試練の洞窟


サクラの案内で、山を下り、近くの村に辿り着いた。
雅とシンは久しぶりに見た村里に、予想以上に安堵した。
食料もギリギリもったようだ。
雅は、早速足りない旅の道具を買い足しに向かった。

「・・・雅・・・。もしかしてまだ怒ってる?」
「別に」

結局あの後、低レベルな口争いを延々としていた結果、雅は何も言わず寝てしまった。
朝からこのような態度で、ほとんど口をきいてくれなかった。

「・・・本当、俺が悪かったからさぁ・・・機嫌直して」
「直すも直さないも、別に機嫌など悪くない」
「雅ぃ・・・」

このまま、この関係が続いてしまうと、きっと彼女は食料を少なめに買ってまた旅立ってしまうだろう。
それは絶対避けたいシンだった。ひもじい思いだけは勘弁だ。

「雅、美味しそうな柿があるぞ!!」
「そうだな。
買えんぞ。果物なんて日持ちしないしな」

しれっ、と雅は返事しスタスタと行ってしまう。
シンは項垂れた。
・・・女の子と付き合うのは難しい・・・・。
このような人懐っこい性格のシンはいつも皆から好かれており、喧嘩などほとんどしたことがなかった。
したとしても、次の日には機嫌が直っているもの程度。

「・・・はぁ・・・・。
どうしよう・・・」
「おいおい、兄ちゃん、振られたか?」

果物を売っていたオヤジが声をかけてきた。シンは持っていた柿をかごの中に返し、しゃがみ込んだ。
もはや、愚痴る体制だ。

「そうなのよー。
女ってのは難しいなぁ・・・」
「・・・まぁ、そういう日もあるってことよ。
・・・そういえば見かけない顔だな」
「・・・そりゃ・・・、一応旅してますから」
「確かになりはそんな感じだな。剣持っているって事は、剣士か?」
「まぁーそんなもん・・・・かな。
剣士って名乗れるほど強くはないけど、まぁ山の妖怪くらいなら倒せるぜ」

笑顔で親指を立てるシンだが、ここに雅がいたなら『この前悪魔に取り付かれていた分際で、何を言う』と一蹴されていたところであろう。
勿論、いないことを見越していっているのだが。

「・・・へぇ、腕っ節も強いと見える。
さっきの巫女さんの連れかい」
「そうそう、彼女を怒らせちゃってねぇ・・・。
全く難しいお年頃ってやつ?」
「あ〜、分かる分かる。
うちの娘も口をきいてくれなくてね」

それとこれとは違うのでは?と思うのだが、シンは気にしなかった。

「反抗期ってやつ?あ〜俺もそのクチ。
親父と喧嘩して家出したんだよね」
「はっはっはっ!男子はそれで結構!!
坊主良い性格しているな。気に入ったぞ!!」
「気に入られちゃったなぁ。
でも、俺的にはおっさんよりも若いお姉さんの方が・・・」
「言ったな、坊主。
あの巫女さんがいるくせに〜」
「・・・・・あっ・・・・・」

そうだった・・・雅どうしよう。
怒らせたまま逸れてしまった。
・・・・迷子か・・・・?

「・・・どうしよう。おっちゃん・・・。
雅と逸れちまったよ・・・」
「まぁこの村は小さいからな。あの服だし、すぐに見つかるであろう。
あっ、そうじゃ。山の化け物退治が出来るんだったな?
それだけ腕が強いというならあの山にいる幽霊を退治してくれないか?」
「・・・幽霊?」

その単語にシンが顔を上げた。
幽霊というのは・・・・もしかして・・・・

「ここ・・・何十年・・・いや何百年になるか?
若い娘の霊がでるのだ。
その霊は、人に会うと『洞窟にある宝珠を取ってきて』と人に頼み、人を山奥に誘いとり殺すらしいのだ。
是非退治して欲しい」
「・・・とり殺す?」
「あぁ、娘に応じた者で、無事に帰ってきた者がいない」

シンはいい情報を手に入れた。と相槌を打ちながら相手の話を引きだす。

「・・・で?帰ってきた人もいるんだろう?
どうだったって?」
「・・・洞窟に案内されたが、幽霊は洞窟に入れないと入り口で待っているらしい。
その洞窟の中にはさまざまな仕掛けがあって、とてもじゃないが奥まではいけないと」
「へー・・・・。
でもそれってとり殺す・・・わけじゃないよね?
その幽霊にもなんか理由があったんじゃない?
本当にその洞窟には宝珠があるのか?」
「この辺に伝わる伝説では、龍神が落としていった宝珠がこの土地に落ちてきたって話があるが〜
・・・まさかなぁ。」
「龍神伝説・・・・ってやつ?
へぇ・・・・面白そうじゃん」

