白い服を着た進士達が朝廷に入っていく。
それは、厳しい試練と、苦痛を強いられる日々だった。
でも、それを強く跳ね除けるかのように飛び立っていく者もあり。


触らぬ能吏に祟りなし


二人の進士と一人の衛士が朝廷を縦横無尽に駆けていった。
それを見ながら同じく白を見にまとった少女が面白そうに口元を緩ませていた。
ふと太陽を見ると、約束の時間に迫っている。

「・・・なんとか間に合ったようねぇ・・・。
・・・かなり、遅いけど」

なんとか受付をすまし、下吏に案内されていく二人を見送ったあと、彼女は姿を現す。
どこからともなく現れた進士に、さきほどの進士達に邪魔をしていた兵士はぎょっと目をむく。
その少女は紛れもなく上官から阻害しろと命を受けた少女。

・・・どこから現れやがったんだ。

彼女は走った様子もなく、何食わぬ顔で受付をすませている。
ふとこちらを見ている衛士の視線に気づき、ニコリと笑った。

「案内役、ご苦労様でした」
「・・・今まで何をしていた?・・・。
何故さっさと入らなかった」

平気そうに振舞っているが、実際彼女の身体は冷え切っていた。
邪魔が入る前。早朝からある場所で先ほどの進士達が来るのを待っていたのだ。
と呼ばれた少女はふっと笑う。
「・・・秀麗ちゃんたちは何としてでも貴方が守ってください。
・・・そして、精神面では私が・・・。
彼女達には、この場所はあまりにも辛すぎる。
・・・私は全然慣れてますので、何言われてもどうってことありません。
むしろ、内心笑いの種にしてますから。
・・・見ててください、後で面白いことしてやりますので」

後が何年後になろうと、必ず、後という日は来る。
それが、彼女の最大の自信。

「・・・

衛士は心配そうな顔をして、こちらを見る。
彼女も彼にとっては大切な人。

「・・・心配いりませんよ、兄上。
私が何より強い事は貴方が一番分かってるではありませんか。
せっかくのチャンスを・・・ものにしてみてくださいね?
・・・久しぶりのお休みだと思って。・・・王様?」

そういって、丁寧に衛士に礼をするとは下吏に連れられ、大堂へと案内される。
誇らしげな彼女の背を見送って、衛士はその場を去った。

・・・ここからが始まり。

が大堂につくと、既に秀麗達の非難は続いていた。
その中には何食わぬ顔で入っていく。
秀麗に比べ容姿も美しい部類に入るだが、結局それも嫌味を言われる素材にしかならなかった。

「・・・こっちも本当に来たのだな。
後宮と勘違いをしてもらっては困るのだがな」
「上の官吏を使って無理矢理入ったのではないか」

・・・まぁ、いいところはついてるじゃないの。

元々、身分がとても極秘のために霄太師と宋太傅を脅してみましたvv
なんてここでいったらどうなるだろうか。
ちなみに、これで駄目だったら彩七家当主の署名を全て集めてくるつもりだったので、彼の言い分に間違いはない。

それに、は内心呆れて思う。
上の官吏をどう自分の思い通りに動かせたとしてもこの批判はやむわけがない。
それが耐えられない姫ならば始めからこんなところにいないはずだ。
それに、こんな道を選ばなくともこの才能があれば、金なら他で沢山手に入る。

批判が秀麗からに移り変わったために、秀麗の隣に来た時彼女が申し訳なさそうな目でこっちを見ていた。
はニコリと笑って首を振る。
・・・貴方が心配する必要はない。
その証拠には全くと言って傷ついている様子はない。

「言わせておけば良いのよ。
・・・自信を持って。秀麗ちゃん」

隣にいた少女はこくりと頷いた。
ちなみには秀麗に続き四位で国試に及第した。
批判がやみ、二人の官吏が入ってくる。
一人はヘラヘラとした親父、礼部尚書蔡官吏、一人は頑固そうな親父、教導官の魯官吏。
は内心クスリと笑う。
あのヘラヘラした方・・・・絶対落ちていくわね。
その予想は彼女が思った以上に早く現実と化したものになることはまだ誰も知らない。

