だたのお姫様に育てられなかった私は
少しだけ、道を踏み外してしまったようだ。
力が欲しい
強くなりたい
・・・そう願い向かったのは・・・
この国の最強が集う・・・


綺麗に月が輝く夜。
は一つの建物の前に立った。
大きくそびえる建物に圧倒されながらもギュッと拳を握る。
大きく深呼吸をした。
・・・大丈夫。私ならできる。
グッっと顔をあげ はその建物の中に入っていった。

その建物の中はひんやりとし、昼間のうるささがまるで嘘のようだ。
一歩踏み出すと中から重圧を帯びた声がした。

「こんなところになんのようだ?官吏の嬢ちゃんよ」

この暗い室内の中明かりもつけずに二人の大将軍は酒を飲んでいた。

「・・・そこにいらせられましたか、大将軍」

は微笑した。
二人の重圧をあてられ、 も対抗するように胸をはる。
その重圧が心地よくも感じた。久しぶりに本気が出せる、そんな感じ。
なんか対抗したくなる。緊張は全てとけた。
は大将軍の前まで進み跪拝をとった。
二人の大将軍の視線が に刺さる。

「・・・何用だ?」

怖じ気もせず堂々としている の態度に白雷炎は満足そうに笑った。
は片手に持っていた酒瓶を前に差し出した。

「・・・大将軍貴方方二人にお願いがあってきました」

大将軍を訪ねるには十分な銘柄のものである。
誰に聞いたのか知らないが好物のものであった。
雷炎はニヤリと笑う。

「へぇ、賄賂ってやつか・・・。
金じゃなくて酒ってところがいかしてるじゃねぇの」
「こちらの方がお喜びになられるかと思って。
お金だと要らぬほど持ち合わせておいででしょうし・・・」
「へぇ・・・。
これだけの覇気に怖気付きもせず、良くそこまで堂々と振舞えるもんだな」
「伊達に女性官吏はやっておりませんゆえ。
これくらいの度量がなければすぐに潰されてしまいます」

は油断のない笑みで微笑み返す。
そこには彼女の人生の全てが見て取れた。

「・・・そこまで本気なのか」
「本気です。私には必要なのです」

しばらく無言が続いた。
雷炎は宿敵に目配せする。
黒燿世は目だけで頷いた。
雷炎はパンと膝を叩いた。

「よっしゃ!好きな奴何人でも持ってけ!俺が許す!」
「・・・・・・・・・・・はい?」

大将軍の気前の良い発言の意味が分からず は突っ込めなかった。
まだ何も用件を話してないのだが・・・。
が唖然としている中、雷炎は話を進めた。
先ほどの重圧な雰囲気は綺麗に消え去っている。
早速 の持参した酒に手をつけ、杯に注いだ。

「で、誰だ?静蘭か?藍の坊主でも俺が口利くぜ?言ってみな」

・・・何の話だろう?別に二人には今のところ用はない。

「あのー・・・何の話でしょうか?」
「あ?
好きな男がいるからとりあえず俺達の認を受けにきたんだろ?」
『違います。』

はきっぱり否定した。
また変なところで誤解がでる。

「私が用があるのは大将軍でして・・・」

思わぬご指名に二人はピクリと反応した。
燿世の目がわずかに開いた。
白炎がニヤリと笑った。

「・・・ほぅ・・・良い趣味してんじゃねぇか・・・。
まぁ嬢ちゃんに誘われちゃ浮気ゴメンだな。
でも二人相手は流石に無理じゃ・・・」

はピクリと口を引きつらせた。

「そっちの話題からそれてくれませんか。
相手して欲しいのはっ・・・その・・・そっちじゃなくてっ!!」

は気持ちを落ち着かせてからいった。

「私と鬼事をしてください」
『・・・・は?』

二人の大将軍は杯を持ったまま固まった。
今、この娘はなんと?

「ですから、鬼事をしてください。
とある事情で私は強くならねばなりません。
ですからてっとり早く貴方方に訓練していただくのが最良と考えました。
一日一刻で良いです。私に時間をください。
・・・っていうか献上したお酒もう半分なくなっちゃってますし・・・拒否権はないですよ」

雷炎は杯に残った酒を飲み干した。

「・・・俺達に頼むとは、ちょっと頭が高ぇんじゃないの?
羽林軍の奴ら数人貸してやるからそれで我慢しろ」
「”黒狼”並みの強さをお持ちであれば考えましょう」

二人の目が細まった。
再度重圧な視線が をいる。

「”黒狼”とは大したこというじゃないか」
「ありがとうございます。
でも私にはそれくらいが丁度いい・・・」

は立ち上がった。

「・・・では、演武ですがお見せいたします。
これを見てお決めください」


はざっと装備品を確認し、扇と短剣を手に取った。
美月と美酒と美女の演武。

は月の光を浴びながら舞う。
激しく、隙のない、死の舞を。
眠っていた闘争心が湧き出てくる。
・・・これは十数年前の・・・
まだ自分が、姫であり、血塗れていた頃の・・・

