時は長く、短い。
永遠と同じ事を繰り返し、繰り返し。同じ道を歩いて帰って。
結局、景色は変わらず不安が胸をよぎる。
今日もまた朝が来た。


年明けは騒動の始まり
〜働け!意識がある限り〜


「・・・悠舜・・・終わったぞ」

最後の決裁を終え、鳳珠は悠舜の元まで持っていった。
まさか今頃誰かの下で働くことになるとは思いもしなかったが、まぁこれもまた楽なもんだ。
自分で考えないで良い分、他のところに頭を使える。
鳳珠の書いた書類をみて悠舜が満足気に頷く。

「流石鳳珠。完璧ですね。ありがとう。
・・・そしてお疲れ様でした。もう休んで良いですよ。
本当に悪いですね・・・。戸部尚書と侍郎をお借りしてしまって。」
「いや・・・。
それにしても本当に豪華な顔ぶれだな。
少し面白かった・・・」

府庫では朝廷最高峰の官吏が集められ茶州の奇病に向けての対策がとられている。
鳳珠は辺りを見回した。普段では朝議辺りでしか見えない顔ぶれだ。
その中で一緒に働いていれば誰が優れているのか一目でわかる。これは後に何かの参考になりそうだ。

・・・そういえば、戸部の方はどうなっているだろう。

悠舜がちらりと鳳珠を見るとどこか遠くを見ているようだった。
仮面を被っていても長い付き合いで鳳珠の様子はなんとなく読めてくる。悠舜はふっと笑む。

「・・・どうしましたか?鳳珠。
何か心配事でも」
「戸部の方が少し・・・」
「ちゃんと部下のことを信頼しないと。でないとやってられないですよ」
「・・・まぁ・・・そうなのだが・・・。
いや、仕事の方は別に問題ないと思う・・・
どうせいつか片付くんだし・・・」

おそらく仕事が山のように積んであるだろう。そして泣きついてくる部下達も目に見えている。
ばたばた奥の方で働いている柚梨を見やる。自分と柚梨が戸部から引いたら考えるだけでも頭痛がしてくる。
そしてもう一つの不安要素。

・・・・・・。

無理していないといいのだが・・・。

「・・・大丈夫ですって
超能吏ばかりが集まる精鋭部隊なんでしょう?」
「・・・能吏が集まるんじゃなくて能吏しか残らないんだ・・・。
・・・まぁいい・・・・」

鳳珠はすっとまだ終わっていない書類に目を通した。

「あっ、鳳珠・・・」
「ついでだ。これもやっておいてやる」
「いいですよ。貴方は休んでください。
もしあなたが倒れて怒られるのは私なんですから・・・」
「心配ない。仕事が残っているのに休んでいられるか。
悠舜、私を使っておくなら今のうちだぞ」

仮面の下に笑みがあることに悠舜は気づいた。
そういう気性なのだろう。珍しいというかなんというか。

「・・・では、お言葉に甘えて・・・。
ありがとうございます」



『戸部官吏、ファイオー!』

今朝も戸部に叫び声が聞こえる。仕事がたまりにたまって三日目。
書類が運ばれるピークも過ぎたが、それでも紙はその辺に散らばっている。
生ける屍の動ごめく戸部は今日も文官達がせっせと机案に向かっていた。
後一日、後半日。休憩という光を目指し官吏達はまさにそのゴールを果たしたのである。
日が落ちる頃定時の銅鑼がなる。
官吏達は我先にと戸部を後にしていった。誰も咎める者はいない。
睡眠時間平均僅か二刻弱という状態で布団に入りたいという気持ちは皆一緒。
は最後まで官吏達を見送って息をついた。
頭がくらくらする。身体が睡眠を欲しているようだった。
しかし、はパンと自分の頬を叩いた。
・・・後少し、後少し頑張れば・・・。
の目には別の光が見えていた。少し痩せこけ隈が出来た顔にふっと笑みが浮かんだ。



