『・・・珠翠』

・・・あぁ、あの方が私を呼んでいる

――役目ヲ 果タセ・・・


『この子を頼んだぞ、珠翠』

・・・風雅様・・・

――我ニ従エ・・・


『ありがとう、しゅすい。
つぎたたかうときは、もっとつよくなるから』

・・・様・・・

――我ガ駒トナレ・・・

『今はそなたがを守れ。
いつかこの子がそなたを守る日がくるであろう・・・
それまでこの子を頼む』

『また、お時間があるときお話なんか出来たらいいです。
昔は物凄くお世話になったし、積もる話もあるでしょうし、また連絡します』

・・・お二人共・・・珠翠はもう・・・


プツンと、最後の糸が切れた。



は書簡を配るために外朝を歩きまわっていた。
最近なんか変な感じがする。
何か欠けた・・・気がする。でもそれが何か気付けなくてもやもやする。

「むー・・・正体分からないなんて気味悪いわね・・・」
「何が気味悪いのだ?

後ろから声をかけられ、振り向くと劉輝の姿があった。
楸瑛に会ってきた手前、劉輝と顔を会わせるのが少し気まずい。

「・・・あぁ、主上・・・」
「面白い七不思議でも見つけてきたのか?」
「・・・不思議・・・ですか・・・。
・・・最近何か欠けた気がするんですけど、何が欠けたか分かります?」

その言葉に劉輝の表情が曇る。
は失言に気付いた。そういえば、双花が今劉輝の元にいないのだ。

「・・・あの・・・兄上・・・」

あまりの気の毒さにも他人行儀で話すのをやめた。
これで少しは元気を出してくれれば良いのだが・・・。
の気遣いに気付いた劉輝は苦笑した。

「大丈夫だ。昨日絳攸と会ってきたからな」

声音は元気なので絳攸の方はまだ大丈夫なのだろう。
・・・むしろ、心配すべきは彼の体だ。

「・・・あぁ・・・いかがでした?絳攸様・・・。
今日も書類に囲まれてましたが・・・」
「もはや気力で乗り切っているとしか・・・。
、暇ができたら少し手伝ってもらえると助かるのだが・・・」

劉輝は昨夜の絳攸を思い出した。
薄めたはずの酒で軽く酔い、泣き出して愚痴を言う始末だ。
体力的にも精神的にも相当キているに違いない。

「・・・考えておきます」

行くなら早めに鳳珠に進言した方が良さそうだ。
黎深がいない今、絳攸がを要請できるはずもないし・・・むしろその気力すらなさそうだ。

は吏部に行くために今後の仕事の算段を立てている最中に、劉輝は、あ、と何かに気付いたように立ち止まった。

「どうされました?」
「欠けたといえば・・・最近珠翠が床に臥せっていて顔を見てない」
「・・・珠翠殿が・・・本当ですかっ!?」
「珠翠を知ってるのか?」
「えぇ、まぁちょっとした腐れ縁です」
「王。」

二人の前にリオウが現れた。
なんて間合い・・・。はじっとリオウを見つめた。
対照的に劉輝は笑顔になる。

「リオウ、朝議にでてなかったから少し心配したぞ」
「あぁ、ちょっと昨日徹夜したから休んだ。
それよりも悠舜が呼んでいたぞ」
「なんと!
では、リオウ。余は先に行くぞ」

劉輝の姿を見送ってはリオウを見た。

「・・・その目・・・縹家らしくなったな」

皮肉に笑うリオウには顔をしかめた。

「珠翠殿は・・・」
「あぁ・・・あの女ならもうここにはいない」

心臓が跳ねた。
手先が冷たくなっていく。
・・・珠翠は・・・

リオウは固まってしまったを見て言った。

「あれで十分に耐えただろう。
もう手はつけられないな」

はリオウを睨んだ。

「珠翠殿はどこに・・・?」
「知らない。俺はその件には関わってないからな。
知っていたとして、お前では助けられない領域に入っている。
諦めろ」
「リオウは・・・助けられなかったの・・・?」
「馬鹿を言うな。俺には異能の力も何もない。
それにあの女がどうなろうと俺の知ったことではないしな。
お前のその力を抑えられただけでも有難いと思え。
あれが精一杯だ」