シンがニヤリと笑む。
その噂が本当であれば、自分達はこれから竜神の珠を取りに行くということか。
・・・・面白い。
シンはこんな冒険を求めて、家を出たのだ。
これは、願ってもないチャンスであった。

「おい、シン。
いつまでここにいるつもりだ」

シンが後ろを振り向くと、雅が立っていた。
表情はいつもと変わらず、無表情に近い。
いくら方向音痴でも人通りの多いところに行けば、なんとか探し人に会える。

「あっ、雅・・・。
えーっと、なんか良いこときいたから・・・」
「・・・・良いこと?」

雅は胡乱気な表情でシンを見た。

「っていうか、とっととサクラの元へ戻ろう!
洞窟行こう!!」
「・・・シン・・・。
お前何を聞いてきた・・・?」
「さぁ龍神の珠を取りにレッツゴー!」
「・・・龍・・・・神?」

雅は嫌な予感がした。



《・・・・・・・・ここです。》

それから二日後・・・・。
二人は雅の案内で洞窟の見える谷まで辿りついた。
谷の下に洞窟の穴が見える。

「あれがそうか・・・?」
「特に何ともないような気がするが・・・?」

雅はこの辺の気を探るが、特にあの洞窟から強い力は感じられない。
宝珠といってもただの宝石か。
雅達の足元のすぐ先は崖になっており、一度足を踏み外せば命はなさそうだ。
まずは崖下の向こう岸まで渡ることが必要だ。

《油断してはいけません・・・・。
この辺は風が強いのです・・・・。それで私は・・・・。》

落ちたのか・・・・。

雅とシンは目を伏せた。
やはり彼女のためにも宝珠を取ってこなければいけない。そんな感じがした。

雅は改めて崖下を見る。

「・・・落ちたら死ぬな」
「まぁ落ちなきゃ良い話しだろう」

問題はそれだけではなさそうだ。崖の岩肌はごつごつ尖っていて、触れただけで傷ができそうだ。
雅は近くの石をつまんでみた。
・・・もろい。
風も強くなってきた。風が雅の長い髪を揺らした。

「どうする・・・、シン。
ここから降りるのは難しいぞ・・・。」
「確かにね・・・・。まぁ、何とかなるって・・・・。
本当にあの洞窟だな。」

《はい。あの中にあるはずです。
しかし、聞いた話によるとあの中にはまだたくさんの罠が仕掛けられているらしいです。
しかも中は迷路のようになっているみたいで・・・・・・》

『・・・迷路・・・・?』

二人が同時に言った。急に目をそらし始める。
サクラは首を傾げる。

《・・・・・・??何か・・・??》

「あっ・・・いや・・・・。わかった。
貴重な情報教えてくれてありがとう・・・・」

参ったなぁ・・・・。口には出してないが二人は相当困っていた。
罠はともかく迷路・・・・。
もしかして、迷って終わりかもしれない・・・。

シンは、狭い足場で準備運動する。
雅は不思議な様子でシンの行動を見守った。
そして、最後に大きな伸びをして体を伸ばしシンは大きな息を吐いた。

「じゃ、行くか雅」
「ちょっと待て、どこから降りるんだ??」
「大丈夫、俺にまかせろって。よっと」
「・・・ちょっ・・・待て・・・っ
何をする・・・!?」

シンは軽々雅の体を持ち上げ、横抱きにした。
予想もしていないシンの行動に雅は口をパクパクさせた。
これから彼がどういう行動に移るのか想像したくない。
しかし抵抗してこの崖から落ちるのも嫌だったので、雅は自分の安全を祈ることにした。

「さて行くか」


シンが大きく跳躍した。
視界に広く開けた谷が入る。
雅は血の気が引いていくのを感じた。

・・・・本気か・・・・この馬鹿・・・

シンに自分の命を預けたことを、雅は心の底から後悔した。

勿論、彼は命綱たるものも用意していない。
失敗すれば二人共崖の下へ真っ逆さま、あの世行きである。

ザザザザザザザッ!!

