今日も表面上は難なく朝議は進んでいる。
しかし出席者達は水面下に張り巡らされている微妙な駆け引きを常に意識していなければならない。
冗官徹底処分の宣言がくだってからずっと緊迫した雰囲気はなくなるどころか、むしろ悪くなっていく一方。
百戦錬磨の官吏達はその圧力を涼しい表情で受け止める。
それが、この朝議に出席する者の最低限の能力。

「・・・では、今日の朝議はこの辺で・・・」

司会の侍郎がそう告げたところで、各自退散となった。
柚梨は朝から緊迫した鳳珠の様子を感じ取っていた。
仮面を付けていても彼の感情が読めるようになったが・・・これほどまでに荒々しい事は珍しい。
明らかに昨日何かありました、といっているようなものだ。

鳳珠も席を立った。

「・・・あの・・・鳳珠・・・」
「柚梨、先に帰っていろ。
・・・・ちょっと用がある・・・」
「・・・え・・・」

柚梨に言葉を発せさせる気はないようだ。
きっぱり言われてしまいこれ以上何も言えなくなった。

「あとには溜まった書類を片付けておけ、といってくれ。
今日一日それ以外の仕事はいいと・・・」
「・・・それでは、あまりにも可哀想では
・・・ちょっ・・・」

そう言い残して、人ごみに鳳珠の姿は消えていった。
柚梨は大きなため息をついた。

「・・・全く・・・何を考えているやら・・・」

鳳珠は稀にとんでもない事をするから歯止めが必要なのだが・・
最近自分の言う事も全く聞いてくれない。反抗期だろうか。
我が子のように本気に悩む柚梨に声がかかった。

「いかがなされました?景侍郎」
「・・・え・・・」

後ろには悠舜と黎深の姿があった。
あまりにも迫力のある二人に柚梨は急いで礼をとる。

「これはっ・・・鄭宰相と紅尚書・・・・」
「いえいえ、そんなにかしこまらなくても・・・。
貴方には進士の時から良くしていただきました」

悠舜の笑顔に柚梨の頬も緩む。
まだ官位の低かった自分にできることといっても大したことではなかったのに・・・。

「鳳珠はどうした?」

黎深の言葉に柚梨は眉を潜めた。
鳳珠の親しい友人達だ。別に言っても構わないだろう。そのうちばれることだろうし・・・

「朝から・・・少し虫の居所が悪いようです。
用があるといってさっさとどこかにいってしまわれました。
あんなに怒っているのは・・・あぁ、鄭宰相殿が一人で歩いておられたのを見つけたとき・・・でしょうか」

くすり、と柚梨は思い出して笑った。
悠舜は苦笑する。そこまで思ってくれて嬉しいが・・・なんだか恥ずかしい。
悠舜は緩む顔を引き締めて黎深に問うた。

「・・・鳳珠がねぇ・・・さて、どう考えます?黎深」
「さぁ?興味ない」

・・・聞く人間を間違えたと悠舜は悟った。
彼の中では、兄、姪、その他しか存在してない。

「景侍郎は・・・」
「・・・そうですねぇ・・・昨日までは何もなかったとなると・・・
恐らく くんのことではないでしょうかねぇ・・・
鳳珠のそこまでして怒る理由など限られているので・・・」

悠舜はふむ、と考えた。
秀麗が退官に追い込まれている今これぞとばかりに にも魔の手が伸びているのだろうか。
秀麗が崖っぷちである今、 も倒れてしまっては・・・
最悪女官制度が消えてしまう。

「・・・黎深、秀麗殿の吏部での評価は・・・」

黎深は沈黙した。
苦々しい表情から、あまり良くない評価がでていると推測される。
・・・あっ、なんか扇持つ手が震えている。
それほどムカつく評価だったのか?

「・・・今戸部が揺れると正直困りますね・・・。
景侍郎・・・なんとか鳳珠を支えてください。お願いします」
「鳳珠の手綱なら私よりも くんの方が適任だと思いますよ。
最近全く言うことを聞いてくれないんです・・・」

ため息をつく柚梨に、悠舜は優しく柚梨の肩を叩いた。

「あとで鳳珠に言っておきます・・・。
・・・全く、黎深だけでなく鳳珠も我が侭になってしまっては私の手にも余ります・・・・」

せめて鳳珠だけでも大人しくさせておかないと・・・
本気で憂う悠舜に柚梨も同情の視線を送った。
あの悪夢の国試の手綱を握れるのは悠舜しかいない。
奇人、変人なんでもあり、誰もが自分の好きな方向に突き進む彼らを束ねるには相当の力量が要る。
そして、この包容力。
王が宰相として選んだのも分かる。