そして、話も終わり各進士に仕事が振り分けられる。
影月は沓磨き。秀麗は厠掃除。
そして、に振り分けられたのが・・・。

「・・・茈進士に申す。戸部の雑用」
「・・・え・・・?」

睨まれた。

「御意に」

は咄嗟に礼をとった。
焦った。
物凄く焦った。
これには隣にいた秀麗も驚いた。
・・・もし、と順位が一つでも違っていたら自分がそうなっていたであろうか。
・・・あの仮面尚書と顔を合わせるのは出来るだけ避けたい。

なんの縁があるのかは知らないが知り合いの分だけこれはもうけものだ。
は礼をするしたで笑みを作った。

通達も終わり私達はバラバラに散る。
秀麗や、影月とは違いちゃんと仕事を貰えたであるが、その本当の意味を知るのは上官と秀麗のみ。
他の進士達もいささかの待遇には驚いているようで、また嫌味の種が増えた。

「・・・・・・。頑張ってね」
「えぇ、バリバリ働く気満々できてますから」
「・・・あそこの尚書・・・。
厳しいけど多分優しい人だから。きっと良くしてもらえるよ。
・・・・多分」

は少し驚いた。
鳳珠と秀麗が知り合いだったことは知っているが、まさか仮面しか見てないあの状態でそこまで彼のことを見抜けるとは・・・。
は笑う。

「・・・意味わかんないよ、秀麗ちゃん。
・・・じゃ、頑張ってね。二人とも」
「・・・えぇ」
「お昼にまた会いましょう」

三人は別れた。
ここで一人になるのは心細いと思うが・・・。
は自分の目的地に歩いていく二人の背を見た。
・・・・どうか、くじけず頑張ってこの二ヶ月乗りきらせなければ・・・。
国としても、彼らを潰すわけにはいかない。
彼らの後を追う劉輝の姿を目にし、少しは安心できた。

次は自分の身を安ずる番かもしれない。
ひしひしと周囲から殺気を感じる。
秀麗達とは違い、は守ってもらえる者がいない。
・・・ここが長年朝廷歩いてきたものの腕の見せ所ってやつね。
は早足で廊下を歩いた。
それに続いて、隠れていた兵士達も彼女の跡を追う。
しかし、角を曲がった時、彼女の姿はどこにもなかった。
違った方向へ行く彼らを見送ってはふっと小馬鹿にするように笑った。

「・・・残念。あんた達よりもずっと朝廷内に詳しいんでねぇ・・・。
私に勝るものは母上と兄上(劉輝)しかいないっつーの」

幼い頃は、良く裏道を使って鬼ごっこしたものだ。
戸部に行こう数歩進んだ先での笑いの種はまた増えた。
わざわざ『戸部』と矢印が振ってある。
勿論戸部がある場所は、矢印の反対側。

「・・・いやー、結構国試は難しかったんだけどなぁ・・・・。
それを受けた官吏達の考えることって、その辺にいるガキをここにもってきた方がこれは使えるぞ・・・。
あぁ国試通ってない人もいたんだっけ?」

は騙されず逆の方向に行ったが、その後にきた某侍郎はその矢印を信じ、戸部へと永遠と辿りつけない罠にはまっていたとか、いなかったとか。


早速、戸部についた彼女を迎えたのは綺麗な無視。だった。
誰一人としてをいる者と認めず、空気として扱っていた。
それが、ここで出来る精一杯の嫌味。口に出そうものなら上司に睨まれ即行首だ。

に気づいた柚梨が尚書室に迎え入れてくれる。
の仕事は夏に秀麗がやったものと対して差はなかった。

「・・・茈進士」
「はい」

初めて鳳珠や柚梨の仕事をしているところをみる。
やっぱりできる上司だ・・・雰囲気でそう感じて少し誇らしく感じた。

感情のない声で自分の名を呼ぶ、仮面の上司。
それは、自分の良く知った人で・・・隣には景侍郎が控えている。

「まず、この朝廷で働く際に言っておくが・・・」
「尚書の顔、名前、その他もろもろを他言しないこと、ですね。
心得ております」
「では、今からやって欲しい事を言い伝える。
完璧にこなせ。
失敗は二度まで許す。三度目は許さん。
手始めに、そこにおいてある書類を全て各部署に届ける事。半刻で全て終わらせろ」