久しくまともな演武をみた大将軍も に挑発され笑みを浮かべた。

「いいんじゃねーの。
最高の酒の肴だ」

その瞬間雷炎の髪が風で揺れた。
タタタッと小さな音を立てて針が背後の壁に刺さる。
二人共目を見開いた。

「私を酒の肴とは・・・
・・・その杯叩き割りますよ」

ひゅっ、と針が三本、宙を舞う。
糸がついているらしくそれが、幾本にもなり光に反射する。
まるで を引き立たせるかのよう光を残し。
きっと戦場であれば血を周囲に飛ばし光る戦の女神と呼ばれただろう・・・
大きく跳躍し一回転をする。
その間に数本の針が宙を走り、隅においてある練習用の人形の全て急所に当たった。
たん、と が床に着地する。
見事なまでの舞い。

二人はしばらく声がだせなかった。

「いかがでしょう?」

は勝ち誇った笑みをみせた。
やれやれといった表情で雷炎が剣を片手に立ち上がった。
燿世もそれに続く。

「わーったよ。付き合えばいいだろ」
「ありがとうございます」
「・・・じゃああれか。お前捕まえた方がお前の相手を・・・」
「いー加減その話題から離れてくださいっ!!」

ゴン、と燿世の大剣が雷炎の頭を打った。
はその光景をみて苦笑する。
・・・まだまだ現役の将軍様にお手上げだ。
はため息をつきながら言った。

「・・・しょうがないですね・・・。
捕まえた方にお酒と酌をして差し上げます。
いかがでしょう?」 
「いいね。
俺はいつでも相手歓迎だけどな。惚れるなよ」
「・・・・。」

やる気満々で二人は立ち上がる。
ちょっと言い過ぎたかもしれない。
はわずかに後悔した。まぁ捕まらなければ良い話だが。

「では、私は先に逃げてますから将軍達は適当な時間が経ってから追いかけてきてください。
範囲はこの朝廷内の庭。
逃げ切ってばかりでは訓練になりませんのでこの辺にいるつもりですけど・・・」
「分かったよ。
あれだけの演武見せておいてがっかりさせんなよ」
「・・・善処します」

そういって は二人の前から姿を消した。


「・・・なぁ・・・どー思う」

雷炎は同じく隣で軽く体を動かす宿敵に話しかける。

「・・・・・」
「只者じゃねぇぜ。あの小娘」
「・・・・」
「何であんな奴が朝廷で官吏やってるんだ?」
「・・・・」
「なぁ、燿世・・・」
「・・・・」

いつまでも仏頂面した宿敵に雷炎は流石に切れた。

「少しは俺の話に答え返せぇぇぇっ!!!」

キィィン、と金属音がぶつかり合う音がした。
それが開始の合図になった。

は目を閉じてじっと気配を探す。
大将軍達が向かってきたらすぐに反応し返さなければ一撃でやられてしまうだろう。
正直あの剣を受けるだけの自信がない。
せめて受け流せられればいいのだが・・・。

ザッと草をきる音が聞こえた。
月明かりに二人の大将軍の影が映る。

「・・・見つけたぜ、隠れてなくてもいいのか?」
「何のための訓練ですか。
捕まえられるものなら捕まえてくださいっ」

左右から来る剣技をさらりと交わし後退する。
そして後ろの壁に足をつけ、勢いをつけて蹴る。
空中で二人の剣を交わし、反撃に出る。
とん、と は雷炎の剣の上に乗った。

「・・・頂き・・・」

雷炎は驚きもせず、次の動作を考える。

「燿世っ!!」

向けて燿世の剣が振られる。
しかし、その剣は空中で止まった。

「・・・なっ・・・」

はニッと笑み、雷炎へ向かって蹴りを出す。
反射神経で交わしたが、彼の表情に余裕はない。
はそのまま短剣を閃かせ攻撃を続けた。
強い打撃はそのまま流し、確実に攻撃を避けて反撃に転じている。
それは舞いのように軽く美しい。

一瞬見惚れているうちに の手から針が繰り出される。
雷炎の頬にわずかに朱の一線が引かれる。

「・・・ほぅ・・・やってくれるじゃねぇの」
「一段と男らしさが上がりましたね!」
「言ってくれるじゃねぇか。コラァァ!」

思い一撃を交わし は二人から距離を取ろうと後退する。
しかし燿世がそれを呼んでおり、 向かって剣が薙ぐ。

「・・・・ッ!」

わずかにあった反射神経で はそれを紙一重で避けた。
着物が裂かれる。

「・・・あーせっかくの着物が・・・っと!」
「・・・・」

燿世の無言の突きが続く。
が『鬼事』と言ったのはこういうことか。
の動きは常人場慣れしているほど早い。“黒狼”を希望したのも納得がいった。
羽林軍ですら、ここまで素早く動ける者はいない。
燿世の目が細められた。
久しぶりの強手に雷炎の表情にも笑みがこぼれる。
あえていえば真っ向勝負できないのが不満だ。