「では、私は戸部に戻ります。
また何かありましたら鳳珠にいってください」
「えぇ、ありがとうございます」

柚梨が去った後で悠舜はうーんとうなった。
一体に何があったのだろう。
茶州の時や、紫州に来てから をちょこちょこ見かけていたが、やはりあの容姿にあの性格、知能、教養・・・。
モテるはずだ。
しかし今までその者達を歯牙にもかけてなかった鳳珠が・・・

「どうなると思う?黎深・・・」
「うぅ・・・秀麗・・・っ。また御史台の若造と・・・ッッ」

たまたま清雅と秀麗が一緒に歩いていたのを黎深が発見してしまったらしい。
高価な扇がバキリと良い音をたてて二つに割れる。
立て続けに無視され軽く腹の立った悠舜はちょっと意地悪してみた。

「・・・そんなに嫌なら吏部尚書の威厳を見せてきたらどうです?
一応対面したことあるなら秀麗殿だって黎深の事知っているはずでしょう。
そこで『叔父さま、かっこいい〜』とか思って、吏部に来てくれるのでは・・・?」

あっ、それなら黎深も真面目に仕事してくれて一石二鳥・・・
どのような反応をするかと黎深の方を向けば『叔父さま、かっこいい〜』の部分しか聞こえていないらしい黎深がいた。
にへら、と悦に入る黎深はとてもじゃないが冷徹、鬼畜と呼ばれる吏部尚書ではなかった。
悠舜は杖を動かし、宰相室へ戻ることにした。
これ以上付き合っていても時間も無駄だ・・・

「あっ、悠舜。そこにいたか」
「あぁ、主上・・・」

劉輝は妄想モードに入っている黎深をみて、うっと口を引きつらせたがそれ以上何も言わなかった。
触らぬ黎深に祟りなし・・・

「えっと・・・昨日今日の議題に上っていた案件について考えたのだが・・・」
「そうですか、ではご意見をゆっくり聞きましょう。
・・・あぁそこにいる人はほっておいていいですから」
「・・・いいのか・・・?」

すでに影響は他方にも出ていた。
黎深を中心に近寄りがたい壁ができていた。人々は必死にみないようにと必死に足を動かす。
黎深からどうしても目の離せない劉輝に悠舜がにっこりと微笑んだ。

「黎深様、そこにいたのですか・・・・」

絳攸の声が遠くから聞こえた。
恐らく朝議を狙って黎深を吏部に連れ戻そうという魂胆らしい。
その声を聞いた劉輝の瞳が揺れた。
・・・覚悟はしている。
でも・・・まだ・・・ちゃんと見ることが怖い・・・
悠舜は劉輝の様子をみて静かに目を伏せた。
今は私が、支えてあげなくてはいけないかもしれない。

「ゆっ、悠舜・・・。担ぐぞ」
「えぇ・・・」

ひょいと悠舜を担いだ劉輝はその場から逃げるように立ち去った。

「・・・黎深様・・・。
・・・・・・・あのー」

黎深を一目みた絳攸に、後悔と、怒りがこみ上げてきた。
誰だ、悦モードに入らせた奴は・・・。
絳攸は黎深に声をかけたことを激しく後悔した。
ここまできてしまうと、黎深に残された道は秀麗のストーカーしかない。
どう対処しようかと迷う絳攸の視界に、悠舜を担いで走っていく劉輝の姿が移った。

「・・・・・」

劉輝の気持ちが分かってしまって、絳攸の拳が強く握られる。
・・・俺は・・・・
劉輝にはかなり会っていない。
これだけ時間を貰っておきながら・・・・自分はまだ答えを見つけられていない。
劉輝は・・・初めから答えも、覚悟も持っているというのに。
楸瑛も今朝廷に出仕していないようだ。
噂によれば少々暇を貰ったらしい。
自分も楸瑛もいない。悠舜はたまに構ってくれるだろうが、基本的に彼は忙しい。
構えるといってもほんの少しだ。
劉輝もそれは分かっていて、我慢している。

