朝議が始まった。
紅尚書を抜く全ての上官達が集まり審議は進められる。
今回の事件は小物と呼ぶにも馬鹿らしい小物がとんでもない事をしてくれたため、かなりのものに怒りが募っていた。
いつも頓珍漢な台詞を言い、謎を深めている王ですらその言葉一つ一つにとげがある。
これは、起こっていたと同時に改めて某公子との血の繋がりを再確認するきっかけともなった。
王のさばきは見事なものだった。
これでもかというぐらいハゲの急所をついている。

「・・・さて・・・紅尚書の拘束の話もそれはそれで・・・。
もう一つ明らかにしておきたい問題が上がっていてな。
・・・黄尚書。」

これはこの場にいる中でも数名しか知らされていないびっくり企画。
王もこの時が楽しみでならなかった。
王の言葉に黄尚書が立ちあがる。

「最近興味深い話を耳にいたしまして報告いたします。
毎年国試及第者のために礼部が無償で郷里報告のために早馬を飛ばしております。
今年も状元及第者の杜影月が俸禄の銀八十両を丸ごと送ったそうですが、彼の郷里には一両も届いていなかったとか。
これはどう言う事なのでしょうね?蔡尚書」

台本があるかのようにすらすら言った黄尚書に対し、蔡尚書はなんとか答えた。

「・・・・早馬の使者が途中で落としたか、盗んだのだろう」
「・・・ほう・・・興味深いご意見です」

彼の声にもはや感情はこもっていなかった。
ただの棒読みがこんなに怖いなんて誰が思っただろう。
柚梨が、木管を取り出して鳳珠の前に置いた。
そこに入っていたのはキラキラ輝く銀八十両。

「・・・今年は藍将軍の手のものを貸していただき、それぞれ早馬を出した礼部官の後を追っていただきました。
例えその者が懐にしまっても、とりあえずどこへ流れるのか見極めて欲しいと。
・・・さて、彼らは懐に金子を持ったままどこへ行ったと思いますか?」
「・・・・・濡れ衣だっっ!!」

バンと机案を叩く音と共に蔡尚書は立ちあがる。

「・・・私は、まだどこへとも誰とも申し上げておりませんが・・・?」

簡単に墓穴をほった彼に心底同情。
蔡尚書は顔を青くして座り込んだ。・・・もう、終わりだ。
そう思ったが、奇人は気を止める様子もなく次の議題に移る。

「・・・もう一つ、私が気になった事を。
このたび新王陛下ご即位に伴い、財政の全面見直しをはかったところ配下の者から面白い報告がでたので報告いたします」

彼が上官にある書類の模写を配った。

「ご覧ください。何かお気づきの事は?」

蔡尚書がほっ、としたのはつかの間だった。
その書類に目を通しぎょっとする。
・・・・怒った彼らを収めるには、先ほどの攻撃ではまだまだまだまだ足りなかった。

「礼部から無駄な出費が多いのぅ・・・」

ボソリと霄太師が呟く。
彼は今回の件には全く関わってもないし子供の喧嘩程度にしか見てないが、楽しむ担当で三師の立場を有効活用していく。
隣にいた宋太傅は呆れたように、息を吐く。
既に霄太師の老後の楽しみと言えば、若い者イジメ。
その発言に先ほどまで震え上がっていた蔡尚書が更にビクリとなる。

「この件については、?進士に説明してもらう」

ざわりと会場がざわめいた。
それでも彼は続ける。

「彼女については査問会を開くまでもない。
主上の許可もおりている」

劉輝が頷くと場の空気が静かになった。
後ろの扉が開き、一人の少女が現れる。深く礼を取り、中へ進み出た。
突き刺さる視線の中、彼女は平然と前へ進みでる。
その姿をみて蔡尚書は思わず椅子から落ちた。

「・・・なっ・・・なんで貴様がここにいる・・・
確か・・・」
「彼女は今日のために、わざわざ余が呼んでおいたのだが・・・。
・・・何か?」

明らかに動揺しまくっている蔡尚書、もといハゲには内心爆笑寸前であった。
これはに限ったことではないが、本当に面白いことになったものである。
兇手を倒した直後、鳳珠が彼らの残りにいったことはこうである。