「・・・あぁ・・・眠っ」

時刻は牛三つ時を軽く越え、そろそろ太陽が昇る時間帯になってきた。
は書類を他部署に配り終えて戸部に戻った。これで全ての仕事は完了だ。
明日になれば鳳珠も柚梨も元の通り部署に戻ってきてくれるのできっとゆっくり休めるだろう。
三日前まで、紙で埋まっていた室が綺麗になっていて、何故か不思議な気分だ。
それと同時に嬉しくもある。妙な達成感を感じては叫びたくなった。勿論時間も時間なので心の中だけで留めておく。
ついでに綺麗になった室を掃除しておくか、と考えは一歩踏み出した。
気持ちとは裏腹に身体の方はついてきてくれないようだ。

「・・・ヤベ、立っているだけで寝そう・・・」

こんな真冬にそれだけは勘弁したい。こんなところで寝たらきっと次の朝冷たくなった死体が転がっているところであろう。
初の女性官吏、朝廷内で凍死。
・・・末代までの笑われ者だ。
は尚書室に入った。そこにはとりあえず不在の時で尚書に目を通してもらいたい書類が積み重なっている。
彼なら半刻でこなせるだろう量だ。これくらい残しておいても文句は言われまい。
少し空が明るくなった。光が暗い室内に徐々に満ちてくる。
は外を見た。

「・・・あれ?」

庭には見知った後姿。ここにいる女人など自分以外に考えられる人はただ一人。

「・・・秀麗ちゃん・・・」

はそのまま窓を開き飛び降りた。
今を逃せば秀麗はまた茶州に行ってしまいしばらくは顔を見られない。
その瞬間、眠気も疲れも全て吹き飛んだ。視界に入るのは彼女一人だけ。
その姿も霞の向こうに消えてしまいかけていた。

・・・行ってしまう前に・・・少し話をしたかった。

「秀麗ちゃーーんっっ!!」
「・・・
・・・っ!!」

どれくらいぶりに、言葉を交わしただろうか。
茶州以来始めてだと思う。お互いしっかり抱き合った。

「・・・久しぶり。・・・といっても私は朝賀の時見させてもらったけど」
「なっ・・・あの時本当に恥ずかしかったんだから・・・。全く凛さん派手な飾りつけて・・・。
それより・・・貴方痩せた?」
「嬉しい事言ってくれるじゃない。
戸部でばりばり働いているから当然よ」
「そうじゃなくて・・・・身体大丈夫っ!?顔もなんか・・・。
って何その隈っ!!凄い酷い顔じゃないどうしたのっ!?そんなに黄尚書って厳しいの?」
「・・・秀麗達が黄尚書と景侍郎待ってったからこんな事態になったんじゃないの・・・。
・・・フフ、修羅場明けの太陽が眩しいわ」
「だっ・・・大丈夫?・・・」

明らかにいつもとテンションが違う。
二人は適当にその場に座った。霞がかった庭と明るくなっていく空は幻想的なものがある。

「でも徹夜して良かったわ・・・。秀麗ちゃんに会えたんだし。
本当会えないまま茶州に行っちゃうなんて嫌だったから・・・」
「・・・ごめん、本当忙しくて・・・。
一度家に来てくれたみたいね。ごめんね」
「いいえ、秀麗ちゃん頑張ってるし・・・。
・・・でも、やっぱり黄尚書達見てると凄い羨ましいの」
「・・・え?」
「なんかさー。同期の人達と楽しくやってる姿見てると凄い羨ましくって・・・。
別に今の状態が不満ってわけでもないけど。
でも・・・秀麗ちゃんたちには早く茶州の任期終えて帰ってきて欲しいよ。
で、影月くんや秀麗ちゃんや龍蓮や珀明と一緒にわいわいやるの。
・・・あんまりそんな経験ないからさ・・・。凄い憧れているの」

秀麗の瞳が揺れた。
もしかしたら、紫州へもう戻って来れないかもしれない。
影月も同じ・・・。
多分・・・下官の達には自分達の状況が伝わっていないのだろう。
言うべきか、言わないべきか・・・。
秀麗は迷う。
は秀麗の動揺を読み取った。寝てなくて頭が働いていなかったようだ。
そして自分が口にしてしまった事を後悔した。
・・・ただ州牧しに行くだけじゃないんだった・・・。