直角にも近いこの崖をシンは滑り降りていた。
無謀としかいいようがない。

高いところから飛び降りるのとはまた別の感覚に雅は、とてつもない恐怖を感じた。

「・・・・・っ!!!」

叫ぼうにも声にならない。
そんな雅に対してシンは、涼しい顔である。むしろ、この状態を楽しんでいるようにも思えた。

「ちゃんと捕まっていろよっ!!」

言われなくてもそうした。自分だけ落ちて死ぬのは割に合わない。

そして洞窟が近くに見えたところで、シンはさらに無謀なことをやろうとしていた。
崖を走りだしたのである。

「・・・・・え・・・・・っ!?」

雅は、あまりの恐怖に意識が飛ぶかと思った。
しかし、ここはぎりぎりのところで意識を保たせようと自分に渇をいれる。
洞窟の手前のところに、岩でできた突起があった。
シンは、その突起を走り、助走をつける。
そして洞窟の手前まで大きく跳躍した。
飛距離は伸び、シンは見事に洞窟の前で着地した。

見事と言いたいところだが、こちらは十年程寿命が縮んだ。

「よっ・・・と!!
ふふん、俺にかかれば、こんな谷間くらいひとっ飛びよ!」

雅は呼吸を整えることに必死でしばらく他の事を考える余裕もなかった。
・・・・生きている・・・。
そう実感出来たのも、しばらくしてからのことであった。

「・・・大丈夫か・・・雅・・・?」

何事にも気丈な彼女が、ここまで無反応なのを初めてシンは見た。
そこまで大変なことをしてしまったのであろうか。
シンの言葉にやっと雅が反応する。

「・・・あぁ・・・なんとか・・・」

嫌な汗も引き、やっとまともに話せるようになってきた。
雅がふと、顔を上げるとシンの顔が目の前にあった。
そういえば、ずっと横抱きの状態でいることを忘れていた。雅はすぐに顔を背けた。

「・・・悪い、おろしてくれ」
「・・・・立てる?」
「・・・あぁ・・・・」

何とか地面に足をついて一息つく。
が、緊張が一気に解けてしまったらしく、すぐには立てなかった。

「・・・雅・・・っ!?」

シンが直ぐに支えに入る。

「・・・悪い・・・」

しかし、ここで雅は思った。
何故、自分の方が謝らなくてはいけないのだ?ということに。元々シンのやりだしたこと。
悪いのは奴の方ではないか?

上を見上げると、先ほどいたところがかなり小さく見える。
だいぶ降りたんだな・・・・・。
時間にしてはほんの一瞬のようであったが、進んだ距離はかなりある。
また先ほどのことを思い出し、雅は考えるのをやめた。

《大丈夫ですかっ!?
もう私びっくりしましたよ・・・・。こんな人初めてですっ!!》

いつの間にか、サクラもこの場にいた。
霊なので、移動には苦労しないのであろう。
心配そうなサクラの声をシンは笑い飛ばした。

「はははっ・・・・。何とか大丈夫。結構足腰強いんだ♪」
「私は死にかけた・・・・。
まったく、寿命が十年ほど縮んだぞ。
何かをするのであれば、内容を言ってからやってくれ」
「・・・だって、言ったら絶対却下するじゃん・・・・」
「当然だ」

一通り口喧嘩もして、二人は洞窟に向き直った。

「さて、入るか♪」
「・・・・あぁ・・・・」

村を出てからシンの洞窟に対する興味は、村に入る前よりも強くなっているようだ。
そういえば村からいい情報が入ったとか言っていたが・・・。

バチッと静電気みたいなものが洞窟の入り口でサクラを阻んだ。

《きゃっ・・・・》

「・・・・どうした・・・・サクラ・・・?」

雅が振り返る。自分達には影響がないようだ。

《・・・・それが・・・・私はこの中には入れないようです。
なんか結界みたいものがあって・・・・》

「そんなのあったか?俺はなんにも感じなかったぞ・・・・??」

雅はサクラの阻まれた場所までいって周辺を確かめる。

「・・・霊専用のものか・・・?
いや・・・違う・・・?」

雅が境界線の空間に手を差し込んでみたが、何の変化もなかった。
周辺に札みたいなものも、強い力も感じない。
一度外に出て、また中に入ってみるがこれといって変化はなかった。サクラにのみ反応するらしい。

「では、私達だけでいってくからサクラはここで待っていろ。
・・・・まぁ・・・・生きて戻ってこられる保証もないが・・・・。
一週間して戻れなかったらそのときは諦めてくれ」
「・・・・いく前からそんな不吉なこというなよ」
「覚悟は大事だぞ。
何せ帰ってきたものもほとんどいないらしいからな・・・。
では行くぞ。
なるべく早く終わらせたい」