はぎゅっと拳を握った。
違和感には気付いていたのに助けられなかった・・・。
自分は何をしていたのだ。
守らなければ力など意味がないのに・・・

「・・・私が強くなれば・・・珠翠殿を助けられるかしら・・・?」
「・・・あの女を助ける事は縹家に喧嘩を売ることになる。
いや、お前はもう売っているのか・・・。

・・・忠告だが、あまり縹家を刺激しないことだ。
お前は闇姫だから、生かされているだけだ。
今の王は先代みたいに暗殺集団を抱えているわけではない。
別に闇姫がいなくとも簡単に王は殺せる・・・」
「・・・そんなこと私がさせないわ。
絶対・・・負けない・・・っ」

・・・危ないな・・・。
リオウはに渡した宝珠をみた。
制御のために与えた宝珠もすでに壊れそうだ。
これはなんとしても力を自分で抑えてもらわないと宝珠が幾つあってもたりない。

「・・・おい、あまり感情的になるな」
「・・・あっ・・・」

我知らず腹を立てていたはリオウの言葉に我に返った。

「お前に渡したその宝珠。
今はギリギリ力を封じているんだ。
一年は持つと思っていたが今も既に壊れそうだ」
「そうなのっ!?」

は懐に入っていた宝珠を眺めた。
これは、力の制御のためにあるのか・・・。
いつの間にそんな事になっているのか覚えてないが、とりあえず身につけておいてよかった。
これがないと夜にぐっすり眠れないのだ。
不眠は仕事の敵。
改めて宝珠の大切さを知らせてからリオウはボソリと呟いた。

「その力一度解放すると死ぬぞ」
「・・・なっ・・・なんですって!?」
「知らなかったとはいえ、お前は宝珠に頼りすぎている。
今その宝珠にはとてつもない負荷がかかっていて、それが割れれば・・・・
行き場所のない力は全てお前に集められる。
馬鹿な話だが、自滅する」

・・・なんですと・・・っ!?
説明もなしに渡しておいて結局それですか。
の顔がみるみる青くなっていく。
なんでいきなり爆弾をつきつけられなくてはいけないのだ。
縹家の血族かと思えないほど表情を変えるをリオウは珍しげに眺めた。
英姫もここまで表情豊かではないだろう。

「・・・あ、気休めくらいにはなるかもしれない。
仙洞宮を知っているか?」

流石にに死んでもらうと後味が悪い。
せっかく生かしておいた闇姫が自分の力で自滅など馬鹿な話だ。
リオウの胸のうちを知らぬままは答えた。

「・・・あぁ、あの仙人が住んでるっていうあれ?」
「そうだ。あの辺は妙な気が満ちていて・・・
もしかしたらその力を緩和してくれるかもしれない。
ちょっと時期は早いがそこの裏の池に入って来い。
禁池だが致し方ない。・・・結構無断で色々使われているっぽいし・・・」

リオウの話にはうっ、とうなった。

「禁池って・・・なんか変な魚がいるとかじゃないわね。
入った瞬間痛い目みるの嫌だからね」
「あの池に生き物はいない。ってかなんだその変な魚とか・・・」
「ほら、大昔の怪物が封じられていて何たらとか・・・」
「・・・どこの御伽噺だよ・・・」

・・・劉輝との血のつながりをひしひしと感じたリオウであった。
このまま話し続けると結局良く分からないところにいきつく。
その前にリオウは退散することにした。

「話はそれだけだ。
あまり暴れるなよ、分かったな」
「はーい・・・あっ、リオウ・・・」
「・・・なんだ?俺は忙しい」
「・・・私はもっと強くなれるかな・・・?
璃桜にもその裏にいる縹家の一族にも勝てるくらいに・・・」