「・・・ごめん、軽率だったね。
茶州の事は藍将軍から聞いてるから・・・」
「・・・えっ・・・」
「でも、必ず戻って来るんだよ。
向こうにも秀麗ちゃんを護ってくれる人達が沢山いるし・・・。
私も行けたらいいのだけど・・・
・・・ん?」
「駄目よっ、がきたらまた騒ぎに・・・。
・・・あれ?」

二人は顔を見合わせた。何か大切な事を朝廷全体で忘れていたような気がする。

「・・・ねぇ、女性官吏駄目って言うならなんで私には何も伝わってきてないわけ?
遅くとも緊急朝議の時にその話題は取り扱っていたわよね。藍将軍から聞くまで何も知らなかったんだけど」
「そういえば・・・皆の存在忘れてない?」

自分も忘れていたが・・・。
初の女性官吏で初の女州牧。しかも紅姓。ということで女官=秀麗。と言う方程式が全員の頭の中に成り立っていた。
その印象があまりに強烈だったのだろう。
の事は存在自体知っていたが、下官で七家出でもなく、女らしいところはほとんどない。
そういう訳あって男官吏の中に上手く馴染んでしまったようだ。認識はしていても女官と言う目で誰もみていない。
二人は絶句した。
どうしよう・・・この問題はやはり取り扱っておくべきだったのに・・・。
秀麗は今日、今すぐにでもここを立たねばならないのに・・・。

「・・・まっ・・・まぁ、がどうこうって前に私がきっちり押さえてきてあげるから大丈夫よ」
「うん・・・。一応上の方にも言っておくわ。
もし力が必要だったら私も行く。・・・それに・・・」

『千夜』と名乗った教祖の事も気になる。もう一度会えるものなら一発張り手食らわしてやらないと気がすまない。
そのの心を読んだのか秀麗が笑顔で言った。

「大丈夫。仮に、あの放蕩息子が生きていたら私が殴っておいてあげるわよ。
しっかりとした説教も必要ね。」
「よろしく頼むわ」

冷たい風が二人の頬を撫でる。
空がますます明るくなってきた。もう夜明けだ。

「・・・いってらっしゃい。秀麗ちゃん。
絶対・・・絶対影月くん連れて戻ってくるのよ。
死んだら龍蓮の笛一日中墓の前で鳴らしてあげるんだから!」
「・・・うっ、それは勘弁・・・。
大丈夫よ、影月くんも絶対連れ戻して見せるわ」

二人はもう一度抱き合った。
絶対、会える。

そして二人は夜明けに別れた。


・・・・眠い。
はやっとの思いでまた戸部まで戻ってきた。庭に下りるのは楽だったが、帰りが酷い。
もう、身体も限界のようだ。手足は完全に冷えきってびりびりしてくる。

・・・からだが・・・あたまがはたらかない・・・

これからこの室の掃除しようと思ったのに。

それは三日前の朝。
は仕事の山を見て自分に誓ったのだ。
鳳珠様たちが戻ってくるまでにこの書類の山全て片付けて、ぺかぺかにして驚かせてやるんだ。と。
だからここまで不眠不休に頑張ってこれたのだ。
最後の仕上げの掃除をする力は残ってなさそうだ。
ガクンと膝が折れる。
はその場に倒れた。
床は氷のように冷たかった。しかし、全体重を床に預け、その体制は疲れきった身体にはとても心地よかった。

・・・だめ・・・ねちゃだめ・・・・

意識と反して瞼が重くなっていく。震える身体をそのままには瞳を閉じた。


「ったく、貴方は馬鹿ですか?
結局最後まで悠舜さんの仕事手伝って・・・」
「馬鹿とはなんだ失敬な。
お前だって最後まで走りまわっていただろう、お互い様だ」

早朝の冷たい廊下に二人の喧騒が聞こえた。
一足早く先に目を覚ました鳳珠と柚梨である。
とりあえず、あの場にいた人達に布団をかけ、自分たちは戸部に戻り仕事のたまり具合を見に行くところだった。