「かしこまりました」

は自信満々の表情で答える。
むしろ、この三人は顔見知り。
別に誰も入ってこない尚書室なので普段通りでも構わないのだが、やはりここは仕事場として。
・・・色々演技をするのは面倒な事だが仕方ない。
は早速、運び始める。
が出ていった後、柚梨がクスリと笑う。

「・・・なんか、見ていて面白いですねぇ。
っていうか、くんはいつもと変わらないですけど、貴方の方が見ていて飽きない」
「お前もさっさと仕事につけ」

戸部尚書、黄奇人は邪魔そうに言うが、そんなこと長年付き合っている柚梨には通じない。

「・・・全く、可愛い侍女をこき使うなんて貴方も最低ですねぇ・・・。
こんなの半刻で終わるわけないじゃないですか」
なら必ずやる」
「全く、自信家ですね。
しかし、今回の嫌がらせの数々は過去最悪ですね。
君だけでも貴方の元にいたのは正解でした」

ここで、に何かがあれば、必ず彼女を使っていた鳳珠にも直接伝わる。
私事情もろもろ関係なくこれは仕事だ。
仕事を邪魔されたなんぞ、仕事命の鳳珠を怒らせる十分な材料だ。
柚梨が話しているが鳳珠は既に次の仕事に移っていた。それでも彼は話しつづける。

「それにしても・・・魯官吏に直接『君が欲しい』と申し出た貴方には正直驚きましたよ。
・・・何か、君が良い訳でもあるんですか?」

意地悪そうに聞いてみる柚梨。
質問の意図が分かり鳳珠は仮面の下で嘆息した。

「丁度勉強を見てやってるときにの計算能力の高さに気づいてな・・・」
「・・・なっ、鳳珠・・・貴方まさか・・・」

思いも寄らない上司の回答に隠されていたものをすぐに悟り、柚梨は声を震わせて言う。

「・・・あぁ、にはたまりにたまった財務の計算をしてもらう。
この時期特に賄賂が流れる。国の予算を勝手に使用してもらっては困る」

彼自身はそこに目を光らせているため、無駄な雑用をしている暇がなくなってきた。
そこに時間を使うため、彼女が助っ人としてやってきたわけである。

「・・・君を助けるためだと思ったら、そんなことを考えていたなんて・・・。
この鬼畜、人でなし。
・・・君は優しいですし、貴方の才能を見ぬいて慕ってますけど、そんな事続けてるといつか見限られて捨てられますよ」
「・・・柚梨・・・・」

本当に怒り出したらしい上司を見て、柚梨はそろそろ退散することにした。
一応自分にも仕事は沢山分けられているのだから、それを終えぬ事には彼でまた遊べない。
長年付き合った結果、仮面に深みを覚えてきただけでならぬ、それで遊べるようになるまで昇格した柚梨。
彼の最強伝説はこれからも続く。

人のいない回廊を走ってなんとか半刻で仕事を終えたに待っていたのは、机案仕事。
座っていられるだけで楽なのだが、そこに積み重なっているのは半端ない書類の数。
数にしてみれば、尚書室の机案と対して変わりないのだが、そちらに比べればこっちは単純計算ばかり。
柚梨は申し訳なさそうにしていう。

「・・・なんとか午前中に終わらせてくださいね。
それが終われば帰ってよろしいそうです。
・・・あとで鳳珠をきつく叱っておきますので」

・・・上司をきつく叱る部下って・・・・。
と内心は突っ込んでみたが、それは言葉にならなかった。

「いいえ、お心使いだけで結構です。
必ず午前中にはおわらせますので」

沢山紙が積み重なっていた事が幸いし、他の官吏たちの冷たい視線を直に感じずにすんだ。
それだけがありがたいことだった。
は書面を見てニヤリと笑う。
こんなの私にかかれば算盤なしでやってのける。

彼女の仕事の速さは尋常ではなかった。
女だと馬鹿にしていた彼らだったが、その仕事の速さに思わず筆を止めてしまったほどである。
算盤を使わずに一瞬で計算をしてしまい、それを直ぐに紙に書き出す。
筆を動かしている時間が遅いほど、彼女の計算能力は優れていた。
算盤を使うときといえば、メモ程度に数字を並べているくらいだ。
柚梨もそれには驚いた。
そういえば、以前に戸部の書類ミスを指摘しただったが、これほどとは・・・。
は言葉通り、午前中に書類を仕上げとっとと戸部を退散したのであった。