『・・・は死んだといっておけ。』

勿論このハゲはが死んだものと思っていたので、今ここに出てきた彼女をどういう風に見ているのだろう。

「・・・貴様・・・何故生きて・・・」
「・・・失礼ですが、蔡尚書。私は死んだ覚えなどないのですが・・・」

彼の中でまた何かがくるった。

「・・・・さて、黄尚書の元で私は半月仕事をしていたのですが、彼は『新王陛下のご即位に伴い、予算の見直し』を行ったそうです。
その書類計算を私がやらせていただいたのですが、数点疑問になることが出てきました。

先ほど霄太師様がおっしゃられた『礼部に無駄な出費が多い事』
そして、先ほど府庫にて見つけたのですが、もう一つ。
礼部における提出書のミスが遥かに多い事」

ざわりと朝廷内に騒ぎが起きる。
は持参してきた分厚い本を二冊机案の上に置いた。
鳳珠も彼女をみた。別にこれについてはなにもしていない。

「・・・こちらは府庫に保管してある、昨年の各部所における支出をまとめたものです。
そして、もう用はないと思っても一応奥のほうに保管してあった各部所から戸部へ提出したものが保管してあるものです。
こちらの本は府庫より、紅府庫官吏から許可を頂き、拝借して参りました。
見ての通り戸部は年中忙しく細かいところまで見ていられないのが現状と私は半月の研修で感じました。
そして、この全て他部署で計算までしてある報告書と戸部が領収書などをみて作成した書類と見比べてみると・・・。
中々の違いがあることにお気づきでしたか?」

は二つの本を立て吏部の一月のところを開いて見せた。

「吏部所を例にしてみますと、計算があっていますがやはり項目のところに若干のズレが生じております。
そして、戸部の出した合計とまた違いが出てきます。
これは、後の価格変動の関係により微妙に金額に差が出てくるのが原因です。
この傾向は他部署に渡って見られました。
・・・が、礼部については少々違いまして・・・」

が、礼部のページを開く。

「私が先ほど計算しましたところ、報告書自体の計算が違っております。
しかも吏部に比べ、数字が細かい事に気づきました。
確かに・・・これでは計算が多少違っていても誰も気づきません。」

私の目は誤魔化せませんけど。
普通の報告書は『金』または『銀』単位で終わっているにも関わらず、礼部は『銅』の一桁まで書いてある。

「しかし、この報告書が違っているにも関わらず、こちらの戸部の作成した書類を見てください。
こちらも多少のずれがありますが、ほぼ同じ数字になっています。
・・・それがほぼ全部の月で同じ現象がでておりました。
しかも、始まったのが蔡尚書。貴方が礼部尚書になった年からです」
「ふざけるのもいい加減にしろっっ!!
だいたい進士ごときが偉そうに言っているが、本当は全てそこにいる黄尚書からの入れ知恵ではないのかっ!?
そもそも、後見の元で進士を働かせると言う自体おかしい事でないかっっ」
「・・・私が、彼女に教えたのは貴方が礼部尚書についた年くらいです。
・・・付け加えると、見てもらっている書類ですがそれは今朝、杜進士と紅進士が『半月早い課題提出』ということで戸部に『連名』で送られてきたものです。
私達は模写したに過ぎません」

ちなみに、の身柄については彼女の計算能力を買った鳳珠がじきじきに魯官吏に申し出たわけである。
正直彼女なしで国家財政の全面見直しなんてやっていられない状態だった。
また朝議内がざわつく。
勿論、蔡尚書が鳳珠とがつるんでやっているのではないかという疑問を持たせたのはわざとである。
面白いほど、罠に引っかかってくれていてやっているこっちも嬉しいのだが、相手は墓穴堀まくりで張り合いがないのはつまらない。
今のなら確実に蔡尚書を叩きのめすくらい造作もない。絳攸になら後一歩のところで劣る・・・くらいだろう。状況によれば勝つこともできる。
黄尚書が自分の元にを連れてきた、ということに答えなかったのをいい事にさらに蔡尚書はつけあがった。
まさか紅黎深だけではなく、黄奇人までを倒せるとは・・・。
下級兵士にも捕まえられなくて、一時は諦めていたがやっと運がこちらにむいてきた。
蔡尚書はにやりと笑んだ。

「?進士を自分の元において仕事させておいた事については何も反論はないのかね?
これで貴方が国試不正介入した事実は明らかっっ!!」
『・・・・・・・・。』

鳳珠とは同時に絶句した。他の官吏たちも同じように絶句した。
この時点でここにいる全ての官吏たちが思った。
・・・こいつ阿呆だ。
『国試不正介入』については、最後のまとめ取って置き、今堂々と宣言するものではない。