雅はこの結界の内と外で感じる気配の違いを感じ取っていた。
もしかしたらこの中で死んでいった霊の仕業なのかもしれないが、確かにこの中からいいとは思えない気配が漂ってきている。
そして、強い力もこの奥にはあった。おそらくそれが宝珠であろう。
結界は、この宝珠の力を隠すためにあるのかもしれない。憶測にすぎないが雅はそう思った。


《・・・・試練の始まり・・・
これから貴方方を試させていただきます》


雅とシンの背を見送り、サクラはそう呟いた。



「・・・・早速どうするんだ、これ・・・・」
「・・・・そうだな・・・・」

洞窟に入ってかれこれ数分進んだところか・・・。
そこまでは一本道だったのだが、今、目の前には五つの穴。
早速二人は立ち往生していた。おそらく、どれか一つが正解。
しかし、どれが正解の道であるかは分からない。
ヒントでもあればいいのだが・・・と探してみるがそのようなものは見つからない。

「どうする?いつものように適当に進んでみる?」

シンが軽い口調で言った。雅もそのような考えがないわけでもなかったが、むしろそれしか手段は残されていないのだが、渋る理由もあった。

「・・・それもいいのだが、もしも、進んでから後に戻れなくなったらどうする?」
「・・・・そんなことがあるのか・・・・」
「あるとは言い切れないがないとも言い切れない。
今までの話の事も考えると何か帰られないわけがあったはずだ。
私達よりもここに来た者達は方向感覚がおそらくあるだろうし。
それは戻れない罠が仕掛けてあったから・・・・と考えるほうが自然だ・・・」

一番考えられるのが迷路。次に攻略不可能な罠。
後者のみであれば雅達にも希望があるのだが・・・

「・・・・でもさ・・・・ここにいても埒がないわけだし・・・
先に進もうぜ。適当に」
「・・・・・・・。」

考えろ・・・・。何か一つに絞る方法を・・・・。
どこかにヒントがあるはず・・・・。
だって、力のある宝珠ならばいつか必要なはずだ。
それをとりに行くには何かヒントがないと取りにいけない・・・。

雅は穴の前まで行き、五つの穴を見比べた。
すると、あることに気づいたのである。

「・・・シン、ここだ」

雅が真ん中の穴を指差した。

「・・・なんで・・・・?」
「他の穴と違う。
よく見てみろ、他の穴は緩い登りの道になっていることが分かるだろう?
もし、上から大きな石を転がされたらひとたまりもないぞ。
試しに、石を投げ入れ入れてくれるか?」
「・・・おう・・・・」

シンはその辺にあった大きな石を持って思いっきり転がした。

「おりゃ!!」

ひゅん、と石は飛距離を伸ばし奥へと進んでいった。そして、ある地点を過ぎた瞬間

ズドドドドドドッ

大量の岩が落ちているだろう、地響きが洞窟の中に響き渡った。
そして、その岩達は坂道をくだり、雅達のいるところまで雪崩となっておちてきたのである。

「・・・まずいぞ!!
真ん中の方へ逃げ込め!!」

洞窟に静寂が戻ったとき、先ほどの空間の半分は石で埋まっていた。
辛うじて来た道の穴が埋まってなかったところがせめてもの幸運だっただろう。

「・・・端から行かなくて正解だったな」

予想以上の罠の規模に二人共言葉を失くしていた。

「進むぞ、しかし、この道を進んだからといって無傷でいける保障はどこにもない。
気をつけろよ」
「おう!!」

雅の予想したように、この道には落石などという大掛かりな仕掛けはなかった。
しかし、それほどではないとはいえ、それなりの罠は仕掛けてあった。

シンの髪を何かが掠って、後ろの岩に突き刺さった。

「・・・矢っ!?」
「気をつけろ!他にも飛んでくるみたいだ!!」

雅とシンは一斉に飛んでくる矢を紙一重に交わし、走り出す。
反射神経は、今までの旅で鍛えてあるので突然の襲撃にも避けるくらいの反応は考えなくても体が覚えているようだ。
他にも何故か蝙蝠が住み着いていたらしく、大群にあって襲われたり、橋が突然崩れたり、命からがら辿り着いた二人にもっとも最悪な試練が待ち構えていた。

『・・・・迷路・・・・』

目の前に広がる巨大な迷路は二人に大きな絶望を与えた。
普段の道でさえわからなくなるのに、どうしてこのような巨大迷路を簡単にやってのけられるであろうか。
・・・そもそもたかが洞窟にどうしてこのような広い空間があり、地下迷宮になっているのだろうか。
ただ、唯一もの救いが迷路が上から見渡せるということである。そして出口もここから見えている。
・・・見えているというか、雅がただ単に視力と夜目がずば抜けて優れていることにあるのだが。
壁は土作り。
もしかしたら壊せるかもしれない。
・・・いや、それよりも手っ取り早いのが・・・。