午後からは大量の書類を片付けなければいけなかった。
新進士三人は揃って府庫に集いテキパキと書類を片付けていく。
それにしても一人分机一個占領するほどの書類の量だ。
まだこぼれてくる分もある。

「・・・いやー、本当に嫌がらせとしか言いようがないわね。これは流石に・・・」
「本当に、それにしても・・・貴方何かまずい事でもやったの?
あんたの仕事私達の倍あるわよ」
「・・・別に・・・何も?」

した覚えはない。今日は完璧に仕事をこなせたはずだ。
一応、襲ってくる兵士は巻いたし、事件に巻き込まれないように事前の処置をしっかりとっているだけだ。
・・・要するに、に嫌がらせをするならここでしか出来ないというわけだ。
しかし、の仕事をさばく速さは並の官吏よりも早くそれには秀麗達も絶句した。
難しい計算も算盤をメモ代わりにすらすらやっていくので、通常五分が一分だ。

劉輝は奮闘する三人を見て、それから府庫を出ていった。
自分は自分ですることが山ほどある。
まさか、徹夜して朝日がでるまで続く仕事だとは彼らは思ってもいなかった。


そんな日々が一週間続いたある日。
雑務に追われた彼らを見送って、劉輝は執務室へ向かった。
一応王は王ということで、やることもある。

「・・・主上」
「・・・なんだ?絳攸、楸瑛」

執務室にいくと、待ち構えたように二人が並んで立っていた。
劉輝は首を傾げた。

「何だ?・・・何か変わりでもあったのか?」
「・・・は何者だ」

絳攸からの厳しい指摘が劉輝に刺さる。
そういえば、秀麗の家に出かけた時、思わず懐かしくてと仲良さ気にしてたために何か知っていると思われたのだろう。
というか、物凄く知っているのだが。
勘の鋭い彼らだ。並べてみれば確かに似ていると自分。合わせて静蘭。
初対面にしてあの親しさ。

・・・・まずい。

劉輝は表情に出さないのが精一杯だった。

「仕事速度も並の下吏・・・いや、賄賂使って出世した上官より遥かに早い。
それに今嫌がらせできなくて悔しがっている官吏の噂を耳にする。
朝廷内を迷ったのは見たことないし、全てを把握しているように動きまわっていると」

・・・既に、迷子の部類で遅れを取ったか絳攸よ。
内心そう突っ込みながら劉輝は思った。
が出来すぎているのは当たり前である。
まず、彼女の母親から。
彼女は王に取り入って妻になっただけではなく、三師と並ぶ王の右腕として働いていたそうだ。
勿論、王の寵愛は一人占め。嫌がらせは酷く、暗殺者も常に目を光らせている中に彼女はいた。
でも、彼女は自分の力でそれを跳ね返し、娘を立派に育て上げた。
勿論その娘も反感を買う事になり、かなり多勢から狙われていた。
彼女は自分を守る術を見つけ、見事に今まで生きてきた。
今では自分とほとんど違わぬ、武術をもつ。

そして、次に教育。勿論、彼女の母親はを次の王の『妹』として飾りにしておくのではなく『右腕』となるよう育て上げた。
いや、むしろ王になるために育て上げられたといっても過言ではない。
誰からもなめられる事のないよう礼儀作法は完璧に。
国試をうけても上位合格圏内の頭にするために物心つく前から勉強。
ちなみに絵本がわりに、分厚い国試用の本だったそうな。
官吏としてもきちんと働けるように、あらかじめ書類の処理の仕方も習っている。

要するに、いくら才が同じくらいあっても、絳攸や影月とは出発地点が違うのだ。
聞いたところによると今の彼女は黄尚書にかなり好かれているらしく、もし戸部へ配属となれば朝議にでもついてこられるだけでもさせてもらえるかもしれない。
そうして、生の話し合いを聞いて体験すれば、数年あれば議論も今の絳攸と対等に出来るだろう。
彼女にここで働く官吏として必要なのは、現在の朝廷を見て、慣れること。
一年で侍郎の位置につくとはかなり異例中と言うか、燕青並にありえないことだが、なら完璧にこなすだろう。