「まぁ、私は彼女の後見ということは事実。何を言っても言いわけにしか聞こえないにしても・・・。
どうして国試不正介入ということにまで話が飛ぶ理由を聞かせていただきたい。
それに彼女の仕事の器量の良さは貴方が一番分かっているのでは?」
「・・・・は?」
「貴方の部下が毎日毎日飽きもせず、彼女達の仕事している府庫に激励に行っているというのを噂で耳にしたのですが」

噂というか九割は紅黎深からじきじきに聞いた話だ。(要するに愚痴)
全くもってくだらない事をしてくれたと彼は思う。

「・・・部下の話も聞いていないのですか?
あの時彼女らの三人分の仕事の量が、私達の年や、吏部侍郎、藍将軍の年に比べ異常に仕事の量が多かったことを。
これを片付けるのにどうして国試を受かってない者が出来るのですか」

・・・一人例外を知っているが、それは言わない事にする。
これは、朝廷内に一時噂になった話である。
興味本位で府庫に向かった官吏が後を立たなかった。
官吏誰もが知っている事。

「・・・そう言えば、昨日偶然下級武官に出会ったのだが・・・」

昨日の天気でも話すように鳳珠は話す。
一気に形成逆転され、挙句の果てに追い詰められた蔡尚書に更に更に追い討ち。

「突然、証拠もなく前触れもなく尚書室に突っ込んできた『下級武官』
そういえば、『国試不正介入疑惑』とか言っていたが、何事かと話を聞いてみると貴方から申し付けられた・・・そうで?
それも含めてお聞かせ願いたい」

こいつ・・・どうやって下級武官達を退かせたのか・・・?
やはり、金・・・?戸部尚書なのでそれもたやすく出来るだろう。
それとも『彩』一家の権力行使・・・
そう考えを巡らせながら彼は考える。
しかし、黎深がこんなにたやすく捕まり、奇人が捕まえらなかったのかがさっぱり分からない。
普通逆だろう。

「・・・そんな・・・私は何も知りませんな」
「控えということで名前をしたためて頂きましたが。
・・・見覚えは?」

王に提出したやつの控えをとっておいてやはり良かった。

「知らんっっ。」
「・・・そんな筈ないですよ?
彼らは貴方にお貸ししたじゃありませんか」

声の方向はあらぬところから聞こえた。
王の隣側近の位置についている藍将軍。顔に称える微笑と共に。
実は楸瑛。面白いとばかりに裏で蔡尚書とつるんでいたらしい。
絳攸から貰った娘の巻物を使って色々していたのだが、元々はこっちの人。

「・・・昨日黄尚書から聞かれましてね。
確かに私が貴方から申し出があったという旨を伝えました」
「・・・うっ・・・ぐっ・・・」

言葉に詰まった蔡尚書は最後の手段にでた。
彼が馬鹿ということは言うまでもない。改めて確認するまでもないが、馬鹿である。
もう、全ての官吏が彼の戯言に耳を貸さず、面白そうにことの成り行きを見ている傍観者となった。
確かに見ているだけならどれだけ面白い事だろう。
そして、彼は最大の禁忌に手を伸ばしてしまった。
黄尚書向けて高々と指を指した。

「そなたのその仮面は何だ。
素顔を見せられないような男が、どうして最高官までのぼりつめられた!
今だかつてそんなバカな話しはないっっ」

・・・あんたにバカ呼ばわりされたら終わりだな。
は内心突っ込んだが、ふと彼の話の内容を聞いて顔色を変えた。
どんなに冷たい視線にさらされても、蔡尚書の戯言に付き合っていてもその表情はほとんど変わらなかった。
が、ここに来てさっと変わる。
こいつ・・・これ以上野放しにて置いたら危険だわ。
もう、話のぶっ飛び方も展開もどうでも良くなった。
多分混乱していて何を話しているのか自分でもわからなくなってきているのであろう。
もし、仮にも国試不正介入があったとされても今はもうどうでも良い問題だ。
とりあえず、彼を止めなければ。
は本能でそう思った。
会場のざわめきを同意と違えた蔡尚書はますます図にのった。

