今日はとても寒い。
そして空を見上げれば、曇り空。
なんとなく憂鬱な気分になってしまう。

その空に真紅の薔薇が舞ったように見えたのは気のせいだろうか。


年明けは騒動の始まり
〜縁はここに集う〜


兄に久しぶりに会いはとても気分がよかった。
飛翔についてももうどうでも良くなり、いきなり機嫌の良くなったに飛翔と玉は首を傾げた。
どこか寄り道でもして頭を打ったのだろうか。
とりあえず、今日は上がっても良いという指示が出たのでは礼をして下がった。
戸部とは違い、賃仕事みたいな感覚で考えられているのか、ちゃんと早くに帰らせてくれた。

久しく兄に会った嬉しさがまた忘れられず、回廊を少し小走りで走る。

「・・・・?」

一人になってようやく気づいたが誰かに見られているような感覚に襲われた。
しかし、どこかで感じたようなもの・・・。殺気ではない。
ここまで平和の中にいるとどうもそんな感覚が薄れてきていけない。
たまには殺伐とした雰囲気の中にいるのも重要かもしれないと思ったその時だ。

月がでて回廊を明るく照らす。
柱の向こうに伸びる一つの影。

・・・鳳珠様?

一瞬そんな感じがしたが、彼がこんなところにいるはずないし、わざわざ柱の後ろにいる理由もない。
感じる気も彼のものではなさそうだし。

「・・・誰?」

どこか懐かしさを感じる、そんな感じ。だけど敵か味方か分からない。
は自然に腰にある短剣に手を伸ばした。

影が動く。はゴクリとつばを飲んだ。
そして、柱から出てきた人物に絶句した。

月明かりに照らされた彼の髪は銀。風に吹かれさらりと動く。
肌も手も白いが彼の瞳だけが漆黒だった。その瞳がを見つめた。
目が合った瞬間、がビクリと震える。

・・・ありえない。

の頭の中である答えがうずまいている。
彼は違う。・・・違うのに・・・感じるものは同じ・・・。
ゆっくり近づいてくる彼に、は一歩後退った。
やがて、は掠れた声で呟いた。

「・・・母・・・上・・・」

男は薄く微笑した。
心臓が早鐘を打っている。
どうしても被ってしまう。その銀色の美しい髪。漆黒の瞳。白い肌。
氷の微笑。
恐怖にも似たその笑みもにはなんでもなかった。
ただ少しの寒気と懐かしさがを襲う。
だって、その笑みは幼い頃から自分に向けられてきた『温かい笑み』

なんで・・・?どうして・・・?
この人は・・・何者?

疑問が頭の中をぐるぐると巡る。

「・・・まさか。こんなところで探し物に出会えるとは・・・。
本当に欲しい時に出てこなくて、どうでも良いときに見つかるとはこのことか・・・」

は眉を潜めた。

「・・・どう言う・・・こと?
貴方は・・・誰?
母上とはどういう関係・・・?」

口が理性を越えて動き出す。

「英姫がどこに逃がしたかと思えばこんなところに・・・。
春姫といい、薔薇姫といい・・・どうして今さらこんなに都合よく」
「・・・春姫・・・薔薇姫?」

何故ここで春姫が出てくるのだ?そして薔薇姫って誰。
っていうか質問に答えてくれてないし。

「さて、帰るぞ。闇の眷属、闇姫よ。
お前は公には出てはいけなかった」

闇姫・・・。
それは朔洵といた時に聞いた闇の声が自分をこう呼んでいた。
あの声とこの人の関係は?

そして・・・私は・・・?

紫家という存在の上にさらに隠された秘密。
母は自分の事は何も語ってくれなかった。ただ敬愛する縹英姫に育てられた事のみ嬉しそうに語ってくれた。

気づくと彼が目の前にいた。本能で呪縛を打ちきり短剣を凪いで後方へ飛ぶ。
嫌な汗が頬を伝う。

「・・・私をどうするつもり?」
「連れかえるだけだ。あるべき場所へ」
「あるべき・・・場所?」

自分はこの城で生まれた。確かに、父も母も亡くなったし、紫家の名も失った。
しかし、今は官吏として正式にここで働いているし、家も居場所もここにあるはずだ。

「そうだ。ここはお前のいるべき場所ではない」
「違う、私の居場所はここだ。
ここ以外の居場所なんて・・・私は知らない」
「・・・知らないだけだ。
後に教えてやろう・・・。お前の居場所、そして存在理由も
知りたい事全て教えてやろう」