そんな彼女の意志は、
『いつか自分も紫家を名乗りたい。』
しかし、朝廷に入ったはいいものの彼女の事だ。
なんの後ろ盾がなくても、のちに一気に幹部昇進は見えきっている。
それを王の後ろ盾。といわれないために、今は必死になってその身分を隠し中なのだ。
今、彼女のことを知っているのは、自分と静蘭。後はジジイ二人。そして黄尚書に紅尚書。
側近であろうと、彼女の悪戯心『全ての人の度肝を抜いてやりたい。』の意志を尊重し(ぇ)彼らはそれを隠しとおすことに決めた。
ちなみに彼ら紫兄弟は、相思相愛。極度のブラコンでありシスコン。互いに秀麗は物凄く大切だがそれと同じくらい兄妹の事も大切。
何としてでもこの場面を乗り切らなくては・・・。
後に王は語るが、今までで一番頭を使ったかも知れない。と。
能吏に嘘がつけるか。劉輝はそれをなした事が一度もない。
彼は本来正直者である。
しかし可愛い妹のためにここは絶対黙秘を通さなくてはいけない。
劉輝は腹を括った。

「・・・知らぬな。
彼女の才能に気づいた黄尚書が、急遽秀麗と共に試験を受けさせたのであろう。
その突然さの推薦だけあって、それに見合う凄い才能を持っていると思うが・・・。
・・・気をつけろよ絳攸。後に追い越されるぞ」

黄尚書には申し訳ないがこれしか思いつかないので、の事は全面的に彼に押し付ける事にした。
彼ならいくらの絳攸であろうとも、真実を問いただす事は出来まい。

「・・・・・・」
「・・・・絳攸?」

上の空の彼に劉輝は少し眉を潜めた。
いつもなら、嘘を見ぬいてズバズバつけこんでくるはずの彼が、今日に限って反論はない。
気になるところだが、ここはここでもうけもんだ。
楸瑛も生憎、より絳攸のほうに気を取られているようだ。

「・・・さて、では例の計画の進行状態を教えてもらえるか?」

椅子に座った劉輝はもう王の顔になっていた。


そして、また数日がたった。
秀麗たちの帰りが遅いことには眉をひそめる。
様子を見に行った影月も帰りが遅い。これは何かあったのだろうか。

大量の書類を片づけて、は伸びをする。
そろそろ精神的にも限界に近い。それに連日鳳珠の溜めた書類を各部署に届けに走り回らなくてはいけない。
そこまで体力が残っているだろうか。
ここまで睡眠時間を取ってない日が続いたことはない。
鏡を見たら顔がひどくやつれて、目の下も隈ができている。

「・・・あぁ、流石にこの隈はいかんわね。
それより睡眠っっ!!」

外を見ると明るくなっている。
目の前には片づけた書類の山。朝ご飯を食べたら大堂にいってちょうどなくらいだ。
は頭をふる。
・・・負けてらんない。一日貫徹くらいどうってことないわ。
はなんとか気力を保ち、最後の書類配りに勢をだした。


「・・・秀麗ちゃん・・・影月君っっ!」

最後の礼部への書類を持ってきたときに彼らにあった。
彼らのしていたのは回廊の掃除。

「・・・何があったの?」
「・・・いえ・・・秀麗さんが・・・泥を投げられて・・・。
で、吏部侍朗から掃除を命じられたので・・・」

また大変な事を命じてくれたものよ、吏部侍郎さん・・・・。

「いっ、今すぐこの書類届けて私も手伝うから・・・。
大変日が昇ってきちゃった・・・っっ。」

は走ってして礼部に向かう。
扉を叩こうとしてふと手を止めた。
何か人の声が聞こえる。

「・・・絳攸様?・・・後は・・・」

は扉の前でじっと聞き耳を立てた。
あのヘラヘラ親父こと礼部尚書蔡官吏。
立ち聞きするのはいけないような気がしたが、かといって、ここで入っていったらいけないような気がする。
どうしようかと迷っていたが、聞こえてくるその会話のないようには瞠目した。
・・・これは・・・。

話が終わり、恐らく絳攸の方がこちらにやってくる。
は急いで庭におりその場に隠れた。
絳攸の背中は怒っているのか、動揺しているのか、そんな雰囲気を出していた。


   

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