内してもらえるか」

《はい、構いません。》

「決まりだな、雅。」

「あぁ・・・・。
もし、取ってくる必要があれば私たちが代わりにとってきてやる」

《本当ですか・・・?
でも・・・あそこは危険ですよ。そこに行った人のほとんどが帰ってこなかったんです。
帰ってきた人といえば逃げ帰ってきた人。その人もまだあの洞窟までたどり着けませんでした》

「・・・そりゃ、物騒な話だな」

サクラの話にシンは眉をひそめた。
雅も目を細める。

「・・・洞窟か・・・。
その中に宝珠があるのだな・・・」

《・・・はい。そのようにいわれています》

『・・・・・・・・・・・・・。』

雅とシンは少し考えた。
危険な洞窟。
その中にある宝珠。

雅は立ちあがった。

「・・・少しこの辺を歩いてくる。
サクラはここにいてくれ」

《はい・・・》

「じゃ、俺も行こうっと」

シンと雅が立ち上がって、結界から出て行った。


しばらく歩いたところに川が見えた。
そこまで黙って歩いていた雅が立ち止まる。

「・・・素直な霊だな・・・。
ついて来ない・・・・」

「へぇ・・・そこまで分かるのかよ・・・」

シンは辺りを見回す。何も見えるはずもなく、闇が広がっていた。
流石、巫女だとシンは改めて感心した。

「これでよい霊か見分けられる。師匠が言っていた。
・・・まぁ、例外もあるがな」
「ふぅーん・・・・。俺には全然わかんないんだけどな・・・。
それよりあの子の言ってた洞窟ってなんか知ってるか?」
「私は地理には詳しくない、というか興味がない。
それにそのような類の話ならどこにでもあるだろう」
「よっと・・・そりゃそうだ。
・・・で、雅は本当に洞窟に行くわけ?」
「・・・さて・・・様子見だな」

シンが器用に木を上った。

「でもさ、楽しそうじゃない?
誰も帰ってこなかったんだろ?」
「それだけ危険ってことだぞ・・・・。分かって言っているのか?」

雅が上にいるシンを見上げた。

「分かってるって・・・・。
もしかして怖い、雅?」
「怖くない。
阿呆か」

雅はむっとして先に結界の元へ歩き出した。
シンは、すぐに木から飛び降り、彼女の後を追う。
どうやら怒らせてしまったらしい。

「あぁ〜・・・・。
怒んないでよぉー。冗談冗談」
「悪いが冗談は嫌いだ・・・」


雅とシンが行ったのを見届けて、サクラは緑色の宝珠をかざした。
その宝珠は綺麗な光を出し、輝いている。

「聞こえますか??兄上・・・姉上・・・」

《あぁ・・・・。どうしたウィン?》

「・・・獲物が・・・二人かかりそうです」

《手応えは??》

「ありそうです・・・。
特に巫女の方の霊力は半端ではありません」

《そうか・・・・。
全力でかかれ・・・》

「わかっています・・・」

宝珠の光が消えた。サクラは宝珠を強く握る。

・・・これは、私達の使命。

「・・・サクラ、悪かったな。席を外して」

すぐに雅が戻ってきた。サクラは驚いて首を振る。
サクラは先ほどとは違う雅の雰囲気に首をかしげた。
・・・何か、あったのだろうか。
先ほどのを見られたか?と一瞬焦ったが、後にシンが戻ってきたときに理由が分かった。
おそらく、もめたのだろう。

「雅ぃ〜、食後のデザートは?」
「ないに決まっているだろう。
寝ろ。お前は寝ろ」
「雅、怒るなよ。
その綺麗な顔が台無・・・」
「死ね」

低レベルな争いが繰り広げられるのを傍目に、サクラは唖然とそれを見守るしかなかった。
こうして夜は更ける。


    

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