誰にでも自分だけの物語がある。
あのこの願いが届くように・・・・。
小さな心が、凍りついた心を動かした。



小さな少年と神様



サイが長い洞窟を歩いていく。
二人もそれについていった。あの屋敷の下にこのような空間があること自体信じられない。
それにあれだけ暴れて、上には影響はないのだろうか。
そのような謎も聞けないままに、サイが立ち止まった。


目の前には氷のような透明な扉があった。
その扉が開かれる。
まるで中はまるで幻想的な空間であった。

すべてが水で出来ている。
そんな表現はおかしいが、家具はすべて氷のようなものであった。
ガラスの部屋を水の中に入れた、そんな感じがする。

「・・・・ようこそ、水の間へ」
「・・・・水の間?」
「うん。ウィンが連れていってくれただろう?
風の間に。それと同じ原理だよ。
ここは、僕が作った異空間なんだ。
さっき、宝珠と剣があるところまで行く際に宝珠を埋めるところがあっただろう。
あの扉を境に、異空間につながっていたんだ。」

・・・・なるほど、だからあれほど暴れても問題なかったのか。
雅は一人で問題解決して、満足した。
サイは雅たちを椅子に座るように進めた。

「さて、宝珠は誰が持つ?
様子を見ていると、ウィンはお姉さんに宝珠を渡したみたいだけど・・・。
今お兄さんが持っている剣は、宝珠をより使いやすくする媒介みたいなものなんだ。
お姉さんが持つには少し重い気もするけど・・・
・・・さて、どうする?
僕はお兄さんでもお姉さんでもどちらでもいいけど」

「・・・・え?俺でもいいの?」

シンは驚いたように、サイに聞いた。

「うん、確かにお兄さんの力は弱いように感じるけど・・・
その剣を媒介にすれば、より宝珠の力を制御できる。訓練すればお姉さんみたいに自由自在に力が使えるようになるよ。
剣を持てるってことが何よりの証拠」
「・・・・シン・・・・。受け取っておけ。」
「・・・・雅??」
「その宝珠を取って、サイに認められたのはお前だ。
シンには受け取る資格がある」

それにこれからの旅には魔力が必要になるときもあるかもしれない。
シンはその点に劣っている。
宝珠が使えるようになれば、少し集中力も高くなり、より魔物と戦いやすくなるだろう。
・・・それに、今の自分では一つの宝珠を操るので精一杯だ。

「でも、俺こんなのもらっても使えねぇよ。
雅みたいに、力があるわけじゃないし・・・・」
「それはご心配なく。
その剣を持つだけで誰でも扱えるようになりますから。
でも、びっくりしました。お姉さん剣なしで使いこなせているもんなぁ・・・」
「・・・・これはこの剣あって使うものなのか・・・・?」
「うん。
それなしで使うと、暴走したりはたまた呼びかけても発動しない・・・・
そんなことになるんだけど、上手に使えてるよ」

・・・本当に・・・・すべてを信じたくなる・・・
最後の言葉は声になることはなかった。

サイは青く光る宝珠をシンに渡した。

「じゃあこれはお兄さんに渡しておくよ。
『ウォン』って呼べば僕の水の力を貸すよ。」
「ありがとう、じゃありがたく力を貸してもらうよ。
・・・なるべく、俺に扱いやすい感じでよろしく」
「・・・お兄さんにはまず指導が必要みたいだね。
初めのうちは僕も力になるよ。

・・・さて、まだ腑に落ちない顔しているね、お姉さん」

雅は顔を上げてサイをみた。

「・・・あぁ・・・。
宝珠に宿っているというが、貴方達はどういう存在なのだ?
サクラに聞きそびれてしまったが・・・
霊でもない、悪魔や妖怪でもない。
かといって神というほど強い存在でもない」

やっぱり、お姉さんは鋭いなぁ・・・と、サイは苦笑した。

「・・・一応、僕達は龍神なんだ。
片割れ・・・・というか・・・欠片というか・・・
とにかく、要らない部分に感情と形を持ったもの。
・・・・実態はその宝珠なんだ。その宝珠が具現化したものが僕達。」

