戸部に戻って、決算の書翰を鳳珠に渡す。
鳳珠がの持っている花に気付いた。

「・・・・・・・・、まさかとは思うが・・・その花・・・」
「あぁ、先程刑部尚書と会うことができまして、そのときに貰ったのですが・・・何か?」

鳳珠と柚梨が同時に固まった。
刑部尚書ーっ!?

「な、あ・・・あの人に会ったのかっ!?」
「はい」
「何か・・・その言われなかったか?」
「えっと・・・目の届かないところで悪い事をするな・・・とか?」
「・・・それだけか?」
「あとは・・・なんか覚えてません。
あ、刑部侍郎から蝋燭代の経費半額にして構わないと・・・」
「そうさせてもらおう」

待ってましたといわんばかりに、即行刑部から蝋燭代が引かれた。

「・・・しかしあの人がそれだけしか言わないとは・・・昼間だったからか?」
「あぁ、室が暗かったので暗幕を撤収させていただいたのですが・・・」

それだ。

「・・・そ、そうか・・・。
うっかり変なのに憑かれないよう気をつけろよ」
「・・・あ・・・はい」

鳳珠が机案の上の書類に目を移した。
そうだ、とに切り出す。

「昨日少し手が空いたといっていたな・・・。
丸々一件お前に任せたいことがあるのだが・・・無理なら他に当てる」
「いえ、やらせてください。
他の仕事もなんとか並行して出来ると思います・・・内容にもよりますが・・・」

鳳珠は少し思案した。
隣にいる柚梨も難しそうな顔をしている。

「どう思う、柚梨」
「・・・そうですね・・・。意外に私よりもくん向きといえばそうかもしれません。
彼女戸部の資料に精通してますし・・・」
「確かに・・・。
・・・覆面であるし・・・あとは御史台から誰が来るのかが問題ではあるがな」

・・・は?御史台?
の頭に嫌な面子しか浮かばない。

「御史大獄も延期されましたねー。秀麗くんだったりして」
「・・・だといいんだがな。
その逆だったら大惨事だぞ。やはりお前にしていいか」
「・・・まぁ、鳳珠の頼みとあらば・・・元々私の仕事でしたしね」

鳳珠と柚梨の話が読めない。
なんの話だろう。
置いてけぼりのを見て、鳳珠が咳払いをした。

「・・・一応にも伝えておこう。
手が空いていたら柚梨を手伝ってやってくれ」

鳳珠は数枚の資料を柚梨に渡した。
柚梨はを机まで招き椅子をすすめた。
は椅子に座り柚梨から渡された紙を見る。

「・・・・。
何かあるとは思っていましたが・・・ははっ」
「・・・話を戻そう。
今から現状の正しい把握をし全商連と交渉。米や油の値段が一気にあがらないようにする。
紅州からの流通が戻るまでの一時的な措置だ。
あとは紅州の観察御史と御史台と連携し最近の農産物および資源の原価と流通量、例年の今頃の変動を比べろ。
最低限必要な量が分かれば緊急時に対策が練れる」
「・・・資料探しですか・・・。確かに私の得意分野かも・・・」

全商連の交渉も立派な仕事だが柚梨がいるのでそちらは彼に任せて自分は裏方に回った方がいいかもしれない。
適材適所だ。

「分かりました。お引き受けします。
現状把握や資料探しはお任せください。力仕事は私が引き受けます」
「そうか、そうしてくれると助かる」

その時尚書室の扉が叩かれた。

「黄尚書、御史台から・・・」

三人が扉を見た。

「・・・紅州から物資流通停止の件について派遣されました御史台官吏の・・・」

陸清雅っ!!

「げ・・・」

思わず声を上げて嫌な顔をしてしまった。
相手の方はわずかに目を開いただけだが、内心は同じ気分だろう。
鳳珠は仮面の下で小さく舌打ちをした。
柚梨だけは変わらずニコニコとしている。
きっと御史台の今をときめく出世街道驀進中の好青年だと思っているのだろう。間違ってはないが。
柚梨以外の三人に不穏な空気が流れる。

