冗官クビ宣言から五日後。
は仕事が始まる前に、冗官の仕事場へ向かった。
少し出仕時間より早めにいったので室の中にいるのは少数の冗官だった。
しかし、その中に が探していた人物はいた。
予想通り真面目なようだ。

「清雅殿、楊修殿・・・おはようございます」

は朝早くから仕事の席についている二人に話しかけた。

「・・・・・・・さん・・・?」
「おはようございます」

何故よく がこんなところにいるのか分からない二人はの登場に呆気にとられた。
が、しかもいい事があったのか知らないが、めっさ笑顔だ。
どちらかというと、今後自分達に悪いことが起こるような気を起こさせる笑顔である。

「あの、お二人は・・・お仕事とか決まりました?」

清雅は嫌な予感はしたが、ここは穏便に答えておいた。
長年人と付き合ってきて色々分かっていた。
このような場合このような返答をするとどうなるかを。
あまり関わりたくなかったが・・・この『陸清雅』の像を壊すわけにはいかない。

「えぇ・・・上司にはもう了承を得ました」
「そうですか・・・でもここにいるってことは、今日はまだ決まった仕事がないと・・・」

・・・・やはりそうきたか、?・・・。

「・・・えっ・・・えぇ・・・・そうですが・・・」
「では、楊修殿は・・・」

楊修は持っていた紙を机の上に置きながら苦笑した。

「いえ、私は字の練習からです。
清雅さんみたいにぽんぽんといきませんよー」
「では、今日も字の練習を?」
「えぇ、あと秀麗さんに発音を正してもらおうかと・・・」
「・・・ふむ・・・
それくらいなら大丈夫です」

は綺麗な笑顔で微笑んだ。

「実践の方が早く身につきますよ?」
「・・・・?」

の笑顔に楊修も微笑んだ。
清雅は心の中でため息をついた。楊修は分かっていない。
これから自分達が地獄に招待されることも知らないなんて・・・。
幸せな奴だ・・・。
は天使のような笑顔で二人に地獄行きの切符を渡した。

「では、お二人とも戸部で働きません?
私吏部にいかなくてはいけなくて今日も戸部にいられないんですよ。
大丈夫、仕事は侍僮と同じですし、少しくらい発音が悪かろうが体さえ動けば問題ないです」
「・・・・え?」

清雅は覚悟していなかったが、心の準備をしていなかった楊修はまだ意味すら分かっていないらしい。

「黄尚書に気に入られれば即戸部で働けますし、いや気に入られなくても戸部は年中人不足なので大歓迎です。
楊修さん真面目ですから、皆歓迎してくれますよ」
「・・・え・・・黄・・・尚書?」

不吉な単語を聞き楊修は青ざめた。
今までの話を整理して、自分達の行く末を考えると一つしかない。
の代わりに黄尚書の手伝い(もといパシリ)をして来い、と。

「うーん・・・蘇芳殿が来てないわねぇ・・・。
一番誘いたかったんだけど・・・」

戸部に来てあのだらだらとした雰囲気をもう少し正してくれればよかったんだけど・・・。
あと”長いものには巻かれろ”主義の彼のことだから皆で説得すればきっと戸部へ・・・

「蘇芳さんは・・・最近見てませんよね〜?」
「・・・・え?」

楊修の言葉に が目を細めた。

「ちゃんと仕事のあてもあるらしいですよ。
なんだかんだいって、自分の足元は固めてあるんですね」
「・・・ふーん・・・・そっか・・・それなら仕方ないか。
じゃ、逝きましょうか二人共vv」
『・・・・え・・・・(漢字が・・・)』

逃がさないとばかりには二人の腕を掴んだ。


朝議が終わった頃、ある回廊で一悶着起きていた。

「おいっ、そこは・・・ッ、吏部じゃ・・・ない・・・だろ・・・っっ」
「いっ・・・いい・・・じゃないか・・・ッ。離せ鳳珠!!
今から辛い仕事に向けやる気を増幅させるのに秀麗の顔を一目見るだけだ!!
何が悪いっ!!」