「・・・・シン、出口は見えた。
迷路の壁の上を通っていくぞ。」

反則といえば反則のようにも思えるのだが、この場合仕方がない。
真面目に付き合っていれば命がどれだけあっても、最後まで辿り着けないであろう。

不安定な壁の上を雅とシンは器用に渡っていった。

「・・・そういえば・・・。
先ほど、お前龍神とかなんとか言っていたな・・・・」
「・・・あぁ、果物売っていたおっちゃんから聞いたんだ。
この洞窟の奥にあるのは龍神の珠なんだって?」

雅はそれを聞いて、思わずバランスを失う。
なんとか、それを保ち落ち着いたところでシンを怒鳴りつけた。

「馬鹿者っ!!
何故それを早く言わない!!」

雅の剣幕に、シンは一歩引いた。
よく分からないが、彼女の琴線に触れてしまったらしい。

「・・・いや・・・別に黙っているつもりはなかったけど・・・・」
「龍神といえば、神の中でも相当高い地位にいるのだぞ。
何のために、各地で龍神を崇め奉り拝んでいると思う!?
龍神がそれほど、人間に畏怖される存在だからだ!!」
「・・・・はぁ・・・。
それで?」
「まだ分からないのか。
龍神の所持品を盗むなど、祟られて当然のことをしようとしているのだぞ、私達はっっ。
・・・今まで死んでない方がおかしい・・・」
「いや、死ぬところを紙一重で交わしてきたじゃん、俺達」
「それとはまた別だ。
神とは人間ではどうしようもない力を持っている。
怒りに触れたら、私達は魂もすべてこの世から消されてしまうだろ・・・・」
「・・・だったら何?
サクラの願いを聞かないわけ!?
あんなに困っているのに?」
「・・・それは・・・そうだが・・・」
「雅は巫女なんだろう?
だったら龍神の怒りも納めることくらい出来るんじゃないの?」
「出来るか。
・・・・そうだ、今まで言って来なかったが、私は正式には巫女ではない」
「・・・は?」

雅の突然の告白にシンは開いた口がふさがらなかった。
雅が巫女ではない?

「格好だけは巫女だがな。
師匠がその格好であれば食べ物には困らないといっていたから、巫女装束を着ているだけだ。
まぁ・・・一応修行もしてきたし、最低限巫女の出来ることくらいは身につけてはいるが・・・。
根本的に違うのは、神に下ろうとしないことかな。
神の元に一生下るなんぞ、やってられない。
それなら、実際妖怪や物の怪に困っている現実の人達を助けた方が世の中のためになる。
大体、一日中神殿や寺院にこもって祈るなんて私の性には合わない」

黙っていれば、大人しそうに見える雅だが、中身はさばさばしていて、行動的と見た。

「・・・じゃ、別に龍神の珠取りに行ってもいいじゃん」
「何故?」
「神に仕える気がないんだろ?
嫌われたって別にいいじゃん」

・・・・それとこれとは別なような気がしたが、雅は黙っていた。
自分は、困っている人を助けるために、この世の中に出てきたのだ。
今現にサクラが困っている。だから助ける。

・・・龍神なんて、宝珠を取る前に礼儀を正せば、また許してくれるかもしれないし・・・。

「・・・分かった。取りに行く」

しばらくしてシンがぼそりと呟いた。

「・・・でも雅・・・
巫女じゃないのに、巫女って名乗るのは詐欺なのでは・・・?」
「別に私の口から『巫女』と名乗ったわけではない。周りが勝手に仕立て上げるのだ。
・・・まぁ外見だけは騙しているがちゃんと、妖怪は退治するし、経も唱えられるし。
それなりの行動をして報酬は受け取るようにしているから。
一応、こっちも生活がかかっているのでな。
悪いが私はそこまで偽善者にはなれない」
「・・・・へぇ」
「・・・・ほら、もうすぐ出口だぞ」

シンは前方に懐中電灯を照らした。
確かに、穴が見える。

迷路をかなりショートカットして、雅達は、道を進んでいた。
近づくにつれて、感じる力が強くなっていくのを雅は感じていた。
龍神の珠というのはあながち嘘ではないかもしれない。
そして、その道にも終点が見えた。
奥から光が漏れている。

「出口?」

シンと雅が見た光景は円形の空間の中心になにか強い光を発するものがあるという光景であった。
その光の中心は強い光を放つ、緑色の宝珠が見えた。


    

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