明日は休日だった。
最後の仕事を終えて達は伸びをする。

「お休みねぇ・・・」
「そうですね。やっとゆっくりできます」

影月も疲れた目を擦りながら腕を伸ばした。

「影月くんは勿論うちにくるわね。
はどうする?」
「・・・あ〜・・・私は以前の雇い主さんのところにまだ辞めるって言ってきてないのよ。
だから明日正式に行こうと思ってね。
・・・官吏になる直前まで仕事させてくれたから・・・」
「・・・官吏直前まで・・・仕事していたのか?」

珀明が信じられないという表情でを見る。

「ん〜・・・まぁそうね。
国試の前も昼は勉強、夜はお仕事ってやってたから。
あるお偉いさんの侍女やっててねぇ、結構給金良かったから・・・。
秀麗ちゃんもそうしてたでしょ?」
「・・・ん?えぇ・・・まぁ・・・。
でも私は一ヶ月前にやめたけど・・・・まさか直前までやっていたとは・・・・。
だから、順位悪かったんじゃない?
明らかにの方が私より頭良さそうじゃない」
「いや、勉強してもしてなくても私の実力はこんなもんよ。
貴方達には何しても負けるわ・・・。
あの馬鹿はどうともいえないけど」

一瞬、ここにいる全員あの極寒の国試を思い出した。
ここにいる全員、某青年の抗体をもつ人たちである。
龍蓮という難関の壁を乗り越えて国試に上位で受かった彼らの力はいろんな意味も並外れて凄い。
と秀麗の会話を聞いて、珀明は何もいえなくなった。
大切な試験が近いというのに何をやっているんだこいつらは。
それで自分よりも高い順位を勝ち取っている。
・・・化け物だ。

「・・・というわけで私はここで仮眠とってから、そこに向かうんで、ここでお別れね。
休日ゆっくり楽しんできてね。皆様」

はふざけて礼をして府庫を去った。

「・・・なぁ、あいつ何者なんだ?」

・・・さぁ私も良く知らないわ。
丁度・・・一年前当たりに知り合ったんだけど・・・・。
突然ひょっこりあらわれたの。
気づけば隣で一緒に賃仕事してたわ・・・。
結構いいところのお嬢様っぽいんだけど、違うのかな?」
「どこの家の者か知ってるか?」
「・・・さぁ?『茈』っていう姓があるのを知ったのはここにきて始めてだし・・・。
家の場所も知らないわねぇ・・・。
でも、国試受かってんだし、あの黄尚書が後見してるんだし。怪しい人じゃないわよ」
「そうですよ。
結構矜持は高いですけど、良い人ですよ」
「・・・それは分かっているが・・・。
何か引っかかることがある」

彼らは首を傾げたがそれも少しの間。
秀麗達は各自家の路についた。

起きた時間は既に日が昇っていた。
もう、正午も過ぎた時間だ。
が目覚めたのはぐっすり眠ったからではなく・・・。
周囲には殺気が満ち溢れていた。
休日とあって、この部屋を使っているのは自分しかいない。
この感覚は久しぶりに味わうものだった。
は機会を見計らって布団を宙に投げた。
それで一気に襲ってきた男達の気を引く。
の寝ていた場所には数本の短剣が刺さっていた。

「・・・あらら・・・。
寝床に襲いにくるなんて・・・礼儀なってないんじゃなくて?」

はにこりと笑う。
今は手加減してやる義理もない。
は逃げ道を探し、そこへ向かった。

「後宮の後ろの地まで行きなさい。
四半刻には私もそこに行ってあげるわ」

は風のように逃げ去った。
それに兇手はついていけず、仕方なく彼女の指した場所に向かうことにした。
彼女は必ず来る。そんな気がする。


は一度家に帰って服を着替えた。
進士服なんて着てられない。
は、高価な衣を引っ張りだしてそれを身につけた。
とっととあの雑魚共を片づけて今日は行かなくてはいけない大切な場所がる。