恐怖の代名詞、紅尚書と黄尚書が二人して取っ組みあっている。
何の事かは分からないが(というか知りたくもない)かなり白熱しているようだ。
あまりにも真剣だった二人には周囲の官吏の視線には気付いていなかった。
ほとんどの者は見なかったことにしてその場をそそくさと立ち去り、ある者は止めようと腕を伸ばすが声をかける勇気がなくその場を立ち去っていく。

「一目ならいいがお前ずっとそこにいるだろうっ。
迷惑だからやめろ!!
あと一目見たところで仕事しないだろうお前・・・ッ!!」
「貴様に秀麗に認知さえしてもらえない私の気持ちが分かるかっ!!」
「分かるかんなもんっ!
ほら・・・行くぞ・・・ッ」
「こら・・・ッ・・・くそっ、無駄に図体だけでかい・・・っ」
「無駄口を叩くな・・・ッ」

「・・・あの・・・・」

ある一人の官吏が勇気を振り絞り、声をかける。
二人は邪魔されたことに怒りを覚えた。

『何だっっっ!!!』

同時に恐ろしい顔(鳳珠の方は仮面だが)を向けられては、一瞬にして目が潤んだ。
・・・めっさ・・・怖い・・・。泣きたい。
しかし、自分の用件を思い出し、勇気を振り絞ってはいった。

「黄尚書、今日冗官の方から陸清雅、楊修の二名を戸部に派遣します。
私の代わりにどうぞ使ってやってくださいませ。
あと紅尚書、今日も吏部でお世話になります。
ご指導よろしくお願いします」

丁寧に礼をとったに二人の怒りも徐々に収まってきた。
よくよく考えてみるとこの争い自体馬鹿らしい。

「・・・陸清雅と楊修だな」
「はい、景侍郎には話が通っておりますので・・・」
「分かった。ご苦労」

黎深はその名前を聞き扇をばっと広げ口元に当てた。
陸清雅・・・楊修・・・。

「・・・では、失礼します」

去っていくを見送って、鳳珠は戸部に行こうと方向転換する。

「黎深、と一緒に吏部に行け。
ここまで念を押され仕事しないわけにもいかないだろう。
・・・黎深?」
「・・・・・。」

不気味なほど真面目な顔をしている黎深に鳳珠は眉を潜めた。
・・・何を考えている。

「・・・鳳珠」

真剣な声で呼ばれ鳳珠も真剣な顔つきになった。

「・・・なんだ?」
「陸清雅と、楊修だが・・・」
「・・・どうかした?」
「私が許す。
思う存分こき使ってやってくれ。」
「・・・・・・・・・・は?」
「特に楊修は手ごわいからな・・・。
無理と言っても泣き付かれても、どんなへまを起こしても絶対に甘やかすなよ。いいな。
陸清雅以下同文。奴はまだ矜持が高いからどんな仕事でもこなすと思うけどな」

恐らく黎深に恨みを買われたのだろう。可哀想に。
鳳珠はそう思いながら内心ため息をついた。
黎深は鳳珠とすれ違い様にぼそりと言った。

「やる気のでるいい事を教えてやろう。
陸清雅は葵皇毅のお気に入りだそうだ」
「・・・ほぅ・・・?」

鳳珠は仮面の下でにやりと笑った。
そういうことなら話は別だ。

・・・久しぶりに楽できるかも・・・。そう思いながら鳳珠は黎深の後姿を眺めた。
・・・・・・。
・・・・あれ?