「どこの誰とも知れぬものがその仮面一つで黄尚書になりすましているのではないと、誰が証明できる!?
そうだ、本物はお前が殺して入れ替わっているのではないか?
何もやましいとこがなければその仮面をとって素顔を見せるがいい」

誰かこのハゲ止めて!!(滝涙)
は直ぐに行動に出た。

「蔡尚書、本当に悪い事は言いませんからそれだけはやめておいた方がいいとご忠告いたします」
「小娘ごときが私に指図するかっ!?」

蔡尚書がを突き飛ばす。
柚梨が思わず立ちあがった。
・・・まずい、このままでは鳳珠が・・・。
劉輝が目を見張る。
・・・あのハゲめ・・・余の可愛い妹に・・・。
霄太師は面白そうに微笑んだ。
・・・いやー、今日は気まぐれに来てみて正解だったのぅ・・・。

・・・・誰かこの騒ぎを止めてくれ。

しかし、止めるはずの王はを突き飛ばされたことに怒りを覚えて止める気なし。
両隣にいる側近は興味本位ではあるが、黄尚書の素顔の見たさに気を取られ、止める気なし。
三師と呼ばれる二人もこの場の成り行きを面白がっていて止める気なし。
上官のほぼ全員が鳳珠の素顔を知っているため、思い出さないようにするのが必死で止めるどころではない。
鳳珠は大きなため息をついた。

「巷のヘボ小説並の展開ですね。いいでしょう。
私は何一つやましいことはありません。
そこまでおっしゃるのなら取りましょう」

そういって躊躇いもなくはずそうとするから場は更に大混乱となった。

「・・・なっ、いけません鳳珠様っ!!!」

騒ぎの中は、本人の名前を言っている事にも気づかず忠告する。
こんなところで仮面をはずしてもらったら明日から朝廷はつぶれてしまう。
古参の官吏たちはその場にいることも出来ず鳳珠の腕にすがりつく。
これでは誰が偉いのか全く分からない。
土下座しろといえば、皆が皆ひれ伏してしまうほどにその鳳珠の素顔への恐怖心は強かった。

「やっ、やめてくださいっっ。私はもう妻と子供を裏切るわけにはっっ!!」

いやー、奥さんも子供も相手が男って知ったらどんなに複雑な気分になるやら。

「私の平穏な人生をかき乱すのはよしてくださいっっ」

別にかき乱そうとしているわけではないのですが。

「この歳で、やっとここまで官位が上がったのにうっかり坊主になりたくないですっ!!」

あ〜、お疲れ様です。

「わっ、わしはこの夏に初孫を見るまでぽっくりいくわけにはいかんのじゃ〜!!」

あ〜、おめでとうございます。

参官達の必死の形相を見て、はポカンとなってしまった。
それには上に座っていた王たちも一緒で。

「・・・そっそんなにとんでもない顔なのか?」

劉輝は予想以上の反応に驚いている様子だ。

「いや、黎深様は『跳んでくるカラスも気絶してバラバラ落ちてくる顔だ』・・・としか・・・。
だか実際面で覆うほどなのに、無理にはずさせてしまってはあのかたの矜持を傷つけることになるのでは」
「私も残念ながら知りません。
でも、黄尚書ほどの方なら素顔がどうでも負要素にはならないと思うけどねぇ。
私が言うのもなんだが、男は顔じゃない」

楸瑛が言うのも確かに一理あるが、彼の場合は負要素になるどころか、正要素になりすぎて逆に駄目なのだ。
なんでもほどほどが良いって言う証拠である。
・・・というか、あんたら去年の豊穣祭で見てるじゃん。
霄太師と宋太傅は笑いすぎて顔を真っ赤にしている。
老体にはこれはかなり刺激が強すぎる。

「・・・そ・・・そこまでいうのなら面をはずしてみてはどうじゃ?
ただし全員後ろ向きで」
「余も見ていいか?」

無邪気に手を上げた劉輝の案は即却下された。
と柚梨は視線を合わせて、ため息をつく。
今回の件で鳳珠の素顔をみた犠牲者の数はかなり多い。
全員が後ろを向いたのを確認して霄太師の合図が出る。
カタンと鳳珠の仮面が取られた。