「・・・よし」

ピシッと帯を締めて、短剣と扇を手に持つ。

『・・・紫。行きます。』

長い間留守にしていた家を飛び出し、は後宮に向かった。
あの場所に行くのは大体十年ぶりだろうか。


そこにはたくさんと兇手達が集まっていた。
はその中に降り立つ。

「ほぅ・・・。馬子にも衣装だな」
「でしょ?・・・って失礼ね。
悪いけどこの服汚すわけにはいかないから。
お手柔らかにお願いします」

いい終わらないうちにかかってくる奴もいる。
は構わず短剣をふるった。
血が飛ぶ。
昼間に舞う血は更に紅く、綺麗な色を帯びていた。

「ここでは声もほとんど聞こえないし、結構死角になるんだよね。
踊ってもらうわよ」

しばらく好調に動けていたが、やはり戦闘とは十年近くかけ離れていたので体力が落ちるのは早い。
使わなかった筋肉が痛む。
そして、敵を切る力も浅く、決定打がない。

「・・・くっ・・・」
「やっぱり、女官吏さんにはここまでが限界だったか?」
「でもまぁ、ここまで出来れば上出来な方じゃねぇの?」
「殺せとの命令が出ているが・・・。
この顔は殺すには惜しすぎる」
『・・・全くだな』

凛とした美声が耳に渡る。
新たな人物に兇屋の視線がそこに移った。
私も彼らの間からその人物の顔を見たが、久しぶりにみるその美貌に一瞬言葉を失ってしまった。
脳内では、わけが分からず思考回路が混乱しているようだ。

「・・・なっ・・・ほ・・・いや、こ・・・
・・・貴方・・・何故ここに・・・っっ!?」

鳳珠とも黄尚書ともいえずの頭はここまで言うのが限界だった。
共通して思うのは、何故この人がここにいる?
ここは、後宮でしかもまだ奥にある場所なのだ。
ここに来るには後宮を通ってこないとこれないはずだ。
彼が後宮に用などない・・・はずだ。
兇し屋ときたら鳳珠の顔をみた瞬間固まって動かない。
見惚れている、絶対見惚れている。
彼は周りを睨んでふいに手を一人の前に当てた。
その瞬間その兇手は後方に激しく吹っ飛んだ。
それをみてやっと我を取り戻した兇手達だが鳳珠に睨まれた瞬間動きが止まる。
と鳳珠が組んで数分後。
既に回りは死体と気絶した殺し屋達がいた。

「羽林軍の兵士を呼んである。
ここは引くぞ」
「・・・あっ、はい」
「・・・あと・・・」

その辺で気を取り戻しフラフラと立ちあがってきた兇手に鳳珠は近づく。

「・・・少し頼みがある」

この時点で、鳳珠の魅了攻撃は完璧に聞いていた。
恐らくここ一年は最低効力が続くであろう。呪いよりも性質が悪い。
兇し屋で名高かった青年もここは黙って頷くしかなかったと言う。

「・・・あの・・・黄・・・尚書?」
「・・・話は家で聞こう。
お前もそのつもりだったのだろう?」

一歩前を歩く彼の振り返りざまの横顔もまた美しかった。
喉に声が詰まったがは頷いた。

「・・・はい」

やはり彼には勝てない。


珍しく仮面をとったままの彼をみて休日にもかかわらず出仕となった運の悪い官吏たちはしばらく仕事できる状態じゃなくなったとか。
お気の毒に。
軒に乗って二人は一息ついた。
出発してがおずおずと口を開く。

「鳳珠様、・・・早速お言葉ですが・・・」
「なんだ?」
「・・・昨日・・・家に帰ってませんよね?貴方」

大体今日は休みの日だ。
それにもかかわらず朝廷にいること自体おかしい。

「・・・・・・・・・あぁ」

少々恨みがましく言われた言葉に鳳珠は苦笑交じりの声で答える。
朝帰り、どころか昼帰りである。
はため息をついた。
自分がいなければまた家に帰らない日も多々あったことだろう。