「・・・おい、黎深。そっちは吏部じゃないぞ・・・」

聞こえているはずなのに、黎深はすっと角を曲がっていた。

・・・はぁ・・・・。

仮面の外に漏れるほどの大きなため息をついて鳳珠は戸部へ向かった。


戸部に戻った鳳珠には『鬼』が憑依したようだった。
久しぶりの長官の姿に戸部の官吏達の中にも緊張が張り詰めた。
これが本来の戸部だ。
今日一日『精鋭部隊』と評された戸部官吏の姿が久しぶりに姿を現した。

「・・・遅い。
貴様今まで何していた?朝廷が広すぎて迷ったか?」
「あの・・・」
「言い訳は聞かん。
次にそこに山になっている本全て片付けろ。
あとこの報告書出したクソ官吏共に『国試どころか人生やり直して来い』と一言。必ず伝えろ。
それが終わった六部にある決算報告書今年の分をここに全て並べろ。

・・・後は・・・」

・・・まだかよ・・・。
流石の楊修もほんわかした雰囲気が作れなくなってきた。
仮面ごと殴りたくなる衝動をなんとか拳を握って押さえる。
こちらも本気を出さなくては彼のいいつけた仕事を全てこなせない。
というか・・・聞いていたよりも、かなり厳しいのだがこれはなんだ?
もしかして・・・ にだけ甘いのか?

「・・・以上だ」
「・・・御意」

かなりご立腹なようすの楊修の背を鳳珠は満足そうに見つめた。
これくらい絞れば本性も出てくるようだ。
確かに黎深のいうように初めは使えるのか疑問に思ってみたが、難易度を上げていくにつれて徐々に楊修の本領が発揮されてきた。
既に言葉や動作が貴族のものになってきている。
本人はほんわかした『楊修』の仮面を作るのに必死になっているようだが、なればなるほどボロが出てきている。
並みの者が二人もいることでかなり仕事がはかどっている。
久しぶりにこの室の綺麗な姿が見れそうだ。

「・・・あのー鳳珠・・・」

楊修が出て行ってから柚梨がこそっと告げた。

「何か・・・いつも以上にきついですよ。貴方。
・・・そりゃ・・・気持ちは分からないでもないですが・・・くんじゃないからって不機嫌になりすぎです」
「・・・どういう意味だ、それは。
あの二人に関しては黎深の許可を取ってあるからいい」
「・・・紅尚書が・・・?
でもあの二人はくんが連れてきた冗官・・・」
「ただの冗官があんなに仕事できるか。
陸清雅の方はともかく楊修なんて完璧に猫被っている。その皮も大分剥がされてきたがな・・・」
「確かにそうですけど・・・」

鳳珠は仮面を取り、悪い笑みを浮かべた。
その表情を見て柚梨は寒気がした。
それでも美しいと思ってしまうのは、彼の顔があまりにも整いすぎているため。
魂さえも奪ってしまえるほどのその微笑、美声で鳳珠は言った。

「久しぶりに楽をしてもいいじゃないか。
今日一日だけの貸し出しだ。
どうせ冗官として暇な人生送ってきたのだから今日一日でその分働かせても文句はあるまい。
それに・・・久しぶりに綺麗な室を見たいだろう?なぁ、柚梨」

にこり、と正面から微笑まれ、柚梨はビクリと肩を震わせた。
・・・悪鬼だ。悪魔だ。悪霊だ。
なんでもいいが完全に憑依しちゃってる・・・

鳳珠の方も初めは軽く苛めるつもりでいた。
しかし、とばちりをうけた戸部の空気が一気に締まり、あとは二人があまりにも使えるのでちょっと試してみているうちに以前の鬼が復活してきたのだ。

「・・・陸清雅です」
「入れ」

鳳珠はすっと仮面を元に戻し、清雅を招き入れる。

「・・・数名が席を外しており、署名の欄が少しあいているのですが・・・」
「探したか?」
「・・・はい・・・」
「それにしては早かったな。どこを探した?
特に吏部尚書の署名は必要だから最優先で見つけて血判でもなんでもいいから押してもらえ」

俯いた清雅は、ギリッと歯噛みする。
こんなに堂々と上から嫌がらせを受けたのは出仕当初の御史台での皇毅だけだ。
それも大分落ち着いてきて、今ではたまに褒めてくれるまでになったのに・・・・ッ。
なんで自分がこんな目に・・・。
だから、女官吏なんて嫌なんだ。