リオウは目を見開いた。
こいつは・・・縹家に正面から喧嘩を売ろうというのか・・・

「お前は縹家の力を知らない。
余計なことは考えるな」
「もっと強くなれるか聞いてるの」

意志の強い目。
リオウは折れた。・・・あとで怒られるかもしれない。

「なれる。っていうか、力だけでは今の一族最強だ。
ただ・・・その力も垂れ流し。使い方を知らなければ自分の首を絞める鎖でしかない。
諦めろ。
俺に頼るなよ。
俺は無能だから教えられる事は何もない。
力が欲しければ縹家にいけ」

そういってリオウは反対側に歩いていった。

・・・クソ・・・ッ。
・・・おっと、冷静に・・・。
珠翠がいれば、英姫がいれば、もっとマシなのかもしれないが・・・。
二人共ここにはいない。

はとりあえず、仕事に戻ることにした。
一難去らずにまた一難・・・か。


夜。
は仙洞宮の前にいた。
確かにリオウの言うとおり妙な気配がする。
さして離れてはいないのに朝廷とは別の空間にいるようだ。

「・・・この裏にあるっていっていたわね・・・」

は覚悟を決めて歩き出した。

禁池はたしかにあった。
夜、黒い池には向き合った。
・・・とりあえず、入って来い・・・だっけ・・・?
周囲からの音は全くない。風もない。
静寂があたりに落ちる。ただ自分の息の音だけが響いた。

「・・・ビビッてんじゃないわよ。
私がこのくらいでビビると思っているの・・・ッ」

は男らしくババッと着物を脱いだ。

「こういう時ってやっぱり白装束がいいのかしら・・・」

そう思って白い着物を着てきたけど・・・。
いざ気合を入れて足を水に入れた瞬間だ。
その時後ろからガサッと音がした。

「・・・・ッッ!?」

飛び上がるほど驚いたが見たものはあまりここで会いたく無い人物であった。

「・・・なんじゃ、お前か。
ってかその恰好なんだ?
自殺するなら他でやってくれ」
「じっ・・・自殺じゃないわよっ!!
えっと・・・ちょっと・・・水浴びを・・・」
「・・・さらに他でやってくれ。ここを何だと思っている」

霄太師はカカッと笑った。

「・・・縹の坊主に言われたか?
まぁ目の付け所は間違ってはおらんな」

急に真面目な顔になった霄太師には目を細めた。

「・・・なんでそれを・・・」
「見くびるな、わしは風雅の後見じゃぞ。
知らぬとでも思ったか?」
「・・・え・・・もしかして・・・力の制御の仕方を知ってるの・・・?」
「・・・の?」

うぐっ、とは言葉に詰まった。
霄太師の意地の悪い笑みが最高に癪に障る。

「・・・しっ、知っておられるのですか、霄太師・・・」

は口元を引きつらせながら言葉を改めた。
あぁ・・・出来ることなら今すぐ池に沈めたいこのジジイ・・・。

「まぁ、付け焼刃程度じゃがな・・・。
ここの空気なら縹家に対抗できるじゃろ」
「本当っ!?」
「あぁ・・・かなり気がすすまんが・・・」
『そうケチケチすんなよ、ジイさん』

突然上から声が降りてきた。
仙洞宮の上に誰かいる。
霄太師はその声を聞いて、ゲッとうなった。
影はそのまま跳躍しての前に降り立った。
金髪の長身な青年はをじっと見た。

「久しぶりじゃ・・・だな。へぇ・・・良く見れば意外に胸はある・・・痛ッ」

霄太師が思い切り青年を扇で殴った。

「・・・なんでお前が来るんじゃ・・・。
茶州にいるんじゃなかったのか」
「良いじゃん別に。向こうは野郎ばっかで飽きてくるんだよ。
ってかジイさんは黙っろよ。
お前が教えたくないなら俺が教えるから、朝廷帰って王の相手でもしていればいいよ」
「・・・くっ・・・黄よ・・・」

そろそろお迎えが来そうなジジイと、今が旬の爽やかな笑顔の青年では明らかに後者の方が強かった。
霄太師はギリッと歯噛みした。
自分だって・・・若くなれば・・・っ。

は霄太師と言い合う青年を見て首を捻った。
・・・久しぶりって・・・この人に会ったことあったっけ・・・?