「貴方の分はもうとっくの昔に終わっていたはずでしょうに。
今日からまたばりばり働かないと行けないっていうのに・・・。
その分も少しは休んでくださいっっ」
「それはお前とて同じ条件だろう。
私はお前の為を思ってだな・・・お前の負担を軽くするために仕事を減らしてやったんだ・・・。
私とてお前に倒れて欲しくないし、負担もかけたくないと思っている・・・・柚梨」
「・・・鳳珠・・・」

朝日を背景に鳳珠の美麗な素顔が柚梨を捕らえる。
普通は誰でも見とれてしまい、例え男同士でも危ない世界に入ってしまいそうだ。
・・・・・が、長年連れ添ってきた副官はもうこの手には通用しなかった。

「・・・ってそんな上手いこといって私は騙されませんよ。
どーせ貴方の性分です。目の前に未処理の仕事があればうずうずきてやりたくなっちゃったんでしょっ?
全く・・・・そんな台詞私じゃなくて他の女性に言って差し上げたらどうですか?鳳珠」
「・・・・チッ」
「こら、舌打ちしない」

そうこうしているうちに戸部についた。
ずっと府庫につめていたから久しぶりの扉だった。
さて、どのくらいの書類がたまっているのか。二人は扉に手をかけ、どんな状態でも平常心を保つ覚悟をした。
例え吏部尚書並の書類がたまっていたとしても中に入らなければいけない、現実を受け止めなければならない。

3,2,1・・・ガチャ

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』

長い沈黙あって、また扉は閉められた。

「・・・柚梨。ここは戸部だよな」
「・・・えぇ、間違いありません」
「・・・別に朝廷は休みではなかったな」
「・・・このクソ忙しいのに休日もあったもんじゃないでしょう」

では・・・。二人はまた扉を開いた。
この目の前にある夢のような光景はなんだろうか。
仕事どころか床には紙一枚落ちていない。
机案もきちんと並べられ、通常の戸部よりも中は綺麗だ。
こんな光景年に一度大掃除の時にしか見れないというのに・・・。

・・・夢か奇跡か、はたまた仙人でも降臨なさったか。

俄かに信じがたく二人は戸部へ入っていく。尚書室にも侍郎室にもこれといった仕事の山は見うけられない。
どうなっているんだ・・・。

鳳珠は早速尚書室においてある、書類をみた。ここ三日分のものらしい。
これだけ見てもちゃんと三日働いていたらしき痕跡が伺える。

「鳳珠、また仕事ですか。
どんな仕掛けかわかりませんが、とりあえず、仕事はないと分かりましたし出仕時刻まで二刻あります。
寝ますよ」
「・・・ん、あぁ・・・」

鳳珠は後ろの戸が人一人分開いていることに気づいた。
下を除くが誰もいない。一応入室した痕跡を調べるがそれもない。
・・・誰がこんな事を・・・。
夜には警備のものが一刻おきに見回っている。
それに戸を開けっぱなしにしていく泥棒も考えにくい。
盗みましたと予告しているようなものではないか。

「・・・鳳珠?どうしました?」
「戸が開いていた。もしかしたら誰か外から侵入したのかもしれない。
書庫をみてくれるか?」
「・・・えぇっ!?
あっ、はい。分かりました」

柚梨がばたばたと出ていった。鳳珠は改めて室内を見渡す。
書類が溜まっていない中でここで一番重要なものといえば書庫くらいしかない。印もここにあるし・・・。
鳳珠はふと誰かが足を掛けたような跡を見つけた。朝靄で残ったのだろう。
それは外からの侵入ではなく、中から外に出た事を示している。外からの侵入の形跡はなく、中から。
しかも足跡はそんなに大きくない・・・。
鳳珠は眉を潜めた。
こんなことする奴は知り合いでは一人しか思い当たらない。というか彼女なら十分やりそうだ。
鳳珠は適当に戸部を見てまわった。
何か嫌な予感がする。大体彼女が戸から出て行く事なんて・・・
もしかして外に行っているのか?なら中を捜しても無駄か・・・。
そう考えながら戸部の物置のところで鳳珠は歩みを止めた。
そして、そこで倒れているを発見した。鳳珠は血の気が引いていくのを感じた。