・・・鬼だ。
改めて柚梨は思った。
吏部尚書の居場所なんて、兄の邵可ぐらいしかすぐに分かるはずがない。
長年探しに出ている鳳珠や絳攸でも時間が掛かるのに。
更に署名などしてもらえるか?あの天上天下唯我独尊の彼に。
柚梨が知らない事実を付け加えると、清雅は皇毅のお気に入り。黎深が素直に署名してくれるとは思えない。

「・・・先ほど各部署に届ける書類が仕上がった。
届けるついでに探して来い。
それが終わったら、雑務が山のように溜まっているはずだからそれを処理しろ。今日中にだ。
一番奥の席に書類や書簡が山済みになっているからすぐに分かる。
詳しいことは近くの奴に聞け。以上」
「・・・御意」

清雅は書類を掴んでさっさと尚書室を出て行った。
そしてすぐに戸部を出て誰もいない室に入った。

「黄奇人・・・ッ
ふざけやがってあの仮面・・・っ。
この僕をよくもこんな侍僮扱いしやがって・・・」

それに・・・。
元凶のあの女。
実際に会って情報を集めようと近づいた自分が間違っていた。
あれは本当の厄災だ。
軽く調べてみたが、微妙に不明な点が出てきていた。
下街の方にも軽く聞き込みもしたのだが、 は丁度王の権力争いが終わり街が平和になったころから下街の方で働くようになったらしい。
そして黄奇人がよく分からないがその才能をなんらかの発見。官吏に推薦・・・。そして今に至る。
それ以前のの情報は綺麗さっぱり出てこない。
気品と物腰から名家のお嬢・・・。下街で賃仕事、というのならば権力争いに破れたどこかの家の娘、と言うことが推測される。
あの名前はほぼ偽名で間違いない。
?という姓の貴族は聞いたことがないし、という名も聞いたことがない。
大体の貴族の家の人物とその家族がどうなったかはほとんど御史台が把握している。
紅秀麗並みの頭脳と小回りが利くだけではなく、しっかり朝廷の闇の部分を知っている。
表面では猫を被っているようだが、あれは裏を生きてきた顔だ。
本来紅秀麗が裏の道を進むはずだったと思うが・・・何故かあんな甘ちゃんになった。
そして、無名の生まれも明確でない娘が闇の世界を生きてきた。
王家争いの名残か・・・?
あの頃名もなき暗殺者は山ほどいた。
大人は勿論子供も・・・