「・・・・ッ」

情けない。
あれだけ、劉輝に怒鳴っておいて・・・いざという時、彼の優しさに甘えている。

人ごみの中、硬質な雰囲気を微かに感じられた。
鳳珠は真っ直ぐそこへ向かう。
向こうも鳳珠の視線に気付いたのか、視線をこちらに向けた。

「・・・葵皇毅殿・・・少々よろしいですか?」
「構わない」

鳳珠は仮面の下で薄く笑う。
少しだけ皇毅の動揺が感じられた。

自分と黎深は彩八家の姓を持っているから進士の時から自由気ままに振舞ってきていた。
それが目に付いたのだろう。
昔から、皇毅は何かと文句を付けられていた。
その完璧さからほぼ反論することができなかったが・・・・
・・・後ろめたさが無い分、こちらの方が有利・・・・
暗黙の了解で二人は歩き出した。
手ごろな人のいない室に入る。

「・・・さて何用だ。私は忙しい」
「申し訳ありません。
ただ少々お尋ねしたいことが・・・・」

鳳珠は仮面をとった。
窓から入る光を背に、軽く微笑する。
久しぶりに見る鳳珠の素顔に、皇毅は目を見張った。
記憶にあるのは数年前の顔。
それよりもその美には深さが増し、より美しく見える。
・・・こいつ・・・化け物か・・・
そう思ったほうが納得がいく。

「・・・を御史台に・・・引き入れたいそうですね」

皇毅は内心舌打ちをした。
はあそこで逃がしておくべきではなかった。
昨夜・・・すでに日が変わっていた時間の出来事であるが、今日の朝には鳳珠は既にそのことを知っている。
の言葉からすると昨日仕事をしていたのは自分だけであり、鳳珠は帰ったらしき発言。
こいつ、まだ朝廷に残っていたか・・・?
それとも・・・・一緒に暮らしているという噂は本当・・・?

「どこでそれを?」
「朝風の噂で・・・」
「噂如きで動くとはそれほど、茈を気に入っているとみえる・・・」

フン、と皇毅は鼻で笑った。
鳳珠も微笑で返す。

「えぇ、あれがいなくなると戸部が上手く回りませんゆえ・・・」
「戸部も惰弱なものだな。
下官一人で崩れてしまうとは・・・国の財政を任してはいられん・・・」
「本当に人事不足には常々頭を痛ませております。
御史台のように選ばれた精鋭達が回されてこないもので・・・。
その代わり、皆その身を尽くしてくれていますがね
吏部尚書とは仲良くしておくものですね・・・」

最後の台詞が棒読みだ。本心から思ってないことがバレバレである。

皇毅は鳳珠の言葉の裏に隠されているものを正確に読み取った。
戸部からは悪事はでないという絶対の自信の表れを示すその言葉に皇毅は内心イライラ感が募る。
おまけに、この先何が起こっても戸部は揺らがない、と遠回しに言ってきている。
鄭悠舜の根回しのせいか、向こうもかなりの情報を掴んできているようだ。
悪夢の国試・・・そう呼ばれた国試に受かった者共はとことん性格が悪かった。
自尊心が高いのか、個性が強いのか、そもそも興味がないのか、まず悪事には手を出さない。
出したとしても、見つかることのない、または見つかっても軽いお咎めですむものである。
悪夢国試組と呼ばれる者達の種類は主に三つ。
鄭悠舜や黄鳳珠のように確固たる信念があり、朝廷に入った者。
まず道を誤るはずがない。
管飛翔のように特に理由もなく入った者。
仕事については興味を示さず、高禄をもらえているからそれ以上の地位も利益も望まない。
お咎めがこない程度に自由気ままに、興味の赴くままに、自分の好きなように官吏をやっている。
そういう奴は悪事には興味を示さない。
最後、紅黎深。
これについては、紅家という姓もあり・・・それ以前に理解不能の変人であるので取り込むこと不可能。
すべてに共通する性格は、自分の意見を持っていて嫌な事には否。とはっきりいうこと。
無駄に頭が回るので危険な罠にはまることがないということ。
それだけでも頭にくるというのに、上官に対してもはっきり進言してくること。
誰もが思った。いつか叩き落してしまおう、と。
しかし、具体的な策をなす前に、王座争いが激化してしまった。
そして、予期せぬ事態が起こった。
悪夢の国試組がほぼ王家争いの影響で一掃された悪官に代わり上位の官位に就いてしまったことにある。
それから、誰も手を出せぬまま彼らの力は増す一方であった。
見合った成果もちゃんと残している辺りが、怒りを倍増させる。