「・・・嬢ちゃん、今からでも遅かねぇ。
羽林軍に入らねぇか?
周囲の文句は俺が全て一周してやる。
野郎共も喜ぶだろうしな」
「残念ながら、既に他部署からも熱い誘いが来ておりますので」

二人の大将軍の斬撃を紙一重で避け、 は飛び上がった。
後方には大きな池がある。
はそこにある岩にとんと乗った。
流石の大将軍もそこまでは手が出せない。

静寂。

「なぁ燿世」

雷炎の問いに燿世が目で答える。

「俺ら完璧になめられてるぜ」
「・・・・。」
「一発勝負といこうじゃねぇか。
あの嬢ちゃんとっつかまえた方が勝ちだ」

「・・・・!」

二人の覇気が先ほどと全く違う。
も短剣と扇を構えなおした。

この覇気・・・さっきとまるで違う。
本気できてくれるらしい。

は微笑した。
忘れかけていた感覚。
母のように強くなろうと必死に刃を振るったあの日をもう一度・・・

「・・・なっ・・・」

今まで見たこともない氷の微笑に、二人の大将軍も一瞬怯んだ。
この少女は・・・一体何者だ。

「行きますよ」

先程よりも早い速度で が突っ込んでくる。
二人もすぐに体制をとった。
先ほどまで避けていた彼女とは違う。
一打一打が鋭く、二人相手でも交戦してきている。

・・・これが・・・暗殺者ってやつか・・・?

初めてあう、異種の敵。
彼女は何が目的でここにいる・・・?
先王が伏せてから十年近くになるか?”黒狼”はすでに解散している。
歳若い彼女が所属していたとは考えにくい。

そういえば、黄鳳珠の後見、そのまま戸部へ・・・
その線の噂が先立ち、更に紅秀麗の異例の出世などで、 の出生は誰も考えたことはなさそうだ。
考え事をしていた雷炎と の視線が合った。
背中がゾクリと震えた。
なんだ、あの視線は

「余所見は駄目ですよ」

は短剣を隣の木に向かって投げた。
雷炎の大剣の動きが止まる。
それには燿世も目を見張った。
そして、 が燿世の方に振り返る。
の片手から扇も離れる

「・・・なっ」

初めて燿世の声が漏れた。
それには に一瞬の隙ができた。

「捕まえた」
「・・・っ、きゃっ!!」

後ろから雷炎につかまれた。遅れて大剣が地面に落ちる。

「決まったな。俺の勝ちだ」
「・・・嘘・・・」

まさか剣を手放してそのまま抱き上げられるとは考えてもいなかった。
は両手を挙げて降参した。
獲物も手放してしまったし、素手対素手では勝ち目はない。

燿世はチッと舌打ちした。

「さーて、飲みなおし酒盛りといこうぜ。
酌してくれるんだろ?」
「・・・えぇ・・・お酒はなくなってしまいましたけどね。
約束ですから・・・。
あと下ろしてください」

はため息をついた。
雷炎と燿世は横目で を見る。
先ほどと同じ人物とは思えない。
は木に刺さった扇と短剣を回収した。

「へー・・・糸か・・・」
「はい。結構頑丈なもので中々切れないんですよ。
ですからこうやって大剣を止めることも出来るんです」

雷炎が回収した剣、燿世の剣には透明の糸が絡まっていた。
の飛び道具のしかけはこれだ。

「お前、何者だ?」

雷炎の問いに が振り返る。

「・・・さぁ・・・何者でしょう・・・?」

は微笑して歩き出した。

そんなの私が一番聞きたい。

雷炎の酒の酌をし、何故か飲み比べになり、気付いたら道場で眠っていた。

そして次の日 に襲い掛かったのは強い筋肉痛。
久しぶりに高速で動いたので体に負担がかかったらしい。
は初めて、一日中机案で仕事をした。

   


ーあとがきー

今(自分の中で)大ブームの戦国にのっとって戦ってみました。
アクション物が書きたかったんだ、私はッ。。
彩雲無双とか作ればいいよ。(ぉ)せっかく州が7つもあるんだし。
あっ、紅家と藍家の圧勝ってやつですか。だがそんな事は問題ではない。(某丕様)

初めての大将軍でしたがいかがでしょうか?こんな感じでいいでしょうか?
燿世さん本当一言、むしろ一文字しか喋ってないのですが。
個人的に雷炎の勘違いと夢主のやりとりが好きです。

久しぶりの更新、失礼しました。いやマジで。


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