・・・龍神・・・。
やはりあの村の人たちが言ったことはあながち嘘ではなかった。

「その調子だと、呪いの詳しい内容も聞きたそうだね。
あと僕達がニンゲンを嫌いな理由とか・・・」

雅は頷いた。
本格的にこの宝珠集めをすると決めるのであれば、それなりの情報を知っておかなければいけない。

「・・・呪いの内容は詳しくは知らない。ただ、この地に縛られていること以外ね。
ニンゲンが嫌いな理由か・・・
以前から僕たちはニンゲンに呪いを解いてもらおうと、声をかけていたんだよ。
でもやはりニンゲンは愚かだよね。
僕達を私利私欲のために使おうとするやつも出てきたんだよ。
名前を呼ばれて命令されたらどんなに嫌な事でも従わなくてはいけないからね・・・
まぁ僕達の恨みはこのくらいのものだよ。
兄上とか達だったらまた別の恨みがあるのかもしれないけど・・・・」
「・・・そうだったのか・・・」

シンが辛そうに目を伏せた。

「・・・でもお兄さんやお姉さんだったらいつでも呼んでくれて構わないよ。
いつも楽しそうだし、話し相手とかになってあげてもいいし。」
「じゃ、本当にくだらないことでも呼ぶぞ?」
「うん、楽しみにしている」

シンとサイは気が合うようだ。というか、ただ単に、シンが子供好きだということだけかもしれないが。
雅は微笑ましくその光景を見ていた。

先ほどまで命を懸けて戦っていた二人だとは思えない。
人とはこんなことで許してしまえるものなのだろうか。
不思議と雅もサイのことは許していたし、宝珠も集める気になっていた。

・・・そうだ、とサイが手を叩いた。

「・・・もしよかったら・・・でいいんだけど、『サイ』のお墓に寄ってくれないかな・・・・?
「・・・・墓?」

サイは頷く。

「・・・僕の宝珠が落ちたのがこの土地だった。
この土地の人たちは龍神の珠といわれたその宝珠を神社に奉ったんだよ。
特に僕は守る力もなにも、神ほど素晴らしいものじゃないからただ、そこに存在するもの・・・になっていたんだけど。
皆大事にしてくれるし、僕も悪い気分じゃなかったから、色々村のためになることをしたんだよ。
例えば水を供給したりね。皆不思議がっていたけど、ここの井戸は僕のおかげでいくら雨が降らなくても枯れないんだ。
何年前かな?・・・いや、何百年前か・・・。
サイと名乗る少年が神社にきたんだよ。
その子は絶対治らない病気を持っていて、命も後少ししかなかったんだ。

その子は言ったんだ。僕が死んだから親もきっと死んでしまう、両親を死なせたくないから、僕の寿命を延ばしてください。って・・・
なんか・・・・噂によると物凄くその子の両親は子煩悩らしくってねぇ・・・。
なんか可哀想になっちゃって・・・・。
だから、僕が変わりに生きてあげたんだ。この子の代わりにね」
「へぇ・・・・・。そんなことできるのか神の欠片で?」
「さぁ・・・・?」

さぁ・・・・って。

「まぁ・・・・。ここにいる人たちには記憶をちょっといじったけど。
それから僕はここにいるわけ。結構いい生活楽しんでいるよ。
・・・さて、そろそろ戻るかい?日も暮れたし、ご飯の用意もそろそろ出来ているはずだ」

サイが扉を開いた。
そこは始めに招かれた座敷だった。

シンはもらった宝珠と剣を楽しそうに眺めていた。
それほど彼にとって嬉しかったのであろう。
雅は厄介事としてしか、とっていなかったのに・・・。

・・・雅は首から提げた緑色の宝珠を見つめた。

・・・サクラ・・・私はシンのようにお前を想えない・・・・。
・・・それでも・・・いいのか?