「鳳珠様、何度早めに仕事を切り上げて帰ってください、と私が申し上げたことか!!
少し目を放した隙にこれでは・・・。貴方長くは生きられませんよ」
「大丈夫・・・・仮眠はとった」
「・・・仮眠ってどうせほんの二刻でしょう・・・?」

自分でさえ、六刻しっかり眠ったというのに。(寝すぎだ)
言い返せなくなった鳳珠は降参した。

「・・・少々急ぎのようがあってな・・・。
なんとしても今日中に・・・。
・・・そうだ、
恐らく聞いてないと思うが、明日査問会が開かれる」
「・・・査問会?
・・・それって・・・」

やはり知らなかったかと、鳳珠はを見る。
そして、言い辛そういった。

「・・・秀麗とお前が不正に国試に受かったとされていて・・・。
それで、多くの官吏の前でそれを証明する。
恐らく、官吏たちの質問に答えるだけでいいと思うが。
・・・お前ならできるだろう?」

は驚いて鳳珠を見る。覚悟はできていたが・・・。

「・・・鳳珠様・・・。
もしかして、ご迷惑をおかけしてませんか?」
「まぁ・・・私達も少々潰したいハゲがいるのでな・・・。
丁度良い」
「・・・ハゲ?」

思わず鳳珠の台詞に首を傾げる。
朝廷内にハゲなんていたっけ・・・?危険な人ならいるけど。(マテ)

「・・・現在の状態を簡単にいうが、あの馬鹿が『自主的軟禁状態』にいる。
が、全く気にすることはないだろう」
「・・・黎深様がっ!?」
「心配するな、王より優雅な生活を送っている。
あれは、出ろといわれても中々出てこんだろうな・・・」

実は、自分のところにも刺客は来たのだが無理矢理逃げてきた。
その時の状況を鳳珠はぼんやり振り返った。


徹夜して仕上げた資料が出来あがり、鳳珠も一息ついているときだった。
柚梨が、お茶を持ってきてくれる。

「・・・柚梨、出来た。
確信しておいてくれ。私は王のところに行って来る」

まぁ休日だが、内朝くらいにはいるだろう。
そう考えて鳳珠が椅子から立ち上がったときである。
奥から足音がたくさん聞こえてきてこちらに向かってきた。
二人は顔を見合わせる。
思いきり扉が開いた。

「・・・なっ、ちょっと貴方達なんですかっ!?」

いきなり入ってきた人物達に柚梨が声を上げる。
名も知らない下級武官たちが計十人。
鳳珠が、柚梨を止めた。

「・・・連絡せず、挨拶もなしに入ってくるとは・・・・。
・・・貴様らそれなりの覚悟は出来ているのだろうな」

仮面の下から聞こえる声は完璧に冷えていた。
その冷ややかな声に一気に場の空気は凍りついた。
最近の彼は本当に危険である。柚梨は本当に気が気ではなかった。

「・・・用件は?」

何もいえなくなった武官達に鳳珠は問う。
何とか我を取り戻した下官たちは蚊の鳴きそうな声で答えた。

「・・・国試不正介入の疑惑で、黄尚書、きっ・・・貴殿の見柄を一時的に・・・こここっ拘束させていただく。
・・・いえ、頂きます」

強気な態度はどこへやら。今なら彼らを雇った主を裏切り鳳珠に膝まづきそうな勢いだ。
鳳珠はフンと鼻を鳴らした。

「・・・聞けんな」
「鳳珠っ!?」
「・・・止めるな柚梨。
どうせ、黎深のところにもいっているのだろう?
確保されるのは奴だけで十分だ」

何が十分なのかはわからないが。
見透かされたように言われて下級下官たちはビクリと肩を震わす。

「少々強行突破になるが・・・。扉を閉めてもらえるか?」

その辺にいる下官がすぐに動く。

「私は奴より優しいから貴様らに今より三日休みを与える・・・」

鳳珠は、机の上にある白紙の紙と筆をとってさらさらと文字を書いた。
そして、付けていた仮面をはずす。
柚梨は、まさか・・・と嫌な予感がする。

「鳳珠・・・それは流石にまずいですよっっ!!」
「・・・私を拘束させようという自体がおかしい。
証拠もないくせに無理矢理ことを進ませるあのハゲを恨め」

この世のものとは思えないほどの美声が室内に響く。
『醜い顔を隠すため』と仮面を付けていた尚書の声がこんなに美しかったとは。
兵士達は、驚いて動けなくなっている。
そして紙をもって振り返る。
兵士達は、こんどこそ固まって動けなくなった。
息をするのも忘れるほどに。
部屋の中の時間が止まった。