あー・・・・やっぱり・・・。

「・・・さて・・・・」
「しまった〜〜!!声を忘れていた〜〜!!」

彼の声は美声。
一人の官吏の叫びの後にドタンと言う誰かが倒れた音が聞こえた。
は自分が女で良かったと心底思った。
それほど鳳珠の影響力は高いものなのか。
霄太師の方を見ると、その騒ぎをものともせずまるで美しい絵でも見ているかのように話す。

「いや〜、久しぶりの目の保養じゃのぅ・・・」

鳳珠の絶対零度の視線が霄太師に突き刺さる。
しかし、彼はものともせず飄々としている。
鳳珠的にもあまり霄太師は快いとは思っておらず、この顔の微笑であの世にいってしまえばこっちのものだ。と思ったがこの狸そうもいかない。

「クソジジイの分際で何をほざいておる。
『英姫が誰よりも綺麗だ。』とか無理矢理言わされていたくせに・・・」

宋太傅の台詞に鳳珠の視線ともに霄太師が極寒の地へおとされた気分になった。
全員耳栓を装着という、前代未聞の自体に陥ってしまったが、それを不思議に思う者はこの中にはいなかった。

「・・・さて、これで満足ですか?蔡尚書」

こくこく。
鳳珠はふと思いついて後ろにいるに命じた。

「・・・、紙を筆の用意を」
「はい。・・・何を?」
「私が言う事とこいつの答えたことを全て書き記せ」
「仰せのままに」

は近くにある紙と筆をとった。
これから面白い展開になりそうだ。

「貴方が紅進士と紅尚書をはめた張本人ですね」

こくこく。

「ついでに申し上げると、私もも嵌めようとした」

こくこく。

それから精神的長い質問は続く。
一通り聞き終わって仮面をつけた鳳珠にが書き終わった紙を渡す。

「お疲れ様でした。鳳珠様」
「・・・・・・」

少し霄太師達を気にしているのか鳳珠は何かいいたげな言葉を漏らす。
しかし、はニコリと笑った。
まだ誰も耳栓ははずしていない。

「・・・大丈夫です。私一応あのお二人共顔見知りですので。
もし、鳳珠様の後見が出来なかった時のことを考えての安全対策として二人から推薦貰ってます」
「良くもそんな口が叩けるようになったものよのぅ・・・。

「・・・一応、貴方方の条件を飲んであげたじゃないですか。
おかげで変な奴に好かれしまってこっちは大変に迷惑してるんですから」
「別に、どこで会っていようとどうせ好かれる運命の下にあったんじゃ。
辛抱せい」

この会話が誰のことを指しているかこの三人にしか分からない。
考えてみたところで無駄な事。
ここは、『変な奴』の宝庫。
そういう代名詞を持った人間が回りに多すぎるので分からないというこの状態がおかしすぎる。
ちなみに今回の変な奴と言うのは数ヶ月前この王都貴陽に多大なる被害をこうむって知らぬ間に出ていったある青年の事を指すのだが。
そのとき後ろの扉が開かれた。
紅黎深の到着である。

「・・・あの馬鹿めが遅い」

そう、呟く鳳珠の言葉を聞き取った私と柚梨は薄ら寒くなった。
黎深は我を取り戻した蔡尚書にとどめを指し、蔡尚書は見事にお縄となった。
今ではしっかりハゲ面である。
に下がらせ、黎深と奇人は揃って蔡尚書を見下ろした。
ここまでしてまだ彼らの怒りは収まってない。
黎深は今まで聞いた事もないようなドスの聞いた声で蔡尚書に言う。

「・・・テメェ良くも私の可愛い姪に、酷い仕打ちさせてくれたなぁ」
「・・・は??」

黎深の中に今までたまっていた怒りが爆発したのである。口調も既におかしい。
秀麗と関われば彼女の立場がますます悪くなってしまうため、涙を飲んで見守る事しか出来ない。
それなのにこのハゲというもの部下に命じて彼女に嫌がらせ。
裏でイジメながら表で良い顔をするというこの憎らしさ(人の事は全く言えた義理じゃないが)
・・・・ということは、黎深よ。今までのは全て養い子絳攸の分だったということか。

「せっせとけなげに厠掃除させられていてもう見ていて何度手伝ってあげようと試みようとした事か」
「・・・お前見てたのか・・・。
どうせなら変わってやれば良かったものを」