サクラが頷いた・・・・ように思えた。
皆自分に何を期待しているのであろうか。

師匠・・・私はこの道を進むのが正しいのでしょうか。
・・・さすがに何の気配も感じなかった。
どうせ、師匠まで届いていてもそんなくだらない答えに応じてくれる彼女ではない。
雅は自嘲した。
・・・本当にこのままでは師匠と次に顔を合わせたときに地獄を見せられそうである。


「おはよう、サイ。」

旅の支度を整えて玄関先にいくと、サイが待っていた。

「おはようございます。お姉さん、お兄さん。」
「今日はお墓にいくんだろ?」
「はい。」

サイの顔はとても晴れていた。
昨日より子供らしさが増してみえた。そんなに自分達と出かけるのが楽しいのであろうか。

「・・・・サイ様??」

メイドが声をかけてきた。

「あっ、これからね、お姉さんたちと遊びに行くんだ。
いいでしょ?」
「しかし・・・この前魔物に襲われたばかり・・・・」
「大丈夫、お姉さんたち強いから。
じゃ、いってきます」

サイは小言を言われる前に道の方に走っていってしまった。
シンもそれを追いかける。
取り残された雅は丁寧に礼をした。

「・・・本当に一晩とめていただきありがとうございました。
サイ殿のことはお任せください」

そう言って、雅も二人の後を追った。どこまで走っていったのだろう。
うかうかしていたら本当に合流できなくなってしまう。
まったくあの馬鹿者達め・・・・。



「・・・で、これからサイはどうするんだ・・・?」

雑草がたくさん生えている畦道を三人で歩いた。
はたから見れば歳の離れた兄弟だ。

「ん〜・・・・。そうだね。
目の前の問題としては魔物を倒さないとねぇ・・・・。
村の人が困っているし・・・。この前様子を見に行ったとき偶然二人を見かけたんだよ」
「こんな姿でも強い力は持ってるんだな」
「当然だ。一応これでも龍なんだから・・・・」

はははっ!と笑い事ですまされるのはこのメンバーだからだろう。
誰も、こんな子供に魔物を倒せるなんて思いもしない。
そういえば新しい宝珠を手にしたことで頭がいっぱいでこの村の前であった魔物のことなど忘れていた
しばらく歩いたところに神社が見える。シンが指をさした。

「・・・・あっ、あの神社か?
サイのいたってとこは」
「うん。まったく暇なんだよねぇ・・・・。
あんな狭いところに何千年も・・・」
「へぇ・・・・物凄い生きてるな。サイは」
「うん、そうだね。
でも「サイ」としていられるようになってからはなんか物凄く新鮮にものが見れるようになったんだ。
・・・こんなこといったら兄上達に怒られるけど、人間っていいね。
・・・楽しいよ。」

サイが神社の近くの墓地に足を踏み入れた。
そして、墓地の隅にある、小さな石の前で止まった。

「『サイ』には本当に悪いと思ってるんだよね・・・・。
立派なお墓にしたいんだけど、きっかけがなくってね・・・・。
ここには魂だけが入っているんだ」

墓石も、即席ながらちゃんと磨かれているようだ。お墓の周りにも草一つない。
ちょくちょくきて掃除しに来ているらしい。
その辺の花を摘んで墓の前においた。

・・・・ありがとう・・・・

三人で手を合わせた。

「・・・サイ。私達はそろそろ出発する。」

雅が言うと、サイが寂しそうな顔をする。

「・・・そうですか。
もう少しいてくれると寂しくないんだけどな・・・。
二人共気に入っちゃったし・・・」
「悪いな。
こいつ勝手に決めちゃって・・・」
「・・・・・・・。」

雅が静かにシンを睨み付ける。

「う・・・っ。・・・・じゃ、じゃあな。
大丈夫だって。
俺がまた呼んでやるからよ。」

「できる限り助けるよ。
では気をつけて。

二人の旅路に幸がありますよう・・・・」

「元気でなっ!!」

こうしてサイは二人と別れた。
サイは晴れた空の下大きく伸びをした。
雲はゆっくり動き、風は丁度いい心地さで吹いている。

「やっぱり、ニンゲンっていいよ。
お兄さんたちも意地張ってないで信じればいいのに・・・・。
信じるってのも悪いことじゃない・・・・」

人によるけどね・・・。

サイはふっと姿を消す。
・・・さて、あの魔物を何とかしないと・・・。


    

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