「・・・なっ・・・。
っ!?おい、!!」

そのまま身体を起こすが全く問いに応じる様子はない。
身体は冷たくなっており、氷のようだ。
鳳珠の声を聞きつけた柚梨はすぐさまそこまで飛んできた。

「どうしましたっ!?鳳珠・・・。
・・・なっくん・・・・何で・・・。
大丈夫ですか・・・?」
「・・・息はあるし、脈も正常・・・。
この顔からして・・・寝ているだけだな」
「本当ですかっ?さっき戸が開いていたところから侵入した何者かに・・・」
「・・・それはないだろう。多分あれはが開けたものだろうし・・・。
この三日間ほとんど寝ずに動きつづけたのだろうな。
・・・馬鹿者が・・・」

鳳珠がそういうのだから多分そうなのであろう。の無事に柚梨はホッとして仮眠室へ向かう。

「今布団の準備をしますから、鳳珠はくんを暖めておいてください。
かなり冷たくなってそうですから・・・。
大事な部下に風邪引かせるわけにもいきませんからね」

鳳珠はとりあえず自分の着ていたものをに被せる。少しは温かくなるはずだ。
相変わらず身体中冷えており、まるで氷の中から出てきたよう。
握った手があまりにも冷たくて驚いた。よくもここまで、動いていたものだ・・・。
久しぶりにみるの顔はかなり酷いものだった。
鳳珠は少し後悔する。
一応定時には終わらせてもらえたようだが、連日の修羅場の助っ人として朝廷内をかけずりまわされ、それが終われば戸部でも最大の修羅場が訪れた。
しかも、尚書も侍郎もいない時に。残った戸部官吏達でその修羅場を三日で乗り切りここまで室を片付けるなんてまずない。
自分がいても少しは仕事が残っているはずなのに・・・・。自分達を省けばほとんど終わってない状態だっただろう。
多分そうならなかったのは、官吏になってまだ一年も経っていないこの新米下官の頑張りのおかげ・・・。

・・・相当、苦労したのだろう。

それは顔を見ればすぐに分かる。四日前に見たときはまだ良かった。でも疲れは残っていただろう。
久しぶりに見る彼女はとても苦しそうだ。
出会ってから、同じ紫州内にいてこんなに離れている時期はなかった。の事は大分分かっているはずだったのに。
何故、こんな風になるまで気づいてあげられなかった?
頬に手を触れるがその肌も冷たい。徐々に自分の体温が奪われていく。

「・・・すまなかった・・・」

謝罪の言葉がきんと空気の張った室にこぼれる。
溢れるのは、謝罪と後悔のみ。
悠舜に少し言って席を外させてもらうべきだったか。休憩時間、少しは様子を見にいって官吏達を休ませるべきだったか。
言っても聞かない事はなんとなく分かっている。自分も聞かないだろうから。
でも、言わないのと言ったのでは大きな差だ。

「鳳珠、いいですよ」

後ろから柚梨の声がかかる。
鳳珠はそのままを抱き上げて、寝台の上に寝かせた。
起きるまで寝かせておこう、そう考えた次の瞬間思いっきり背中を押された。

「・・・うわっ・・・」

突然のことに対応できず鳳珠はそのままの上に覆い被さるように倒れる。
そして、すぐにばさっと布団が被せられた。

「・・・なっ、柚梨っ!?」
「寒い時には人肌が一番ですよ、鳳珠vv
そのままくんだけ寝かせておいても絶対温まるまでに時間がかかりますので鳳珠、一緒に寝てあげてください」
「・・・はっ!?
ふざけ・・・」
「・・・鳳珠・・・。分かりました
『・・・・・・・。』

有無を言わさない柚梨の口調に鳳珠は喉まで出かかっていた言葉を飲みこまなくてはいけなかった。
しかし、被せられた布団の温かさと寝台の柔らかさに鳳珠も瞼が重くなる。

「大丈夫ですよ、ちゃんと起こしてあげますから。
じゃ、良い夢を」

そういって柚梨は隣にちゃっかり用意した寝台で寝始めた。
それは、卑怯だと思う。
鳳珠は大きく息をついて、隣にいるに目をやった。

鳳珠はここで誓った。
二度とこういう目に合わせない、と。
冷たくなった彼女の身体を抱きしめて鳳珠はそのまま目を閉じた。


   

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