鳳珠は呆れたように呟いた。
それはそれで、面白い。
彼は養い子以上に姪馬鹿だという事に気がついた蔡尚書。既に遅し。

「しかも、テメェの部下ときたら、この世で一番可愛い秀麗を『ブス』とか『雌豚』とか・・・
よくもまぁ・・・そんな台詞が吐けたもんですねぇ・・・。
じゃあテメェはなんなんだ。微生物以下だな。
むしろ存在自体がない。
それに、頑張っている進士にこれでもかというくらい仕事邪魔して追加の書類もってきやがって。
テメェがやれよ。
毒仕込んだのもテメェだったよなぁ・・・。
安心しろ、後で好きなだけ味合わせてやるから。
「・・・というかお前つくづく馬鹿としか言いようなないな。
よりにもよって、黎深を標的にした挙句、奴のお気に入りの絳攸と秀麗まで巻き込んで・・・。
後は、にまで手を出した事が間違いだったな。
・・・あぁ、そうそう貴様が私のところに回した奴らだが、私の素顔を見た瞬間全員が私にひれ伏してきたが?
恐らくここ数年は使い者にならんな。藍将軍には悪いことをしたが・・・
まぁ・・・・ことのついでに責任とっておいてくれ。
今更、罪の一つや二つ増えてもなんの変わりもないだろう」
「・・・本当に今回の朝議は見物だったな・・・
黄尚書・・・そして蔡尚書。」

最後に込められた怒りの強さが感じられた。
まだ少し無邪気さを含む声の主は、先ほど朝議をしきっていた人物だった。

「・・・あっ・・・主上・・・」

蔡尚書には王に恨まれることはしてないような気がするのだが・・・。
そんな困惑をよそに劉輝は告げる。

「たしか二人はとの関係を知っていたはずだから今更隠しておく必要がない。
故に言わせてもらうが・・・。
まず、一つ。
お前のせいで余は大迷惑だ。良くも紅家を怒らせてくれたな・・・」

確かに、紅家を怒らせて貴陽の町の機能を停止させて一番被害をこうむったのは何を隠そう王様だった。

「・・・あの後、余がどれほど苦労して書類の整理に当たったか分かっているのか?
絳攸には蹴られ殴られ、楸瑛には馬鹿にされ・・・
嗚呼・・・今思い出しても涙が出てくる」

よよよ・・・と涙を拭く真似をする劉輝を見て、ふと鳳珠は耳に自邸で聞いた絳攸の言葉が思い出された。
『・・・愚者と才子は紙一重といいますし・・・・。』

「そして、」

しかし、次に来た言葉はそれだけで敵を射殺すほどの殺気を持っていた。
彼がこの紫家の中を生きていられた証。

「・・・お前、を余の前で突き飛ばしたな・・・」
「・・・へ?」
「・・・知っているぞ、というか見た。
何度も下級武官に朝廷内で襲わせたり、毒盛ったり、殺しかけたり。
はそれなりの対処方法を知っていたら良かったものの・・・・
・・・もし今が死んでいたら余がここでお前の首をとっていたぞ」

王の腰につけている刀は飾りではない。
彼の実力は藍将軍にも劣らない、宋太傅の最後の弟子。
そして、最後の一打は重かった。

「・・・最後にお前の処分だが・・・
一応表向きは刑部に回る事になっているが、身柄は即紅尚書に預ける事にした。
好きにしてくれ」

「今日だけは頭をさげますよ。主上。
お任せください、好きにします。

おや、まだ分かってないようですね。
・・・貴方の馬鹿な頭ではきっと理解しがたいと思うので、一応言っておきますと・・・・。
は『紫』家の者。主上の『腹違いの妹』になる」
「・・・なっっ。」

新たな新事実発覚である。
続けて劉輝が続ける。

「冥土の土産に詳しい事を話してやろうか。
彼女は紫家秘蔵の娘で、兄上・・・清苑公子に次ぐ才子と誉れが高かった。
先王も遺言に彼女に時期王にするように命じたくらいだ。
とある理由で紫姓を捨てる事になったが、彼女のたっての願いで朝廷に入った。
あれは、いつか紫家を名乗る」
「・・・貴方達・・・グルだったんですね」

『何を今更。』

氷点下の視線が蔡尚書に突き刺さった。
心は通ってなくても目的は一緒。
気に入らない奴はとことん落とす。という信念のもと集った人達はあまりにも大物すぎた。
本当の黒幕はやはりこっちかもしれない・・・。


触らぬ能吏に祟りなし。

   

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