皇毅はギリ、と歯噛みした。
素顔を見せた時点で何か仕掛けてくると思ったが・・・・。
近年抵抗の意思を見せないと思った黄鳳珠だがいきなり化けてきやがった。

「それで・・・真相のほどはいかに?」
「・・・茈は・・・
私の目でも有能とみえる。できることなら御史台に入れたい」
「葵皇毅殿にもそう言っていただけるとは、後見としても鼻が高い・・・・。
近年女性官吏を排除する動きが高まっている中、そのような意見が聞けるとは・・・」

今、まさに排除しようとしている秀麗のことも鳳珠は評価していると見た。
とくるめられて、秀麗も評価対象になっていると見られる。
もし、これが言い広められたら・・・

「・・・黄尚書は女性官吏について反対ではなかったか?」

そう、確か王がそう言った直後無言で退室して言ったのは鳳珠ではないか。
・・・女の毒にでもやられたか?と皇毅は目を細めた。

「別に反対とは言っておりません。
ただ、あの馬鹿王が今年度から女性官吏制度を取り入れると戯言を抜かしていたのでこれ以上聞いていられぬと思っただけのこと。
ただでさえ文官の人出不足である現在男も女も・・・とは言っていられぬまい。
現にも、紅秀麗も同期の男共よりはるかに使える」

本気でそう思っていたらしく、鳳珠の言葉には力があった。
自分がもう少し地位を上げた時に提案をするつもりだったのかもしれない。

「もう少し普及には時間がかかりそうだがこのままいけば実績はそのうち出るでしょう。
今後問題点となるのは、やはり体力と精神力・・・・。
良家の後宮に入れるために育てるのと官吏になるために育てるのとではわけが違う」

あぁ、と鳳珠は思い出したように言った。

「・・・そういえば話は変わりますが・・・
が何かしましたか?」

その質問の意図が読み取れず皇毅は眉を潜める。

「何のことだ」
「最近・・・なにやらに付きまとう影が目立つようですので・・・
もし、差しさわりのないことであればお伝え願いたい」
「・・・御史台の機密事項に触れようというのか?」
「別に言いたくなければ言わぬも結構。
ただ目障りなので調査するならもっと上手くしてくだされば私としてもありがたい・・・。
もし不祥事があるとすれば見逃していただきたいというのが素直な感想。
私からも言っておくので・・・・」
「・・・・・・」

清雅から上申書が来ていた。
『茈』についての。

この男はどこまで知っている・・・?
特に大変な事件に巻き込まれていない から御史台の影がつかめるはずもない。
ただ清雅がどのような調査をしたかにもよるが、ただの身の上調査で御史台とばれるような行動はないはずだ。

「私からも一つ聞きたい事がある」
「何か?」
「茈は相当貴様に惚れ込んでいるようだが・・・
その顔で落としたのか?」

その台詞に鳳珠は一瞬耳を疑った。
・・・が・・・自分に惚れこんでいる?

「・・・そんな噂どこで・・・」
「噂?
少し突いたらかなり怒ってきた。
官吏としてあまりにも未熟だ・・・」
が?ありえませんね」

の頭の周りの速さ、出世に対する意志の強さは鳳珠も知っている。
自分からわざわざそんなへまを起こすはずがない。
何を言われたかは知らないが、自分の評価を落としてまで鳳珠をかばう義理もない。
それに、反抗する意思があるのであれば皇毅に襲われた時、容赦なく殴って埋めているはずだ。
躊躇いなどにはないはずなのに・・・。

「事実を言ったまでの事」
「その点を認めてまで御史台に入れたいとは葵皇毅殿もかなり心が広くなったとみえる。
それとも何か・・・?
・・・に・・・惚れましたか?」

皇毅は切って捨てた。

「戯言を抜かすな。あんな小娘誰が・・・」
「・・・あれでも結構人気のあるようなので・・・。
そうそう・・・昨夜から少しあれの様子が様子がおかしいのですが・・・もしかして貴方でしょうか?」

・・・なっ。
皇毅は微かに動揺した。

「・・・それはまぁ・・・・
私も進士の頃は貴方の言動には少し堪えてましたし、まだ下官のには辛いと思いますが・・・」

とか言ってみるがそんなことは全然ない。

「あの娘・・・最近言動が過ぎる」

鳳珠は仮面を口元に当てて笑んだ。
・・・かかった。
流石の皇毅も、この顔と、に関しての後ろめたさがあることでここまで弱くなるものか・・・
それほどに執着をもたれていることに少しだけ気に食わなさもあるが。
鳳珠は皇毅傍まで進み耳元で呟いた。