「貴様らの名前全員この紙にしたためてもらおう。
私が直接主上に頼んできてやる。
今から二日。何が何でも休暇をとってもらう。
・・・勿論ないと思うが、このことを他言するようなことがあれば・・・分かっているな?」

ふっと絶世の美形の顔に笑みが浮かぶ。
兵士達の頭が真っ白になった。
彼から目が話せない。
頭に言葉が入ってきても理解する前に抜けていった。

「・・・鳳珠」
「・・・分かっている。
しかし、今回の件については私なしでは少々辛いものがあるだろう。
・・・黎深も裏で動いているが・・・私も直接叩きたい」

直接叩くなど、そんな恐ろしいことを聞ける日がくるなんて柚梨は思ってもいなかった。
もう、一時の同情どころではすまされない。逃亡まで手伝ってやりたいほど同情する。

「・・・そんなこと・・・」

一人の兵士が勇敢にも鳳珠に対抗してきた。
面白そうに彼は兵士に近づき取り出した扇で彼の顎を持ち上げ、自分の目線とあわせる。

「・・・なっ・・・なにを・・・」
「・・・言うことを聞いておいたほうがいいと思うぞ。
一般人で私の顔をみてそのような台詞が吐けた奴は珍しい。
・・・あのハゲに関わってなければそれなりに昇進できたかもしれないのにな」

間近で鳳珠の微笑を拝めた彼は意識が吹っ飛んでしまいその場に倒れた。
・・・つかえねぇ。と鳳珠は内心舌打ちしたが、まぁそれはそれ。これはこれ。
こいつの名前くらい誰か知っているだろう。

「・・・さて、時間が惜しい。
とっととこの紙に署名してもらおうか」

下級兵士達は首を縦に振る選択しか残されていなかったという。
柚梨は、そっと衣で涙をすくったという。
・・・嗚呼なんと御可哀想に・・・。
あのハゲのせいで何の罪もない下級兵士達の人生半分終わった瞬間であった。

「・・・あっ、そうだ・・・。
ついでだ。少し話を聞きたいことがある」

この部屋に入った下級武官は、既に鳳珠の支配下にある同然だった。
なんとか署名を終えた、紙をもって鳳珠は部屋を出て行った。
一応、仮面をつけようとしたが鳳珠はとどまった。
どうせ、この城全体にもしもの逃亡用に兵士が張り巡らされているだろう。
そんな中わざわざ仮面を付けて朝廷内を歩いてやる必要はない。
こういうときに、仮面を付けていたことがこんなにも功をなすなんて。
そもそもこの顔自体凶器だ。
休日なので官吏も少ない。鳳珠にとっては最高の仮面を外す条件だった。
そのことを知らないは幸せだったといえよう。
この日のことは、また城内での一切の禁忌となったらしい。
そして、鳳珠に気絶させられた兵士といえば三日の休息後も朝廷に姿を現さなかったらしい。

「王が城内にはいなかった」
「・・・なっ・・・」

鳳珠の一言では絶句した。
こんな大切な時に何をやっているのだろうか。あの兄は。
しかし、鳳珠にまで『秀麗のお付きの武官している』とはいえず黙っていたが。

「・・・主上を探して、後宮までおいでになったのですか?」
「・・・まぁそんなところだ」

はなんとなく感づいた。
疑惑をもたれているのは自分の秀麗も同じ。
私のように身を守る手段を持っていない彼女らには誰かの助けが必要である。
多分、彼はそちらの方に行っているのだろう。