考えれば考えるほど、分からなくなってくる。
王家争いのせいでその辺の資料が少ないことも事実だ。
そのとき後ろの扉が開いた。
清雅は我に返り、振り返る。

「いけませんねぇ、清雅くん。
一人で休憩ですか〜?まぁ気持ちも分からなくもないですが・・・。
そういう時は私も誘ってくださいよ」
「・・・楊修さん・・・」

へらっ、とした笑みを浮かべて楊修が入ってきた。
清雅はほっと息をついた。
サボっていたと思われるのは酌だが、他に良い言い訳も見つからない。

「本当黄尚書って厳しいですねぇ。
何度も怒られてしまいましたよ。 さんよく毎日やってられますね。
感心します」


楊修は清雅の隣にある椅子に座った。
吐き出された息から本当に疲れていることが伺われる。

「・・・そうですね・・・。
・・・あの、楊修さん・・・少し良いですか?」
「なんでしょう?」
「・・・茈について・・・どう思われます?」

楊修の動きが止まった。

「それは・・・」

楊修の真剣な目が清雅を見つめる。

「・・・え・・・」

自分の考えていたことがバレたか・・・?と清雅の心音が跳ね上がる。

「やっぱり・・・さんのこと好きなんですか?」
「・・・・は?」

なんでそうなる?と清雅は脱力した。
最近やることなすこと裏目に出ているような気がする。
残りの冗官生活、本気で家に引きこもってやろうかとまで考えた。

「良い子だと思いますよー。
なんでしょう?秀麗さんと違ってちょっと冷たい面も見えてそこがちょっとそそるところですか?
作法なんかも完璧で貴族慣れしているみたいですからお家問題もろもろにも柔軟に対応してくれそうですし・・・。
清雅さんのとこも結構大変なんじゃないですか?
秀麗さんも可愛らしくて良いですけどねぇ・・・。ちょっと大人の雰囲気も楽しみたいなら・・・」
「いえ、僕はそんなことを聞いているわけではなく・・・」
「照れない照れない。歳も近いですし、並べばどちらも見劣りせず完璧です。
応援してますからね。」
「いや、だから本当に違いますって・・・」
「そういえば、碧珀明くんだっけ?さんと同期の・・・・
なんか彼との噂もちらほらあるようですけど、大丈夫。
清雅くん要領良いからちゃっちゃと昇進して、碧家の人なんておいこせちゃいますよ。
彼吏部でこってり絞られているようですから・・・
あっ、今くんも吏部にいるんでしたっけ・・・?
これはいけませんね。お昼誘います?」

・・・だからなんてそうなる・・・?
清雅は床に手を付き泣きたくなった。
自分がに何をした?
興味を持っている人に興味を持っているといって何が悪い?
それだけで恋愛関係に持っていけるのならば世界中皆恋人だらけだ。

「・・・いえ、もう良いです。
仕事・・・片付けてきます・・・」
「では、私はもう少し休んでいましょうかね〜?
黄尚書にバレたときは同罪ですから〜」
「・・・えぇ・・・・」

清雅を見送り楊修は微笑んだ。
若者はあれくらい苛められるくらいで丁度良い。
とりあえず、清雅は苛められる理由はなんとなく分かるが自分まで被害が降りかかっているのは何故だろう。
背後に紅黎深の影が見えた。・・・まさかね。
楊修はよっこらせ、と立ち上がった。
懐から査定書を出す。

「・・・まぁ黄尚書にあれだけ言われても表面上はなんでもない事を装い、ちゃんと仕事をこなす・・・っと。
まぁ奴の分出すまでもないと思うけど一応書いておくか・・・」

戸部の中で働く官吏達を見ていたが、やはり黄尚書の下で根気強く働く精鋭集団。
誰もかもクビにする理由が見当たらない。

「あーあ・・・羨ましいねぇ。戸部に配属された人達。
査定が楽で。」

ふと外を見るとちょうど冗官達が見えた。
その中に秀麗もいる。

「・・・本当甘ちゃんだねぇ・・・。関係ないけど」

楊修はくつくつ笑い室から出て行った。

日が傾き銅鑼がなった時、清雅と楊修は机案の上に突っ伏していた。
何とか鳳珠から命じられた雑務を時間通り仕上げられた。
もう筆を持つ力も残っていない。
鳳珠はその様子を見て仮面の下で感心した。
まさか本当にやってのけるとは・・・
おかげで戸部の壁や床が久しぶりに見れ、戸部内は広くなったように思われた。
「柚梨・・・」
「なんでしょう?」
「茶くらい淹れてやってくれ」

そういって鳳珠は尚書室へ入っていった。
柚梨は苦笑して鳳珠の言葉に従った。
彼も丸くなったものだ。

「お疲れ様です」

清雅と楊修は顔を上げた。
戸部侍郎、景柚梨が自らお茶とお菓子を持ってきてくれたのだ。
他の部署では侍郎がお茶を淹れるなど滅多に見られない光景だ。
二人はさっと礼を返した。

「あっ、ありがとうございます」
「いえいえ、お二人共今日は本当に頑張ってくださりました。
このお茶は黄尚書からですよ。彼も感心していたようです」

温かい湯気と、程よい甘さの菓子、そして柚梨の優しい言葉に二人はじーんときてしまった。
働いてよかったかも・・・、全ての苦が報われた瞬間だった。

そしてお茶を最後の一口まで飲み干して柚梨に礼を言って退出した二人は、戸部を出た瞬間はっと気づいた。
・・・危ない、戸部の魔手にかかるところであった。
尚書と侍郎の究極の飴と鞭・・・。
二人は久しぶりに身に感じた疲労を引きづりながら朝廷を出て行った。
・・・・今日はもう寝よう。

   

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