「・・・偶然、あれの鎖骨に痣をみたが・・・
相手が貴方だったとは・・・」

冷え冷えとした美声が皇毅の耳を刺す。
皇毅の肩がビクリと震えた。
鳳珠の悪魔の笑みが視界の隅に見えた。

「予想以上に大胆にでましたな・・・
まぁそれも誰かによって阻まれた様ですが・・・」
「・・・ちょっと待て。どうやって鎖骨の痣など・・・」
「・・・別に脱がさずとも見えるときは見えるでしょう。
貴方が考えるほどやましいことはしていないので。あしからず」

鳳珠はきっぱりと言い放った。
やましいと思っているか思っていないかの差であろう。

「事を大事にしたくなければ一切戸部に触れぬこと・・・・。
今まで真面目に保ってきた印象が崩れると貴方の立場としても危ないでしょう?」
「・・・それが・・・条件か・・・」
「えぇ・・・」

鳳珠が綺麗に笑った。
鳳珠とがそのような関係にあるなどという噂は、が朝廷に入った時から既に流れている。
実際、鳳珠がに手を付けたとしても噂が現実になるだけだ。
人々の印象としては大差ない。
それに元から鳳珠については根も葉もない噂がたくさん立っている。
仮面を付けている非常識さ、奇人と名乗る奇怪さ、誰もが恐れるその仕事に対しての鬼畜さ・・・。
今までありえないほどの醜聞が立ち過ぎていて、との噂など薄れてくる。
それに朝廷内での男女関係というものはまこと複雑なものであり、一対一の関係では面白くもクソもない。
三角関係どころか、四角、五角・・・・それ以上のドロドロな関係が他にもあったりする。

・・・が、今までそのような噂のない皇毅に色事の噂、それも反対しているはずの女性官吏に手を出したとなれば・・・
噂は事実よりも誇張されて触れ回るのが当然。
当然、を手篭めにしたとなるだろう。
それ以前に、皇毅の性格からして回りくどいやり方など想像できるはずもなく・・・

「・・・どうあの娘を取り込んだ?」

室を出て行こうとする鳳珠に皇毅が話しかけた。

「別に取り込んでいるつもりはないのですが・・・
あれは私には過ぎたる者・・・というか手に余る。
あれが男だったら今頃どうなっているか・・・」

そもそも男だったら今鳳珠の部下としてはいないだろう。
おそらくはもっと高みへ。
現王劉輝や・・・最も誉れ高かった清苑公子さえも蹴落とし玉座に就いていただろう。
元々その権利も能力も備えていただ。
の素性を知り、勉強を教えていた時痛感した。
彼女は、王になるために育てられた・・・と。
あまりにもそのことが顕著に分かり、鳳珠は教育者、おそらくは母親に恐怖すら感じた。
母親の熱意はの髄にまで染み付いている。

「・・・それを聞きたければ 本人に聞けばよろしいでしょう・・・
まぁその際、妙なことをしたら、殴って埋められることは覚悟しておいてください」

そういい残し、仮面をつけ鳳珠は室を退出した。
暗い室から明るい外へ出たとき鳳珠は久しぶりに快感を覚えた。

「あー、すっきりした。」

声に出してしまうまでの爽快感。
こんな快感いつ以来だろう。
いつぞやの元礼部のデブ尚書を首振り人形に仕立て上げた時以来か・・・。

戸部に戻った鳳珠には朝までのいらいら感は全くなく柚梨から不審な目を向けられた。

「あの鳳珠・・・」
「何だ?柚梨」

仮面の外まで機嫌が良さがにじみ出ている。
朝議が終わって何があったと言うのか・・・
柚梨はその裏に多大なる被害を受けた犠牲者がいることを悟った。
合唱。

くんなのですが・・・
やはりあのままでは可哀想かと・・・」

鳳珠は、ふむ、と考えた後柚梨に言った。

「昨日全て書類配ってしまったらしいからな・・・
私が今から仕事をするからそこそこたまったら呼んでくれ」
「御意に」
「あっ、あと・・・・」

思い出したように鳳珠が言った。

「妙な輩がいたら『容赦なく一発殴って埋めておけ』とに伝えておいてくれ」
「・・・・・は?」

また何かあったんだなー、と思ったが聞くのが怖いのでやめにした。
そうしてまた常の戸部に戻っていく。


   

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