「茈官吏、出ていいぞ」

敵対心むき出しに鳳珠が言った。

「・・・あ・・・はい・・・」

有無を言わせない言葉の強さには思わず返事してしまった。

「いえ、彼女がいても構いませんよ」

笑顔で清雅が言う。
鳳珠の機嫌が見る見る悪くなっているのを柚梨は感じ取った。
・・・どうやら彼もをとりまく一員であるようである。
鳳珠はに目で出て行くように告げる。
が出て行こうと礼をとって、行こうとすると清雅がの腕を取った。

「・・・え?」

清雅の突然の行動にが固まった。清雅は笑顔で言った。

「黄尚書、茈官吏の活躍は聞いております。
今回是非一緒に組ませていただきたいです。戸部の覆面の実力も間近で見てみたいと思いますし・・・。
駄目でしょうか?」

・・・冗談じゃない!!!
鳳珠のこめかみに青い筋が立った。
殴れ、殴ってよし。私が認める。

柚梨はあわあわと鳳珠と清雅を見比べた。
どうしよう・・・これは、止めるべきなのか?
一応自分が担当しようと思っていたのだが、相手がを求めているから口も出しにくい。
総合的に考えての方が自分より使えるのは確かだ。
若い分機動力も段違いだ。あと年齢も近いし自分よりも仕事しやすいだろう。

「こちらは、緊急性があると考えます。
物価が上がり、民が混乱する前に早期解決した方がいいかと。
そうですね。五日で終わらせましょう。その間茈官吏を借りていいでしょうか」
「・・・・。」

さして断る理由もなくなってしまった。
柚梨を見ても、おろおろしているだけだ。

「・・・柚梨、何か言いたい事は・・・」
「・・・え・・・っと・・・」

何故そこで私に話を振るんですか!
くんを下げさせて私に行けっていうんですか!?無理でしょうこんな空気で!
管尚書に禁酒させるくらい不可能な空気じゃないですかっ!!
柚梨は背中にだらだらと汗をかいた。久しぶりに頭が混乱する。
いい言葉も全然出てこない。・・・鳳珠私は負けました。

「・・・えっと・・・本当は私が担当する予定だったのですが・・・。
その・・・陸御史が是非にとおっしゃるなら・・・」

も元々やる気だったし譲ってもいいだろう。
難しいところは彼に頼ればいいし、何かあったら自分も手伝えばいいことだ。
空気は読めていたが事の重大さに気付いていない柚梨。

「・・・ねぇ、ほ・・・黄尚書?」

絶対零度の視線を仮面の中から放たれた気がしたが気付かないことにする。

「ありがとうございます」

清雅はいい笑顔だ。

「・・・茈官吏は・・・いいですか?」

は内心で盛大に清雅への罵倒を繰り返しながら、鳳珠に向かって笑みを浮かべた。

「・・・黄尚書の命ならば・・・お受けします」



次の日、紅州の観察御史が到着するまで時間が掛かるため清雅とは城下へ物価の視察に出かけた。

「・・・なんであそこで私を推薦したのよ。
頭おかしいんじゃないの?」
「俺はどんなにこき使ってもへこたれない雑用が一人欲しかっただけだ。
朝廷広しといってもお前みたいな体力馬鹿は早々いるもんじゃないからな」
「ははん、秀麗ちゃんに使える部下燕青がいるから妬いてるのね」
「別に俺に部下なんて必要ねぇよ。
紅姓官吏がいなくなってお前がその穴埋めに他部署へ駆り出される前に有効活用してやろうっていう優しい心遣いじゃないか。
三日で戸部に戻りたくなくなるくらいこき使ってやるから感謝しろよ」

ニヤリと清雅は笑っていった。
は心底嫌な顔でいった。

「・・・残念ながらあんなに腕つかまれた瞬間から自分の室に戻りたかったわよ」
「嫌なら断れば良かっただけだろう?」
「黄尚書の命、だからね!!しゃーなしよ、しゃーなし!!
百歩どころか千歩万歩それ以上譲ってやったのよ。嗚呼何て心が広すぎる私!!
別にあんたのために受けてやるわけじゃないんだからね!!」
「そう遠回しに言わなくても、素直に俺と組みたいといえばいいだろう」
「心底嫌な顔と声を聞いてもそんな台詞が吐けるあんたの頭を疑うわ」