それは誘惑。
確かに自分が何者なのか知りたい。母は何か大きなことを隠しているような気がしたから。
多分ついていけば全て知りたい事が知れるだろう。
しかし、同時に大切なものが全て無くなってしまうような気がして。

「さぁ、私と一緒に・・・」

伸ばされた手を思わず掴みそうになる。動きかけた右手を強く押さえた。
行ってはいけない・・・。
本能がそう警告している。
しかし、心が動きかけている。彼を見ていると行かなくてはならないような気がした。
足を一歩踏み出した。
そしてもう一歩。
何かに誘われるように。
だんだん意識が遠のいていく。

男が薄く笑んだ。
お互い触れられる距離までくると、男はすっとの顎に手を伸ばし上を向かせる。

「・・・大分紫家の血が混じってしまったな・・・
綺麗な銀髪だったのに・・・瞳の黒も薄くなっている・・・」

きっと母と自分比べているのだろう。
ほとんど働いていない頭の隅でそんなことを思った。
彼と母が被る。血縁関係であろうことは確実っぽい。相当似ている。

「・・・まぁ良い。
薄められたら濃くするまでの事・・・さて・・・」

静かな空間にザザッと草を蹴る音がした。
月光にその身を当てられ影が宙を舞う。

男は舌打ちしてふわりと後ろに後退した。
は自我を取り戻し、突然の乱入者に声を上げる。

「・・・りゅっ・・・龍蓮っ!?」
、この男は危ない」

の言葉を遮って龍蓮はいつになく真剣な顔で男と対峙した。
突然の事で二の句が次げなかった。
龍蓮が滅多にこんな表情みせるはずがない。
何かヤバいことに巻き込まれているような気がする。
男は眉を潜める。

「・・・藍家の・・・」
には近づくな。心の友其の一にも、親しき友其の一の新妻にも手出しはさせん」
「・・・え?」

秀麗ちゃんと・・・春姫さん・・・?
話が全く掴めない。なんの関係があるのだろう。そして龍蓮は何故ここに?

「藍龍蓮では少々分が悪い・・・。
今日は出なおすとしようか・・・」

求めていたわりにはやけにあっさり引いていった。
は一分ほどしっかり固まっていた。
まるで夢から覚めたような感覚。

・・・?」
「・・・あぁ、大丈夫よ。少しぼーっとしていただけ。
・・・それにしても何故あんたがここに?」

あの男よりも謎だ。
龍蓮はふっと笑っていつもの調子に戻る。

が危ない時はいつでも助けに参上するぞ。
あぁ、そんな不満そうな顔をするな。
・・・そうか、先日の置手紙が原因か?
手紙だけ悪かった。次からは何か風流なものも置いて去っていく事に・・・」
「いらんわ。
そんなことするくらいなら、私が起きるまで待っていてくれたら良かったのに」
「気をつけよう。
・・・寝顔を見ていたら、満足してしまって・・・」

思わぬ龍蓮の告白には開いた口が塞がらなかった。

「・・・なっ・・・ななな何してんのあんたっ!?」
「やはりぐっすり眠っているを起こすのも悪いと思ってな」
「起こしてくれた方がましだったわよっ!!
へっ・・・変な事はしてないわよね」
「・・・さて・・・」
「話を変えないっ!ちゃんと答えなさいよ」
「・・・私に聞きたい事はそんなことではないだろ」

高ぶっていた感情が一気に冷やされた。
そうだ。彼の言う通り。
は改めて龍蓮に向き直った。

「・・・あの男は何者なの?」
「縹家の当主だ」
「私は何者なの?」
「それはが一番知っている」
「あの男と・・・私の繋がりは・・・?
何故私を連れていこうとしたの?」

龍蓮は少し間を置いた。

「同じ血族だ。
あの男は・・・というよりも、その存在自体を必要としているのだ。
然るべき時のために。
何故奴がを必要としているのかは言えない」

そう言って龍蓮はまた城の庭に戻っていった。

「・・・龍蓮っ。
私の居るべき場所はどこ?」
「それは自身が決めること。
ここまでが私が教えられることだ」

彼の姿が見えなくなっていく。
は大きく息を吸った。

「ありがとうっ!!」

なんか胸が軽くなった。
そしてはある事に気がついた。
結局話をはぐらかされて終わってしまったことに。
そしてはまだ気づいていなかった。
自分が縹家の血族であるということに。

   

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