「・・・すいません、お会いした事ありましたっけ?」
「あれ、なかった?
まぁどっちでもいいや。俺は葉。よろしくな。ちゃん」

完璧な爽やかな笑顔。完璧に葉の勝ちだった。

「・・・貴様・・・私を愚弄しておいてただじゃすまんぞ・・・」

いきなり背後から聞こえた美声には振り返った。

「・・・・・・・・。
・・・ドチラサマデスカ・・・?」

黒髪の長髪を綺麗に靡かせ悠然と微笑む青年が一人背後にいた。
固まるに、口を引きつらせる葉。

「・・・ちょっ・・・おまっ・・・マジかよ。
っていうか、どんだけ〜」

葉の言葉を軽く無視して青年は大きく宣言した。

「霄だ。
今からお前を縹の阿呆共に負けないよう、徹底的に特訓してやろう。
嬉しく思え」

ビシッと扇を突きつけられは一歩後ずさった。
何この人・・・達・・・。
は初めてここに来た事を後悔した。
リオウはこの人達に指導してもらえと遠回しに言っていたのであろうか。
それならそれで予備知識くらい教えてくれてもいいじゃないか!
は何か言おうと口を開いた瞬間、着物の襟足を掴まれた。

「・・・・へ?」
「とりあえず、池の中に入れ」

その細腕にどんな力があるのか知らないがは軽々宙に持ち上げられ、そのまま池に投げ入れられた。
まだ夏には早い時期で水はかなり冷たかった。

「・・・つめた・・・っ死ぬっ!!」
「この程度の水温で死んだやつは聞いたことがない。
とっとと中央まで行け。
沈めるぞ」
「・・・はい・・・」

霄の声音には逆らえずそのまま泳いでいく。
慣れればこの水温もなんとかなる。

岸で二人の青年がを見守っていた。

「・・・ちょっと・・・霄マジでどんだけ〜。
ちゃん可哀想だよ。だからお前に任せたくなかったんだよ。
俺が手取り足取り教えてあげるつもりだったのにーっっ」
「阿呆か。ってかあの小娘のどこがいいだ。
どの道あいつは武官式育成法の方が性にあっている」
「十分可愛いじゃん。
容姿がいいし、あの強気の目なんてたまんねぇな」
「一回ボコボコにされて来い。
あれでみっちり”黒狼”仕込の兇手だぞ。
最近大将軍にも稽古をつけてもらっているようだし・・・」
「そんな最強なところも、俺・好・みvv」

キャピッと笑う葉に霄はため息をついた。
もう既に救えない。
これと同族だと思うと死にたくなった。

『お前もう帰れ』


   


ーあとがきー

・・・何を思ったか仙人登場!
アニメの葉さんが予想以上にツボッたので。
あえていうが、絶対こんな性格ではない気がする・・・。ごめん、相当阿呆にして(orz)
当初の私的妄想は鳳珠様系美人だったのに、アニメでは絳攸系爽やかアニキだったので・・・。

それで、口調と黄金での女好き+M属性発言からこうなりました。
口癖は『どんだけ〜』←とりあえず使ってみた。(笑)

・・・とりあえず・・・ごめんなさい。(スライディング土下座)

正直書いてる時、楽しすぎて止まらなかった。
同志、苦情、誤字、『葉先生はこんなんだよー』ってのがありましたら是非。
仙人を熱く語ろう会。(ぉ)会員募集中。

白夜もつれてこようかと思ったけどいかがでしょうか?(とも聞いてみる)
容姿が分からないと困るんですが・・・やっぱりチビですか。ツンデレですか。
鬼畜に軟派にツンデレ・・・。
・・・仙人は月城の好みすぎて駄目ですなぁvv萌。


あえて、重大なところには突っ込まないのが月城クオリティ。
夢主最強計画ちまちま進行中★

・・・あれ、この話で終わるんじゃなかったっけ・・・?
ついでだし、次の話で絳攸あたりを久しぶりにいじってみようかと思ってます。

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