鳳珠は外をちらりと見て目を細めた。

「・・・これは・・・」
「どうなされましたか」
「・・・どうやら・・・紅家が動き出したようだな」
「・・・なっ・・・それは・・・」

鳳珠が面白そうに呟いた。

「・・・、今の王をどう見ている?」

突然の問いには黙った。が、すぐに答える。

「彼は、とても優しい人です。しかし、多少天然は入ってますがピンチになればなるほど彼の才能は発揮されます。
あの紫宮の中で今まで生きてこられたのでそれだけでも価値はあるかと。
流罪になった清苑公子とは能力的に劣ると思われますが、・・・私的にみて清苑公子より現王の方が王の器です。
純粋故に、何事にもまっすぐにとらえることができる。
あの方が王として一番適任でしょう」

天才と謳われた清苑よりも自分よりも、彼は真っ直ぐな心を持っている。
本気で国のことを考え、人の期待を裏切ることがない。
何より・・・人を信頼させる力を持っている。
上下関係にとらわれず、対等の見方を持つことで。
菖蒲を下賜された二人が良い例だろう。

鳳珠はそれを聞いて目を見張る。
前回吏部侍朗にも聞いたときにもそんなことを言っていた。

「・・・そんなに信頼にとる奴なのか?」
「私よりは確実に良い国を作るでしょう。
絳攸様に色々いじめられてますが結構暇な時間も多いはずです。
一度話してみてはどうですか?鳳珠様の空いてる時間にでも」
「・・・遠慮する。
あれは私を嫌っているようだから」

・・・恐らく黎深よりも。

「・・・あの人が人を嫌うってことほとんど聞いたことないですけどねぇ。
・・・もしかして、朝議ででも何かやりましたか?」
「・・・・・。」

図星か。

「・・・まぁ頑張ってください。
私が仲立てしてあげても構いませんし・・・。一応、貴方は宰相候補なんですし・・・。
王様と仲良くしておいた方がよろしいですよ」
「・・・考えておこう」

仲良くする気などさらさらないのだが。
そうしているうちに黄家邸についた。

鳳珠の部屋に入り、やっと一息つく。
戻ってきたな、という安心感がある。
しかし、ここもでていかなければならない。

「・・・そういえば、
言いたいことがあるといっていたな。
聞こう」
「・・・その鳳珠様・・・
今までお世話になりました。
貴方の侍女役・・・遅かれながら本日を持って辞めさせていただきます」

予想していたのだろう。鳳珠は何も言わない。

「・・・少し私の話を聞いてもらえるか」
「何でしょう」
「私は、これから宰相の座に行こうと思う。
しかし、それには一つ問題があってな」
「・・・問題?」
「私が戸部を抜ければ確実に朝廷はつぶれるだろう」

その証拠に自分が一日いないだけで戸部は正常に機能していない。

には、私の後見を勤めてもらおうと思っている」
「・・・あの・・・それはどういうことですか?」
「だから、私の後の戸部尚書はお前にやってもらおうといっている」
「・・・お言葉すが・・・柚梨さんは・・・?」

自分より確実に長い間戸部にいた彼の方が尚書の座にふさわしいのではないだろうか。

「あいつは、自分の補佐に付けるつもりだからいないものと思え。
それに今自分が戸部を抜けたとき柚梨に頼んでいるのだが、それにもかかわらず戸部は動かない。
・・・もう少し楽な部署であれば頼めるのだが・・・あそこは並な奴では手に負えないのだ」

そう自分が作り上げてしまったので、自業自得ともいえるが。
こうなってしまったため、朝廷もそのようになじみ、今から朝廷を新しくすると朝廷崩落は目に見えている。

が適任だろう。仕事速度は早いし、頭の回転も速い。
あの部署に必要なのは、的確な判断を素早くすることだ。
じっくり考えることは許されない。
柚梨は、どちらかというとその部分がぬけている」