言い合いは止まずむしろ大きくなっている。
周囲の目をかなり引きまくっていたのはいうまでもない。



周辺の商人に話を聞いたり全商連に行ったり、半日はとっくに過ぎ、既に日が傾いていた。

「ねー、清雅休憩しないの?ていうかご飯食べたい」

昼ご飯抜きで歩き回ったは疲れ果てていた。

「はぁ?そんな暇あるか。
これから朝廷に戻って資料探しを・・・」
「私は燃料補給しないと動かないわよ。
ここまで付き合わせたんだから勿論美味しいもの奢ってくれるわよね。せーが先輩」
「・・・お前、とことん興味がないとやる気をなくすな」
「は、上司があんただとやってられるかってーの。働いてないわけじゃないんだしさー。
何かご褒美があってもいいんじゃない?」
「・・・お前、予想以上に使えないな・・・」

清雅が舌打ちした。
秀麗の方が負けじと食いついてくる分張り合いがある。
こちらの方が一般的な反応といってもいいが・・・というか他の上司達との態度の違いがあからさま過ぎてムカつく。

「もうお前と仕事は絶対しない」

額に手をついて言う清雅にはニヤリと笑った。
・・・勝った。

「私もそうしていただくと助かるなぁ。
今回はあんたがどうしてもっていうから付き合ってるだけだからね」
「せっかくお前の上司にもお前の評価を上げるようなことバンバンいってやったのに感謝の気持ちもなしか」
「私の評価は今更上げなくても戸部の中では上がらないくらい上がってるからわざわざ労力使わなくても良かったのに。
お疲れ様」
「・・・クソッ・・・。
・・・分かった。夕ご飯も兼ねていい店で奢ってやるから・・・今夜いい働きしろよ?」
「了解しました、セーガ先輩vvお酒のおかわりは何杯まで自由ですか!」
「飲むなっ!!どんだけ店に居座るつもりだお前は!!」


豪華な夕食も終え、と清雅は朝廷に向かった。

「あんたにしてはいい店だったわね」
「・・・うるさい、これでちゃんと働いてくれんだろうな?
本当に使えなかったって仮面尚書に言うぞ」
「ちゃんと働いて、って私ちゃんとやってるじゃない。失礼しちゃうな、全く。
大体農産物及び資源の原価と流通量、例年の今頃の変動を調べればいいんでしょ?
あ、現在のものも必要なのか。
私達が自分の足で調べなくちゃいけないものは、本当に紅州から入ってこなくなった今日昨日の明日あさってくらいのものでしょ?
その資料のありかもまとめたものも資料として残ってるだけだからそれをまとめるだけ。
どれだけの量になるか分からないけど資料集めるだけなら一刻で終わるわよ」
「・・・本当か?」

一刻という数字に清雅は驚いた。
本当に戸部のことについては彼女に聞けば一発で分かる。

「ここ数年戸部の雑用誰がしてると思ってんのよ。
すべての何の資料がどこにあるかくらい完璧に把握してるわよ。府庫にある戸部関係の本も知ってるし・・・。
まぁ新しく入った侍僮がわざわざ気を利かせて場所を移動していないかにもよるけど、黄尚書付きが数ヶ月でそんなことできるわけもなし、大丈夫でしょ。
まとめるだけなら誰でもできるし暇そうな人に・・・今暇な人いないのか・・・」

紅姓官吏出仕拒否の影響は今頃朝廷で顕著になっているだろう。
今日無事に家に帰れる人は何人いるのだろうか。
清雅の視線を感じては口元を引きつらせた。

「え、私?」
「俺は全商連との交渉をしなくてはいけないし、紅州観察御史の話を聞かなくちゃならないからな。
お前と違って暇じゃないんだ」

清雅がいい笑顔での肩を叩いた。

「大好きな仕事がたくさんあってよかったな。
有無を言わず寛大に夕食を奢ってくれる優しすぎる俺にこき使われる自分を幸運に思って二日で仕上げろ」
「・・・・・・・。」

二日って・・・。
その膨大な量を知っていてそういうのだろう。全くやけに素直だと思ったらこれだ。
しかしこれ以上清雅に体たらく差は見せられない。
自分にだってプライドはある。

「・・・分かったわよ。
二日ね・・・」

終わらせて見せようじゃないの!
は輝く星空に向かって拳をあげた。


   

ーあとがきー

3話目清雅とお仕事編。
なんだろう、夢主優勢というかなんというか・・・
清雅がヘタレすぎてすいません。
エロかっこいくなくてすいません。

・・・どこからおかしくなったのか私にもさっぱ・・・

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