じっくり考え、ちゃんとした答えを導く。
だから、タイプの違う自分の補佐に付けて足りない部分を補ってもらっているのだが。

「一年も私の元で働けば十分だろう。
あとは、頃合を見計らって私も上に行く。いつになるか分からんが必ず。
・・・で、だが・・・。
これからもここにとどまる気はないか?」
「・・・え?」
がいると、仕事の片付く手間も省け、おまけに色々教えられるだろう。
効率が良い。
勿論・・・それなりの給金も出すぞ?」
「・・・いいんですか?
だって私ずっとお世話になりっぱなしですよ。この館に」
「お前一人くらい正直言って変わらん。
・・・どうする?嫌なら構わんが」

は即座に飛びついた。
こんなおいしい話他にはない。

「よろしくお願いしますっ。前言撤回いたします」
「・・・早速だが、
この書類に目を通して欲しい」
「・・・・?」

各部署の決算である。
しかもかなり細かい。
はふと気がついた。いつも数字にしか目を通してなかったが、良く見るとおかしな事実が判明する。
が片づけた書類なので数字の方は分かっている。

「・・・鳳珠様」
「その馬鹿を明日叩きにかかる。
一緒に朝議に出てみる気はないか?少し面白いことになりそうだ」
「・・・いいんですか?」
「王が帰ってき次第柚梨に知らせろといってある。
許可が下りればいいだろうな。
査問前に黙らせてやれ」
「はい。」


城に帰ってきた劉輝を待っていたのは二人の側近と彼の苦手とする尚書だったという。


次の日。
は白い進士服に袖を通した。
まさか、進士の身分で朝議に出ることになろうとは思ってもいなかった。
門に行くと、鳳珠の送迎のための軒が止まっていた。
はそこまで行くと礼をした。
中から柚梨が出てきた。

「・・・おはようございます。景侍朗」
「おはようございます。くん。
今日は・・・鳳珠の気まぐれで本当にごめんなさい」
「いえ、私も驚きましたけど、朝議には出てみたかったですし。
大丈夫ですよ」

柚梨は本当に申し訳なさそうに頭を下げた。
も焦って頭を下げる。

「・・・鳳珠様はもうすぐ支度が整いますのでしばらくお待ちください。
では、私はこれで」
「気をつけて・・・」

一緒に軒にのっていけないのも官位の差。
は朝廷までの道のりを歩いていった。
特に遠い距離でもない。なんせ彼の家にきている黎深でさえ歩いているらしいから。

「・・・さて、どこから忍ぼうかしら?
流石に早朝ってわけじゃないからなぁ。この格好で朝廷に忍び込む真似できないし。
門に行ってもどうせ門前払いだし。
・・・困ったわね」
「・・・そこにいるのは・・・か?」
「おや、これはこれは珀明。
・・・なんでいるの?」

本当に珍しかった。
彼は照れたようにコホンと咳払いをして言った。

が朝議に出ることくらい聞いている。
恐らく一人で来ると思ってな。
入れないだろう、中に」

極秘の人しか知らないはずなのに何故知っているのだろう?と私は首を傾げた。
しかしまぁ、別に知られてどうとか言う問題ではないので別に良いが。

「・・・そうね」
「来い、中に入れるところを知っている」
「・・・はい?」

彼が来たのは朝廷の裏。
主に、雑用品が届けられるところだ。
朝の朝廷は色んなものであふれかえっていた。

「・・・あぁ、この人ごみに紛れて入っちゃえ。ってことね。
頭固いと思っていたけど、考えるじゃない」
「失敬な」

確かにここで働いているものなら進士と分かれば入らせてもらえるだろう。
二人は早速中に入った。
あとは府庫で時間を潰し、朝議に出ればいいだろう。

「・・・珀明知ってる?
この朝廷内でいま問題になってること」
「あぁ・・・紅尚書が監禁されたって・・・」
「あれは監禁じゃないわよ。『自主的軟禁』。
暇つぶしと、ここまで助けてくれたお礼に真実を教えて差し上げましょうvv
色々知ってるわよ私vv」

ニコリをと微笑むにとりあえず、頷いてしまったが、知らなくて良い事実まで知ってしまい後に後悔する羽目になる珀明であった。

   

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